「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

便座・オブ・ザ・デッド のレビューです(総合評価B-)

(画像:Amazon商品ページより引用)
 
2013年には作られていたのに、今頃やっっっっっと日本に入って来てくれたゾンビ映画のレビュー、はじめます。

 ずっと見たかった配給会社マジでありがとう。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 イギリス
  • 製作 2013
  • 販売 アメイジングD.C.

あらすじ

ちぎれる指! 飛び出す目玉! 便器に流される内臓! いつもキレイにご利用いただきありがとうございます。
クリスマスの夜、社内でパーティーが繰り広げられる中、修理工の男が女子トイレに入ってきた。工具箱にはなぜか大量の紙幣。
こそこそしていると酔っ払った女子社員が二人入ってきた。あわてて個室に隠れる男。ドアの隙間からのぞいていると、
突然相手の喉を噛みちぎる女! 驚いていると、次々とゾンビ化した社員たちがトイレになだれ込んできた。
個室に立て篭もる男に気づいたゾンビたちが扉に襲いかかる。修理工の男は人間のまま脱出することはできるのか! ?

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
ゾンビの質
設定
総合 B-

良い点

  • 天才的なアイデア
  • 意外にもストーリーがしっかりしており、飽きずに見られる

悪い点

  • トイレからの脱出方法はじめ、首を傾げたくなる展開もある(当社比)

 ゾンビだらけのトイレの個室に閉じ込められた男が、そこからの脱出を図る、という内容の一風変わったゾンビ映画です。そのコンセプト通り、エンディング等の極一部シーンを除いては、トイレの個室内だけが舞台というかなり攻めた作品。もう10年近く前の作品ですが、今頃になってでも引っ張ってくるだけあってなかなかおすすめの作品です。

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 もう絶対日本に入ってこないと思ってた。

 さて今作ですが、制作された当時だったかその後だったかに、Twitterだったかなんだったかでその存在を知り、「うおなんやこれめっちゃ見てえ! いつ日本に来るのかな!」とワクワクしていたのに一向に入ってこず、完全に視聴を諦めていたのですが、先日ゲオに行った時にレンタル開始の案内を見てリアルに変な声が出た、ある種思い出の作品です。

 それでは早速、今作の良い点から見ていきましょう。今作の良い点は、まさに天才的アイデアによる構成と、以外にもしっかりしたストーリー展開です。

 まずアイデアについてですが、これはもはや言わずもがなですね。見ての通り今作は、約80分の間、ほぼほぼトイレ内のみという劇的に狭い空間だけを舞台として、話が展開されていきます。というより、トイレ内どころかほとんどトイレの個室内のみ、という脅威のコンパクトさ

 いやあ、映画の内容云々以前に、そもそもこのコンセプト自体が神がかっています。これまで、「脱出」をコンセプトにしたゾンビ映画は山ほどありましたが、これほど舞台を絞った作品は少ないでしょう。これぞまさしく、ゾンビ×ワンシチュエーションスリラー。まずこの発想のもと、それを映画という形にして世に出したこと、まずそれを賞賛したい。事実私は、このコンセプトに惹かれて、ずっとこの映画を見たかったわけですから。

 また、この手のワンシチュエーション映画にありがちな、「アイデアは素晴らしいのだが、内容がそれに追いついていない」という事態にも陥っていないのも大きな加点ポイント。

 こういった、舞台をかなり限定したワンシチュエーションスリラータイプの映画は、よほど上手く構成を練らない限りは駄作になりやすい傾向があります。原因は幾つかあのですが、1番多いのは「アイデア一発勝負なのでそもそも内容が薄く、それを誤魔化すために引き伸ばしや中弛みが酷い」と言うパターン。

 そう、例えば「よし、トイレ内だけを舞台にしたゾンビ映画を撮ろう」と思いついたとして、ただそれだけの内容で映画一本分の時間を使う、と言うのは想像以上に難しいのです。主人公はトイレから出られない以上、起こせるイベントにも限界がありますし、絵面も単調になって、見ている側が飽きやすくもなります。しかしこの映画は、この辺りの課題に対する解決の仕方が上手い。

 開幕からあまりダラダラした展開もなく、修理工の主人公がさっさと個室に閉じ込められてゾンビに囲まれる、というシーンからスタートするスピード感。そしてそこから、彼はあの手この手でこの絶望的な個室から脱出をしようと試みます。

 例えば、個室下の隙間からゾンビが入ってこないよう手持ちの工具で補強したりだとか、鏡に映る自分を囮にするというユニークな作戦を敢行したりだとか、個室の上からハシゴを渡して移動しようとしたりだとか、ブラジャーを使って簡易的なパチンコを作り、それでゾンビから切り落とした指を飛ばして火災報知器を鳴らそうとしてみたりだとか、とにかく手持ちの道具等を上手く使って、脱出のために色々と試してくれます。そのため、トイレ内というかなり限定的な舞台制約がある割には、なかなか話が動いて面白いです。

 また、実はこのトイレの別の個室にはもう1人女性が閉じ込められており、彼女と会話しながら脱出を目指す、という構成になっているのですが、この彼女との会話こそが展開の単調さに歯止めをかけ、飽きにくさに貢献していると感じました。

 会話の分量も多すぎることなく、またその会話の中から新たな脱出の方策を思い付き、それをすぐ試そうとしてくれたりもするので、話にほどよい緩急が生まれています

 そしてラストシーンでは、そんな苦難を共にした女性との悲しい別れを通して主人公の成長を描くという、このバカみたいなコンセプト(褒め言葉)とアホみたいな邦題からは想像もつかないような感動チックな展開も盛り込まれており、彼女を出した存在意義がしっかりと確立されているのも評価点。

 主人公がトイレから脱出し、建物を後にするシーンでは、閉まったエレベーターの扉に主人公と彼女が手を取り合うイラストが添えられていたりと、グッとくる演出もあり心を動かされます。そこから続く、「今度は電話ボックスに閉じ込められる」というオチも、あくまでコメディ路線をしっかりと意識した面白い発想。総じて、序盤から終盤まで見どころが多く、飽きずに見られました

 とまあここまでベタ褒めなんですが、個人的にはこの作品、何年も募らせてきた視聴前の満足度が高すぎたためか、実は視聴後すぐは「うーん、こんなもんか」と思ってしまったのも事実。

 もちろん、この手のワンシチュエーション作品としての完成度はなかなか高いということは先に述べた通りですが、「いやこの展開はどうなん?」と思わさせられるシーンがいくつかあり、その度に集中力がガリっと削られてしまう、という事態にも陥っていました。

 例えば、主人公がブラジャーパチンコ指飛ばしをして警報を鳴らそうとする場面で、突然乱入してきた救助のオッサンに指が命中して失敗に終わる、というシーンだとか、「そうだ、新しい脱出法を思いついた!」して話が動きそうになった瞬間に、いきなり主人公がクスリをキメて踊り狂うだけの映像が数分挿入されたりだとか、ハンマーが欲しいタイミングで都合よくゾンビがそれを持ってきてくれる展開だとか、あれこれ方策を尽くした割に、結局最終的には正面扉目掛けて強引に突破するという力技で解決してしまう事だとか──まあ、色々と。

 もちろん、この辺の展開については、引っかからない方にとっては全く問題にならない部分にはなるので、参考程度にお聞き流しください。少なくとも私は、そういったいくつかの部分が気になったせいで、その度に話へののめり込みを阻害されてしまいました。個人的には、脱出に関する方策をあれこれと試す部分については、もっと真面目寄りでも良かったかな、と思います。まあ、好みだね。

 というわけで総評ですが、「トイレ内のみ」という超限定的な舞台制約を課していながらにして、単調さや飽きを感じさせにくい作りになっているという、なかなか完成度の高い作品です。この手のワンシチュエーション作品にありがちな、ダラダラした展開や時間稼ぎ的な中弛みの酷さがないのも特徴。

 反面、一つ一つの展開自体にはツッコミどころが多く、個人的にはちょっとハマらない部分も多々あったりと、手放しにお勧めるまでには至らなかったのは残念。しかし、この部分についてはとにかく好みによる部分が大きいと思うので、この「ほぼ全編トイレ内のみのゾンビ映画」という唯一無二性の強さに惹かれたのなら、是非見ていただきたい作品です。

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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