「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

リミット のレビューです(総合評価B)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 スペイン
製作 2010
販売 Happinet

レンタルショップ屋で何気なく手に取って借りてきたのですが、鑑賞後に調べてみてびっくりしました。これすごい有名なんですってね。実にいろいろな人のレビューサイトがあったので、「もう自分が書かなくてもいっか」とも思ったのですが、折角見たので書きます。備忘録も兼ねていますので。

そのため、このレビューに関しては書く前にかなり色々な方のレビューや感想を読んでしまったために、それらの意見に引きずられがちです。というかそれ前提で書いてます(開き直り)

ただし、特定の誰かの意見を晒しあげて小馬鹿にしたり、という目的は一切ないので、あくまで「各所で言われていることを自分なりにまとめ、自分はこう思った」というようなレビューになっていると受け取っていただけると幸いです。

前置きが長くなりましたが、では早速。レンタル版を吹き替えで視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】


【あらすじ】

” イラクで働くアメリカ人労働者ポール・コンロイは襲撃を受け、目覚めたら棺に入れられ土の中にいた。手元にあるものは携帯電話、ライター、ナイフ、ペン、酒。なぜここに入れられたのか?果たしてここから脱出できるのか?残された空気からタイムリミットは迫っている。(C)2009 Versus Entertainment S.L. All Rights Reserved.(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー………B
キャラクター……B
設定………………D

総合………………B
おすすめ度………D

【良い点】
・緊迫感、臨場感が凄い
・主人公が魅力的

【悪い点】
・なかなかガバッた設定
・ものすごく人を選ぶ

まず最初に言えることは、この映画はかなり人を選ぶということです。いかに棺の中に埋められた主人公と感情や状況を共有できるかが重要だと思うので、見ている最中に設定などで何か引っかかってしまうともうダメかもしれません。

【以下、ネタバレ注意!】

木製なら脱出できるでしょ(キルビル並感)

取りあえずいろいろと書く前に言っておきたいんですけれど、生きたまま棺桶に入れられて土葬というシチュエーションはキルビルを思い出してしまうのですが、意外にもそのことについて触れてくれるレビューや感想が少なかったので驚きました。まあ、そんなことはどうでもよいのですけれど。

さて今作は、ガチで90分間舞台は棺桶の中だけ、登場人物も(電話の声や動画を覗けば)主人公のみという恐ろしく清々しい映画です。ほとんど身動きもとれない状況下で主人公が出来ることは、必死で電話をかけ続けることだけ。他の場面が映る回想シーンすらないので、今作は究極の密室映画と言える……かもしれません。

では早速、詳細なお話に移って行きましょう。まずは良い点から。

今作の良い点は、臨場感や緊張感が凄まじいということと、主人公が魅力的だということです。

まずは臨場感について。いくつか他の方のレビューを読みましたが、やはりこの映画で一番評価されていた点はここだったと思います。視聴者は90分間ずっと、埋められた棺という密室の中で主人公と二人きり。ほぼリアルタイムに近い進行によって凄まじい息苦しさと緊迫感を味合わされるという構成には思わず脱帽しました。

そのため、決して話のテンポ自体は良くはないのです。しかしそれでありながら、この映画は飽きを感じるということをさせてくれません。それは例えば、棺桶という狭苦しい舞台の中でありながらも、まるで肉薄するかのような迫真のカメラワークであったり、小分けに新しい情報を提供し続け、常に状況を動かしてゆく脚本であったり。

棺桶という極狭の舞台だからこそ、それら一つ一つの気遣いが生き生きとしていて、ずっと同じ絵面を見ているはずなのに、全く飽きませんでした。

またこの映画唯一の登場人物である、主人公についても触れておきます。この映画の主人公は、この手の映画にしては珍しく(?)なかなか有能です。電話をたらいまわしにされながらも、自分の助けになってくれる人物を探し出し、確実に情報を手に入れてゆく。これがしっかりとできているので、なかなか好感が持てました

では続いて、悪い点を。今作の悪い点は、割と設定がガバっているということと、とにかく人を選ぶ映画であるので人におススメできないということです。

まずは設定について。今作は見終わってから考えてみると、なかなか設定のガバッた点が見受けられます。ただし今回のガバったというのは、そもそも辻褄が合わないというものもありますが、作品的にこれは必要だったのかということまでいろいろ。

例えば各所でも言われていることですが、棺の中に毒蛇というシチュエーションは明らかにこの話の本筋から逸れ、質を低下させているだけのように感じました。また何よりも、最後に一度主人公が助かる幻覚を挟んでしまったせいで「ああ、この主人公は助からないんだろうな」という印象を受けてしまい、オチのインパクトが薄くなってしまっているという問題も目に付きます。

一番疑問に思ったのは、一般人である主人公が棺桶に入れられ埋められるという状況そのものに無理があるということ。他の方のレビューにも述べられていたことですが、主人公が政府の高官だとかいう事情があるのならいざしれず、所詮はただのトラック運転手である彼をこんな面倒くさい方法で監禁する意味が分かりません。

これら設定に関する悪い点は、それら一つ一つだとさほど大きな汚点とまでは言えませんが、とりわけ今作においてはかなりの致命傷です。舞台が極狭であり、脚本超重視の勝負を仕掛けてきているからこそ、設定に関するミスが他作品以上に目立ってしまうのです。

また、この映画もう一つの弱点である、人を選ぶということについて。今作がかなり特殊な映画であるということはもはや言うまでもありませんが、それが災いしてか、正直今作は個人の感想はどうあれ、人におススメできるようなものではないと私は思うのです。

私が思うに、今作において一番重要な点は、いかにこの主人公と気持ちを共有できるかだと思うのです。棺桶の中に独りという状況に置かれ、外界との繋がりを、助けを求めて電話をかけるも冷たい反応であしらわれ続け、見捨てられ、裏切られ、唯一見つけた希望も奪われて、独り寂しく砂に埋もれてゆく。その絶望を、緊迫感を共有できたとしたら、あなたはこの映画を最大限楽しめた人だと私は思います。

しかし逆に言うと、先に述べたように「この設定はおかしいよな」だとか、「この部分は蛇足だなぁ」というような、ある種第三者的な冷たい視点で今作を見てしまった瞬間、あなたはこの映画を完全には楽しめないでしょう。そして今作には、そのような「目を覚まされる瞬間」というのがなかなか多い。これこそが今作における最大の問題点ではないかと私は思うのです。

もちろん、純粋に主人公の気持ちになりきれたかどうかについて、どちらが良いとか悪いとか、優れているとか劣っているとか、そういう単純な話ではありません。中には主人公の気持ちになりきれても「こんな絶望しか与えられない映画なんて見る価値はない」と思った人もいるでしょう。また脚本重視である今作はどうしてもガバッた部分が浮き彫りになりやすいので、途中までは主人公に寄り添っていた人も、ふと一歩退いた視点から見てしまうこともあったかもしれません。今作の評価が人によってかなり違うのは、こういうことが原因なのではないか、と個人的には思いました。

そう言う意味で今作をおススメできるのは、90数分間ずっと主人公に寄り添い続けて緊迫感を共有し、苛立ち、絶望を味わうことのできる人じゃないかなと思うのです。まあ、ほぼリアルタイム進行かつ主人公がなかなか有能な今作においてその敷居は結構低いようにも感じましたが、やはりおススメは出来ません

唯一ありがたいと言えることは、今作は良くも悪くも盛り上がりに欠け、最初から最後までずっと同じようなペースで話が続きますので、途中で合わないと感じることはあれど、最初に合わないと感じたらもうその時点でこの映画を見るのを止めても問題ないだろうということ。最初の時点で躓いた方は、おそらく最後までずっと躓きっぱなしだと思うので。

総評ですが、合う人には合うけれど、合わない人には絶対に合わない映画、という評価がぴったりではないのかなと思います。私は結構楽しめました。

ただ、90数分という時間を棺桶の中だけで消費し、登場人物も一人だけ、しかも面白い映画というのは類を見ない代物なので、個人的には是非見てみて欲しいですね。ただし、あなたがこれを面白いと感じるかどうかについての保証は一切出来ません。

個人的には面白いし見てみて欲しいけど、人にはあまり勧められない。難しい映画です。

なお先に述べたように、今回のレビューについては、ネット上に掲載されている様々な方の意見を参考にさせていただきました。凄く鋭い指摘や、設定の考察など、非常に敬服するものがいくつもありました。皆さんもお暇があれば、是非映画名で検索をかけ、いくつか読んでみてください。この映画のさらなる魅力に気が付けるかもしれません。

それにしてもやはり、盛り上がっていた映画、有名になった映画のレビューサイトは充実していていいですね。次回からはまた、名前も知られていないようなドマイナー映画のレビューに戻ります。そちらの方が性に合っている気がしますので。

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