B級のスプラッター映画です。何かのパチモン映画というわけではないのですが、おそらく死霊のはらわたシリーズをかなり意識した作りになっています。
レンタル版を、音声を吹き替えにしつつ、日本語字幕を付けて視聴しました。なんでそんな意味不明なことをしたのか分からないと思いますが、この映画において、これは超重要事項なのです。そのあたりのことは後ほど。
話がそれましたが、スローターの予告編とAmazon先生からのあらすじを掲載します。予告編は日本語字幕がありませんので何を言ってるのか分からないと思いますが、雰囲気は十二分に伝わると思います。
製作 2006
国籍 アメリカ
販売 アートポート
あらすじ
生血を欲する悪霊が学生たちを襲うホラー。掃除のバイトで古い館にやって来た学生たちは、そこで古い書物を見付ける。それによると、昔、悪霊を生き返らせる儀式がこの館で行われていたという。そして彼らは偶然にもその儀式を行ってしまい…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
予告編
ストーリー……D
悪霊の質………C
キャラクター…B
設定……………D
グロ度…………C
ホラー度………E
ギャグ度………D
総合……………D
おすすめ度……D
ギャグとして見ても、ホラーとして見ても……特にホラーコメディー系のジャンルを見ない人にはお勧めできません。
【以下、ネタバレ注意!】
さて今作のレビューですが、見る前にもう一つ注意事項があります。この映画を見た人は、主に四つのタイプに分類できます。すなわち『死霊のはらわたを見たことがあるかないか』と『吹き替えで見たか字幕で見たか』です。これ、自分がどのタイプに分類されるかで評価が180°変わってくるレベルの代物なのです。
まず、死霊のはらわたを見たことあるかないかについて。この映画の構成ですが、確実に死霊のはらわたを意識しています。一歩間違えればパクリじゃねーかレベルまで行く部分もありました。ですがこれは、逆に言うと『死霊のはらわたのパロディもの』として楽しめる余地があるということです。
ただ私自身、死霊のはらわたを見たのはかなり前のことで記憶も曖昧なので、そういった視点ではほとんど楽しめませんでした。そのシリーズのファンの方なら、大いに楽しめるのかもしれません。
ただし、死霊のはらわたを見たことのない人も安心してください。この映画において、そんなことは些細な問題です。この映画で一番重要なことは、先に述べたように吹き替えで見たか字幕で見たかだからです。
「吹き替えか字幕かなんて、その人の好きにすればええやろ?」と思ったそこのあなた。はい、私もそう思います。私自身、映画を字幕で見るかどうかはその日の気分次第。ただしそれは、普通の映画に限った話です。
さて、ではストーリーを追っていきましょう。まずはオープニング(OP)から始まるわけですが、この映画何を思ったか、OP開始早々五人の女性が全裸になって呪文を唱え始めるという展開から始まりました。
全裸……死霊……うっ……
頭が痛い
……。
さて、この時点で駄作臭がやゔぁいです。私は「安易なエロ描写は駄作の法則」があると信じているので、すでに期待感が(逆の意味で)MAXでした。
しかしここで、さらなる衝撃が視聴者を襲います。何気なく吹き替えで見ていると、登場した女キャラの一人が喋りだしたのはまさかの関西弁。パツキンのチャンネーが関西弁を喋る姿にはさすがに笑いました。
しかしこの映画、この程度で終わりません。その後登場した黒髪の青年、口から飛び出たのはバリバリの博多弁。もはや意味不明すぎて声が出ました。
とまあこんな感じで、この映画は非常にカオスなスタートを切りますが、断言しておくとこの瞬間が一番面白いです。
この後は「外人が九州弁喋ってもよか?」に始まるメタ発言や、「Togetherしようぜ」「アーチーチーアーチー」等文に起こしているだけでも恥ずかしいパクリギャグの連発で、とても見ていられたものではありませんでした。もちろん原文でそんなことを喋っているわけはなく、これらは吹き替えを付けるにあたって無理やりねじ込んだものです。
このように吹き替え版が吹き替えていないという現象は、B級映画では少なからず見られるものですね。個人的にはこのような姿勢は「元映画が面白くないから吹き替えで遊んだれ」という態度が透けて見えるので好きではありません。まあ方言を使うくらいならともかく、原文と全く違う趣旨のことを吹き替えで喋るなよと思います。
ただし、こんなノリが嫌いじゃないという方には、むしろこれはプラスになり得るかもしれません。それにこのノリが嫌な人は字幕で見ればいいだけの話ですから、そこまで神経質になる理由はありませんね。私はなんだかんだ言っても吹き替えで話していることが気になったので、字幕を表示しながら見るというやり方で妥協しました。
と、吹き替えについてはこんなところです。自分がそういったノリを許せるかどうかで、字幕か吹き替えを選んでください。
さてそうなると、いったい本筋のストーリーがどうかという話になってきます。簡潔に言うと酷いの一言に尽きます。
今作の一番の致命傷、それはテンポの悪さです。死霊自体はちまちまと出てくるのですが、窓に映ってたり後ろに立ってたりという演出ばかりで、なかなか本格的に動き出してくれません。結果、主人公たちの中から最初の犠牲者が出るまでに、実に50分以上かかります。その間吹き替えで見ている人は寒いギャグを、字幕で見ている人はセンスのないユーモアをだらだらと垂れ流されるわけですね。どちらのルートを選んでも地獄です。
ですが安心してください! 死霊が本格始動してからはもっと酷いです。
吹き替えは寒いギャグを連発と描きましたが、この映画はもともとユーモア発言(面白いとは言ってない)がふんだんに盛り込まれています。ある種のホラーコメディーというやつでしょう。そして後半、それは加速します。
掴みかかられそうな距離でゾンビに襲われている状況で「このゾンビは旧型(ノロい)か新型(早い)か」「誰がゾンビをやるか」等どうでもいいことを長々と議論しあい、その間ゾンビは待ちぼうけ。このような寒い展開がこれでもかというほど繰り返されるので、見ている側は酷い苦痛を受けます。
もちろん、死霊のはらわたをはじめとした名作の中にも、このようにシリアスな場面の最中にユーモアを取り入れるという映画は多々あります。ただこの映画がそれらと決定的に違う点は、ユーモアのセンスのなさもさることながら、ユーモアの取り入れ方です。
シリアスの中にユーモアを入れる場合、あくまでもシリアスを本流としてそれを遮らないように、パッとユーモアを入れてやるのが良いと私は思います。一つのシリアスシーンに五つも六つもユーモアを取り入れようとすると、本流の流れが遮られ、テンポが悪くなります。逆にコメディを本流とするなら、ショーン・オブ・ザ・デッドのように、そのシーンではシリアス感はあまり感じさせないようにしなければいけません。
この映画は、ワンシーンでその両方をやってしまうせいで、どっちも中途半端な感じで終わってしまうといった印象がかなり強いのです。シリアスを感じさせながらユーモアも上手く立たせるという演出ができるのなら良いのですが、この映画の場合は「さほどシリアス感もなければユーモアも面白くない」と完全なダブルパンチ。
これに加えて安っぽいCG、吹き替えで見ているのにところどころ元音声が聞こえる等の仕様で、最終的にはただただエンディングを待つばかりという状態に。久しぶりに無心になれました。
総評ですが、この映画はこのような寒いノリを楽しむための映画です。スプラッター描写やゾンビ等のメイクはかなり頑張っていたのでその点は素直に評価できますが、結局悪い点の方が目立ってしまった作品でした。
セリフ改変による強引なギャグを楽しみたい方は吹き替えを、死霊のはらわたやバタリアンのようなノリを楽しみたい方は字幕を見るといいかと思います。どちらも楽しめないという真面目な方は諦めてください。死にます。
もしかすると、あなたのお近くのレンタルショップでは今作を扱っていないかもしれませんが、その時は素直に死霊のはらわたでも借りて見ましょう。多分その方が面白いです(無慈悲)。何はともあれ、まずは行動ですよ。
余談ですが、この後に見た名作映画は、以前にそれを見た時よりも数倍面白く感じられました。