「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

アイアンサーガ 暴走機械兵団 のレビューです(総合評価D-)

(画像:Amazon商品ページより引用)
 
「キャラクターたちが声を出さない」という特徴付けに拘りすぎた結果、中身がゴミになってしまったクソ映画のレビュー、はじめます

 「無声の映画つーくろ」するだけなら誰でもできる定期。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 ドイツ
  • 製作 2019
  • 販売 アメイジングD.C.

あらすじ

これが想像を超えた《戦記》のはじまり
音に反応して人間を襲うロボット兵団によって、人類は滅亡の危機にさらされていた。トマシュとリリャは、
「絶対に声を出してはいけない」というルールを固く守ることで生き延びていた。筆談を使い、
静寂とともに暮らしていたが、二人は敵に対抗する手がかりを見つけ出す。

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
CGの質
設定
総合 D-

良い点

  • 敵ロボットのクオリティはなかなか

悪い点

  • 「無声」という特徴を活かせていないどころか、こいつが完全に足を引っ張っている
  • シナリオも設定もとにかく安易で稚拙

 「(ごく一部を除き)一切キャラクターが声を発しない」というコンセプトのSFアクション映画です。無声という特徴を活かすどころか、これが完全に作品全体の足を引っ張っており、ハッキリ言ってクッソ退屈でまるっきり面白くないので、見なくていいんじゃないでしょうか(辛辣)

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 眠れない夜のお供に(催眠導入剤)

 さて今作ですが、「人間の声を認識して襲いかかってくるロボットがそこらじゅうを闊歩しているために声が出せない」という設定のため、キャラクターたちがラストシーンの一言以外はものの一切お声を発しない、という、大変珍しい内容の作品となっております。クワイエットプレイスはじめ、「相手モンスターが音を聞いて襲いかかってくるので、特定状況下では声を出せない」というタイプの映画は結構ありましたが、今作はこれをさらに極端にして、「屋外だろうが室内だろうが、敵がいようがいまいが、誰も一言も喋らない」という作品になっており、その点では他作品が持たない個性を持ってはいます。

 それでは早速、良い点から──と言いたいところなんですが、誠に残念なことに、私この作品に対して「マジでクソつまらんとっとと終われや」と思いながら見ていたため、以下は酷評の嵐となります。「いや俺この作品好きなんやが」という方、先に言っておく。すまん。

 一応最低限のフォローをしておくと、出てくる敵のロボットのCG的なクオリティは結構高めです。人間くらいの大きさの飛行タイプとか、ビルくらいのデカさで闊歩してる超大型タイプとか種類もそこそこいるので、絵面的に単調極まる構成にはなっていない、というのは利点。ここも終わってたらガチで投げ出してたかもしれない。

 じゃあ、一体この映画の何があかんのか、というお話なんですが、これはもう「無声」という特徴づけをまるで活かせていない、という、この1点に集約されます。

 先に話した通り、今作は敵の人工知能搭載型ロボットが、人間の音声を聞きつけて襲ってくる、という設定のため、キャラクターたちは声を発することができません。しかも、この音声認識がかなりの高精度なのか、キャラたちは屋外どころか室内、それも家の奥の部屋にいる場合でも、囁き声一つ出しません

 さらに、今作の「無声」への拘りは半端ではなく、主人公の独り言や独白なども一切なし。作中で唯一声が入るのは、ラストシーン手前でヒロインが「こっちだ!」と叫んで敵を誘き寄せるシーンと、ラストシーンで主人公が「俺はここだ!」と叫んで敵を誘き寄せるシーンの2つだけとなっております。吹き替え版作るのめっちゃ楽そう。

 また、「声出せないんなら筆談すれば良くね?」という同然の疑問に対しても、今作はヒロインと主人公の母語が違うため筆談が成立しない、という設定をぶつけてくるので、音声でも文字でも会話が出来ない、という縛りをかけてきます。まあ確かに、筆談が成立したら、折角声を縛ってコミュニケーションが取れないようにした意味が薄れちゃうからね。

 ここまで聞くと、「なかなか独創的で面白い設定だな」と思うかもしれませんが、実際のところこれらの設定が上手く機能しているのかというと、もう全然ダメですね。全然ダメ。ガチでダメ。ない方がよっぽどマシ。何でダメかと言うと、この無声設定が作品を面白くする要素としてまるで機能していないからです。

 普通、あえてこう言う「他の作品がやらないこと」を作品のメイン要素として取り入れようとする時は、それが持つマイナス要素よりもプラス要素の方が大きくなるからこそやるものだと思うのですが、今作の場合は致命的なマイナス要素ばっかり目立つくせして、プラス要素部分がそれはもう大変大変大変に薄っぺらい

 例えば、ざっと思いついた「無声」にすることによって生じている今作の致命的なマイナス要素は以下の2つ。

  1. 声と文字という、キャラクターの意志疎通手段が大きく制限されるため、彼らが今何を考えて行動しているのか大変分かりづらい
  2. キャラ同士の意思疎通手段がジェスチャー(手話ではない)のみなので、単純にコミュニケーション時に伝わる情報量が圧倒的に少なく、テンポが悪くなる

 これら、映像作品としてはかなり致命的な欠陥を抱えてまで拘った無声要素ですが、今作はその使い方があまりにヘタクソすぎるせいで、それによりもたらされたプラス要素はガチで皆無と言って良いです。マジで何もない。

 いやね、「声を出せない」という状況をうまいこと使えば、いくらでもプラス要素を生み出すこと自体は出来ると思うんですよ。それこそ、「敵を前にした無音の時間を使って緊迫感を高める」とか「うるさいシーンと静寂なシーンを対比してメリハリを効かせる」とか「敵が近くまで来ても咄嗟にそれを伝える手段がない→声を使わずにこのピンチをどう切り抜けるのか、と観客をハラハラさせられる」とか。ですが今作の場合は、それら「無声だからこそ生まれる強み」を全く活かせていません

 まず第一に、いかなる状況下においても常時無声なので、見ているこちらもその状況に慣れてきちゃってメリハリなどが全く感じられず、「ただ単に無声なだけ」という最悪な感想を抱いてしまいます。

 かつ、敵は声には反応するけれど音には反応するわけではないため、敵を前にして「無音」になる場面がほとんどありません。そのため、ドントブリーズやクワイエットプレイスなどにあるような「音を立てたら殺される」という緊迫感溢れるシーンがない「音を立てるな」というのはかなり難しいですが、「声を出すな」というのはバカでもできるので、そりゃ緊迫感もクソもないわよ。

 その他、あえて無声にしたことによって状況を伝わりにくくさせ、それによるミスリードを誘ってみたりだとか、基本無声だからこそ、キャラクターが発したたった一言の言葉に強い意味を持たせてインパクトを高める、などの高等なテクニックなども当然使われておりません。普通、こんだけ徹底して無声に拘ったのであれば、そんな中でキャラクターたちが発する一言にはみんなが注目するため、当然それなりの意味を持たせるべきだと思うんですが、ラスト付近で機械の気を引くための「こっちだ!」的な言葉×2回しかセリフが出てこない、ってのは流石にないわ。

 これらの理由により、現状では「無声にした意味がないどころか、それがもたらすマイナス要素が足を引っ張るだけになっている」という、マジでどうしようもない評価に落ち着いてしまいました。

 もっと言うなら、『言葉を一切話さない映画を作ろう』と企画を立ててみたはいいものの、「言葉がないことに意味を持たせる」「それでしか出来ない演出がある」「言葉がないという特徴を活かして面白いものを作る」などの工夫が全く感じられず、単なる企画倒れ感がすごいです。

 ぶっちゃけ、『声なしの映画を作ろう』なんていうのはそこらのバカでも思いつく超絶簡単な事ですけれど、実際にそれをする人がほとんどいない、という理由をもっとちゃんと考えるべきかと。普通の人は企画の段階で「無声という特徴を活かした強みを作るのが難しいな」とか「いやこれさすがに90分も持たないな」とか「これなら普通に声アリで作ったほうがいいな」とか、そういう結論に至るんですよ。だから誰も彼も簡単には手を出さないのです。これだけの縛りをかけて、それを映画の面白さとして落とし込むのがめっちゃくちゃ難しいってすぐに分かるから。

 でも今作は、その辺何も考えずに勝手に突っ走った結果、それをうまく活かすでもなく、単なる「声あり映画の劣化版」みたいな内容にしかなっていないせいで、見事に「単純に面白くない」というだけのものに仕上がってしまっている。

 こういう、「誰でも思いつくけどあえてやらないこと」を何の工夫もなく堂々とやって、「これがウチの個性です!」みたいな事してくるのはマジで腹が立つ。「誰にも出来なかった事」と「誰もがやらなかった事」の区別がついてないとしか思えないんだよなぁ……。

 これに咥えて、今作は筆談はおろか、新聞記事や日記、書類などを使って世界観を説明する、という事もものの一切してこないという、「声も筆談も縛ったんだから、折角だし文字情報も全縛りしとくか!」と言わんばかりの、何の意味もない製作陣の完全なるセルフ縛り自己満オナニームーヴを見せつけられるのもさらにクソ。

 このせいで、状況に関する説明がマジでほとんど存在せず、中身を見ていてもなんら情報量が増えてこない。今世界がどういう状況なのか、この機械たちは何なのか、キャラクターたちは何を考えて行動しているのか、どうすれば世界を救えるのかなど、この辺の必要な情報が開示されずに、何となく話が進んで何となく話が終わります。それでいて時間だけは無駄に長いため、全体的に非常に薄っぺらいのも今作の特徴。とにかく、シナリオも設定も何もかもが深みがなく、安易で稚拙なのが滲み出ちゃってるんですよ。

 もうマジで、何から何まで「やりたかっただけだろ」感が凄い作品でした。

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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