「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

武器人間 のレビューです(総合評価 C+)

(画像:Amazon商品ページより引用)

ナチス最終兵器、出撃!

国籍 オランダ、アメリカ
製作 2013
販売 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
原題 FRANKENSTEIN’S ARMY

ムカデ人間に続く超過激映画として、一時期話題になった映画です。ご覧の通りブルーレイが出ており、認知度も高くB級映画かと言われると微妙ではありますが、過去にムカデ人間をレビューしたことがあるので、そのよしみでレビューしようかと思います。

またお察しの通り、今作はムカデ人間とは一切関係なく、武器人間という邦題も原題とは全く関係ありません。それと、今作は全編POV(登場人物の持つカメラで撮られた映像という体の主観映画)のため、酔いやすい方は注意が必要です。

レンタル版を字幕で視聴しました。まずは、今作の予告編(大山のぶ代Ver)と、Wikipediaのあらすじからどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

” 第二次世界大戦末期、地獄の最前線。ソ連軍の偵察部隊が目撃した想像を絶する悪夢!1945年、第二次世界大戦末期の東部戦線。ソ連の偵察部隊がある任務を帯び、ドイツの占領地域に足を踏み入れた。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー…………C
武器人間の質………A
キャラクター………D
設定…………………C

総合………………C+
おすすめ度………B

【良い点】
・武器人間の種類が豊富で一体一体のフォルムが魅力的

【悪い点】
・前半のテンポが悪い
・キャラクターに魅力がなく、特に博士に狂気が足りない
・全編POVのため、せっかくの武器人間をじっくりと見れない

基本的にPOVであることが完全に映画の魅力を削ぎ、足を引っ張っています。しかし敵として登場する武器人間は魅力満載なため、個人的には是非見ていただきたい映画ですね。また、公式サイトには『武器人間図鑑』もあるので、是非そちらもどうぞ。

それと、今作は手術シーン等多少グロテスクなシーンが含まれておりますので、耐性のない方は注意してください。

【以下、ネタバレ注意!】

「(改造したくて)モウガマンデキナイ!!!!」

WWⅡ時代のナチスのマッドサイエンティストが、地下研究所で人間に武器をくっ付けるという鬼畜な研究を行っていた、というお話です。ヒトラー最終兵器といい、どうしてこうナチスはアホみたいな設定の映画によく使われるんでしょう。

さて今作ですが、早速良い点と悪い点に分けて見ていきたいと思います。まずこの映画の良い点ですが、これは今作の目玉である武器人間のクオリティの高さに他なりません。

この映画は武器人間というモンスター(?)を売りにしているだけあって、彼らの質はまさに最高レベルです。しかも、作中には何体もの武器人間が登場しますが、博士一人が手作りで製作しているだけあって、同じ武器人間は一体たりとも存在しません。完全一品もののオーダーメイド製品です。製作陣のこだわりを感じますね。

そのため、武器人間を見て「オースゲー」と思っているだけでも、この映画を見た価値は充分あると言えるでしょう。

さて、以下には悪い点を。今作の悪い点は前半のテンポが悪いこと、そしてキャラクターに魅力が足りないことです。

まずテンポについてですが、初の武器人間登場までには割と時間がかかり、前半は若干冗長です。また、武器人間登場から次の襲撃までには休憩シーンなどの間があることが多いため、緊張感が途切れ途切れになりがちな気もします。

またキャラクターについては、典型的な高圧無能軍人なキャラクターが多く、とても魅力的とは言えません。そして今作の肝となる博士ですが、やはりどうしても狂気が足りませんね。

「人間改造して武器くっ付けるような奴が狂気が足りんとか、こいつ頭おかしいんちゃうか」と思われるかもしれませんが、博士がなぜこういったことに興味を持ったのかという動機付けや、武器人間を作る過程のシーンが極端に少ない事もあって、どうしても薄いキャラクターに感じてしまうのです。

しかし、この二つについてはまだ序の口です。それは、今作には最大の致命傷が存在するからです。その致命傷とは、ずばりPOVという主観視点での映画にしてしまったことなのです!

映画をPOVで撮影することのメリットは、製作費が安くて済むことと、(モンスター物の場合)追いかけられる臨場感や恐怖を演出しやすいことであると考えられます。今作もそれに根差してPOVでの撮影方式を取ったのでしょうが、これが今作のコンセプトと見事に喧嘩し合い、まさに最悪の結果を生み出してしまったと感じました。

POVの映画というのは、一般的にモンスターに襲われている様子を長々と撮影することはありません。武器を持たない撮影者が襲われている時というのは通常必死で逃げている時なので、ブレた映像でごまかしたりするのが普通ですし、また自分が襲われながら撮影を優先する人はまずいないはずなので、その方が自然であるとも言えます。

しかしこの映画の場合、『種類豊富な武器人間の造形を楽しむ』ことが売りとなっているのは間違いないので、製作側の「なるべく武器人間を視聴者にじっくり見せたい」という気持ちも分かります。そしてこれとPOVが合わさってしまった結果は、『襲われながら全力で武器人間を撮る』『武器人間を映しながら逃げる』という、POVとして何とも不自然極まりない映像に仕上がっているのです。

また上記のような措置を取っているにもかかわらず、POVなのでブレが酷いため、ゆっくりと武器人間の造形を楽しめません。何よりも、POVという体では近くでじっくりと武器人間を映すことができず、彼らの開発シーン等をふんだんに撮ることも設定上無理です。そのため、「武器人間の質は高いのに、じっくり見れない」というジレンマを引き起こしており、POVであることがこの映画の良い点を完全に殺したと私は感じました。

総評ですが、ハッキリとした強みがありながらそれが見事なまでに殺されているという、なんとも惜しい映画でした。前半のテンポの悪さやキャラクターの魅力のなさを悪い点に挙げながらも、今作は『質の高い武器人間を見て楽しむ映画であり、そんな悪い点などこの映画においては微々たるものである』と私は思っているのですが、POVが完全に良い点の邪魔をしている部分だけは、口を出さずにはいられませんでした。

世の中のPOV映画には、その良さを全く生かし切れていない酷い映画というのは多々ありますが、これほどまでに「何でPOVにしてしまったんや……」とため息の出るほどに惜しい作品はありませんでした。もしPOVでなくてこの内容だったというだけでも、確実にB評価は下らないでしょう。

しかし何度も述べるように、今作の武器人間の質の高さには目を見張るものがあり、いろんな種類がいて見ていてとても楽しいですので、一見の価値はある映画だと思います。一応、今作は脳をいじったりする手術シーンもあるので、グロ耐性のない方は避けた方が良いと思われますが、平気だという方は是非一度見てみてください。

出るかどうかは分かりませんが、武器人間2は是非出てほしいと思います。その際は是非ともPOVを捨てて、普通の撮影方式で出していただきたいですね。

ちなみに、僕はモスキート(パッケージにデカデカと映っているやつ)が一番好きです。皆さんは、どの武器人間がお好きですか? 是非、視聴して確かめてみてください!

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