「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

哭悲 のレビューです(総合評価B)

(画像:映画.comより引用)
 
公開された時からずっっっっっっっっと見たかった、グロさに全力投球なウイルス感染もの映画のレビュー、はじめます。

 現在、U-NEXTで独占配信中です。これ見るためだけにU-NEXT入った。
 ちなみに、DVD/BD発売は12/23です。他配信サイトでの配信及びレンタル開始日は未定。
 後述しますが諸事情により、円盤での視聴を強くお勧めするため、レンタル開始を待つのが良いかと思います。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

あらすじ

人間の凶暴性を助長するウイルスが蔓延した台湾を舞台に、地獄絵図と化した街で再会しようと奔走する男女の運命を、容赦ないゴア描写で描いたパニックホラー。台湾で感染拡大していた謎のウイルスが突然変異を起こし、人間の脳に作用して凶暴性を助長する恐ろしい疫病が発生した。感染者たちは罪悪感に苦しみながらも暴力衝動に抗えず、街中に殺人と拷問が横行する事態に。感染者の殺意からどうにか逃げ延びたカイティンは、数少ない生存者たちとともに病院に立てこもる。カイティンから連絡を受けたジュンジョーは生きて彼女と再会するため、狂気に満ちた街へひとり乗り出していく。本作が長編デビューとなるロブ・ジャバズが監督・脚本・編集を手がけた。

映画.comより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
グロさ
設定
総合

良い点

  • 掴みが完璧すぎる
  • ちゃんと容赦なくグロいところはグロい

悪い点

  • 期待したほどはグロくないので少々物足りない
  • 今作特有の感染者の特徴をイマイチ活かしきれていない

 一言で言ってしまえば「ちゃんとグロいけど思ったほどグロくない」作品です。公式が「やばいよマジでグロいよすごいよマジで」という感じの宣伝をしており、その事前の触れ込みから「さぞこの世の地獄を集約したかのようなとんでもないグロさの作品が見られるんやろなぁ……!」と期待とハードルを極度に高めた状態で見ると、思ったほどでもない、という肩透かしを喰らう可能性があることは念頭に置いた方がいいかもしれません。特に、配信版は劇場公開版に比べてシーンカットやモザイクがちょいちょいあるようなので、それも注意です。
 ただ、間違いなく面白い作品ではあるので、個人的には見てほしい作品。

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があります。未視聴の方はご注意ください!
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 過度な期待をせずに見れば十分な良作。

 さて今作ですが、単なる風邪だと思ってたクソ雑魚流行ウイルスが突然変異し、人間の脳を侵食。結果、感染者はニコニコと不気味な笑みを浮かべながら、自分が思いつく限りの残虐な行為を実行してしまう(ただし脳内には正常な意識が残っており、自分が仕出かす残虐な行為に対する罪悪感から涙が溢れる)という、なんかもう設定の時点で地獄のような作品です。感染後に狂暴化しても、正常な意識が残ってるってあまりにも残酷すぎんか?
 というわけで、感染ものですがゾンビ映画ではありませんので悪しからず。普通にバンバン喋るし、武器も使いますわよ。

 では早速、良いと感じた点から語っていきます。今作の良い点は、掴みが完璧すぎること、及び、ちゃんとグロいところはグロく見ごたえがあることです。

 まず掴みについてなんですけど、個人的にはこれが今作の1番の評価ポイント。まず、平和な日常の風景を見せておく中で、なんか様子がおかしいババアや血に塗れた事故現場など、非日常を思わせる描写をチョチョイと挿入。その後、主人公が入店した飲食店で血まみれのババアが登場し、そいつが薄気味悪い笑みを浮かべながら店主に高温の油をぶっかけたことを皮切りに、店内は阿鼻叫喚。しかも、周りにいた市民たちも徐々におかしくなり始め、そこから街は一気に地獄絵図へと変貌する……。

 と、ストーリー自体は割とよくある流れで、特段スピード感があるわけでもないんですが、これが映像で見るとなかなかすごいんだ。特に、非日常な部分が日常に侵食してくる不気味さと、一見平和に見える街が地獄へと急転直下する、主人公と感染者ババアとの初遭遇シーン、ここの出来栄えはかなり満足感高めでした。何より、不気味な笑みを携えながら店主の頭に油ぶっかけるババアのクオリティがマジでいい。

 そのババアも、直後に道路に飛び出した瞬間に、突然突っ込んできた車に轢かれて即死するんですが、「助かった」と思ったのも束の間。実はその車の運転手も感染者で、「あー、轢いちまったぁ」と嬉しそうに笑い出す様が、さらにゾッとさせて来ます。そして周囲の人間がほとんど狂い出し、突如始まる急転直下な地獄絵図。ここの一連の流れはマジで良かった。国宝級。

 それと、今作はグロ要素、残虐さを全面に押し出しているため、それ目的で試聴された方がほとんどかと思いますが、それらのシーンは嘘偽りなくきちんと盛り込まれているためご安心ください。ちゃんとクオリティが高いシーンも多いです。個人的お気に入りは序盤のババア、狂乱飛び降り自殺、電柱股間強打、電車内大パニックあたりでしょうか。

 というわけで、良い点以上。続いて残念に思った点ですが、感染者の独自設定をイマイチ活かしきれてこと、そして、思ったよりグロくなくて物足りない点です。

 まず、今作の感染者の設定について。先述の通り、今作の感染者は脳みそをウイルスに犯されており、自分が思いつく限りの残虐な行動をとります。かつ、その凶暴人格とは別に、頭の中に普段の人格の意識は残っているため、自分が仕出かす残虐行為に対する罪悪感から涙を流している、という設定。これ自体は、今作の残虐性を加速させる大変に良い設定だと思うんですけど、存分に活かされているかというと微妙

 まあ確かに、いきなり近場の人間に斬りかかったりとか、相手が苦痛に悶える様を見て面白がったりとか、すぐに殺さずに遊び半分に痛めつけたりとか、行為一つ一つは間違いなく残虐なんですけど、何というかこう、精神的な残酷さが少々物足りないかな、というところ。

 例えば、怖がる親友を痛めつけて悦に浸ったりだとか、自分の子や親を手にかけて狂喜したりだとか、そういう「自分が何よりも大切にしてきて何があっても守りたいはずのものを自分で壊す」という、見るも無惨で目を逸らしたくなるような精神的にくる残虐さ、みたいなのが少ない印象。折角「感染者は脳内では正気を保っており、罪悪感に耐えきれずに泣いている」という、考えるだけで吐き気がするようなおぞましい設定があるので、キャラクターの心をへし折りに来るような精神的に惨い描写はもっとあって良かったんじゃないかと思います。

 またこれに加え、正直言って今作、絵面的なグロさにも物足りなさを感じました。先ほど良い点では、グロいシーンはちゃんとグロく、クオリティも高い、と言いましたが、そう感じるシーン半分、物足りないと思うシーン半分、という具合。なんなら、序盤は素晴らしかった一方で、後半は絵面に見慣れてくることもあって、もうひと頑張り欲しかった、というのが正直な感想です。

 いや、例えば大統領の頭吹き飛ばし生放送したりだとか、嫌がる相手に眼姦とかいうクッソニッチな性癖ぶち込んできたりだとか、やってる事自体はエゲツなくて破茶滅茶なんですけど、ちゃんと人間がぐちゃぐちゃになるシーンを映してる場面もある一方で、それをハッキリと見せない場面も多くあるんですよ。例えば、倒れた相手の頭めがけて斧を振りかぶる→その瞬間カメラが別視点に移動→斧が頭に刺さる瞬間は見せない、という、この手の映画によくある萎えるアレ、このパターンが結構多い。これがねー、その辺に転がってるホラー映画でされるならまだしも、残虐性やグロさを前面に押し出して売ってる映画としてはまぁ物足りねぇんだわ。「えっ、そこ見せてくんねぇの?!」ってなるシーン多数。

 ただ、これには一つ注意点がありまして。それは、このなんとも物足りないグロ描写は、配信版特有のものである可能性がある、という事です。どういうことかというと、Twitterで軽く調べてみたところ、どうもこの配信版、劇場公開版に比べて、シーンカットやモザイク処理がされてるようなんですね。私は劇場版を見に行ってないので、どのシーンがカットされていたかについては分からないのですが、少なくともモザイク処理は一目見てハッキリと分かるくらいには、クッソデカデカとされていた場面が数回はありました。

 また、先ほど述べた「グロいシーンを見せてくれない場面が多々ある」という問題も、もしかすると劇場版ではちゃんと映ってたのに、配信版で大幅にカットされていた可能性も否定はできません。でも一方、劇場版を観に行った人の当時のツイートには、「グロいグロいと聞いて見に行ったけど思ったほどでもなかった」という声も見られたので、これもう分かんねぇ。いずれにせよ、現在この哭悲を見ることができる手段はU-NEXTでの配信以外にはないため、今から始めてこの映画を見る、という人にとっては、劇場版との差異など気にしても仕方ないでしょう。現状このバージョンしかないんだから。

 一応、12月下旬に円盤が発売されるので、そちらが修正されてないことを願って円盤を購入、または円盤がレンタルされるのを待ってから見る、という手段もあるので、より今作を楽しみたいという方は、そっちにワンチャンかけるしかないかもです。

 というわけで総評ですが、確かに前評判通り残虐性は高く、また序盤の出来はかなりいいのでグイッと引き込まれてそのまま飽きずに完走できるスペックは持ち合わせていますが、少なくとも配信版はカットやモザイクがあり思ったほどにグロくないこと、またそれに目を瞑っても、精神的な残虐性は少々物足りない事などから、あまり過度な期待をしすぎずに見るのが良いかと思われます。ただ、間違いなく良作の部類に入る作品だとは思います。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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