「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

きさらぎ駅 のレビューです(総合評価B-)

(画像:Amazon商品ページより引用)
「どうせジャパニーズB級ホラー都市伝説実写化シリーズによくある、雑な改変とグダグダテンポでお届けされる残念映画でしょ」と舐めてかかると、意外な展開に驚かされる良作映画のレビュー、始めるわ。

 まさかそっち方面に話をもっていくとは思わなかった。

 それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 ジャパン
  • 製作 2022
  • 販売 Happinet

あらすじ

大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、数ヵ月にわたりメールでやり取りした結果、春奈は遂に純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。春奈を出迎えた純子はどこか影のある雰囲気を持つ女性。部屋へ案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対して、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべながらも春奈からの問いかけに静かに頷く。続けて、純子から「きさらぎ駅」へたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞いた。その内容は春奈には到底信じられるものではなかったが、純子の話の中で春奈はなぜ純子だけが「きさらぎ駅」へたどり着くことができたヒントに気づく。純子の別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かう。この選択が春奈の運命を大きく狂わせることになってゆく。

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
設定
総合 B-

良い点

  • 中盤からの意外性のある方向転換により、最後まで飽きずに完走できる
  • ダラダラしたシーンがほぼなく、かなりテンポよくまとめている

悪い点

  • 全体的に作りがかなりチープ、かつ純粋なきさらぎ駅の実写化としては赤点待ったなしなので、ノリが合わないとキツそう

 ネットで評価を調べてみても割と賛否両論気味で、無理な人は徹底的に無理そうな反面、ハマる人は結構心を掴まれるタイプの作品のように感じました。前半はこの辺の界隈によく転がっている雑なホラーですが、中盤以降は別の展開を放り込んでくるので、ここのノリが合えば完走は容易、かつ充分楽しめるのではないかと思います。個人的にはマジで見てほしい。

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があります。未視聴の方はご注意ください!
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 普通に傑作だと思う(感覚麻痺)

 さて今作ですが、あの超有名な都市伝説であるきさらぎ駅ーーを題材にした二次創作です。きさらぎ駅の実写映像化ではありません、二次創作です。そう断言する理由は後述。

 では早速、まずは今作の良い点からいきます。今作の良い点は、最後まで飽きずに完走できること、そしてダラダラしたシーンの少ないテンポの良さです。

 まず最初に、今作の大まかな構成について話しておかねばなりません。きさらぎ駅を知らない方は少ないかもですが、それについても一応解説。

 きさらぎ駅とは、もう20年くらい前のネット掲示板発祥の都市伝説です。物凄いざっくりと言うと、「投稿者が深夜の電車に乗ったら見知らぬ駅に辿り着き、そこでなんか怖い体験をする」というやつ。あらすじ自体は古い作品なこともあってシンプルですが、その独特で魅力的な雰囲気は令和の現代でも通ずるまさに傑作。調べれば出てくる上に、ネット都市伝説の初期の作品だけあってかなり短いので、まだ読んだことない、と言う方は是非読んでみてください。

 さて、今作はそんなきさらぎ駅を原作とする映画なので、当然「登場人物が謎の駅に迷い込み、そこで色々と怖い体験をする」というのが前半の話の軸になっています。

 ただし、この映画の特徴的な点は、「ある人物がきさらぎ駅に迷い込み、同乗者と共に駅周辺を探索、そこで謎の怪物に襲われて1人ずつ仲間がやられていき、脱出の糸口が見えたものの、脱出直前で最後の仲間が死亡、自分1人だけがなんとか生還した」という流れを、なんとたったの30分でやり遂げてしまう事です。この時点で、きさらぎ駅からは1人生還し、現実の世界へと帰ってくるのです。

 じゃあ、残りの1時間近くは何をするのかと言うと、きさらぎ駅攻略(2周目)のお時間となります。そう、前半30分かけてきさらぎ駅を攻略した人物とは視点が変わって、ここでついに今作主人公が動き出す。彼女は、過去にきさらぎ駅に行ったと言う人物の話(1周目)を、体験談として聞いた上できさらぎ駅に乗り込み、その情報を元に攻略チャートを組む、という行動にでます。具体的には、「ここで最初の怪異に会うって言ってたな、先に向かってる奴ら止めに行くか」「ここでダッシュジジイが出てくるって言ってたな、走って逃げれるよう準備しとこ」など。

 この、体験談という情報を持った上での主人公によるきさらぎ駅攻略パートがマジで楽しい。主人公の攻略方法もなかなかぶっ飛んでおり、「対象に抱きつくことにより自爆攻撃を仕掛けてくるダッシュ爺に対し、同時出現した別の怨霊を蹴り飛ばして爺に抱きつかせることで同時消滅させる」「善良な一般人のふりをして、こちらが油断した隙に襲ってくる敵キャラに対し、先制攻撃を仕掛けて殴り殺す」など、持ち前の行動力でかなりの盛り上がりを見せてくれます。

 確かに今作、演技も演出もお世辞にも上手いとは言えず、全体的にチープ感が漂うため、ホラーとして見るとあんまり怖くないんですけど、逆にこのチープさ具合が、「強くてニューゲームな主人公がきさらぎ駅を攻略する」というコンセプトと噛み合い、なんとも言えない絶妙な面白さを引き出してくれているように感じました。

 と言うわけで、良い点は以上。続いては悪い点なのですが、こちらはやはり全体に漂うチープさとかなり大胆な原作改変により、このノリが合わない人にはかなりキツそうだと言う事です。

 先に述べたように、今作はきさらぎ駅の実写映画というよりは、きさらぎ駅要素を用いたオリジナル作品、と言えるほどに原作とは別物となっております。そのため、今作を「純粋にきさらぎ駅の真面目な実写作品が見たい」という期待感を持って臨んだ場合には、下手な演技と安い演出、それとキッツい原作改変等々により、下される評価は十中八九赤点落第待ったなしです。現に、前半30分のホラー部分だけに限って評価するのであれば、かなりレベルの低い作品が多数輩出されているジャパニーズB級ホラー都市伝説実写化シリーズの一員であるということを考慮した上においても、贔屓目に見て中の中、厳しめに評価するなら下の上、といった具合のレベル。

 良い点でも言いましたが、原作改変自体はかなり多いうえに、もはやきさらぎ駅から着想を得た二次創作、ないしオリジナル作品と言えるほどに内容が異なるため、原作スレが持っていた魅力的な雰囲気はほぼ消失してしまっています。故に、きさらぎ駅という元スレが好きであればあるほど、それに対する期待感が高ければ高いほど、視聴するのはキツいかと思います。

 これがいっそ、視聴途中で「あっ、なるほどこういう方向の作品ね」と頭を切り替え、原作きさらぎ駅のイメージと完全に切り離して考えられれば中盤以降の方向転換で楽しめるかもしれませんが、まあ事前の期待感が高ければ高いほどそれとの落差に落胆し、気持ちの切り替えどころではなくなると思うので、そういう意味でもかなり人を選ぶ作品であることは間違い無いかと思います。

 というわけで総評。この手の都市伝説実写化系映画って、「原作都市伝説の内容だけで映画作ったら90分も持たんなぁ……まあとりあえず前半はクッソどうでもいい人間ドラマを入れつつダラダラと尺稼ぎ、中盤に原作要素入れてホラーを開始して、でもこれだけだとなんか物足りないからとりあえずオリジナル要素(死ぬほど余計)入れて形を整えるか、ヨシ!」という流れの粗悪なものが乱雑されているイメージなんですけど、その点今作は前半30分でホラー展開を一通り見せ切るという立ち上がりの速さとテンポの良さ、そしてそこから、その情報を元に攻略を開始する、という面白い構成へと持っていてくれているため、個人的には終始飽きずに楽しめる良作映画だ、という評価に落ち着きました。

 ただまぁ、展開上結構人を選ぶことは間違いないですし、仮に中盤以降の展開が気に入ったとしても、オチが結構弱い気がすることなど、気になる部分もあります。この展開で行くんなら、ラストは「結局誰も救えなかった主人公が、次こそは、と2周目3周目ルートへ突入する」など、もう少しぶっ飛んだままの展開とかで終わって欲しかったかな、個人的には。

 なんにせよ個人的にはオススメの映画なので、過度に期待しすぎずに見て見ることをお勧めします。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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