それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 カナダ
- 製作 2019
- 販売 アムモ98
あらすじ
海のド真ん中に取り残された男女3人の友情崩壊ホラーコメディ!
(Amazon商品ページより引用)
彼女のサーシャを寝取られたと思い、親友のヨナを殴ってしまうリチャード。しかし、それはヨナとサーシャが誕生日プレゼントを買う為に隠し事をしていただけだった。お詫びに三人で楽しめるボートの日帰り旅行を計画するが、ふとした会話の中で浮気が発覚してしまう。
再び険悪な状況に陥った船の上で3人の殺し合いが始まる…。
予告編
ストーリー | B |
キャラクター | B |
設定 | C |
総合 | B- |
良い点
- 緩急の付け方が上手く、話に引き込まれる
- 展開に意外性があり見応えがある
悪い点
- オチがちょい強引なのは引っかかる
Amazonではホラーコメディとして紹介されていましたが、内容的には割としっかりサイコホラーしていると思った作品です。ノリが軽い部分はしっかり軽め、しかしその裏では登場人物同士のドロドロした関係がちゃんと描かれており、サイコホラーに傾く時は一気に行くなど、緩急の付け方がなかなか上手で引き込まれます。あまり派手な描写はないので合わない人には合わないかもですが、興味があれば見てもらいたい作品です。
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一見爽やかっぽく見えるパッケージですが、内容的にはコメディしつつもだんだんサイコ成分が強くなっていくスリラー映画です。「3人が船上に残され、身動きが取れなくなる」というシチュエーション自体はそれほど目新しさはないものの、ストーリーはかなりきちんとしているため、なかなか話に引き込まれて面白かった作品。
それでは、早速今作の特徴を良い点から見ていきましょう。今作の良い点は、緩急の付け方の上手さ、そして意外性のある展開の二点です。
今作のストーリーは、「三角関係にある男女3人が小型ボートでのクルーズにお出かけした先でエンジントラブルが発生し、海上で身動きが取れなくなる」という大変シンプルなもの。基本的に、最後まで船の上だけが舞台となるため、物語の大半は海上におけるキャラクター同士のやり取りや会話シーンとなります。
ややもすると、見どころ不足で退屈になりそうな展開ですが、今作は展開の緩急の付け方が上手いため、ちゃんと飽きずに見られます。まず序盤、3人がクルーズに出発してから、エンジンが停止し本格的遭難までの流れはなかなかスムーズに進行。「ブチギレやすい彼氏が、親友に彼女を寝取られたと勘違いして暴行→誤解だと発覚して猛省→やっぱり本当に浮気してたので暴行→返り討ちにあい、逆に殺されかける→停戦協定、しかし無事遭難」という二転三転してゆく状況を無駄なくテンポ良く、迫真の緊迫感で、しかもちょっとコミカルに描いてくれているため、話に引き込まれて見やすい。
そしてそれから5日、3人は水も食料もない状態でイラつきながら過ごしますが、一匹のカモメを入手して歓喜。早速それを食う……かと思いきや、「とにかく水の確保が急務」ということで、生き血をすするという選択をします。この辺りからは、この異常な状況下で3人の精神状態が不安定になっていく様子が描かれ、3人がお互いに抱いている不信感が露骨に前に出てきて、ギスギスしていく様がハッキリと描かれます。このパートにおいては、3人がお互いへの敵対心を顕にする部分と、一見友人らしく振る舞う部分が入り乱れ、これが話に良い緩急を与えてくれています。ギスギスしっぱなしでもなければ、友達ごっこして緩みっぱなしでもない、この配分がいい感じに作用していて楽しめました。
こんな感じで中盤を越え、話はいよいよ終盤へ。ここで今作のもう一つの特長である、オチの意外性に繋がってきます。正直今作、オチの手前までは「緩急の付け方はうまいから飽きずに見られるけど、ストーリー内容自体はよくある感じで可もなく不可もなくだな」という感じでした。オチが普通なら、まあ普通だな、で終わるような作品だったんですが、今作はそれで終わらなかった。
一言で言えば今作のオチは「3人のうち、浮気男が意図的に船を故障したかのように見せかけており、この状況を利用して彼氏を殺害、そのままヒロインを手に入れようとしていた」というもの。言葉にするとたったこれだけなんですが、今作はこのオチに至るまでに全然それを匂わせて来ないので、いざこれをぶつけられた時になかなかに衝撃を受ける、という作りになっています。
確かに思い返してみれば、何の前触れもなくいきなり都合よく船のエンジンがぶっ壊れたりなど、このトラブルが人為的に起こされていることを示唆する要素はあったのですが、まさか「動物の血を飲む必要に迫られたり、自分が感染症になって死にかけたりしてまで『実は船は動かせる』という事実を隠していた」とは思いもよりませんでした。
それらの「まともな状態の人間には到底出来ない事」がこのオチを悟らせないようにする隠れ蓑として機能しており、そして逆に、「それほどの死にかけるような体験をしたにも関わらず、自分の命を二の次にしてでもターゲットを殺すまで事実を黙っていた」という浮気男の異様な執念深さが、このオチのサイコスリラー感を際立たせてもいます。まさに、過程と結果が相乗的に作用している、面白い作品でした。
反面、オチで一気にサイコスリラー展開へと急転直下するわけですが、「ヒロインの彼氏をそれっぽい理由づけして殺すだけなら、ここまで引っ張らんでももっとタイミングあったやろ」と思わずにいられなかったというのも事実です。「このオチありきで話を構成した結果、展開が強引になっている感」は若干見受けられ、そしてそれが気になりだすと評価が下がる可能性はあるため、そこは懸念材料かもしれません。
また、飲血等の描写があるとは言え、いわゆるスプラッター的な画面映えする要素には圧倒的に乏しく、あくまでもキャラ同士のやり取りがメインである、というのも留意しておいた方がよいかもしれない点。期待してたものと違った、という意味で評価を下げてしまう可能性もあるためです。
しかし、それら注意点を乗り越えされすれば、なかなか高いポテンシャルを備える作品だと思うので、個人的には結構おすすめです。気になられた方はいかがでしょうか。
今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!よければ、気軽にコメントしていってね