「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ザ・グリード のレビューです(総合評価A+)

(画像:Amazon商品ページより引用)

国籍 アメリカ
製作 1998
販売 パイオニアLCD

一部に熱狂的ファンを持つ、もはや伝説レベルのB級モンスター映画です。かなり古い作品ですが、「B級モンスター映画が見たければまずこれを見ろ」と自信を持っておススメできる映画ですね。それもそのはず、実はこの映画の監督は、後にあの大ヒット映画、ハムナプトラを作ることとなる方だからです。

ただしこの映画、それはもう深い問題が……
テレビ放映版を吹き替えで視聴しました。
まずはあらすじと、予告編をどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

” 豪華客船アルゴノーティカ号は南シナ海を航海していた。密輸船の船長・フィネガン(トリート・ウィリアムズ)はこの船に乗りこもうとする謎の武装集団を運搬する。しかし、アルゴノーティカ号にいるはずの3000人の乗客はほとんどが死亡。船内は血の海だった。得体の知れない生物と戦うことになったフィネガンたちだが…。 日本公開時のキャッチフレーズは「喰って、喰って、喰いまくれ」。当然、B級スプラッタ・ホラーと思いきや、フタを開けてみれば案外正当派のアクション映画なのに驚く。それもそのはず、監督はのちに「ハムナプトラ」シリーズを撮るスティーブン・ソマーズ。ハリウッド映画のお家芸であるテンポのよい演出が心地よい。主演のトリート・ウィリアムズはメル・ギブソン似の味のある俳優。ボンド・ガールのファムケ・ヤンセンが女スリ師に扮し、可愛いお色気を振りまいているのもご愛嬌。スカッと楽しめる娯楽大作といえよう。(吉田直子)(あらすじ:Amazon商品ページより引用)

ストーリー…………A
モンスターの質……A
キャラクター………A
設定…………………B

総合…………………A+
おすすめ度…………A

【良い点】
・テンポが良い王道的ストーリーで安心して見れる
・キャラクターが非常に魅力的
・モンスターの魅せ方が非常に上手い

【悪い点】
・そもそも映画を見る手段が乏しい

少なくとも私は、これ以上に完成されたB級モンスター映画を知りません。B級モンスター好きにも、普段それを見ない方にも、「まずはこれ」とおススメできる映画です。

【以下、ネタバレ注意!】

このブログが始まってほぼ二か月、初の総合A評価です。まあ、この映画を見たことのある方なら、納得してくださる方も多いと思います。

実はもう10年以上前、子供のころに一度レンタルのVHSだったか何かでこれを見た記憶がありまして、話自体はラストシーン以外完全に忘れてしまっていたのですが、「また見たいなぁ」と思っていました。しかし、先日まで見る機会がありませんでした。

それもそのはずで、実はこの映画、DVDが全く出回っていません。Amazonでは新品はなし、中古品は最安値で5000円という高さ。さらに私が調べた限り、レンタルもされていません

そのため完全に再視聴を諦めていたのですが、何とタイミングの良いことに、先日深夜の映画でこれが放送されたのです! もちろん見ましたとも、朝4時までリアルタイムでがっつりと。Twitterでこのことを呟いてくださった方には、感謝してもしきれません。

つまり、私が見たのはTV放映版なので、おそらくカットされているシーンもあったと思います。そのため完全な作品のレビューにはなっていないということをご了承ください。ちなみに今作、おそらくネット上の視聴サービスを利用して見るのが一番手っ取り早いと思います。GYAO!ストアだと500円くらいで見れるようです。

前置きが長くなりましたが、早速今作のレビューに入っていきましょう。先に述べたように、今作の監督は後にハムナプトラを手掛ける方です。この頃から、その才能は遺憾なく発揮されていました。

まず今作の悪い点ですが、正直なところ何も思いつきませんでした。もちろんA級の映画と比べると、モンスターのCGが若干お粗末なところはありますが、B級としての出来は充分どころかかなりのものです。

一つだけ強いて挙げるとすれば、この映画のキャッチコピーは「乗客3000人、喰いまくれ!」的なものなのですが、この映画は怪物に襲われた後の船の探索がメインなので、乗客が怪物に喰われまくるシーンはありません。後半になって、その残骸が散らばっているだけです。そのため、モンスターが人を喰いまくるシーンが見たいという方には、少々物足りないかもしれません。

それを踏まえて、今作の良い点を。今作の主な良い点は、魅力的なキャラクター、テンポの良いストーリー、モンスターの魅せ方が上手いこと、の三点です。

まず魅力的なキャラクターについてですが、今作の主軸となるのは、小型船の船長である主人公、詐欺師の女、お調子者の機関士、テロリストのリーダーといった方々です。その誰もが生き生きとしており、またユーモアをはじめとしたセリフ回しのセンスも高いため、見ていて引き込まれてしまいます。

悪役はしっかり悪役をしており、主人公は非常に頼りがいがあり、お調子者はふざけた感じが見ていて面白く……と、その誰もに高い好感を得られます。

次にモンスターの魅せ方についてですが、私はこれがこの映画最大の強みだと思います。この映画に登場するモンスターは一種類だけなのですが、とにかくその魅せ方が上手い

前半、モンスターは姿を現さず、間接的な表現での登場となります。鉄製の壁が凹んだり、床が剥がれて迫って来たり、水の中を人間が引きずられたり……といった具合です。姿を見せなくても、ここまでの演出ができるのかと感心してしまいますね。

そして中盤の良い具合の頃を見計らって、モンスターがその姿を現します。それは巨大なワームでした。それを見た船員は太古に生息していた巨大ミミズの話をし、船内に大量の巨大ミミズが潜入しているということに皆が気付きます。

そして終盤、そのモンスターについて意外な事実が……はい、これはこの作品一番の見せ場なので、ネタバレはやめておきます。是非視聴して確かめてみてください。「ふざけんな気になるだろーが」という方は、Wikipediaにネタバレが書いてあったのでそちらをどうぞ。

ここで重要なことは、戦っているモンスターは全く同じなのに、まるでシーンごとに別のものと戦っているかのような錯覚を覚えることができる点です。モンスターの情報をあえて小出しにしてゆき、少しずつその全貌に近づいてゆくことで、まるでいろんな種類のモンスターがいるかのような感覚に陥りました。『同じモンスターの絵ばかりで飽きてきた』というモンスター映画にありがちな欠点が、この映画では全くありません

そしてモンスターの情報が出てくるタイミングが、実に絶妙なのです。それを含めて、ストーリー展開のさせ方が非常にうまいですね。まさに起承転結のお手本ともいえる構成で、一つ一つのシーンの長さも、飽きないちょうどいいタイミングでした。

総評ですが、B級モンスター映画の名作と言われるだけあり、非常に完成された一本です。特にストーリー展開やモンスターの魅せ方については、これ以上の作品はなかなかないと思います。また地味に、船内で起きる最初のパニック(モンスターとの衝突による激しい揺れ)の描写も迫力があっていいですね。

またこの作品を見て「いや、面白くなかったわ」と思われる方は、おそらくB級のモンスター映画に向いていないと思われますので、自分がその手の映画を楽しめるかどうかを判断する材料として利用するのもいいと思います。

見る手段に乏しいのが非常に残念ですが、地上波(主に深夜)での放送を待つか、GYAO等ネットの視聴サービスを使って見るか、といったところでしょう。B級モンスター好きの方はもちろん、それに興味があるという方にも安心しておススメできる一本です。もっと頻繁に、できれば休日夜9時枠でテレビ放映してください、お願いします(懇願)

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