「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ラバランチュラ 全員出動! のレビューです(総合評価B+)

(画像:Amazon商品ページより引用)

蜘蛛も展開もアツゥイ!(激ウマギャグ)

今作ですが、あのメガ・スパイダーの監督による蜘蛛映画です。蜘蛛好き過ぎるだろ……。

レンタル版を吹替えで視聴しました。まずは予告編&アルバトロスの公式ページからあらすじをどうぞ。

【予告編】


【あらすじ】

「ポリスアカデミー」のメンバーが集結したモンスターパニック。コルトンはかつて一世を風靡した映画スターだったが、今ではB級映画専門の俳優となっていた。冴えない毎日を過ごす中、突如未曽有の危機が訪れる。街には溶岩を吐く巨大クモが現れ…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー………B
蜘蛛の質…………B
キャラクター…B
設定………………C

総合………………B+
おすすめ度……A

【良い点】
・飽きさせないストーリー構成
・魅力的なキャラクター
・モンスターのクオリティが高い

【悪い点】
・スーパーご都合主義


B級モンスター映画としては、正直文句なしレベルのクオリティの作品でした。やりたいことを全部詰め込みつつも破綻していないストーリーに、主人公始め好感度の高いキャラクター、なかなかのクオリティを誇るモンスターのCGなど、全体的なまとまりもかなり良かったです。これでもかというくらいにご都合主義展開満載ですが、それすら全く気にさせないほどのパワーを秘めた作品なので、私としては是非見ていただきたい一本です!

【以下、ネタバレ注意!】

素晴らしいクオリティだぁ……と思って調べてみたところ、あのメガ・スパイダーの監督さんの作品だと知り納得しました。メガスパイダーと言い今作と言い、蜘蛛映画撮らせたら天才的ですね……。

メガスパイダーまだ見てない人は、あちらも面白いので是非見よう!(宣伝)

というわけで今作ですが、火山が噴火してそこから溶岩を噴く蜘蛛、ラバランチュラが大量発生してきて町が大パニックに陥ったので、売れない俳優のお父さんが蜘蛛を薙ぎ倒しながら息子を探して町を探索し、最後にはアイアンマンになってママランチュラを爆殺するというお話です。こんな冗談みたいなストーリーなのにバッチリ面白いんだよなぁ……。

というわけで、早速今作の内容を見てゆきましょう。ただその前に、一つだけ注意点が……正直に言ってしまいますが、個人的に今作にはかなりドストライクの所を突かれました。はっきり言ってすごく好みの作品だったので、以下はもうべた褒めの嵐です。冷静さを欠いている可能性がありますのでご注意ください。そこだけご了承いただいたら、早速イクゾー!

今作の良い点は、モンスターのクオリティの高さ、キャラクターの魅力の高さ、そして何よりも、飽きさせない見事なストーリー構成です。

では最初にキャラクターについて。この映画に登場するキャラクターたちはなかなかに魅力的。今作のメインキャラとなるのは、B級映画俳優の主人公と、その妻、息子の三人なのですが、当然ながら彼らの好感度はかなり高いです。主人公は、蜘蛛の巣窟と化した町まで息子を探しに行く道すがら、現れた蜘蛛を苦戦しながらも撃退してゆくナイスガイで、戦闘力も行動力も高い、まさにモンスター映画の主人公にふさわしい人物。それを支えるヒロインも実にパワフルで、蜘蛛に臆せず勇敢に立ち向かい、銃を片手に蜘蛛を仕留め、軍用車を運転して主人公のサポートに徹します。彼らは、主にコメディパート、戦闘パートでの活躍が顕著です。

息子は息子で、怪我を負った仲間たちの面倒をしっかりと見てくれる人物で、仲間たちを見捨てずに率い、時には蜘蛛と戦ってまでも仲間を守るという優しさとパワーを秘めています。仲間を率いながら逃げに徹し、父との合流時には勇敢な発言をする彼の姿は、主にシリアスパートでの印象が強かったです。

また、主人公の大ファンであるおっさんや、映画小道具製作所の皆さんなど脇を固めるサブキャラクターたちも、皆行動力があってなかなかに魅力的。総じて、キャラクター作りについては成功を収めていると言って良いと思います。

次にモンスターの出来について。この映画は見てのとおりの蜘蛛映画で、登場するのは火を噴く大蜘蛛ラバランチュラのみ、かつ蜘蛛はサイズこそ違えどビジュアルは一緒で、ともすれば飽きが来てしまいそうな風貌をしているのですが、このモンスターのクオリティというか、魅せ方がまた上手いんです。何がどう上手いのかについては……以下に挙げる今作一番の評価点、ストーリー構成の中でお話しします。

さて、それでは今作における一番の評価点である、ストーリーについてです。この映画のストーリー自体は、息子を探しに町までやってきた父親が奮闘し、見事息子を救出、母蜘蛛の撃退にも成功し、子蜘蛛も全滅させて無事街を救うという、まあ言ってしまえばかなりありがちな内容なのですが、こんな良くある流れを使いながらもしっかりと飽きさせない工夫が施してあるというのがまず今作の凄いところ。

先に話したように、父親やヒロインがメインで映っている時には、主にコメディや戦闘パートが重点的に描かれます。ここでは、蜘蛛は戦うべき対象として映し出されることと、どんな苦境に立たされても持ち前の明るさと高い戦闘力を駆使して戦う彼らの姿に、あまり絶望を感じませんでした。主人公たちは結構苦戦を強いられているため一概にそうとは言えませんが、どちらかというと彼らの前では蜘蛛は狩られる側の立場です。

対して、武器も持たずに負傷者と行動を共にする息子が中心となるパートは、先述のとおりシリアス色が強く、かなり絶望的な状況が続きます。ここでは、蜘蛛は逃げるべき強大な敵としての色が強く、基本的にモンスターパニックさながら逃げの一択を強いられます。息子パートにおいては、蜘蛛は完全に狩る側の立場としての地位を築いていました。

ここで重要なのは、蜘蛛が『狩る側としての顔』『戦う対象としての顔』という二つの異なる顔を、同じ物語中にコロコロと変えて見せてくれるということです。これのおかげで、登場するのは終始一種類のモンスターだけであるのに、展開によって異なる持ち味や魅力を出してくれるので、展開が単調にならず見ていても飽きが来ません。

また今作、被害拡大のさせ方も上手い。最初から町が崩壊している……というような状況ではなく、極一部の人しか蜘蛛の存在を知らないという状況から、徐々に町全体に被害が広がって行くという過程の描写が上手いので、これもまた展開が単調になるのを防いでくれていました。今作は、このような飽きにくくなるような配慮がストーリー構成の細部にまで浸透しているので、終始楽しんで見ることが出来るのです。これがポイントが高い。

また、今作のストーリーもう一つの見どころとして、ありがちなだけで終わらず、しっかりしたオリジナル要素も光っているということが挙げられます。この映画、息子と両親が合流するあたりまではそれこそ良くあるモンスター映画としての道をたどるのですが、息子からの勇敢な「(蜘蛛と)戦うべきだ」との発言があったことを皮切りに、今作は良い意味で思わぬ方向へと進んでいきます。それこそ、ボス蜘蛛を倒して蜘蛛を全滅させるという方向性自体はありがちですが、まさか主人公が昔主演を張っていた大人気アクション映画のヒーロースーツに身を包み、背中からジェットを噴射しながらボス蜘蛛に接近し見事爆殺に至るなどと誰が予想したでしょうか。

ここで重要なのは、これだけやりたいことを堂々と詰め込んでいるにもかかわらず、話として大きな破綻が全く見られないということです。なぜ蜘蛛の処理は軍に任せてそのまま逃げずにわざわざ戦うのか、なぜヒーロースーツを着て戦うことが必要なのか、等という話の重要な部分に関する説明というか、前ふりの部分がしっかりとできているので納得させられてしまうんです。こういう、一見滅茶苦茶になりそうなストーリー展開をしていながらも、話の要所となる部分の説明やフリは怠らないという姿勢により、今作は全体としてかなり纏まりの良い仕上がりとなっていたように思います。このあたりの調整は本当にお見事でした。

唯一、今作の悪い点、というか不満に思える可能性のある点としては、そうは言っても蜘蛛の発生理由や撃退方法など各種設定がかなりガバく、展開にご都合主義的面がかなり強いということが挙げられます。しかし、今作のご都合主義は他のB級モンスター映画にも良くあるレベルで、かつかなり吹っ切れたストーリー展開をしてくれるため、ぶっちゃけ私は全然気になりませんでした。都合の良い展開、突っ込みどころのある展開が満載でありながら、それを全く気にさせないだけのパワーが今作にはありますから、正直問題ありません(断言) イメージとしては、シャークネード2みたいな感じです。まあさすがにあそこまで設定がぶっ飛んではいませんでしたが。

総評ですが、コメディ面でもシリアス面でもかなりの実力を誇る一品で、設定以外に穴がないほどの素晴らしい出来の映画です(絶賛) 魅力的なキャラクターと全く飽きさせない展開を軸に突き進んでくれるため、見ていても飽きがくる瞬間というのが全くありませんでした。ちょっとだれて来たかな……と思いそうになると、すかさず展開に動きがあったり、良い意味で予想を裏切る方向に話を進めてくる、というバッチリな調整が終始続いてくれるので、安心して最後まで見られる映画です。

特に、話の要所要所でしっかりとした盛り上がりがあるということや、コメディ一辺倒、シリアス一辺倒ではなく、キャラも蜘蛛もストーリーも実に多彩な顔を見せてくれるという構成が実によかったと思います。最近見た映画の中では間違いなくトップクラスの作品だったと思うので、個人的には是非ともお勧めしたい一本。みんなもラバランチュラ、見よう!(提案)

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