「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ヒューマン・レース のレビューです(総合評価B+)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 アメリカ
製作 2013
販売 アメイジングD.C.

「金なんてなくても、アイデア次第で面白い映画は作れるんだよ」と言わんばかりの力作。実際にどの程度製作費がかかったのかは知りませんが。

レンタル版を吹き替えで視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

“突然、見たこともない場所で意識が目覚めた老若男女80人。頭の中で響き渡る謎のメッセージ。 「競走を拒めば命はない」「コースを外れても命はない」「2周遅れても命はない」「生き残れるのは、ただ1人」、状況を理解できないまま、始まる理不尽なレース! 中にはパニックに陥り、思わずコースを外れてしまう男も出現。すると、その男の頭が突然爆発、あまりのショックに残された人々は走るしか生き残る道はないと悟る! 果たして生き残るのは誰だ?そして、この理不尽なレースを主催する奴らとは・・・。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー……B
キャラクター…B
設定……………C

総合……………B+
おすすめ度……A

【良い点】
・容赦のない展開の連続で飽きずに見れる
・設定が上手くできており、常に独特の緊張感がある
・理不尽な状況下で狂ってゆく人間関係の描写が上手い

【悪い点】
・設定が丸投げ

B級映画としては傑作と言えるレベルのポテンシャルを秘めた力作です。「ただ同じコースを走るだけ」という設定で、よくもここまで面白くできたものだと感心してしまいました。グロテスク描写(頭がパーン!)やその容赦ない展開、さらに丸投げなラスト等人を選ぶことは確実ですが、是非一度見ていただきたい作品です。

【以下、ネタバレ注意!】

「そうか、頭の中に、爆弾が!」

久しぶりに諸手を挙げて「当たり!」と言えるレベルの映画を引きました。ただし、そうは言ってもバッチリ不満点はあるので、良い点悪い点それぞれ見てゆきましょう。

まずは良い点から。今作の良い点は、容赦のない展開、緊迫感のある演出、そして、狂ってゆく人間描写が上手い点です。

最初に容赦のない展開について。この映画は最初、1人の女性が難病から立ち上がり、生きる希望を見出すシーンからスタートします。しかもこの女優さんが可愛いので「ああ、彼女がヒロインね」と誰もが思ったその瞬間、理不尽なレース開始と同時に彼女の頭が大爆発という、それはもう超衝撃展開からこの映画はスタートします。これで掴みはバッチリでした。

以下これでもかというほど、容赦のない展開が炸裂。基本的に弱い者は死あるのみなため、「安っぽいヒューマンドラマには一切走らないぜ」という製作側の声が聞こえてくるようでした。

またこの映画は、先頭から二周遅れたらどこにいようがもれなく死ぬため、皆で仲良く寄り添っても、一人自分勝手に走る人間がいるだけでそのうち全滅必死という緊張感。このルールのおかげで、休憩中も気を抜けない、抜かされることが恐怖という、独特な緊迫感の演出に成功しています。

そして、最初は皆ただ分からないままに走っているだけでしたが、だんだん狂気じみた行動を取る人々も出てきます。待ち伏せて他の競技者を殺したり、どうせ死ぬんだと自棄になったり……。この映画は、そのあたりの「だんだんおかしくなっていく」描写や、「欲望に負けて自分勝手になってゆく」描写の仕方がかなり上手いです。

そのため、もちろん中には胸糞の悪い展開やイライラする展開も含まれますが、逆にそれこそがこの映画の見どころであり、緊張感を保っていられるポイントでもあるのです。とにかく、安っぽい感動展開などはものの一切存在せず、また重要そうな人物もかなり容赦なく死ぬため「この後何が起こるか分からない」「誰が死ぬか分からない」という先の読めなさが非常にGOODでした。

そして以下には悪い点……というよりも、不満点を。この映画の不満点はただ一つだけ。それは、見事なまでに伏線やラストが丸投げな点です。

作中主人公たちは、このレースの競技者は全員同じ区画に住む住人であることや、指示を出している頭に響いてくる声は自分のものであること等に気が付き、そして「このレースの主催者は誰か?」という問題についても言及しますが、それら伏線は一切回収されないまま、しかもレースの主催者については超人的な謎の存在という以外全く不明のまま、全ての説明を放棄してこの映画は終わります。

監視カメラもないのにレースを監視できていることや、一区画の住人全員を怪しい光で一挙に拉致できること等から「こんなに風呂敷広げて、上手く回収できるんか?」と作中かなり不安でしたが、見事なまでに広げっぱなしでした。

まあ、作中の舞台設定からすると人間ではまずこんなことは無理ですから、「超人間的な存在が主催してるんだろうな」ということは察しがつきますので、これと言って滅茶苦茶な終わり方というふうには感じなかったのがせめてもの救いです。しかし、やはり作中の説明では納得いかない点(なぜ一区画からだけ集めたのか、このレースの正体はなんだったのか等)も多く、どうしても苦し紛れのラストという印象は拭いきれません。

主催者の正体は一緒でも、もしそれらの疑問にうまい説明を付けて綺麗に終われていれば間違いなくA評価となっただけに、非常に残念です。

総評ですが、主にラストシーンで説明すべき設定が丸投げな部分はどうしても気になりますが、レース中の緊迫感の演出、人間描写については非常に高い質であることは間違いなく、見どころも多々ありますので非常におススメの映画です。

ただし、結局のところやっていることは走るだけなので映像的には終始地味であり、人間関係の描写が話の中心となることや容赦のない展開がふんだんに盛り込まれていることもあって、間違いなく人を選ぶ映画です。そのため、むやみやたらと人に勧められる映画ではありませんが、B級映画としてはかなりの傑作であるので、私的には是非見ていただきたい映画でした。

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