国籍 イタリア
発売 2014
販売 KADOKAWA
原題は6 GIORNI SULLA TERRA/DAY 6な、みんな大好きガバガバ邦題シリーズですよ。企業も、なんとか視聴者が目を引くようなタイトルをつけて売り上げを伸ばすのに必死なのです。
Amazon先生のあらすじと一緒に予告編もどうぞ。
【予告編】
【あらすじ】
“エイリアンにアブダクトされた人々を調査していたダヴィデ教授と彼のグループ。 教授は、『エイリアンは太古の昔にやって来てそのDNAを人間に埋め込み、そのDNAが人々の無意識下でエイリアンの記憶を甦らす。』と、 ある学会で発表した後、自分もエイリアンにアブダクトされたという美しい女性:サトゥルニアと出会う。 後日、ダヴィデ教授が、サトゥルニアに後退催眠をかけた所、 無意識下に眠っていたヘクサボルと名乗る、強力で邪悪なパワーを持つエイリアンの魂を出現させてしまう。 ヘクサボルに支配され始めた彼女は、次第に衰弱していく。 ──予言書「ダニエルの70週」とヘクサボルの関連を見出したダヴィデ教授は、カトリックの司祭のすすめで、 悪魔祓い(エクソシスト)で有名なプラトン神父に、サトゥルニアに取り憑いたヘクサボルの魂を追い出してもらおうとするが・・・・。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)“
ストーリー………E
エイリアンの質…B
キャラクター……C
設定………………B
総合………………C
おすすめ度………E
エイリアン物好きにもエクソシスト物好きにもすすめられないどころか、そもそもキリスト教徒の方以外は、見ても全然面白くないと思います。ちなみに私はキリスト教徒ではないです。
【以下、ネタバレ注意!】
要するに、エイリアンVSエクソシストするのは中盤のほんの一瞬のみというのがこの映画。しいてVSを付けるなら、エイリアンVSサイエンスでしょうか。邦題を付けた奴出てこいシリーズですね。
さて、では内容はというとですね……これがまた恐ろしい代物です。まず皆さん、もう一度あらすじを読んでいただきたいのですが……上記のAmazon先生のあらすじ、大体あっています。しかしこれを読んで、すんなりと一回だけで理解できる人が、果たして何人いるでしょうか――もし、あなたがこのあらすじを読んでもよく分からないというのでしたら、あなたはこの映画を見てはいけません。きっと楽しめないと思います。理由は後述。
さあ今からいろいろと書くわけですが、その前に一言言っておきたい。この映画、決して面白くない訳ではないのです。今作には、しっかりと褒められる点があります。
それは、作りこまれた設定と、映像技術を含めた演出です。
この作品、設定が他作品と比べ物にならないくらい作りこまれています。人類は、実はエイリアンに生み出された種族の一種で、彼らの手によって数千年かけて改良を加えられてきた、というなかなか大胆な設定に加え、なぜエイリアンは人間に乗り移ろうとするのか、どうして人間は生み出されたのか等、細かいところまで見事に設定が練られています。
また、エイリアンとの遭遇やおどろおどろしい夢の描写などはなかなか高度で、下手なA級映画にも負けない演出力はあったと思います。
では一体この映画、何がいけないのかというとですね……
ずばりそれは、作りこまれた設定と説明不足のストーリー以外の何物でもありません!
「いやいや、さっき設定褒めてたやん」と思われたでしょうが、これが今作の凶悪な致命傷の一つです。つまりですね、設定が複雑に作りこまれ過ぎてて、一度説明されてもさっぱり理解できないのです!
まずこの映画、教授が
「エイリアンは私たち人間の魂をエネルギーとして使いたいが、そのエネルギー量はエイリアンの許容量を超えていてそれに触れると燃えてしまうので、そのためにその人間の身体を入れ物として利用し、さらに人間とエイリアンの交配種を作ることで……」
というような説明が、いきなり、何の脈絡もなく始まります。そしてこれを軸にして話が進んでゆくので、これを聞き逃したり「ちょっとよく分からんなあ」というような姿勢で聞いていると、たちまちその後の展開についてゆけなくなります。
そして恐ろしいことに、この映画は終始この事態が頻発します。しかも恐ろしいことに、この映画最大のキーポイントは周波数なのですが、これがなぜ重要なのかの説明が超難解かつさらっと一回説明されるだけなので、ここを逃すともう「周波数が重要なのはわかったけど、何でそれが重要やねん」ということがよく分からないままエンディングを迎えることとなります。私はこの状態でエンディングを迎えました。そして今も、なぜそれが重要だったのかをよく分かっていません。そうは言っても、それが重要だった理由はまだ何となくは分かるのですが、そもそもなぜ周波数に注目しようという経緯になったのかについては、全く分かりませんでした。
つまりこの映画、前半はもうこれでもかというほどに設定の説明が盛り込まれ、後半それが落ち着いてくると、今度はめまぐるしくストーリーが進みだし、今何が起きていて彼らはこんなことをしているのかが全然理解できないままエンディングへと突っ走ってゆくことになります。
さらに今作は、ただでさえ説明不足なのに加えて、キリスト教の知識が物語の根幹に絡みついてくるせいで、キリスト教徒でない人間はほぼ確実にダブルパンチを食らうという恐ろしい構造になっています。
総評ですが、とにかくこの映画は高い理解力が視聴者に求められます。プラスキリスト教の考え方に始まる知識も要求されるため、この映画を一回見ただけで楽しもうとするならば、100の説明で120を理解できるだけの能力が必要とされます。
しかし先ほども述べたように、この映画は決して面白くない訳ではありません。主に夢(無意識世界?)での登場ですがエイリアンの造形自体は良いですし、演出も上手く、またストーリーの根幹にある、人類はエイリアンに作られた種族であるという発想も面白かったです。さらに作品全体を通しての雰囲気作りがとても上手いので、話はよく分からなくても雰囲気だけは楽しめました。
まあ、もっといらなそうな設定を削って、視聴者に分かりやすい作りを心がけていれば、なかなかの良作になれた可能性のある映画だったと思います。それだけに残念ですね。
もちろんこんなことになったのは、私の理解力が足りないせいかもしれません。ここまで読んでそう思われた方は、是非一度この映画をレンタルして見てください。そして私に、いったい作中で何が起こっていたのかを教えてください。お願いします。