「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

シー・オブ・ザ・デッド のレビューです(総合評価C)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 ブラジル
製作 2013
販売 アメイジングD.C.

久しぶりにゾンビ映画を。レンタル版を字幕で視聴しました。吹き替えはないです。まずは予告編と、Amazon先生のあらすじからどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

“この海は呪われている。 海辺に佇む小さな村。 ある日、海に出たベテラン漁師のベロアは奇怪な形態をした生物から襲われ大けがを負う。 誰も信じないだろうと真実を隠し、釣れたアカエイを売った彼はその夜、おぞましい行動を起こす。 一方で、アカエイをさばいた使用人のアウビノは身の変化に気づく。 実は海中でゾンビ感染が発症、魚たちは皆ゾンビ化していたのだ。 感染は村人間でも徐々に進み、大勢が集まった娼婦小屋開店日の夜、爆発的に広がる。 大量発生したゾンビで覆い尽くされ、村は地獄絵図と化す。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー………C
ゾンビの質………B
キャラクター……C
設定………………D

総合………………C
おすすめ度………B

【良い点】
・ゾンビの造形は良好
・終盤の畳み掛けるような展開はGOOD

【悪い点】
・中盤は無関係な話のオンパレードで中だるみが酷い
・丸投げした設定
・力を入れる部分がブレブレ

良い点と悪い点がはっきり分かれた映画で、特に前半のテンポの悪さから損をしていますが、アウトブレイク後は見どころもあるのでゾンビファンの方は是非。

【以下、ネタバレ注意!】

「前半の展開はもう少し何とかならんかったんか(困惑)」

ブラジル産のゾンビ映画です。ホラー三部作として公開されたようですが、一作一作は話が独立している(と思う)ので、別にこれ単体で見ても全く問題はないでしょう。私もこれしか見ていません。

さて今作ですが、見事なまでに良い点と悪い点がクッキリハッキリと別れています。まずはどうしても気になる悪い点からいきましょう。

この映画の悪い点は、設定丸投げの部分があることと、前半のテンポが恐ろしいくらいに悪いこと、そしてなにより、いったいどこを見せ場にしたいのかよく分からないレベルに方向性がブレている点です。

まず、上記のあらすじに実は海中でゾンビ感染が発症、魚たちは皆ゾンビ化していたのだ。と当然のように書かれていますが、本編ではこんなことは一切語られず「まあ大体分かるやろ、察して」という感じに流されます。ただしこの映画、前半かなりテンポが悪く、私もボケーッと見ていたので見落としかもしれません。もしそうだったらお許しください!

まあどのみち、そもそもなぜゾンビ感染が発生したのか、なぜ発症場所は海なのか、作中に出てきた半魚人やエイ頭の化け物はなんだったのか等、一切語られずじまいの設定もかなり多いので、説明不足&設定放棄な感じは否めないですね。

そして、この映画最大の欠点である前半のテンポの悪さについて。海から引き揚げたゾンビ半魚人(正体不明)に村の男が噛まれ、彼が感染源となって村にゾンビ化が広まってゆくのだな、というところからこの映画は出航するわけですが、この男がゾンビとなり、また村に感染が広まるまでに何と丸々60分はかかります。

ではその間、一体何の話をしているのかですが、『村に新しい風俗店がオープンし、そこに入った客が乱痴気騒ぎをしている様子』という、もうゾンビとは全く無関係な話を延々と垂れ流されるわけです。しかもこの間様々なキャラクターたちが登場しますが、終盤のゾンビアウトブレイクと共に非常にあっさりとした退場を繰り返すため、「マジで前半の話はなんやったん?」と言いたくなります。

ただ結局のところ、前半と後半の展開のミスマッチ感が否めず、一体どれを見せ場にしたいのかがよく分からずいろいろと中途半端に終わっている点が一番の問題でしょうか。

先述のようにこの映画は、前半はほぼ全てゾンビとは無関係なキャラクターたちのやりとりのみで、後半はゾンビの大群との死闘が大半です。後半はもちろんのこと、それなりに個性的なキャラクターたちも多いので前半部分にも見どころはあるのですが、この両者が上手く噛みあっていないという印象を強く受けました。

もしこの映画の構想が、前半部分を活かしてキャラクターたちを立たせた話にしたかったのなら、明らかに主人公ポジションの人物がいない点と、前半大事に育ててきたキャラクターたちを後半であっさりと退場させ過ぎた点が足を引っ張っています。

逆に、後半の一般人VSゾンビの死闘をメインに描きたかったのだとしたら、主人公ポジションがおらずキャラクターたちがあっさり退場してゆくことには納得いきますが、今度は前半のテンポの悪さが邪魔です。

一応、個性を持たせたキャラクターたちをあえてあっさり退場させることで、ゾンビたちを立たせるという見方をすることもできますが、それならゾンビについてのきちんとした設定が欲しいところです。

結局のところ、どの見方をしても中途半端感はぬぐえない、という印象でした。

と、いろいろとこの映画の不満点を述べてきましたが、今作にはしっかりと褒めるべき点もあります。この映画の良い点は、終盤の畳み掛けるような展開と、ゾンビの質の高さについてです。

まず前半はテンポが悪すぎるという話をしましたが、反面後半は、なかなか質の高い血みどろの大乱闘が繰り広げられます。出血流血返り血のオンパレードで、前半のだるさを忘れさせてくれるような良い展開でした。

また血糊の使い方についても、この手の映画だと真っ赤な血が噴水の如く不自然にピューピュー吹き出したりして笑ってしまうことも多々あるのですが、この映画の血はあくまでドス黒く、ダクダクと流れ出る感じが演出されており、B級映画としては非常に満足のいくものでした。

それに関連し、ゾンビの質もなかなか高いです。血糊を塗りたくってメイクを誤魔化した感もあるものの、全体的に安っぽさはこれといって感じないように上手くできていたと思います。また、人間だけのゾンビにとどまらず、(設定は放棄ですが)謎の生物たちのゾンビや、最後には超巨大生物のゾンビも登場させてくれ、製作側の意欲的な姿勢が伝わってきました。これらの部分は純粋に評価できると思います。

総評ですが、かなり設定や展開に粗も目立ち、褒めることのできない点も多々ある一方、後半はしっかりと盛り上げてくれました。何より普通のゾンビだけでは満足せず、様々な造形のゾンビを登場させてくれた点は、ゾンビ映画ファンとして評価に値します。

ゾンビ映画をほとんど見ないという方からすると、粗い部分が多く目につくことと思い、今作の魅力が伝わりにくそうな気がするためおススメはしませんが、ゾンビ映画ファンならばそれなりに楽しめる部分もあるのではないかと思います。

私自身諸手を挙げておススメはしませんし、良作かと言われると言葉に詰まりますが、「クソ映画」と一言で片づけてしまうにはあまりにも惜しい作品です。興味の湧いた方は、是非ご視聴ください。

>

©Copyright2021 第B級映画レビュー小隊