国籍　アメリカ
製作　2014
販売　ビクターエンタテインメント

「クロールってなんだよ」と思いながら借りましたが、調べてみると「這う」というような意味らしいですね（無知）

レンタル版を字幕で視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ＆予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

OVTウィルスが地球に蔓延していた─地球上で感染から逃れたのは、女性2人。そのうち一人は無くなり、妊娠可能な人間は、この地球上に一人になってしまった。国は彼女を冷凍睡眠させ、女性隊員タンクをはじめとする特殊部隊たちと【第二の地球】とよばれる地域に宇宙船に乗せた。が、不時着し、謎のトンネルの入り口に辿りつく。ここが何処かも分からず、生き延びるためトンネルを進むが、隊員一人また一人謎の未確認生物に襲われていく。そして、遂にアイツが立ちはだかる!(あらすじ：Amazon商品ページより引用)

ストーリー…………Ｄ
モンスターの質……Ｄ
キャラクター………Ｂ
設定…………………Ｄ

総合…………………Ｃ－
おすすめ度…………Ｃ

【良い点】
・強いヒロインに好感が持てる
・閉塞感が凄い

【悪い点】
・内容が薄い
・肝心のエイリアンの出来が微妙

良くも悪くもとにかく話の軸がぶれず、最後まで一貫してトンネル内を逃げ進むだけの映画です。そのため、この映画を見る上で重要な点は、映画の雰囲気が自分に合うか合わないかのみでしょう。私は合いませんでした。

【以下、ネタバレ注意！】

パッケージにもエイリアンがデカデカと映っておりますが、今作はエイリアン映画ではありません。いや、エイリアン自体はしっかりと出てくるんですが、あくまでも主体はそこではなく、サバイバルに主眼が置かれています。

さて、では早速今作の良い点悪い点を。まずは良い点から行きましょう。

今作の良い点は、ヒロインに好感が持てる点と、こだわりぬかれた閉塞感です。

まずキャラクターについてですが、やはり強いヒロインは好感がもてて良いですね。まあ、そもそもこの映画はヒロイン以外に戦う人がいなくなりますので、強くあってもらわないと話が成り立たない訳ですが。とにかく、ホラー映画ヒロイン特有のウザさは全くないので、安心して見られると思います。

そして今作最大の特長、それはまさしく、こだわりぬかれた閉塞感です。この映画は90分間、なんと舞台はせっまいせっまいトンネル内のみという異様さ。トンネルと言っても、タイトル通り這って進まなければ通れないレベルの狭さで、しかもだんだん狭くなっていき、果てには這っても通れないレベルの狭さになっていきます。ここまで移動方法を制限し、閉塞感にこだわり、しかもそれを90分間一貫して曲げないと言う姿勢は、見事としか言いようがありませんでした。

次は悪い点を。今作の悪い点は、ストーリーが薄い点と、エイリアンの出来がよろしくない点です。

まずストーリーですが、これはほとんどないと言ってよいでしょう。妊娠できる女性が最後の一人だけだとか、第二地球だとかいろいろと話は出てきますが、そんな設定はガン無視でただひたすらにトンネル内を逃げ続けるだけです。中には（この設定いるんか……？）と思う物も。

そして一番問題なのは、肝心のエイリアンに魅力が全然ないことです。今作は確かに狭いトンネル内を這い回るサバイバルが主眼で、エイリアンはそのトンネル内を前に進ませるだけのギミックにすぎませんが、それにしても少し酷いですね。

造形や動きが微妙なのは予算の関係もあるでしょうから問題ないのですが、とにかく動きが遅い上に見た目も褒められたものではないので、得体の知れないものに追われている絶望感がかなり薄く、「トンネル崩れそう」「息苦しそう」というような、トンネルに関する感想しか持てません。これでは、後ろからエイリアンが来ていようが殺人ガスが来ていようが、水が迫って来ていようが同じです。せっかくの追跡者としては失格でしょう。

もちろん舞台がトンネルなので「動きが早かったらすぐ追いつかれるやろ」と思われるでしょうが、ゆっくり進む主人公の後ろをただ着いてくるだけというのは、やはりモンスターとしてどうかと思います。出会っても普通に這って逃げられてしまうので、怪物にエンカウントした時の絶望感、恐怖感が足りないと感じました。

動きの速い相手に対して、脇道に逃れてやり過ごすとか、トラップで動きを止めるとか、走って逃げられない状況だからこそ知恵を絞って逃げる、という部分があっても良かったと思います。

総評ですが、「閉塞感」というしっかりとしたテーマがあり、それを最後まで貫く姿勢は素直に褒められると思います。そのテーマのためにストーリーを犠牲にしていますが、「無駄をなくす」という見方に立てば、一概に悪いとも言えないでしょう。

やはり一番の問題はエイリアンです。造形や出来は悪くないのですが、このエイリアンの使い方が悪いですね。せっかくエイリアンを出したのなら、もっと有効に〝追われる恐怖〟の演出に使ってほしかったと悔やまれます。

ただ、この映画において一番大切なことは「狭い通路を這い進む」という映画の雰囲気に、自分の感性が合うかどうかでしょう。良くも悪くも、この映画は90分間、最初から最後までこのテーマだけなので、合う人にはとことん合う反面、合わない人にはとことん合わないでしょう。私はエイリアンへの不満にもあるように合わない側だったので、最後まで退屈気味でした。

しっかりとした軸があり、異色と言っても過言ではない映画です。そのこだわりから垣間見えるように、決して駄作ではありません。ただし、「合わなければ、決して最後まで合わない」というリスクもあるということを念頭に置いて、なお「我こそは！」と思う方は、ご視聴なさってみてはいかがでしょうか？