「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ひ・き・こ 降臨 のレビューです(総合評価B-)

(画像:Amazon商品ページより引用)

製作 2014
国籍 日本
販売 アムモ98

毎度おなじみひきこさんシリーズです。まあ、それぞれ(元ネタ以外)何の関連もない映画ですが。

とりあえず、ひきこさんって何ぞ? という人のために、Wikipedia先生から概要をば。

【ひきこさん について】

雨の日、白いぼろぼろの着物を着て、人形のようなものを引きずっている女と出会う。よく見ると、女の目はつり上がり、口は耳元まで裂けている。そして女が引きずっていたものは人形ではなく、小学生ほどの子供そのものだった。女は自分の姿を見た子供を捕らえて肉塊になるまで引きずり回し、決まった場所に連れて行き放置する。彼女は自分が受けた酷いいじめに対する恨みから、子供を捕まえては肉塊と化すまで引きずり回しているのだ、というもの。
Wikipediaより引用)

今作は、この都市伝説を題材にしたオリジナル映画です。これを踏まえて、以下のレビューをどうぞ。

レンタル版を視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

都市伝説の中でも陰惨さで群を抜く“ひきこさん”をモチーフにしたホラー。ゆかりは小学生時代の同級生と同窓会を企画し、紀里子とニコのふたりと会う。ある日、ニコは小学校時代にゆかりが嫌がらせを受けていた空地にふたりを連れ出すが…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー………B
キャラクター……C
設定………………C

総合………………B-
おすすめ度………C

【良い点】
・不気味な雰囲気やストーリーが良く出来ている

【悪い点】
・所々甘い
・元ネタのひきこさんとまるで無関係な内容

ステータスをストーリー展開の面白さに全振りしているかのような映画でした。つまるところ、裏を返せばストーリー展開に魅力を感じなかったのなら評価できるポイントはまるでないと言ってもよいかもしれません。そのストーリー自体もアクが強いので、そう言う意味で好き嫌いが出やすい映画かなと思いました。

【以下、ネタバレ注意!】

好き嫌いが別れそうとか評価が割れそうとか最近多用してる気もしますが、事実そう感じるんだから仕方ないよなぁ?(開き直り)

というわけで、すっかりジャパニーズB級ホラー界でもお馴染みとなったひきこさん。そのひきこさんシリーズの最新作(?)です。こっくりさんと戦わされたり口裂け女とバトらされたりと雑な扱いを受けることも多い彼女ですが、今回は単身主役での登場。しかし、今作での彼女はある意味、ひきこさんシリーズ屈指の雑な扱いを受けることとなったのでした……。

というわけで、早速詳細な評価に入って行きます……と言いたいところですが、まずは些細な注意事項がありますのでお知らせしておきます。まずですね、今作はなんと心霊映画ではありません。つまり今作には妖怪やお化けをはじめとした心霊的存在はおろか、超常現象をはじめとした一切の怪奇現象が発生しないのです(まあ、それっぽく取れる描写もなくはないですが)。要するに何が言いたいのかというと、今作に霊的存在のひきこさんは登場しません

いきなりタイトルを全否定する形となりましたが、大丈夫です。ひきこさんはちゃんと登場します。まあ、「ひきこ」という名前のタダノ人間ですが。今作におけるひきこさんは、この「森 姫妃子」という名前の普通の人間、彼女だけなのです。瞬間移動もしなければ人間を引きずり回す怪力も持たず、ぼろぼろの服も着ていなければ顔も醜さとは程遠い、ごくごく普通の人間の女、それが今作におけるひきこさんなのです。

という受け入れがたい事実を受け入れていただいた上で、以下の評価をどうぞ。まずは良い点から。

この映画の良い点は、何と言っても思い切ったストーリー展開にあります。

前述の通り、今作は元ネタ的な意味での霊的存在ひきこさんは登場しません。登場するのはあくまでも一般女性のみであり、彼女たちが織り成すやり取りが中心となって映画が進んでゆきます。しかし、この大胆かつ思い切った設定こそが、(良い意味でも悪い意味でも)今作を他のひきこさん映画とは明らかに別格の存在として引き立たせているのです。

今作のあらすじを簡単に補完しておくと、「小学生時代のいじめの復讐に燃える一般成人女性ひきこさんは、同窓会を機に出会ったかつての友人たちと復讐チャンネルというコミュニティを作り上げ、復讐動画を投稿していたのだが、徐々に過激さを増すその復讐は、遂に危険な領域へと突入する……」というのが大まかな流れとなります。

最終的に、復讐チャンネルの視聴者は日本中に広がり、信者は日常のあらゆる場所にまで拡散し、創始者のひきこは絶対的な存在として崇め奉られるようになり……と、誰がどう見てもひきこさんを元ネタにしているとは思えないストーリー展開。

こんな本来のひきこさんとは程遠い内容ながら、いやだからこそ、期待を裏切って予想外の方向に進んでゆくストーリーには正直言って魅せられました「え、この後どうなるの?」という感覚に囚われ、ついつい先が気になってしまうんです。ほんの悪ふざけ、いたずら程度の復讐を重ねる様をねっとり描いた前半から始まり、もう歯止めが効かなくなっていく不気味さを淡々と描写する中盤を経て、急転直下の展開を見せる後半と、どの部分もそれぞれ展開に特徴があって良かったと思いました。

と、ストーリーに関してはかなりベタ褒めですが、評価を見てもらえば分かる通りベタ褒めのまま終われないのが今作の辛いところ。この映画における悪い点は、甘めに見積もっても元ネタとまるで関係がないというところに咥え、何と言っても所々に滲み出る雑さです。

まず、元ネタとの無関係さについて。これはもう語る必要もないかもしれませんが、散々言っているように今作におけるひきこさんはただの一般成人女性であり、元ネタの都市伝説的なひきこさん要素ははっきり言って皆無です。

「もう引きずりさえすればひきこさんでいいんじゃないかな」というほどガバガバなひきこさん認定をしようにも、誰がどう見ても今作の彼女は「あっ、やべっ。これひきこさんだったわ」という製作現場の声が聞こえてきそうなほど取って付けたようなひきずり要素しか発揮してくれません。むしろ、全く無関係な場面で唐突な引きずり要素をぶち込まれる分緊張した雰囲気が壊れているとすら言えます。突然の引きずりは草が生えるのでNG

そしてもう一つの問題点、所々に垣間見える雑さについて。確かに今作、ストーリーはなかなか良く出来ており、先が気になって面白いです。面白いのですが、全体通してかなり無理がある。これがもう、描き込みが足りないというか思考停止設定で押し通したというか、いずれにせよかなり雑なんです。

まず、開幕の同窓会シーンで「皆に声かけて、来るって聞いてたのに結局3人しか集まらなかったよ☆」という部分からかなり無理がある。その後も、「顔丸出しで明らかな犯罪動画を挙げているのに全然捕まらない」と明らかに無理のある設定を押し通すなどなかなかのガバッぷり。

しかし、まあこの部分は「運が良かった(悪かった)」で何とか押し切れそうな部分でもあります。いずれにせよかなり苦しいですが。まあ後の展開を考えるに、もともとひきこ自体が警察内部にヤバいレベルのコネを持っていた可能性もありますし。しかしここを見逃したとしても、「展開の進め方が雑すぎる部分」というのはどうしても見逃せません

先にも述べましたが、今作確かに前半、中盤、後半など部分部分で見た時の出来は結構いいと思うんですよ。ただですね、時間を追うごとに展開がものすごい勢いで加速してゆくため、どうしても唐突感が拭えていないんです。言い換えれば、時間配分の仕方が悪いと言ってもよいかもしれません。

一番気になったのが、ひきこの影響力が身内間のものを超えて外部へと拡大してゆく過程が全然描かれていないこと。主人公含め3人で復讐動画をあげるだけだった状態から、何の過程が描かれることもなくひきこがリアルお供を侍らせるまでに勢力拡大していたのには驚くを通り越して笑いが出ました。この話自体が、ひきこが頂点に君臨するまでの過程を描いたサクセスストーリーであるにもかかわらず、一番大事な過程の部分をすっ飛ばして話が進むというのはどうも抵抗があります。

総評ですが、確かに面白いのだけれども、隠しきれない雑さも目立ってしまう映画、という評価に落ち着きました。「ひきこさんを題材にしているのに申し訳程度の引きずり要素しかない」という部分も含め、諸々雑だったことは否めません。また、ストーリーは確かに面白いのだけれども、元ネタとの乖離が激しすぎるうえに人を選びそうな展開が続くため、あまり人にお勧めできないという脆さも抱えていると思います。これひきこさんじゃなくていいじゃん(いいじゃん)

ただ、個人的にはなかなか好きだったので、気になった方は是非どうぞ、と言いたいですね。

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