「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

パラサイト・クリーチャーズ のレビューです(総合評価B―)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 オーストリア
製作 2013
販売 TCエンタテインメント

魅力的なパッケージに一本釣りされました。

レンタル版を吹き替えで視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

“科学者と共にアルプス山脈で気象調査を行っている観測基地の管理人ヤネク。 ある日、観測機器故障のため山深くに向かった彼らは、氷河の一角が紅く染まっているのを発見する。 しかし変異した氷河の調査を開始した矢先、狂犬病に感染したらしきキツネに愛犬が襲われてしまう。 治療のため基地に戻ったヤネク達だが、突如彼らに未知の生命体が襲いかかる。 何とか生命体を撃退するも、ほどなくして紅く染まった氷河を分析した科学者の口から驚愕の事実が告げられる。 彼らを襲う生命体の正体とは! ?果たしてヤネク達は生き延びることができるのか! ?(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー…………C
クリーチャーの質…B
キャラクター………B
設定…………………B

総合…………………B-
おすすめ度…………B

【良い点】
・クリーチャーの出来がかなり良い
・話がよく動くので飽きない

【悪い点】
・設定が結構丸投げ
・設定の面白さを活かし切れていない

B級モンスター映画的にはなかなかの良作であることは間違いないです。モンスターのクオリティが結構高く、楽しんで見ることが出来ました。もっと「生物同士の交配」という設定を上手く活かせていればかなり面白くなっただろうな、と思うだけに非常に惜しい映画です。

【以下、ネタバレ注意!】

パッケージのインパクトと面白そうな題名に見事に一本釣りされましたが、釣られて損はなかったです。久しぶりに良作に巡り合えたので良かった(小並感)

さて今作ですが、あらすじを捕捉すると「氷河で発見された新種の寄生型微生物(氷河を赤く染めている物体)によって一帯に棲む生物から次々と新種の交配生物が誕生しており、高山研究チームがそれらに襲われる」というような内容の映画です。舞台が標高3,500mの高山という人気のない場所というのがポイントで、お察しの通り「救助を待ちながらひたすらモンスターたちの襲撃から耐え抜く」タイプの立てこもり系モンスター映画でした。

では早速、詳細な内容を見てゆきましょう。まずは良い点から。

今作の良い点は、クリーチャーの出来が良いということと、話がよく動いてくれるので飽きずに見られる、ということです。

まずはクリーチャーの出来について。生物の体内に入った微生物が、他の生物のDNAを吸収して宿主の身体を新種の交配種に作り替える、というなかなか珍しい設定を用いた今作は、そのコンセプトからも分かる通り何と言ってもクリーチャーの造形を楽しむこと、そして彼らとのバトルが一番の見どころです。

クワガタと狐の交配種や、ヤギと羽虫(?)の交配種、巨大化したダンゴ虫など、既存生物の面影を残しながらも不気味なクリーチャー達が登場しますが、素晴らしいのはやはりそのクオリティ。ヤギやダンゴ虫など大きな身体を持ったクリーチャーは、CGだけに頼ることなくしっかりと実物の模型を用意してそれを動かしており、なかなかこだわりが見えました。

一方、昆虫型や飛行型のクリーチャーにはガッツリCGを用いていますが、その出来栄えもかなり良く、総じてクリーチャーの出来に関してはすごく良かったと思います。

続いて展開について。今作は「氷河で赤い寄生微生物を発見→交配種襲撃」までの展開がなかなか早く、それ以降も定期的な襲撃と場面の切り替わりを行ってくれるため、基本的に終始飽きずに見ていられました。

登場人物を「最初から雪山にいる研究チーム」「雪山の視察に来た大臣チーム」の二つに分けてくれているため、「モンスターに取り囲まれた状況」「モンスターの巣窟に外から入ってくる状況」の二つを楽しめる構成になっていたのが良かったですね。これが、場面の切り替わりという実感を与えてくれ、飽きにくさに一役買っていた部分はあると思います。

良い点は以上でいた。では続いて悪い点、というより不満点を。今作の悪い点は、設定が投げ気味であるということと、特にモンスターに関する設定を上手く使いきれていないと感じることです。

先述の通り、今作においては「交配種を生み出す赤い寄生型微生物」がキーとなるわけですが、この正体や発生原因に関しては一切の説明がなく、それはもう見事な丸投げ

一応前半に「地球温暖化や気候変動の影響で生態系がうんぬんかんぬん」という発生原因をほのめかす一文は入るのですが、その割には作中で「もしかしたら古代から神や魔物として伝承されてきた存在の裏には、この微生物が関与しとるかもしれんで!」という可能性も示唆されており、結局この微生物がいつから存在していたのかはまるで分かりません

そうでなくても、これほど成長が早く狂暴な交配種を生み出してきた上、氷河を赤く染め上げるほど目立つこの微生物が今まで発見に至っていないのもおかしな話ですから、やはりこの「発生原因」という部分はどうしても気になってしまいます。いっそ隕石にくっ付いてた的な設定でもいいので、何かしら欲しかったかな、と思いました。

しかし、今作における一番の問題はそこではありません。今作の問題点は、交配種を生み出すという面白そうな設定を今一つ活かせていないことなのです。今作、確かにコンセプトは良く、クリーチャーの出来もかなりのものですが、そもそもそのクリーチャー自体が地味という問題を抱えています。

例えば、巨大ダンゴ虫などはまんまダンゴ虫ですし、狐とクワガタの交配種も思った以上に地味。そして何より、今作は人間以上の大きさを誇るクリーチャーがヤギくらいしかおらず、圧倒的な派手さ不足でもあるのです。

「微生物に出来るのは交配であって全くの新種の生成じゃないんだから、こんなもんじゃね?」とも思うのでですが、そうすると次は折角作った交配という設定が全然活かし切れていないことが目についてきてしまうという事態に。

例えば、ヤギ+羽虫の繰り出す攻撃というのは単調な突進のみですし、巨大ダンゴ虫やクワガタ狐も普通に襲いかかってくるだけで、姿形を除き、今作のクリーチャーは「狂暴である」こと以外は既存種と何ら変わりありません。要するに、「交配」という強みを生かした、交配種だけが持つ特徴を使った襲撃というのが今作には全然ないんです。折角交配という設定を付けた以上、この部分をもっと前面に押し出した襲撃シーンを用意してほしかったと思います。

総評ですが、設定部分、またそれを今一つ使いこなせていない感がある部分が気になってはしまいますが、そういう細かい部分を除けば普通に楽しめる良作である、というのが私の評価です。パッケージも印象的ですし、内容的にもストレスなく見られるため、なかなかおススメの1本でした。休日の昼下がりに是非どうぞ。

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