「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

RPG のレビューです(総合評価D+)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 カナダ
製作 2009
販売 アット エンタテインメント

もっとマシな題名はなかったのか(直球)

とりあえず、題名からだけでは内容が全く分からないと思うので簡単に説明すると、ロールプレイングに熱中する大人たちのコミュニティの中に、そんなものには全く興味のない主人公が紛れ込んでしまい、コミュニティが崩壊につながる、というお話です。

ここで言うロールプレイングとは、実際に土地を借りてそこにみんなで集まり、あなたは王様役、あなたは蛮族役……というように役柄を決め、その役に沿った行動を取るという遊びの一種です。子供の頃よくやった「ヒーローごっこ」「勇者ごっこ」の規模をめちゃめちゃでかくして、主役級から脇役級まで様々な人を集め、衣装を着せ、ゴムの剣を持たせ、ルールを定め、遊ぶ。こういったものを題材とした映画です。

まあ要するにですね、RPGゲームとかファンタジー映画とかあるじゃないですか、あれと同じことを、実際に人集めてやろうぜ、という遊びです。楽しそうですね。

もうこの時点で「うっわいい年こいた大人が何を」と思われた方は、この映画を見ても全く楽しめない可能性大です。わざわざ時間をドブに捨てることはないかと。

さて、今作ですが、レンタル版を吹き替えで視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】


【あらすじ】

キャラクターを通じて冒険するゲーム「RPG」の世界を現実として描いたスリラー。恋人・エリックとの生活に嫌気が差し、彼の兄が参加するRPGの世界を再現したコミュニティへと向かったエヴリン。彼女を連れ戻すためにエリックもその世界へと向かうが…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー………
キャラクター……
設定………………

総合………………D+
おすすめ度………

【良い点】
・雰囲気の演出は良好

【悪い点】
・終盤に入るまでのテンポの悪さ
・終盤の展開

人を選ぶ映画とはまさにこのこと。私自身、TRPGなんかは好きなので世界観自体は非常に興味深かったのですが、映画としてはあまり楽しめませんでした。

【以下、ネタバレ注意!】

いい大人が何してんすかね(特大ブーメラン)

正直めっちゃ楽しそうだと思った(若者並感)

詳細なレビューを書く前に一言。先にも述べた通り、この映画は恐ろしく人を選びます。今作はごっこ遊びを題材とした映画なので、それを馬鹿にするような考えをもって見ていても全く楽しめません。例えば、おっさんがそこらのハンマー持って「これはミョルニルだー!」とはしゃいだり、「風の魔法! 皆には彼の姿が見えない!」と言われて皆がそれに従うシーンを、素直に受け入れられるかどうか。

まず、「大人にもなって現実逃避のごっこ遊びとか笑える」「ミョルニル(笑)」「風の魔法(笑)」と思ったそこのあなたは、この映画を見ない方が無難です。1時間近くにもわたるこのような茶番には、とても耐えられないでしょう。私はTRPGの経験があるので、素直に楽しそうだなと思いました。こういう趣味もあるんだな、と気楽に思えた方は、続きをどうぞ。

このような前置きをしておいた上で、詳細なレビューに入って行きましょう。まずは良い点から。

今作の良い点は、作品全体を通しての雰囲気作りが上手なことです。

今作のテーマはロールプレイング、すなわちごっこ遊びなわけですが、これに関する雰囲気の作り方や描写の仕方はなかなかGOODでした。真面目に王様役や剣士役を演じていた人が突然「おい! 今剣で打たれただろ! 早く死ねよ!」と素に戻ったり、「は? 魔法の鎧着てるから死なねーし」「じゃあこれ魔法の剣だから」と設定の話を持ち出して口論した後、また役柄に戻って行く。これはテーブルトークゲーム経験者ならば、「あるある」と共感を覚えてしまうのではないでしょうか。

決してごっこ遊びに興じるプレイヤーたちを馬鹿にするのではなく、実際のセッション中の雰囲気を上手く表現することで、視聴者をひき込もうとする姿勢、これには好感が持てました。実際にそれを狙っていたのかは分かりませんが。

ただセッション中の雰囲気作り自体は良かったのですが、このファンタジー世界の背景設定、すなわちここはどのような経緯を辿ってきた土地で、なぜ人々は争い、魔法はどのようなものがあって……というような部分の描写が薄く、思ったよりファンタジーの世界観にのめり込めなかったのは残念な点であったと思います。まあ、人によっては気にならない部分でしょう。

では続いて、今作の悪い点を。この映画の悪い点は、終盤に入るまでとにかくテンポが悪いことと、終盤の展開に納得がいかないことの二つです。

まず、終盤に入るまでの一時間強は、話がまあ進みません。先にも述べましたが、この映画の見どころは空気の読めない行動を繰り返す主人公に対しプレイヤーたちがブチ切れ、やがてそれは本気の争いに発展……という部分だと思うのですが、この部分に入るまでの件は本当に冗長の一言。

ごっこ遊びにハマった恋人を連れ戻しに来た主人公がコミュニティ内のルールガン無視行動を繰り返し(衣装を着ない、剣が当たったのに死なない等)、周りの怒りのボルテージが溜まって行く過程はよく分かるのですが、これに一時間以上もかける必要が果たしてあると言えるのか

コミュニティに潜入するまでが無駄に長い、扉がバンバンする謎描写、思わせぶりな展開の連続などなど、個人的にはこれを一時間以上も飽きずに見ていろという方が無理があると思います。もちろん、良い点でも挙げたような見どころはちょこちょことありますが、それにしたってこれはキツイ。

そしてこのゾーンを抜けていよいよ本番。ブチ切れた人々が本気の乱闘を開始する終盤ですが、一番の問題はこの部分。てっきり小競り合いから収拾がつかなくなって本物の戦闘に……という展開になるかと思いきや、主人公の行動に切れた一部の勢力が、その他の人々を一方的に嬲り殺すというまさかの展開に。

その際、彼らは自らの持ち物を自分たちの意思で燃やし、現実を捨ててこの架空世界でのやるべきこと(ワイルドハントという戦争)を遂行する決意を固める、というシーンが入ります。集団の暴走に歯止めがかからなくなったという展開ではなく、自らの意思で現実と決別し、今まで演じてきた役を本当の自分として受け入れ、生きる決意を固めた、という解釈で良いと思うのですが……どうでしょう?

まあ、この部分の解釈についてはともかく。この展開には賛否両論ありそうですが、個人的にこの展開は受け入れがたかったです。その理由を以下に。

まず、このような惨劇が起きた究極の原因が、外部から現れた主人公に、自分たちの姫(ヒロイン)を取られたからだ、ということがどうも気に喰わない。これだけ壮大な前ふりをしておいて、結局恋愛関係のいざこざが一番の原因というのはあまりに安っぽくて残念。しかもこのヒロインがまた、絵に描いたような自分勝手のクソビッチ、というのもまた……。

しかしまあ何と言っても、結局私が一番気に喰わなかった部分は、「登場人物たちが自らの意思で暴走を決意した」という部分です。

例えばですね、友達とゲームをやっていて、ついお互い熱くなり、現実の喧嘩に発展してしまう。こんなのはよくある話です。友達同士ともなれば大事にも至らず仲直りできそうですが、これが何十人という大人たちの集団の中で起きてしまったとしたら、度を過ぎたリアルファイトにも発展しかねない。

小さな小競り合いの中で1人が手を出し、それに続くようにして2人、3人が。やがてそれは集団全体を巻き込んで大きな暴走と化し、その流れは誰にも止められず……こういったことをテーマにしてくれたのなら、集団の暴走の手の付けられなさなどに戦慄したかもしれません。

しかしこの映画、結局はほんの一部の異常者だけが暴走をし、他の参加者たちを一方的に攻撃する、という展開に向かってしまいます。しかもその理由は、しょうもない色恋沙汰。

ここでまずいのは、他の参加者たちは主人公の勝手な行動に苛立ち、愚痴を叩きながらも、あくまで正常であるということです。他の参加者のようにいくらでも自制がきくはずなのに、自らタガを外して暴走してしまう。これのせいで、さながらネトゲやゲーセンでの小競り合いが傷害事件に発展した時のニュースを見る時の如く、「いくらでも自制できるのに、結局クズはクズやな」という感想で終わってしまったのです。

結局この映画に私が下した結論は、原因がどうとか主人公の態度がどうとかではなく、「普通は愚痴りながらも我慢できる程度のことで暴走するような異常者がいただけやん」というもの。集団に呑まれて自分を見失い、後になって考えてみると自分は恐ろしいことをしてしまった、という集団の怖さがまるで表現されていないんです。

もちろんこれは狙ってこのような構成にしたことだと思うので、集団の怖さを描いた映画を期待していた私が悪いのですが、一時間以上かけて用意した壮大な舞台での暴走の原因が、結局は色恋沙汰という安っぽい事態だったというのは究極のガッカリポイントでした。

総評ですが、人を選ぶけれど、個人的にはただただ退屈な映画でした。ロールプレイングというテーマは非常に良かったと思うだけに、内容の残念さ、安っぽい理由に頼ってしまったことのガッカリ感にどうしても目が行ってしまいます。

合う人には合う、と言い出してしまえば全ての映画がそうなので終わりなのですが、この映画に関しては合わない人の方が多いんじゃないかな、と個人的には思いました。自分は色恋沙汰でドロドロした映画があまり好きではないので、余計にそう思うのですが。

ただし、前述のように「いい年こいてこんなことしてる奴らがいるんだよ、笑えるよねー」という視点ではなく、セッションの雰囲気はよく再現されていた、というのは個人的にも評価できる点だと思います。まあ、話の通じなさと融通の利かなさにはイラつきますが。

また、「ロールプレイングとかマジで楽しそうだな」と本気で思えたので、誰かロールプレイングを題材にした、惨劇が起こらないタイプの映画作ってください。見ます。

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