「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ババドック 暗闇の魔物 のレビューです(総合評価B-)

(画像:Amazon商品ページより引用)

なんかのB級映画の冒頭についてた予告編を見て面白そうだと思ったので借りてみました。しかし、視聴後に色々調べてて分かったのですが、思いの外有名な映画らしいです。

 レンタル版を字幕で視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編から。

【予告編】

【あらすじ】

“本当の姿を知ったものは、死を欲してやまなくなる…。 夫を悲惨な事故で失ったシングルマザーのアメリアは、一人息子のサミュエルと共に暮らしていた。サミュエルは学校でしばしば暴力的な行動を起こす問題児。言うことを聞かない息子に手を焼き、アメリアは疲れ果てていた。一方、サミュエルは、母親の読み聞かせで眠りにつくのが習慣で、その日はアメリアの知らない一冊の本を取り出し、彼女に読んで欲しいとせがむ。どこか薄気味の悪いその絵本は「ババドック」というキャラクターが登場する不思議な本だった。それ以降、子供部屋に何かがいると主張するサミュエル。アメリアは毎夜騒ぎ立てるサミュエルにうんざりし、相手にしていなかったが、徐々にその謎の存在が、彼女のもとにも忍び寄っていることに気づくのだった…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
ストーリー……C
キャラクター…A
ホラー度………B
設定……………C
総合……………B-
オススメ度……C

【良い点】
・キャラの描き込みが凄い
・ホラー描写のレベルが高い

【悪い点】
・終盤以降の失速

 ホラー映画としてのレベルはなかなかのもので、直球描写ではなく間接的、心理的な部分で勝負をかけてくる作品でした。そのホラー表現はハマれば結構来るものがあり、中盤までは文句なしの出来なのですが、終盤以降は好みが分かれそうな展開、かつどうにも締まりが悪い印象を受けました。クオリティは高いのですが面白いと思うかどうかはかなり好みが分かれそうなので、あんまり人にはオススメできない映画かな、と思いました。

【以下、ネタバレ注意!】

今作ですが、クッソ憎たらしいクソガキの育児に疲れたシングルマザーの主人公が、ババドックという怪物の絵本を子供に読み聞かせたことをきっかけに度々謎の幻覚を見てしまい、最終的にはババドックに憑依されて息子を殺めようとしてしまう、という映画です。そのホラー描写のクオリティたるや、かなり胸を張れるレベルに仕上がっていたと思います。

では、早速詳細な内容を見てゆきましょう。まずは良い点からです。

今作の良い点は、その描き込まれたキャラクターの出来とホラー描写のクオリティの高さです。この2点は、間違いなく今作を支える2本柱でした。

まずはキャラの描き込みについて。今作に登場する重要キャラクターはシングルマザーの主人公とその息子の2人なのですが、この2人のキャラ描写の出来についてはもう文句なしなクオリティ。前半は、滅茶苦茶構ってちゃん、かつ精神的な障害持ちらしいクッソ迷惑なガキと、彼の育児や職場でのストレスに疲れる主人公との絡みがメインで話が進んでゆきますが、この2人が置かれている環境の描写がとても上手い。

息子は母親の気を引こうと無茶な行動を繰り返す上にクッソ憎たらしいんですが、この憎たらしさの伝え方がまた上手いんですよ。学校で問題を起こして呼び出される、母親の気を引こうと高いところに登る等危ないことをする、友達を突き飛ばして怪我をさせる、妄言を吐く……などなど自分勝手な行動ばかり取り周りにも迷惑をかけ、終いには彼を守ろうとしてくれる母親まで周囲から孤立していく過程の描写がかなり丁寧なので、見ているこちらまで問答無用でクソガキにイラつかされ、ストレスに晒されまくりな母親に同情したくなってしまいます。

しかし、ついにババドックの脅威が母親にも降りかかり始める後半以降、この状況が変化してきます。息子が自分勝手な行動や妄言を繰り返した原因は、実は母親にあった(のでないか)ということが判明するとともに、母親は心身共に衰弱し、無意識のうちに息子に手を挙げるようになってくるのですが、反面息子はそんな母親を守ろう、救おうという行動を取ってくれるため、あれだけ憎たらしかった息子の成長や頼もしさ、母を想う気持ちが垣間見えてくるのです。母親は母親で、終盤はババドックや自分の弱さに打ち勝つ強さを見せてくれますし、ここに来て前半の描き込みが非常に活きてくるんです。このギャップの描き方が凄く上手い

またホラー描写についても、今作の出来はかなりのものです。ババドックという怪物を扱う映画でありながら直球的な表現はかなり少なく、大半は日常に潜む心理的、精神的な恐怖を掻き立ててくる構成になっており、音や息子の言動、不安を駆られるようなカメラワーク等を使った間接的な表現に優れます。特に、作中に出てくるババドックの飛び出す絵本の出来が非常に良く、不安になるような絵柄と不気味な雰囲気が良く表現されていました。

このように、キャラ描写とホラー表現にかなり優れる今作ですが、悪い点、というより不満点もあります。それは、終盤以降の展開が冗長気味、かつどうにも締りが悪いということです。

この映画、中盤までは良く出来た間接ホラー表現にのめり込んで見ることが出来るんですが、終盤を迎えるにあたって大きな転換点が訪れます。それが、母親がババドックに憑依され、息子を殺そうと家内を徘徊しだすシーン。これ以降、しばらくはホラー表現がおやすみとなって熱いホームアローン展開が繰り広げられるので、個人的にはこの時点で若干冷めてしまいました。息子が迫りくる母親を撃退してぐるぐる巻きに縛り付けるシーンとかはもう完全に浮いてたと思います。それまでかなり良いホラーしていただけに、ちょっと急すぎる転換にはついていけませんでした。

また今作、ラストのババドックとの対峙~後日談の展開が無駄に冗長気味であり、どうにも締りがパッとしないのも不満を感じた部分です。「ババドックがいる→実は全て育児ノイローゼの母親が見ていたただの幻覚では?」という部分への持って行き方は流れるように上手だったんですが、最後にもう一度「実はババドックって怪物は本当にいるんじゃ?」と思わせるためだけに挿入されたかのような後日談の展開は、個人的には邪魔に感じました。

まあ、「こういう現実なのか幻覚なのかを意識させるラストが良いんでしょうが!」という方も相当数いらっしゃるでしょうから、一概にどっちが良い悪いとは言えないと思いますが、少なくともこういう部分があること自体が、今作を諸手を挙げておススメできない理由なのです。

総評ですが、良質なホラー描写としっかりしたキャラの描き込みを筆頭にかなり良く出来ていることは間違いないんですけど、これを面白いと感じるかどうかは人によって結構差が出る映画だったのではないかな、と思います。個人的には、母親発狂までの流れは本当に面白かったと思いました。それ以降はちょっと微妙。

ババドックはいるのかいないのか、中盤から終盤へのホラー描写の転換、ラストの展開などなど、今作にはいくつもの転換点がありますが、それ毎に見る人をふるいにかけているような印象を受けます。それが最後までハマった人には、今作はかなりの良作に思えたのではないでしょうか。

ストーリー的にも、育児の大変さ、様々なストレスに晒されるシングルマザーの境遇等をホラーの力を借りて表現している、という結構変わった内容ですので、なかなか人におススメをしにくい映画ではありますが、巧みなホラー表現は一見の価値ありだと思いますので、気になった方には是非見ていただきたい一本でした。

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