長いお盆休みも終わりましたね、皆さんいかがお過ごしでしたか。
さて、今までは洋画ばかりでしたが、B級ホラーと言えばジャパンも負けていません。そのお盆明け記念すべき一作目は、この映画です。
すでにタイトルで駄目そうな予感がしますが、それは見てみるまでのお楽しみ……さてこちらの映画ですが、レンタル版を視聴しました。というより、どうも市販はしてなさそうです。
発売 2011
販売 ミッドシップ
【予告編】
【あらすじ】
母校の小学校が廃校で更地になると知り、5年前の卒業時に校庭に埋めたタイムカプセルを掘り起こしにやってきた菜月ら男女5人。その中に、埋めた覚えがない1冊のノートを発見する。『ナナフシギ』というタイトルで意味不明のコトバが綴られた不気味なそのノートを手にした途端、彼らの間に不穏な空気が流れ始める。誰もいない校舎裏から一本の黒煙が立ち上ると、彼らは何かに導かれるように立入禁止の校舎内に入り込んでいき、次々と不可解な現象と恐怖の惨劇に見舞われる。それはすべて、20年前にこの学校で変死したサチコという少女の呪いが関係していた・・・。(あらすじ:MIDSHIP 公式ページより引用)
ストーリー……C
幽霊の質………C
キャラクター…C
設定……………D
ホラー度………E
総合……………D
おすすめ度……C
※「世界観」の項目は今回より「設定」に変更されました。
ジャパニーズB級ホラーの入門には、ある意味最適だと思います。
【以下、ネタバレ注意!】
さていきなりですが、まずは簡単な総評から。簡潔に言うとこの映画は『何がしたいのか分からない』映画です。さらに言えば、褒める点がほぼありません。ですが安心してください、ネタ要素はたっぷりあります。
まずこの映画は、ストーリーが破綻していたり、設定がおかしかったり、役者の演技が(逆の意味で)神がかっていたりととにかく酷い出来です。ですが一つだけ、諸手を挙げて褒められる点が。
それは、視聴時間が短くて済むことです!
ジャパニーズB級ホラーには多いことなのですが、特にこの作品はたったの70分で終わります。その恩恵もありストーリー自体の出来は良くなくても最後までだれずに視聴できます。この点を加味して、本来ならばストーリーはDのところをCにランクアップしました。
はい、褒められる点は以上です。以降は完全にダメ出しゾーンです。
まずこの映画を見始めて最初に目につく点が、役者の演技の酷さでした。この映画ですが、出演者の中に演技が上手い人はゼロです。最高で標準レベルですね。
神がかった棒読み、滑舌の悪さはもちろんのこと、セリフとセリフの間に明らかに不自然な間があったり、ピアノを弾くシーンでは上下に肩を震わせるだけで指が全然動いていないなど所々に見どころ満載です。
切羽詰って大声で助けを求めるシーンになろうものなら「ハヤクヨンデグルンダ!!!」
とまあ終始こんな感じなので、どんなシリアスっぽいシーンでも笑うなという方が無理です。
さらに言えば、ラストに近づくにつれて七不思議の謎が解けていく中で、残った最後の不思議を解決しようとする超重要なシーンについて。そこで主人公はその不思議の名前を口にした途端何かを閃き、学校中を探索して回るのですが、彼女が何と言ったのか全く聞き取れないせいで、しばらくは一体何を探しているのか全然分からないという致命的なミス(?)もありました。
総じて演技は、学芸会より多少マシなレベルです。まあ、演技については
もっと酷い映画
もあるので良しとしましょう。
次に挙げるのは、演出の酷さです。
見ての通り今作の舞台は廃校なのですが、このどうあがいても怖くなりそうな舞台で全く怖くありません。
お粗末な血糊や残念なメイクは低予算故に仕方ないとしても、怖い雰囲気の作り方や登場人物の襲い方を完全に失敗しています。幽霊の出てくるタイミングやカメラ描写などが完全にギャグレベルで、ビクッとしたシーンはおろか、怖いと感じたシーンすら皆無という逆にホラーな仕上がりです。普通このような映画でも一箇所くらいそう言ったシーンがあってもよいものなのですが。
しかしここまではまだまだ序の口。今作最大の致命傷は、破綻したストーリー設定です。
まず、タイトルにもあるように今作は七不思議がキーワードですが、作中に出てくる七不思議は後に幽霊となる少女、サチコが自分の想像妄想を勝手に書き綴ったものですので、つまり何が言いたいかというとこんなものは七不思議ではありません。七大妄想集か、せめて七つの呪いとでも言った方がしっくりきます。
まあ、作ったサチコちゃん本人が七不思議だと言い張っているので、七不思議なのでしょう。では、なぜそもそも彼女がこんなものを作ったのかというと……実は全く分かりません。
このサチコちゃんですが、友達とのかくれんぼ中に事故で死んでしまったらしいことが最初に分かります。自分で隠れた場所から出られなくなって、そのまま誰にも見つけられず衰弱して死んでしまったわけですね。実はそれは事故ではなく、友達にはめられて閉じ込められてしまったことが後に分かりますが、そのサチコちゃん、衰弱して薄れゆく意識の中で書いたのがこの七不思議。
ここまでの話を聞いて、なぜ彼女がこれを書いたのか分かる人がいれば逆に教えてください。自分をはめた友達を呪いたいだけなら、どう考えても一不思議で足ります。しかも話を聞くに、彼女は自分をはめた友達を頃した後も無意味な虐殺を続けているようなのです。
と、ここで疑問が。そもそも、サチコちゃんが死んだのが20年前。主人公たちが卒業したのが5年前。サチコちゃんの死亡後に、彼女の呪いと思われる児童の連続死亡事故が相次いだ……
疑問一つ目。なんで主人公たち、その事件のこと何も知らないんでしょうか? まあ、以前に学校で起きた死亡事故なんて耳に入らないことも普通でしょうが、なんと主要キャラの一人には、オカルトやらホラー好きみたいな死に設定があるのです。いや、せめてお前は知ってろよ。
疑問二つ目。サチコちゃん、一体この20年間何をしてたんでしょうか。主人公たちの在学中はまるで手を出さず、卒業して再び母校を訪れた時に襲うという意味不明さ。小学生には手を出さない的なポリシーがあるのかなとも思いましたが、自身の死亡後に連続死亡事故を引き起こしていますし……。
とまあこのように、サチコちゃんが七不思議を書いた動機も不明なら、いまさら主人公たちを襲った理由も不明、挙句の果てに、そもそもなんでサチコちゃんが友達に閉じ込められて頃されたのかも不明という、不明づくしの映画です。これはひどい。
そして最後の最後、サチコちゃんは校舎から逃げ延びた主人公の一人に対して衝撃の一言。
「七不思議を知るとね、死ななきゃならないんだよ」
なるほど、これでやっと疑問が一つ解けました。主人公たちが頃されたのは、七不思議を知ってしまったからなのですね。
ですがここで、最後の疑問が浮かび上がります。そもそもこの主人公たちが七不思議を知ってしまったのは、彼らが掘りに来たタイムカプセルの中に七不思議を書いたノートが入っていたからです。そしてそれを入れたのは彼らではなく、どう考えてもサチコちゃん本人。
つまり彼女、自分が忍ばせて、かつ絶対気が付くように設置しておいた七不思議を見てしまった主人公たちに対し、死ねと言うわけです。もはや意味が分かりません。タイムカプセルを開けたら地雷が入っていたレベルの理不尽さです。
しかも、それまでは七不思議に沿って頃していたくせに、最後の二人だけは七不思議がネタ切れのために、落下と首切りで殺害するという雑さ。思えば、最初の被害者となった用務員さんも七不思議とは無関係な死に方でした。なんで六人頃すのに、七不思議で足りなくなるのでしょうか。完全に無能です。
しかもこのサチコちゃん、どうせ頃すと分かっている相手に対して、自分の可哀想な身の上を理解してもらおうとするスーパー構ってちゃんな行動を取ります。ですが彼女、自分を頃した相手以外に対しても無関係な虐殺を続けたり、結局自分に理解を示してくれた相手も頃したりと完全に性格の捻れた人間の屑なので、同情も何もありません。
総評ですが、とにかく設定に穴があり過ぎて突っ込みどころが多いです。伏線回収拒否のペンダントや、廃校なのに水道は通っている点などまだまだ突っ込みどころは多々あるのですが、全て指摘するととんでもなく長くなりそうなのでやめておきます。
しかし、視聴にかかる時間の短さや、ジャパニーズB級ホラーのダメな点をかき集めたような構成になっているので、私のように飽きることなく楽しんで見れると思います。
いままでジャパニーズB級ホラーを見たことのない人にも、安心して進められるクオリティでした。暑い夏を笑いで吹き飛ばすのに是非どうぞ。