国籍 日本
製作 2014
販売 TCエンタテインメント
(いろんな意味で)前々からずっと気になっていたのですが、ついに見てしまいましたよ。レビューに入る前に補足しておくと、今作は有名なフリーゲームの実写版映画です。一応ゲームはプレイしましたが、別にファンというほどではないです。
それと今回のレビューは、あくまでも原作ゲームなどと比べて云々、という内容ではなく、これ単体で一つの映画として見た時の視点からのレビューになります。原作と比べてどうこう、というファンの方から見たレビューはネット上にたくさんありますので。ただし、原作ゲームとの比較が避けられない部分についても多少触れますので、そのあたりは勘弁してください。
それと今作ですが、どうも青鬼のノベライズ版に準拠したストーリーらしいですね。そもそもノベライズ版を読んだことがないので「何やこの原作崩壊」と思いましたが、まあそれは置いておいて。
レンタル版を視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。
【予告編】
【あらすじ】
” 新しいクラスになじむことができず、毎日を憂鬱に過ごしていた転校生のシュン。そんなシュンを杏奈は気にかけていた。2人は化け物が現われると噂される<ジェイルハウス>の前で同級生らと出会い、運命に引きずられるがまま、不気味な洋館へと足を踏み入れてしまう。無人であるはずの屋敷内に響き渡る怪しげな物音。窓の向こう側からこちらを覗き込む血走った目玉。恐怖に駆られた高校生6人は、建物から逃げ出そうと玄関に向かうが、なぜか扉はびくとも動かない。「ねえ、もしかして私たち、閉じ込められちゃったんじゃないの?」-脱出ルートを見つけようと躍起になる彼らに、この世のものとは思えぬ巨大な青い影が忍び寄る。(C)2014 noprops/黒田研二/『青鬼』製作委員会(あらすじ:Amazon商品ページより引用)“
ストーリー………D
青鬼の質…………B
キャラクター……C
設定………………D
総合………………D+
おすすめ度………D
【良い点】
・青鬼のCGのクオリティが高い
【悪い点】
・青鬼の使い方が下手
・ストーリーと青鬼のミスマッチ感がすごい
演技や脚本があれなせいで緊張感が全然ないことを除けば、一映画としてみると、ストーリー自体はそれほど悪くはないです。しかし、いかんせんモンスターとしての青鬼との相性が非常によろしくない。後、ゲームファンは見ると発狂するかもしれないので見ない方がいいと思います。
【以下、ネタバレ注意!】
さて、では早速詳細な内容を見てゆきますよ。まずは良い点から。
今作の良い点は、青鬼のCGのクオリティがかなり高いということです。
今作のタイトルにもなっている異形のモンスター、青鬼ですが、肝心のCGクオリティはかなりのもの。パッケージを見ても分かるとおり、肌の質感や、等身のアンバランスで不気味な感じもよく出来ています。これがぬるぬるとよく動いてくれるわけですから、これこそがこの映画における一番の見どころであり、またもっとも褒められる点だと思いました。そう、CGのクオリティは全く文句がないんですよ、クオリティは。
他にはあまり褒められた点はないので、すぐ悪い点に行きます。今作の悪い点は、青鬼の使い方がとにかく下手であるということと、ストーリーと青鬼とのミスマッチ感が強いということの二点です。
まずは青鬼の使い方について。この部分はどうしたって原作ゲームとの比較になってしまうのですが、そもそも原作ゲームである「青鬼」があれだけヒットしたのは、青鬼というモンスターの扱い方が凄く上手だったからだと思うんです。一見すると完全にギャグな見た目であるのに、「突然何の脈絡もなく出現」し、訳も分からず追い掛けられる事によって、得体の知れない不気味な存在に追われる恐怖がよく演出されているな、と。
個人的な意見ですが、この「突然何の脈絡もなく出現する」というのは、青鬼という作品にとって生命線だと思うんですよ。だって、パッケージのモンスターよく見てみてください。普通にホラー映画見ていてですよ、ホラーゲームやっててですよ、ゆっくりゆっくり開いた扉から、こんなブルーベリーが出てきたらどう思いますか? 完全にギャグでしょ? どんなのが来るんだろう、絶対なんか来るよ来る来る、と思ってこれが出てきたら完全に拍子抜けしますよ。
反面、何の脈絡もなく現れるビックリ系の作品におけるモンスターに必須なのは、何よりそのインパクトです。一目見た瞬間に「あ、こいつはやべぇ」と本能的に察させるような見た目です。だって見ている側は何の脈絡もなく出てこられるわけですから、モンスターの細かい造形にこだわっている暇がない。「とにかく、まずは逃げなきゃ」と思わせればそれで充分なのです。
そういう視点で今作を見てみた場合、この映画における青鬼の使い方はまるで駄目。もう登場にインパクトがなさすぎるうえ、登場シーンもフラグを立てすぎて出てくるのが丸分かり。なるべく全体像を映さないようにして、じわじわとその存在を仄めかす描写をしてくれるのはよいのですが、そのような演出と青鬼という怪物の相性は正直言って最悪です。先ほども言ったように、ゆっくりゆっくりフラグを積み重ねてきて出てきたのがこれでは完全にギャグですよ。
そしてストーリーについてですが、これにもまた問題があります。「舞台となる館の仕掛けや構成が、自分の考えた脱出ゲームの内容と同じである」という設定はなかなか面白いと思うのですが、「主人公は実は死んでいて、誰にも見えていなかった」という設定は完全に余計。
この設定自体は別に良いと思うんですよ、視聴者のミスリードを誘う手段としてはありがちながらも面白いですし。問題はこれが、青鬼という怪物とのミスマッチ感が半端ではないということ。
先に述べたように、青鬼はインパクトあってこそ輝く怪物であり、その存在感を常にちらつかせることが非常に重要だと思うのですが、このような余計な設定のストーリーがその存在感を邪魔しだしてからは酷いものです。「正体不明の怪物に襲われて第一に脱出を考えなければならない」という設定を作ったにもかかわらず、わざわざ余計な話をぶち込んで失速させ、その前提を自ら壊しているのですから。
総評ですが、一つ一つの要素だけを見れば悪くはないのですが、全体として見るとまとまりがなくごちゃごちゃした駄作、という評価に落ち着きました。青鬼という怪物の魅力を完全に殺した演出に、それにまるで似合わないストーリーが加わっているのですから。いくら良い材料を使っても料理が美味しくなる保証はないですからね、しょうがないですね。
結局一番の問題は、そもそもこの話だと主人公たちを襲う怪物が青鬼である必要が全くないことですかね。主人公がすでに死んでるという話や、ゆっくりフラグを積み重ねて怪物を登場させる演出などを考慮すると、幽霊でも出しておいた方がよほど似合うと思います。