「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

学校の怪談 呪いの言霊 のレビューです(総合評価C-)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 日本
製作 2014
販売 ポニーキャニオン

何だったかの、借りた映画のDVDに入っていた予告編を見た時から、密かに気になっていた映画です。

「まーた既存シリーズを騙ったパクリか」と思って見たのですが、これがどうもしっかりとした学校の怪談シリーズの正統な(?)続編だそうで……というわけで、今回のレビューはあくまでもこれを単体の映画として見た時の感想となっております。

また、「これB級映画なの?」という疑問も浮かびますが、いいんです、細かいことは(ガバ判定)

レンタル版を視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

“覗いてはいけない“きつねの窓””、、、学校で一体何が起こったのか? 詩織(石橋杏奈)は奇妙な物音で目が覚めた。物音の正体は全てが昭和63年発行の4枚の10円玉が激しく振動する音だった。 詩織は母の日記に残された昭和63年、高1当時の思い出を読み返し、 7月18日にガス事故で母の同級生たちが亡くなったことを知った。今日が命日だったのだ。 母親の母校である「北山田高校」は、今は廃校となっており近日中に取り壊されることになっていた。 詩織は母の代わりに廃校となった高校を訪ねる事を決意する。 一方、高校では彩乃、未夢、友梨、芽生(以上、東京女子流)、由佳、美晴、佑治、満夫、靖彦ら1年3組の生徒たちが 過去に1年4組で起こったガス事故について噂話を始めたことから不可思議な現象が起こり始める。 体育館の中の人影、、、閉鎖された教室からの不気味な息遣い、、、 同じころ、ネットにフェイクのホラー映像を流すために廃校に忍びこんだ一樹、公雄、義人、ひとみ(東京女子流)。 4人は撮影の為に校舎の中で撮影を行っていた。 そしてひとみは公雄から聞いた異界に繋がる“きつねの窓””を作り、その中を覗こうとしていた…(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー………D
ホラーの質………B
キャラクター……C
設定………………C

総合………………C-
おすすめ度………C

【良い点】
・前半のホラー演出は良好

【悪い点】
・とにかく難解なストーリー
・設定が全然生きてこない

前半は結構良いのですが、もうとりあえずストーリーが難解かつごちゃごちゃとしているため、ホラー要素が全くと言っていいほど頭に入ってこないんです。そのくせ、展開は割と読めてしまうという問題も。100の説明で120を理解できるほど頭が回る方ならば、なかなか楽しめる……のかもしれません

【以下、ネタバレ注意!】

ダメみたいですね(達観)

期待していただけに、思ったよりも残念でがっくり来ました。ちなみに単体の映画としてはC-ですが、これを学校の怪談シリーズの続編として見た時の評価は、もはや擁護のしようがな

さて、では早速詳細な評価に入って行きましょう。まずは良い点から。

今作の良い点は、ホラー演出に優れている、ということです。

ホラー映画において最も重要と言っても過言ではない要素、ホラー演出ですが、今作はこれがしっかりとできていました。もうこれだけで、大きく評価できると言ってよいでしょう。背後からねっとりと忍び寄りながら、ドアップで視聴者の視界を遮りながら、画面端にさりげなく……などなど、王道を征きつつも迫真のカメラワークはなかなかの出来栄えでした。「どこから霊が出てくるのか、また本当に出てくるのか」という恐怖心、ドキドキ感を煽るのは上手いなと思います(ビビり)

ただしこの良い点、生きているのは前半だけです。中盤以降は見事に没落しました。その点も含めて、以下は悪い点に引き継ぎます。

今作の悪い点は、とにかくストーリーが難解であることと、設定が全く生きてこないこと、この2点です。

この映画はもうとにかくストーリーが難解で、一体どことどこが繋がっていて、どういう理由で今このような現象が起きており、そもそも相手にしている霊の正体はなんなのか……などなど、諸々の要素が概ね難解で理解するのに非常に骨が折れます。これこそが、今作における一番の問題児であり、今作を駄作たらしめている最大の要因なのです。

今作において主軸となる視点は3つ。この三者は全員別々の時間軸にいるため、ここに時間という概念が咥わります。しかも、この三者は同じ場所に居ても時を違えているはずなのですが、不思議な力によってクロスオーバーが発生、出会う筈のない人達が、出会ってしまうこととなるのです。これだけ聞くと「なんだよくありそうじゃん」と思われるでしょうが、問題なのはこのクロスオーバーの仕方にあります。

この辺はもうとにかく説明が面倒くさいので本編を見てくださいと言いたくなるのですが、例えばA(DQNグループ)という組からはB(高校生グループ)は見えて話も出来るし、Cさんのことも見えるけれどもCさんの声は聞こえなかったり、でもなぜか同じ場にいるBにはCさんの声が聞こえたり、反面CさんにはAのことが認識できなかったり……と、とにかくクロスオーバーのさせ方が無駄に複雑なのです。

もちろん、この認識出来る出来ないの差が本編中で何かの伏線として機能していれば全く問題ないのですが当然そんなことはなく、さらにこのクロスオーバーが発動した原因についても一切の言及がなく、そもそもこのクロスオーバーが何かストーリー的に意味があったのかというと全く意味がないという脅威の三段構え。説明台詞を言わせるだけならもっと方法があると思う(小並感)

とこのように、今作は無駄なクロスオーバー要素を取り入れたせいで無駄に話が複雑さを増しているという看過できない問題があります。そしてこれこそが、前半はよかったホラー演出を中盤以降に殺していることと繋がっているのです。

前半のこの映画は、かなり感覚的に怖いと思わせる演出が多用されていました。要するに、話の内容や理解力を要する怖さではなく、映像的、演出的なものから来る怖さですね。しかしこれ、人間の本能的なものを突いてくる怖さなので、はっきり言って頭を使わせる難解なストーリーとの相性は最悪

確かに後半も映像的な怖さは頑張っていましたが、どうあっても演出よりも「この話どうなってんの?」「今これ何が起きてるの?」という疑問が先に来てしまい、その答えを探そうとしてしまうため、集中力が怖さとは別の部分に向けられてしまうのです。そのくせ、ストーリーは説明すべき部分を放棄して無駄なことばかりに時間を割いているので、後半はホラー要素ゼロと言っても過言ではない出来でした。説明台詞垂れ流しにされて、視聴者が「そういうことか! 面白いな!」と思うと思ってんの? そんなんじゃ甘いよ。

これに咥えてもう一つ問題なのが、説明不足と死に設定の多さです。今作、やたらと狐の窓という単語を押してきますが、この狐の窓、ほとんどと言っていいほど機能していません。そして、今作におけるもう一つの重要要素こっくりさんですが、こちらは今回の事件の根幹にも関わる重要部分であるのに、その根幹に関わる部分の説明がまるでされません。階段の大鏡しかり、今作における設定の多くはこんなのばっかりです。

これらのガバいバランス調整のせいで、今作を視聴後には「部分的に分かるところは分かるんだけど、話の全体像が全く見えてこない」という事態にほぼ間違いなく陥ります。というかこれ、話を全部完璧に理解できている人は存在するんですかね……?

総評ですが、無駄に複雑な上に重要部分は投げっぱなしの駄作、という評価に落ち着かせたいと思います。確かに全然見られる出来ですし、褒められる部分もあるのですが、ストーリーがこれじゃあ正直言って擁護不可。一番問題なのは、そもそもなぜこのような事態が起きているのかの根幹に関わる説明がないことですね。学校の怪談1でいう埴輪、2でいう4:44分で止まった時計、3でいう鏡に該当する部分が、今作にはないのです。

「ホラー映画なんだから、1から100まで説明するのは面白くない」「あえて原因の説明をしない方がホラーとして良い」という意見もありそうですが、それならそもそもこれほど話を複雑にし、嫌でも中身を考えさせる構成にしたのは明らかに失敗でしょう。

あまり深く考えずに見る分には楽しめますが、どう考えてもストーリーのコレジャナイ感は拭えませんでした。クロスオーバー発動させるとしても、少なくともDQNグループは必要なかったと思います。普通に高校生グループに視点を当てて、事態の異常さにだんだん気が付いてゆく設定の方が何倍も面白かったと思う。

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