国籍 日本
製作 2014
販売 Happinet
元ネタまんまな題名のアイドルホラー映画です。ちなみに私は「AKBと言ったら前田敦子と大島優子くらいしか顔と名前が一致しない」レベルの情弱なので、今作の主演の方もどんな人か知らずに見ました。なので、あくまでそういった視点からのレビューとなります。
レンタル版を視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。
【予告編】
【あらすじ】
“不幸を予言するブログ……。 前田瞳(17)は腐女子気質の内気な女の子。匿名でブログを始め、独り言や片想いの大志(17)の事を書く瞳。 「T(大志)君と彼氏になれたら……」そんな瞳の願望が現実になってしまう。 大志と付き合いはじめ、浮かれ気分の瞳だったが、ある日を境にブログに書いた人や物に不幸が起こるようになる。 “田中””と名乗る謎のブログ訪問者のストーカー的なコメントから、周囲の不幸を“田中””が起こしているのではないかと勘ぐる瞳。 瞳は“田中””の正体がわからぬまま、自意識過剰になりやがて精神が錯乱してくる。 インターネットの匿名性の怖さと不幸を呼ぶブログの危険性。ふたつの恐怖が瞳を追いつめる。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)“
ストーリー……D
キャラクター…C
ホラー度………E
設定……………E
総合……………D-
おすすめ度……D
【良い点】
・「ない! そんなものはない!」
【悪い点】
・見どころのない脚本
・どこに持っていきたいのか分からない展開
・設定放棄
・絶望的に下手な演出
いくらアイドル映画だとは言え、これはあまりに酷すぎます。出ている役者さんのファンだと言う方以外は、見ても退屈なだけでしょう。
【以下、ネタバレ注意!】
まず最初に。あらすじでは、不幸を呼ぶだの名前を書かれたら死ぬだのいろいろと言っていますが、今作にオカルト要素は一切ありません。ただ単に、ブログに個人情報を垂れ流しにしていたら、ストーカーに狙われるようになったというだけの話です。まあ、そのストーカー自体オカルトチックな産物の可能性もありますが、幽霊だとか死の運命だとか、そういった直球オカルト表現はないです。
さて、アイドル物のホラー映画は数あれど、これほどド直球のハズレも珍しい、と思えるレベルの酷さです。褒められる点は本編が短い(90分程度)という以外は皆無で、そのくせ悪い点だけはわんさか出てくるというどうしようもなさ。いつもなら良い点悪い点に分けて見てゆくのですが、良い点が何も思い浮かばなかったので、以下延々と悪い点を羅列します。
今作は、脚本、展開、演出、設定、どれをとっても悪い点でしかありません。
とりあえず一番問題なのは、話に見どころが全くないということです。今作の見どころはおそらく「ストーカーに付け狙われ、心身衰弱に陥ってゆく主人公の様」なのでしょうが、これが実に雑で中途半端。精神が壊れきってからの意味不明行動はまだ見逃すとして、そもそも精神が壊れるまでの過程の描写が本当に下手なんです。警察に相談に行くわけでもなければ、ブログを閉鎖するわけでもない。それなのに「私ストーカーに狙われてる可哀想な子なの、どうしよう」というアピールがただただ目に付くだけでウザいことこの上なし。
良いからはよ警察行けや
もちろん、「こんなことで警察に相談に行けない」という悩みや葛藤もあるでしょうが、人が死んでるんですよ、あなたのせいで。それなのにブログは閉鎖せず、警察にも行かず、ただただ安っぽい悲劇のヒロインアピールをされるだけというのは、見ている側からしてもたまったもんではありません。
ならばストーカーに付け狙われる恐怖が見どころなのかというと、そんなことも全くありません。ストーカーは、主人公に直接的な被害を及ぼすわけでもなければ目の前に現れることもなく、ただただ彼女のブログに名前が挙がった人を殺して回るだけだからです。
現にラストシーンでは、ストーカーは妹を助けに現れた主人公そっちのけで妹を殴り殺し、主人公には目もくれずに帰っていくという超謎展開。恐怖もへったくれもありません。これで「自分の責任で周りの人間が死ぬという辛さを味わわせてやる」的な描写があればまだ良いのですが、そのような描写もなし。なんですか、何がしたいんですか。
ストーカーの正体を始めとした各種設定も見事に丸投げで、腑に落ちない部分もちらほら。殺害場所が白昼の街中っておかしいでしょう。
そして問題の演出。まず主演の方の演技は、お世辞にも褒められたものではありません。普通の女子高生している前半はまだしも、後半の発狂っぷりはなかなかキツイものがあります。叫べば何を言っているのか分かりませんし、演技は大げさで、ラストの激長な泣き崩れるシーンなどなかなか酷いものです。
主人公の精神が崩壊した後半はずっと、彼女はその様子を「身体全体」で表現していましたが、これは明らかにやり過ぎです。膝は生まれたての小鹿のようにガクガク、上半身は謎のウェーブを繰り返し、しかもそれで校内や街中を闊歩。これではただの変質者ですよ。
もちろんアイドル映画なのですから、誰も女優並の演技を期待しているわけではないでしょう。事実この映画の前半は、普通に見られる演技でした。ただそれを踏まえても、後半の演技はやはりひどいですね。ただしこれ、問題は主演の彼女だけにあるのではありません。むしろそれを演出した側の責任の方が大きいです。
先のやり過ぎな演技についても、責任はそれでOKを出した側にあるわけですし、寄せで泣き演技を延々と垂れ流されるラストに至っては、そもそも女優ですら真っ青になるレベルでしょう。つまり彼女の演技がおかしいと言うよりは、この演技を求める側の方が明らかにおかしいのです。確かに彼女自身に演技力不足な部分はありますが、それを差し引いても演出が酷いと言えますね。ある意味一番の被害者は、主演の彼女なのかもしれません。
総評ですが、どの要素から見てもこの映画は駄作です。見どころと呼ぶにふさわしいものは何一つなく、サスペンス性もホラー性も皆無で、見終わった後にはただただ「酷かった」という感想だけが残るでしょう。
唯一、主演されているアイドルのファンだと言う方だけは、見ておいてよいと思います。最初から最後まで、カメラは彼女につきっきりですので。
最後にどうでもよいことですが、監督と脚本にどうしても文句を言いたいことが。あらすじにもあるように、この主人公は「腐女子」というキャラ付けをされていますが、腐女子の意味分かっていますか? 今作では「腐女子」=「ちょっとオタク気味な、ノーマルな妄想好きの女の子」的なニュアンスで使われていますが、腐女子はそんな生易しいものではありません。
腐女子は男性同士の同性愛を好む人々のことです。なのに作中、そういったことを臭わせる描写はありません。口で「腐女子」と言っているだけです。