国籍 イタリア、スペイン、イギリス
製作 2004
販売 アルバトロス もうやだこの会社
どこからどう見ても某有名映画のパクリタイトルですね……もう釣る気満々なほどに。
原題はOcchi di cristallo ちなみに映画本編にジグソウパズル要素は一切ないです。もちろんSAW要素もないです。ふざけんな!(声だけ迫真)
また調べてみたところ、同じ名前で副題が付いた作品群がいくつも見つかりました。シリーズというよりは、それぞれ独立した別作品に配給会社が勝手に同じような邦題を付けた感じらしいです。実に悪質ですね。
レンタル版を吹き替えで視聴しました。Amazon先生のあらすじからどうぞ。
【あらすじ】
『輝ける青春』のルイジ・ロ・カーショが主演するショッキングスリラー。連続して起こる猟奇殺人を不吉な胸騒ぎと共に捜査するジャコモ・アマルディ刑事は、現場に残された血の暗号から、犯人が人間のはく製を作ろうとしていることを推理するが…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
ストーリー…………B
キャラクター………C
サスペンス度………D
設定…………………D
総合…………………C
おすすめ度…………C
【良い点】
・飽きないストーリー展開
【悪い点】
・説明不足な設定
・サスペンス性が薄い
(SAW的な要素を期待せずに見れば)それなりに楽しめる映画だと思います。ただしサスペンスの割にかなり疑問点を放置したまま終わるので、結構腑に落ちない点も。
【以下、ネタバレ注意!】
邦題は酷い詐欺ですが、B級映画ハンターの方ならば見抜けるレベルです。取りあえずSAW的な要素は一切ないとだけ言っておきましょう。
さて、クソな邦題と本編の評価は無関係という方針ですので、いつもの如く純粋に本編の出来だけに目を向けてゆきます。今作はあらすじにある通り、猟奇的な連続殺人事件を追う刑事のお話です。早速良い点悪い点に分けて見てゆきましょう。まずは良い点から。
この映画の良い点は、ストーリー構成や雰囲気が優秀で飽きないことです。
今作は一応サスペンス映画なので会話や捜査が中心となるのですが、その合間合間に殺人事件やグロテスク描写を挟んだりすることでホラーチックな雰囲気を演出しており、それなりの緊張感を持って見続けることが出来ます。
また、事件に関わる謎についても多くの疑問が提示され、この猟奇的な事件の正体が気になり始めたら最後、そのままラストまで完走出来るでしょう。緊張感を持って、飽きずに最後まで見ることができるというのは、単純に評価できます。
では次は悪い点を。この映画の悪い点は、多くの設定が丸投げされたまま説明不足であることと、サスペンス性が薄すぎることの二点です。
まず設定についてですが、今作はサスペンスということもあり、実に様々な謎が登場します。なぜ犯人は本物の人間のパーツで人形を作ろうとするのか、なぜ死体の手足に人形のパーツを縫い付けてゆくのか、なぜ現場にメッセージを残してゆくのか等々……。もちろんそれら一つ一つの行動には犯人なりの動機があるはずなのです。
しかしこの映画では、その動機の部分がほとんど語られません。特に、わざわざ死体に細工を施す(人形のパーツを縫い付ける)ことや、メッセージを残してゆく(次の標的の名前や、木の葉を置いてゆく)こと、標的を選んだ理由などの大事な部分についての説明はほとんどないのです。
またこれにも関連しますが、この映画はサスペンス性についてもかなり淡白でした。主人公の刑事が推理する内容は若干強引で、見ている側にはどうしてその結論に辿り着いたのかが分かりづらいのです。その推理自体も直感的なものばかりで、最終的に犯人と対峙するまでその正体が謎のままなので、証拠をもとに犯人を割り出すという作業もほぼありません。結果、サスペンス性はかなり薄くなってしまいました。
ただしこれら二つの悪い点については、動機までしっかり判明するという、よくある日本的サスペンスドラマ・映画などの王道からは外れているというだけで、この映画の見どころを考えても致命傷とまではいきません。
実際にこれは外国の映画ですから日本的王道も何もないのですが、やはり普段から日本のサスペンスを見慣れている私からすると、犯人の行動の動機のほとんどが語られず、「異常だから」だけで済まされるのは、少し寂しくありました。
総評ですが、謎が次々に提示され、それを追う中で犯人と対決、そして事件を解決という流れはしっかりとしており、その意味ではかなり良く出来た映画だと思います。反面サスペンス要素は薄く、謎も大部分が放置されたまま終わりますので、消化不良感も残るかもしれません。
ただし、上に挙げたような悪い点は「サスペンス映画のどこを楽しむか」という個人の嗜好にダイレクトに直結してくる部分であるため、結局は「個人の好みによる」として処理せざるを得ません。気になる人は気になるでしょうし、そうでない人は全く気にならないでしょう。そう言う意味で、評価の分かれる映画だと思います。