「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

V/H/S ファイナル・インパクト のレビューです(総合評価D+)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 アメリカ
製作 2014
販売 KADOKAWA

みんな大好きVHSシリーズの3作目で、シリーズ最終となるであろう作品だそうです。ちなみに原題にはファイナルやらラストやらの言葉は一切出てこないので、本当にこれが最終章なのかは知りません。

さて、VHSシリーズって何ぞ? という方のために簡単に説明しますと、今作は前作までと同様、全編POV (「登場人物の持つハンドカメラなどで撮影された主観映像」という体の作品)であり、かつお互いにつながりのない4編の短い作品から成る映画』というかなり変わった趣旨の作品となっています。そのため、それに合わせて評価形式を変えてあります。また全編POVなので、画面酔いしやすい人が見ると多分死にます。ご注意ください。

レンタル版を字幕で視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

“ハイスピードで逃走中のアイスクリーム・バンを、数台のパトカーが追っている。 空にはヘリコプターも動員され、なにやらただならぬ事態の発生だ。 野次馬っ気を出しスマホ片手に、その事態をレポートしに外に飛び出した青年:ケビンは、残念ながら一足遅くパトカーを見失ってしまう。が、そうこうしているうちに、家の中でスマホの画面を見ていたケビンの彼女:アイリスが、突如鼻血を流しおかしくなってしまう。 しかし、それは彼女の身にだけ起こったわけでなく、スマホを眺めていた周辺の住民達も次々鼻からも血を流し始め・・・・。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

総合評価……D+

おすすめ度…C

【以下、ネタバレ注意!】

前作までのレビューでも書きましたが、今作はかなり変わったコンセプトの映画です。『相互に内容が無関係な短編から成る』という意味では、今作は純粋な映画ではなく、むしろテレビの特番に雰囲気が近い……かもしれません。そのため、1つの話が終わったらまた次の話、と気持ちを切り替えながら見ることができるという利点があります。
この点は前作までと同じですね。

 さて、早速レビューに入っていきたいと思いますが、その前に注意点を。今作はそれぞれ独立した4つの作品から成り立っているので、評価は1作品ごとに行います。その上で、⑤前作までと比べて ⑥総評 を付け加えるという形にしたいと思います。というわけで、早速行きましょう。


① 【Vicious Circles】(監督:マルセル・サーミエント)

あらすじ:YOU TUBER気取りの青年の目線を通して、謎のウィルスがある街に蔓延していく恐怖を描く。

総合評価:C

一応、この映画における一番メインのストーリーとなります。前作までの、「探索に行った先の屋敷で見つけたVHS(=他の短編)を見る話」という、他の短編同士を繋ぐ趣旨のストーリーとは異なり、この話自体に「他の短編同士を繋いでこの映画全体にストーリー性を持たせる」機能は一切ありません

これ単体の出来としては標準以上でも以下でもなく、極めて平々凡々。設定もよく分かりませんし、ラストシーン以外はこれと言って特筆すべき事項がありません。ラストシーンのカメラワークはそこそこ良かったのではないでしょうか。

ですがこの話に限っては、正直言って内容の出来具合なんてどうでもいいのです。問題なのは、この話が他の短編同士を繋ぐ役割を持っていないにもかかわらず間間に他の話が突然何の脈絡もなく挟まれるせいでブツブツ切れるということ。もうこの1点がとにかく問題。

前作まではこの部分に当たるストーリーは、良くも悪くもこの映画にストーリー性を持たせるためだけに存在していたようなもので、劇中の登場人物たちが「VHS(他の短編)の映像を見る」という設定があったからこそ、間間に他の短編を挟んでも違和感がなかったのです。しかし今作はそんな設定など一切なく、「そろそろ区切りいいかな」というところで何の脈絡もなく他の短編が始まるため話が無駄にブツブツ切れるんですよ。いや、内容どうこう以前に論外でしょう、この編集の仕方は。

さらに細かい批判については⑤、⑥に取っておきますが、何はともあれこの短編自体の面白さ以前にブツ切れを強要する編集がクソ、という結論に落ち着きました。話の内容自体は可もなく不可もなくです。

②【Dante The Great】(監督:グレッグ・ビショップ)

あらすじ:強大なパワーを持った無敵マジシャンが、FBI相手に壮絶なバトルを挑む。

総合評価:B-

ダンテというマジシャンが、不思議なマントを手に入れて最終的に無双するお話です。これだけ聞くと「は?」と思われるかもしれませんが、間違いなく今作においての最高傑作でした。話の流れ、時間の割き方、キャラクターの魅せ方、映像技術、カメラワーク等々どれをとっても素晴らしく、非常に良かったと思います。

しかしこの作品、唯一欠点が。それは途中の戦闘シーンにおいて、POVではなく普通のカメラ視点になってしまうことなのです。いや、それ自体は別に「そっちの方が見やすいんだからいいじゃん」と思うのですが、問題はそれをPOVという縛りを売りの一つにしているこのシリーズ内においてやってしまったこと。

このVHSシリーズの売りの一つは、間違いなく全作品全編POVであることです。その縛りを絶対に破るなとは言いません。言いませんが、破るのならそれなりの理由がないといけないと思うんです。その理由もなしに、単に「こっちの方が映えるから」「見やすいから」「単なる演出に」というような理由で、安易にその縛りを破ってほしくなかったと私は思ってしまうわけです。そしてこの作品がPOVを捨て去った理由に、「この方が映えるから」という以上のものが思いつきませんでした。

それでも例えば、一番メインとなる話のラストシーンに、突然POVを捨て去る演出を入れたり、というのならまだ分かりますし、燃える展開だと思います。しかし、それを今回のように何でもない短編の1つでやってしまうのはあまりにも縛りの扱いが軽すぎないか、とごちゃごちゃしたことを考えてしまうわけです。要するに、短編としてのクオリティはかなり高いのですが、反面VHSシリーズの1作品としてはナシだと思いました。しかし、突然の俯瞰視点を難なく受け入れられる方にとっては、高評価だと思います。

③【Parallel Monsters】(監督:ナチョ・ビガロンド)

あらすじ:今の世界と平行関係にある、別の世界に通じるドアを作り出した男の身に起こる恐怖を描く。

総合評価:C-

平行世界移動マシーンを作って、向こうの世界にお邪魔してみると、そこは見た目こそ普通だったが実は習慣も常識も住んでる種族も違った……というお話です。最初は日常に見えたけど、実は全てが非日常だった、という不気味さを推したパラレルワールドもので、掴みの感覚は抜群でした。ええ、掴みは。

感想としては、なんかちょっと唐突感が否めないな、という思いです。現実とよく似た世界だと思っていたら、実は……という設定自体はありがちながらも良いと思うんですが、最初はもっと細かい部分で違和感を覚えさせ、徐々にその違和感が大きくなって不気味さへと変わり、最後に衝撃の事実(住んでる種族が人間じゃなかった)、というように丁寧なフラグの積み立てをしていく構成にすればよかったと個人的には思うのです。

しかし今作、開幕から割と違和感マックスな作りで、住んでいる種族が人間じゃなかったと分かるくだりも結構唐突ですから、少し雑に見えると言いますか……。尺がないのは分かるんですが、いっそ向こうから現実世界に来た側の視点の話を削ってでも、丁寧な積み重ねをしてほしかったように思います。それか、お互いが自分の常識の通じない世界で苦労する様を中心にしてみるとか。なんにせよ、個人的にはあまりのめり込めない作品でした。

④【Bonestorm】

あらすじ:クールな映像を撮る為、メキシコにやって来たスケボー少年達は、髑髏軍団と戦うことになる。

総合評価:D+

もうあらすじ以上でも以下でもない作品です。スケボーしてたら突然現れた骸骨たちを、スケボー使って殴り倒しながら進んで最後には普通に逃げ帰るというだけの内容で、はっきり言って捻りもオチも何もない駄作。映像も綺麗とは言えず、はっきり言って「で?」という感想しか出てきません。まあでも、これでこそVHSシリーズ……と言える作品かも。


⑤前作までと比べて

まあ冷静に考えると、2作目より大幅劣化しつつも1作目よりはマシ、くらいの出来だと思います。全体通してまともに評価できるのが②の話くらいしかなく、その②も今シリーズの短編としては問題を抱えている、という出来具合なのでどうしても全体的に低評価に落ち着いてしまいます

そして何よりも、「お互いに無関係な数本の短編を流すだけという構成でありながら、一本の話がその短編同士を繋ぐことで全体にストーリー性を持たせている」というVHSシリーズの特長を捨ててしまったのが非常に痛い。そのくせ、メインに置いているであろう①の話の合間合間に、全く無関係な他の短編を無理矢理ぶち込んでくるせいで全体が非常にごちゃごちゃしています。こうするくらいなら、いっそ4本の短編を完全に独立させて別々に流せばよかったのに。いや、それじゃダメなんですけど、こんな無理のある構成にするくらいなら、という意味で。

⑥総評

ハッキリ言って駄作です。まともに面白いと思える話が②以外ないので単純につまらないのと、全体を繋ぐ話がないにも関わらず前作までと同じような構成にしたせいで全体がごちゃごちゃしていること、それともうVHS全く関係ないじゃんという諸々の事情が相まってこのような評価となりました。

先に述べたように、2作目と比べるとクソクソ&クソですが1作目よりはまあマシか、と思える程度の出来です。しかし、「お互いに無関係な数本の短編を流すだけという構成でありながら、一本の話がその短編同士を繋ぐことで全体にストーリー性を持たせている」というVHSシリーズの特長を捨て去り、平凡な短編垂れ流し映画になってしまったことを考慮すると、1作目以下という見方も出来ます。

なんにせよ駄作ですが、②だけは見る価値のある作品ですので、気になった方はそれだけ見ればいいと思います。

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