「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ATM のレビューです(総合評価D)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 アメリカ
製作 2012
販売 Happinet

あの『リミット』と同じ脚本家の方の映画らしいですよ。

脚本家が同じということで、今回ももちろんソリッド・シチュエーション・スリラータイプの映画です。

レンタル版を字幕で視聴しました。吹き替えはなかったと思います。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

投資会社に勤務するデイヴィッドは同僚のエミリーに密かに想いを寄せていた。エミリーは金融業界に見切りをつけ、NPOへの転職が決まっていた。エミリーの最後の出勤は、クリスマスパーティーの日だった。デイヴィッドは思い切って声をかけ、家まで送ることになる。しかし、同じく同僚のコーリーにも乞われ、やむなく彼も送っていくことに。コーリーは途中で現金を引き出すためにATMに寄るようデイヴィッドに頼む。ただ現金を引き出すためのその行為は、三人を思わぬ展開に巻き込んでいく。ATMコーナーに見知らぬ男が現れた時、日常の些末なルーティーンが生死をかけた闘いに。真冬のマイナス21℃の極寒の中、日が昇るには時間がかかる。残された選択は男がしかけたゲームにのることだけだった―。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー………D
キャラクター……D
設定………………D

総合………………D
おすすめ度………D

【良い点】
・ないです

【悪い点】
・退屈なストーリー
・アホな行動を繰り返すキャラクター
・ガバッガバな設定

人によって評価が分かれるという事は言うまでもありませんが、少なくとも私にとっては面白さが全く分かりませんでした。リミットはすごく良かっただけに残念に思います。

【以下、ネタバレ注意!】

犯人の綿密ガバガバな計画。

この犯人は、ちょっと酷すぎると思います。

あらすじにもある通り、今作の舞台は大半が狭いATM内となります。具体的には、深夜のATMから出ようとしたら、外に怪しい男が一人立っていたので、お外に出られないよ、というようなお話。その男は目的も全く不明で、直接主人公たちを襲うようなことはせず、武器も持たずにただATMの外に突っ立っているだけ。ただし、ATMに近づこうとする警備員や、通りがかりの散歩のおっさんなんかはスタイリッシュに殴り殺します。そんな不審な男が外で待ち構える中、主人公たち三人は何とか外界にこの危機を伝えようといろいろ足掻くけれど……さてさて。

では早速、この映画の良い点悪い点を見てゆきたいと思うのですが……まず、この映画を全く楽しめなかった私には、今作の良い点が何一つ浮かばなかったので、以下は酷評の嵐となる模様です。ファンの方ごめんなさい。

今作の悪い点は、ストーリーが無駄に引き延ばされている感があること、キャラクターに魅力がないこと、設定がガバりまくっているということの三点です。

まずはストーリーについて。今作は大きく分けて、①ATMに行くまで、②ATM内、③エピローグ というような形にすることが出来るかと思うのですが、この中で冗長に感じないのは③だけでした。しかし、その③も逆にあっさりしすぎて事件の全体像を掴みにくいという問題も。とにかく、順番に行きます。

まず①ATMに行くまでですが、ここはほんの少しだけ冗長気味。しかし、主人公たちは人に恨まれやすい職種(証券マン)である事を示唆し、ミスリードを誘うためのパートでもあるので、まあそこまでは気になりません。

問題は②ATM内です。ここの部分は、まあ無駄に引き延ばされている感が否めませんでした。確かに主人公たちはこの状況を打開しようと手を尽くし、いろいろとはしてくれるのですけれど、如何せん登場人物たちの頭が悪すぎていけません。というよりも、とにかくここから脱出することではなく、ATM内に留まりつつ助けを待つという消極的な方向に全員の思考が特化してしまっているため、逃れられる機会をどんどんと失ってしまっているのです。

この、「どう見ても逃げられるのに逃げてくれない」という部分は、この手の密室映画としては致命的に思います。

リミットのレビューでも書きましたが、個人的にこの手の映画で一番大切なことは、いかに主人公たちと恐怖や緊張感を共有できるかだと思うのです。そのために大切なことは、少なくとも彼らが、視聴者の思いつく限りの解決法を試してくれること。それらが全て断たれた時、見ている側は絶望と緊迫の中に陥れられ、主人公たちに限りなく近い立場に立って状況を共有することが出来ると思うのです。

その点に関して言えば、この映画の主人公たち三人は完全なる無能の集まりでした。外に出て充分逃げられる隙はあるのに、意地でも外に出ない。相手は武器すら持っていない男一人だけなのに、三人もいる彼らが取る行動は「助けを待つ」のほぼ一択。私も、殺人鬼相手に立ち向かえとは言いませんが、逃げるくらいならいくらでも出来そうなものです。それをしてくれないというのだから、見ていてストレスが。


もちろん「異様な寒さで正常な判断が出来なかった」という点は作中でも言及されていましたが、寒ければ無能が許されると思ったら大間違いです。少なくとも、視聴者は寒くもなければ正常な判断力を失ってもいない訳ですから、自分たちが感情移入しようとする相手に、寒さを理由に無能行動をとられてはたまったもんじゃありません。

また今作もう一人のキャラクターである、目的不明の殺人鬼について。正直、これが今作一番の問題点なわけですが、この部分は設定と絡んでくるところなので後述します。

最後に、この映画の設定について。しかしその前に、まずはこの映画のオチについて語っておく必要があるでしょう。

今作は作中において、実に六人の犠牲者が出ます。最初の犠牲者は通行人で、これは犯人に殴り殺されます。二人目は警備員。彼はATMの異変に気が付いて通報しようとしますが、後ろから犯人に殴り殺されます。三人目は途中、ATM内に入って来た人物。彼は、犯人が入って来たと勘違いされた主人公たちの手により、誤って殺害されます。そして残りの二人は主役三人の中から出ており、一人は犯人に刺された後に死亡、ヒロインはATM内で頭を強打して死亡(事故)し、主人公だけが生き残ります。

ここで最後、一人生き残った主人公は犯人に即席火炎瓶で立ち向かうものの、彼が犯人だと思って燃やしたのは犯人が用意した警備員の死体で、そこにちょうど警察が通りがかり、主人公はこの一連の事件の犯人だと勘違いされて逮捕、という流れ。すり替えておいたのさ!

「いやいや、そんな誤解すぐ解けるやろ」と思われるでしょうが、ここが今回の犯人の綿密なところであり、動機でもあるのです。彼の動機は「完璧な犯罪の計画を立て、それを実行すること」に他ならなかったのですから。

彼はATM内の防犯カメラが映す範囲を調べ、その中には決して自分が映りこまないようにし、あたかもこの事件は全て主人公たちの仕業であるかのように見せかけました。監視カメラに映らないようにすることで自分は直接手を下すことなく、主人公たちが自主的に強盗をし、途中室内に入って来た人物を殺し、仲間割れしたかのように見せかけたのです。

この犯人が、主人公たちに恨みを持っていたのか、はたまたただ計画を実行することにしか興味のない第三者だったのか(恐らくは後者ですが)については置いておくとして、とにかく彼がこの事件の罪を全て主人公になすりつけることに成功したのは事実です。

こう書けば、この映画は「綿密な計画を立てた異常者の犯罪に巻き込まれ、罪を着せられてしまった主人公の悲劇」というように解釈できそうですが、実はこの犯人が立てた計画というのが、穴があり過ぎてどうして成功したのか理解できないレベルの代物なのです! これがこの映画において、一番の致命傷でした。

この映画のエンディングにおいて、犯人は実に綿密な計画を立てている知能犯であることが示唆されていますが、その割には運に頼る部分が大きすぎるんですよ。もうぶっちゃけ、ほとんどの要素が完全に運。犯人が、もともと計画にはなかった事態にも柔軟に対応するほどのアドリブ力を見せた可能性もありますが、それにしては話が出来過ぎ。

たまたま車を遠くに停めてくれて、たまたま全員携帯電話を持ってなくて、たまたま銃も持っていない犯人に立ち向かってこず、たまたま犯人が裏にいる隙に逃げ出そうともせず、たまたま入って来た別人を殴り殺してくれて、たまたま外に出ても道路方面に逃げ出さずにATM内に戻って来てくれる人物を対象としない限り成功しませんが、流石は完全犯罪を成し遂げるだけのことはある、実に完璧な計画でした。イヤーウンガイイナー(棒読み)

総評ですが、これはひどい。テンポも悪ければキャラクターも無能ばかり、犯人は知能犯を装ったラッキー無能で、見どころも皆無と来ています。とくに、犯人が綿密で完璧な計画を立てている風を演出している割には、その計画は運要素の塊で成功する見込みがほとんどないガバガバさというのが一番見る気を失せさせる。

面白かったという方はもちろんいらっしゃると思いますが、少なくとも私にとっては一つも楽しめませんでした。私からは、おススメはしないです。

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