つい先日、ツイッターで以下のポストがバズっているのを見かけました。
なるほどなるほど。
明らかに言い過ぎである。
というか主語がデカすぎる。ついでにティターンズの権力もデカすぎる。一般将校は黙っていろ!
ではなぜ、少しでも立ち止まって考えれば明らかに主語がでかいと気が付くこのような言説を投稿してしまうのでしょうか。
最も有力なのは、Noteにしろブログにしろツイッターにしろ、ネットはとにかく目立った者勝ちの世界だからという仮説です。すなわち、あえて主語をデカくして相手の不快感を誘いクリックさせる戦術、まあ一種の炎上商法ですね。Youtubeのサムネとかでよく見るやつ。
先のポストにブラ下げられていた記事のリンクを読んでみたのですが、そこに書かれていたことを要約するとこう。
・自分自身に対してダメ出しが出来ない人の文章はつまらない
うん、この主張自体は全然間違っていないと思う。小説には「推敲」という、書き終えた後に自分で読み返しながら文章を改善していくステップがあるのですが、この精度をどれだけ高められるかで作品の質は決まります。これは自分自身に対するダメ出しそのものなので、これが出来ない=文章がつまらないという主張には一定の論理性があります。小説に限らず、文章全般に対して言えることでしょう。
しかし元ポスト及び記事では、この「自分にダメ出しが出来るか否か」を「性格の良し悪し」に結び付けて論説を展開しています。今回の問題はここにあるのです。つまり、
・性格の良い人=自分にダメ出しが出来ない人=文章がつまらない人
・性格の悪い人=自分にダメ出しが出来る人 =文章がおもしろい人
という論理展開をしているのです。
そしてこの記事は、
物書きたちよ、性悪であれ。性格の悪さと文章の面白さは見事に比例する。
という一切の根拠がないアドバイスのふりをした独りよがりで稚拙なお気持ち暴論で締めくくられています。
何度でも言います。
明らかに言い過ぎである。
というかやっぱり主語がデカすぎる。ティターンズの権力くらいデカすぎる。正規の連邦軍とはやり方が違う!
「自分にダメ出しができるかどうか」という能力と「性格の良し悪し」という本来全く別の軸の話を持ち出してきて、さも関連があるかのように堂々と語っているのです。
そもそも自分にダメ出しができるかどうかというのは、文章の良し悪し以前に社会的成功を収めるために必要なスキルであるので、この言説に則るのであれば社会的成功者は全員例外なく性格が悪いということになります。イチローや大谷翔平など極悪人ですね。あそこまで自分にストイックなダメ出しのできる人はそういないから。
明らかに論説として破綻しています。
ではなぜこんな無理のある論理展開にするのかと言えば、やはりその方が人目を引いて目立つからに他ならないでしょう。
考えてもみてください。もしも元ポストが
・文章が上手くなるコツは、自分にダメ出しをすること!
なんて至極まともなタイトルだったとしたら、2リツイート10いいねが関の山だったことでしょう。
・性格の悪い人は文章が上手い!
はい、全然だめです。これでは一部の性格悪い人しか釣れません。
ところがこれを
・性格の良い人は文章がつまらない!
として多方面に喧嘩を売り相手の良心を踏みにじり傷付けて炎上することにより、無事万バズ。
まったく、インターネットは最高だぜ! 地球にアクシズの一つも落としたくなる気持ちがよく分かりますね。コロニーでも可。
しかし事実として、このとにかく目立てばなんでもアリ! という風潮はご存じのとおりインターネットに根強い。そして最近、これとよく似た醜い現象をWEB小説界隈でも観測したのでちょっと語らせてください。というわけでここからが本題です。おまたせ。
1.WEB小説界隈で見かけた醜い出来事について
大変遅ればせながら、私ここ1年ほどB級映画界隈からは足を洗いまして、今は小説を執筆して新人賞に投稿する、いわゆる公募勢という界隈にいます。そこにいるとね、主にWEB小説界隈からの嘆きがたくさん聞こえてくるんですよ。
読まれない、ランキングが上がらない、星がもらえないPVが付かない……それはもう大量に。
まあそれは一旦置いておくとして、先日カクヨムという小説投稿サイトの公式が面白いポストをしているのを見かけました。それがこちら。
要約しますと
開催しているコンテストの応募要項も読まずに全然カテゴリーにそぐわない作品を応募してきてランキング荒らしてんじゃねーよタコです。
WEB小説コンテストになじみのない方向けに説明しますと、この手のコンテストって公開型なので、選考中も全作品が読めるんですよね。なんなら応募作だけでまとめられてランキング表示もできます。なので読者の中には、自分好みの作品が集まりそうなコンテストの応募作で検索をかけて覗きに来てくれるありがたい人もいます。
今回開催されているのは「涙が止まらない。アオハルな恋」部門という、
読むほどに涙が溢れる、女性のためのエモいラブストーリーを募集するコンテスト。
つまり、この応募要項を読んだ読者はこう思うわけですよ。「このコンテストの応募作を検索すれば、私の読みたいエモくて泣ける女性向け青春ストーリーが簡単に調べられて便利じゃん!」と。まあ当たり前ですよね。
さあでは今、この応募作の一覧ページはいったいどんなことになっているんでしょう!
イヤータノシミダナー
チラッ
いや男性向けラブコメばっかりやないか~い!
うん、これは確かに公式が注意喚起出しますわ。女性向けのエモい青春ラブストーリーだっつってんだろ。
ちなみにどのWEBコンテストにおいても、投稿者の中には応募要項が読めない人が必ず一定数含まれているので、この手のカテゴリーエラー問題は別に今に始まったことではありません。ですが、カクヨム公式がこういう形で注意喚起出すのは珍しいと思います。
さて、ここまで読んでくれた読者の中には「全くうっかりさんだなぁ、応募要項はちゃんと読まないと。適切な部門の応募タグを付け直そうね」というぴゅあぴゅあはーとな感想をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれ、そんな単純な問題ではありません。
酷い場合、カテゴリーエラーだと自覚したうえでわざとやっているケースもあります。
なんでそんなことするのか、それはWEB小説投稿サイト自体が抱える問題が大きく関わっているのです。
2.WEB小説投稿サイトの問題点
WEB小説投稿サイトには当然ながら、人気ジャンルとそうでないものがあります。今回はカクヨムを例に説明します。
総合ランキングを見ればわかりますが、圧倒的人気なのはやはり異世界ファンタジー。WEB小説の花形ですね。ラブコメと現代ファンタジーも根強い人気があります。逆に、ホラーやミステリなんかは本当に余程のことがない限り総合ランキングにはまず上がってきません。
星の数でも比較してみましょう。カクヨムには各読者、1作品につき3つまで星を付けられる評価システムがあります。先に挙げた人気ジャンル作品だと☆10,000超えなんてゴロゴロありますが、不人気ジャンル作品においては☆10,000なんて本当にごく一握りの超絶特異点作品にしかつきません。ミステリとかホラーで☆1,000超えようものなら超絶大人気作品です。
この理由は明白で、それだけ人気ジャンルには読者が多いからですね。異世界ファンタジーというジャンルには莫大な量の読者がいる一方で、ホラーやミステリにはそもそも読者がいないんです。
さて、読者がたくさんいるジャンルというのはメリットもありますが、当然デメリットもあります。作品数が多い上に高評価を獲得している作品がいくつもあるため、ジャンル別ランキングで埋もれやすいことです。
ミステリやホラーなんかの不人気ジャンルで☆3桁も取れば人気作品でランキング上位間違いなしですが、異世界ファンタジーで☆3桁なんて爆速でランキングの波に埋もれます。つまり同じくらいの評価を受けているのに、選ぶジャンル一つで全く結果が変わってくるんですね。
「まあそれはそれで一長一短だし、ジャンル分けがされた中での相対評価がちゃんと機能しているのなら問題ないのでは?」と思われたそこのあなた、まったくもってその通りです(実はこのジャンル分けにも問題はかなりあるのですが、今回は割愛)。
すなわち、異世界ファンタジーは異世界ファンタジー同士、ホラーはホラー同士で競い合ってね、ということですね。
しかしこのフィールド整備が目に見えてぶっ壊れるのが、公開型WEBコンテストの開催時です。
先のコンテストは、エモくて泣ける女性向け青春ラブストーリーを募集すると明記しています。つまり必然的に、「恋愛」や「現代ドラマ」などの、いわゆる不人気ジャンルの作品が数多く集まることになります。☆1,000もあれば超大人気作品、みたいなところで競っているジャンルの作品が集まるわけですね。
この時に、悪い人は考えるわけだ。
「あれ? 俺の書いたラブコメ作品(人気ジャンル)って、☆3桁しかないから普段ならランキングに埋もれて全然上がってこないけど、このコンテストの投稿作の中でならランキング上位に上がれて目立てるじゃん!」
つまり、普段は読者層が分厚いフィールドにいてジャンルの恩恵を大いに受けつつ、この手のコンテストが開催された時だけはジャンル恩恵で稼いだ☆を抱えたまま弱小フィールドに殴りこんで
「オラオラ俺様の書いた男性向けラブコメ作品は貴様らの書いた女性向けエモエモ青春ストーリーとかいう不人気ジャンル作品なんかより格上だぜすごいだろ、あぁ~ランキング上位気持ちいい~↑↑↑」
するわけですね。
その結果出来上がったのが、先のような地獄のランキング汚染です。応募要項を読めない、もしくは無視して殴りこんできた人気ジャンルのカテゴリーエラー作品ばかりがのさばり、真面目にルールを守っている作品はその波に埋もれてバカを見る。あまりにも気の毒で仕方がない。
ただですね、これへの対策ってめちゃくちゃ難しいんですよ。運営は例の声明を出しましたが、あれが精一杯でしょう。中には「明らかなカテゴリーエラー作品は運営の方でタグを外してほしい」という至極真っ当な声もありますが、まあ現実的に不可能だと思います。
例えばここに「陰キャが異世界転生したら超絶チートを手に入れて記号化された都合の良い美少女たちにモテモテになりハーレム形成して毎日女をとっかえひっかえひたすらエロエロイチャイチャしていただけなのになぜか周りの人たちに崇め奉られてすげーすげーとよいしょされまくる俺またなんかやっちゃいました?」という作品があるとします。しかもこれが先のコンテストに応募されているとします。
もうこんなもん誰がどう見ても男性向けラブコメなんですが、作者に「これは女性向けに書いたエモエモ青春ラブストーリーです」と言われたら、運営が参加資格をはく奪することって無理なんですよね。もちろん、コンテストの審査過程でガン無視することは出来ます。しかし掲載を取りやめさせたり、勝手にコンテストタグをはく奪することはできないでしょう、だって作者は「女性向けに書いた」と言っているんだから。
これが例えば「女性主人公限定」「舞台は現代日本限定」等のように、機械的に判定可能な指標があれば弾けるんですが、誰向けに書いたか、テーマが何かなんて作者にしか決められませんからね。100%明らかに違うと分かっていても、作者に取り下げてもらう以外に方法がない。
もちろん、審査過程ではこの手の悪質なカテゴリーエラー作品を弾いて受賞させないという対策は取れます。ですがこういうことをする人は受賞なんて端から狙っておらず、
エラーだろうがなんだろうがとにかく目立てればいいランキングが上がればいい
という思考でやっていたりするので対抗策になりません。審査過程で弾かれるのは百も承知の上で、ランキング上位に居座ることしか考えていないから。
じゃあどうすりゃいいんだよ、という話なんですが、ハッキリ言って我々のような一作者や一読者にできることはないです。カクヨムには低評価という概念がない(☆1ですら純粋な加点評価)ので、ルールを守らない作品を下げる手段が存在しません。
また、タイトルやキャッチコピーは明らかに男性向けでも、中身を読んでみると意外と女性向けで要項に沿っている、みたいな可能性も否定はできないので、運営がこれ以上何かできることもないと思います。
まさにやったもん勝ち、目立ったもん勝ちのやりたい放題。
ですがただ一つだけ、あなたがこれに対抗できる手段があります。
あなたもルールを無視する側に立てばいいのです。
3.物書きたちよ、性悪であるな。
頑張って書いた作品を、せっかくならたくさんの人に読んでもらいたい。そう思うのは物書きとして極めて自然なことです。この記事をここまで読んでくれた方の多くは、小説投稿サイトで自作が読まれない、評価されないことに悩みを抱えていると思います。特に、先に挙げたような不人気ジャンルで頑張っている方々は。
しかしあなたの作品が読まれないのは、作品のクオリティ以前に戦っている場所が悪いのかもしれません。読者が1,000人しかいない場所では1,000人以上からの評価はどうやっても得られないのです。
だからいっそ場所を変えてみましょう! 読者が100,000人いるジャンルで戦い、そこで稼いだ☆やPVを引き連れて不人気ジャンルのコンテストに殴り込みをかけましょう! そうすればあなたの作品は一時的とはいえランキング上位間違いなし!
なに大丈夫ですよ、外野になにを言われても「私はこの作品をこのコンテストに見合うテーマだと思っている!」と言い張っておけば問題ありません!
だから堂々と応募要綱違反しましょう!
カテゴリーなんて無視しましょう!
読まれるのが正義です、☆の数こそ絶対的な力なのです!
そういうふうに思えますか? 割り切れますか?
無理ですよね。
だってあなたは性格が良いから。
涼しい顔してルール違反を犯し、みんなから石を投げられることに耐えられないから。
周りに何と言われようと、酷評されようととにかく数字さえ稼げればいいという姿勢で小説を書いていないから。
「とにかく目立てば勝ち、数字こそ正義」という態度を取るためにはそれはもうとてつもない才能が必要です。自らの悪事に目をつぶり、悪評をひょいと受け流し、他人を傷付けることに躊躇いを覚えず結果だけに目を向けられる才能。それがないならやめておいた方が無難です。無理です。
普通はそんなことしてたらまず病みます。
結局あなたは今まで通り、理不尽に立ち向かいながら真面目に創作をするしかないのです。
ただ「戦うフィールドを変えてみる」、これだけはもしかすると有効打かもしれません。あなたの小説を他人に読んでもらう手段は投稿サイトだけではありません。電撃やGA、MF等新人賞への公募という手段もあります。
ネットでも読まれないのに公募なんて……と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ネットで受ける小説を書く能力と公募で戦える小説を書く能力ははっきり言って全くの別物です。
例えば私の書く小説はカクヨムではビックリするほど全く伸びていませんが、公募ではかなり戦えています。それなりに良い戦績を収めています。そのおかげで私は、WEB投稿した作品の伸びを一切気にすることなく伸び伸びとした創作活動が出来ています。
現代の物書きとしては、面白い作品を書くだけではいけません。自分が書いた作品が正しく評価される場所を見極める力も必要です。
私にとってその場所は公募です。あなたにとってもそうかもしれないし、カクヨムやなろう等の大手ではない別の投稿サイトかもしれない。
とにかく私たち物書きに必要なことは、
面白い作品を書くこと
自分の主戦場を見極めること
この2つではないでしょうか。決して姑息なランキング上げとか、一時の数字稼ぎのために自分の作品を汚したりだとか、そういうことをしてはいけません。そんなくだらない目先の成果のために自分の精神をすり減らし、多方面に喧嘩を売り良心を踏みにじり誰かを傷付けて炎上することなんかにあなたの貴重な創作力を割いてはいけません。そんなことをしたって、物書きとしての寿命を縮めるだけなのですから。
もしもあなたが「誰かを傷付けようが自作の数字が伸びるのなら一切気にならん」という強靭なメンタルの持ち主であれば話は別です。しかしそうではないのであれば、あなたが卑怯や姑息を許せない性格の良さを持ち合わせている人であるのなら、私は声を大にして言いたい。
物書きたちよ、良心に従え!
性格の良し悪しと文章の面白さには全く関係がない!
声がデカいだけの人、卑怯で姑息な手段を好む人の波に呑まれないように、私たちは自分の良心が思うがままに、正々堂々とやっていこうではありませんか!
ではそんな超絶性格の良い私が正々堂々と書いた短編作品がこちらです!!!!!!!
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