国籍 アメリカ
製作 2009
販売 アートポート
毎度おなじみタイトル一本釣りシリーズです。「どこに釣られる要素あったんや?」と思われた方は、『黒いユニコーン』で検索検索ぅ♪
レンタル版を吹き替えで視聴しました。
【あらすじ】
ヴェロニカたち若者グループは泊りがけのキャンプを楽しむためにある森へとやってきた。先に到着しているはずのトムとの待ち合わせ場所へ着くと、そこにはボロボロに引き裂かれたテントが置き去りにされていた。彼の身を案じるヴェロニカたちの前に、トムが突然現われる。しかしそれは、トムの姿をした怪物で…。都市伝説として語り継がれる怪物“バンシー”の恐怖を描いたサヴァイバル・アクション・ホラー。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
ストーリー…………C
モンスターの質……B
キャラクター………D
設定…………………C
総合…………………C+
おすすめ度…………C
【良い点】
・スピーディーな序盤の展開とラストの盛り上がり
・バンシーの質が高い
【悪い点】
・中盤のダレ具合
・キャラクターが無能
・一部設定丸投げ
全体的に可もなく不可もなく、という印象が強い映画でした。これと言って絶賛するようなポイントもなければ、どうしようもないと言えるほどの部分もないという見事な凡作です。割と面白いので、見てみても損はないかと思います。
【以下、ネタバレ注意!】
レビューに入る前に、「そもそも『バンシー』ってなんやねん」と思われた方へ。めちゃくちゃざっくり説明すると、アイルランドに棲んでる女性の格好をした妖精さんです。その声が聞こえた家では、近いうちに死人が出るんだとか。その妖精さんをモチーフにして、この映画ではそのバンシーを醜い怪物に作り替えました。『女の格好』設定ガン無視の化け物丸出しなフォルムに、『これから死ぬ者のために泣く』という設定は『鳴き声を聞いたら頭が爆発して死ぬ』という斬新な設定に変更され、しかも光学迷彩搭載型で内臓をむしゃむしゃするという暴れっぷり。
バンシーってなんだっけ
こんな滅茶苦茶な設定の映画ですが、見どころもそれなりでモンスター物としてはなかなか良い出来でした。以下に良い点悪い点を。
まずは良い点からいきましょう。今作の良い点は序盤と終盤の展開が良いことと、バンシーの造形含めた質が高いことです。
この映画は序盤非常にテンポよくはじまります。開始からすぐバンシーが登場し、登場人物たちを次々惨殺して行く様は、見ている者誰もに「こんなに話進めて大丈夫か?」と心配させるほどでした。それはもう、十人もいない主人公グループがいきなり半分程度にまで減るのですから、誰でも心配になるでしょう。
また、中盤を飛ばして終盤、ついにバンシーに対抗しようという流れになってからも、なかなか良かったと思います。オチもありがちなものながら、モンスター物としては充分でしょう。中盤がどうだったのかについては後述。
また肝心のバンシーについてですが、なかなかしっかりとできていました。映像的な出来はさることながら、結構設定がしっかりしているんですよね。殺した標的に化けることができる一方、サイレンやギター等の大きな音には弱いという感じです。
この、出来ることと出来ないこと、さらに弱点がしっかりしているというのは、言うまでもなく重要な要素であり出来て当たり前のことのように思えますが、意外と出来ていない映画も多いのです。その点、この映画には好感が持てました。
良い点については以上です。以下には悪い点を。今作の悪い点は、中盤だれてくること、キャラクターに魅力がないこと、そして肝心な部分の設定が丸投げという三点です。
まず中盤のダレ具合について。この映画は中盤、壊滅的被害を受けた主人公グループがとある一軒家に逃げ込んだ後、なっかなか話が動きません。その間バンシーはいろいろな人を襲いにあっちこっち駆け回っているわけですが、そんなどうでもいいシーンを見せるのならとっとと本筋の話を進めてくれと思ってしまいました。
また今作に登場するキャラクターですが、まあ見事に揃いも揃って無能です。グループの一人が「バンシーの弱点って音じゃね?」ということに気が付くのですが、その後皆は何もせずくつろぎ、語らい、仲良く寝ると言う具合にまるで対抗策を立てる気がゼロ。結局まともに作戦を立て始めたのは再び襲撃された後という無能さ。もう自業自得としか言えません。
そしてこの映画一番の問題は、バンシーに関する肝心な部分の設定が完全に丸投げな点なのです。良い点で述べたように、怪物自体の設定は割としっかりしているのですが、なぜ今頃急に暴れ出したのか、なぜこんなところ(アメリカ)にアイルランドの妖精さんがいるのか、そもそもこいつは本当にバンシーなのかといった部分については、
一切のことは分かりません
。そ、そんなぁ……
ただ、そもそもこの怪物がバンシーであると分かる理由は、作中の人物が根拠もなしに「あの叫び声はバンシーや!」と言い出したからであり、怪物自身が「私はバンシーです」と言ったわけではないのです。本物のバンシーの泣き声も聞いたことないくせに、よくそんなことが言えましたね。
また、上述した実際のバンシーの設定を見ればわかる通り、明らかに今作の怪物はバンシーとは無関係なので、こいつのことは『アメリカの山中に住んでいるバンシーではない何か』ということで、私の中ではケリがつきました。
まあ、「見たこともないような怪物に出会った時、人は的外れな情報でも信じ込んでしまう」というテーマが背景にあったのかもしれませんし、なかったのかもしれません。いずれにせよ私はこれをバンシーとは認めません。
総評ですが、良い部分も悪い部分もあるものの、全体的にはバランスのとれた仕上がりになっていると思います。突出してクソという部分もなければ、目立って褒められた点もありませんでした。結局バンシーの正体が丸投げな部分だけは気になりましたが、モンスター物にはよくあることと割り切ればそれほど酷くもありません。それなりに面白いので、気になった方は見てみても良いと思います。