風鳴村(村要素無し)
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 オランダ
- 製作 2016
- 販売 アメイジングD.C.
あらすじ
風鳴村―そこに足を踏み入れてはならない
(Amazon商品ページより引用)
誰にも言えない秘密を抱え、ベビーシッターとして働くジェニファー。しかし、雇い主に偽造パスポートがバレてしまい逃げるように飛び出した彼女は、行く当てもなく路上で日々を過ごすことに。
そんなある日、ジェニファーは警察に追われる最中、たまたま通りがかった観光バスツアーに参加者として運良く紛れ込むことに成功する。世界でも有名なオランダの歴史ある風車巡りを楽しむ乗客と違って、
ジェニファーの表情は暗いままだった。そして突然、バスがエンジントラブルにより動かなくなり、乗客は一夜を車内で過ごすことに。しかしそこには、ある曰くつきの伝説の風車がひっそりとたたずんでいたのだった。
さらにバスツアーの参加者全員には、ジェニファー同様、誰にも言えないある秘密を抱えていた…。
予告編
ストーリー | C |
キャラクター | C |
スプラッターの質 | B |
設定 | D |
総合 | C+ |
良い点
- ややこしくなりそうな題材の割に、話がスッキリまとまっていて見やすい
- スプラッター描写の質が高い
悪い点
- 展開が納得いかない部分が目立つ
DVDパッケージ曰く、「犬鳴村の人気に続け!」とかいう変なキャッチコピーを付けられた、便乗邦題勝手につけられ系映画。内容的には風車をテーマにしたスプラッター映画であり、ぶっちゃけ村要素はほぼ皆無。納得いかない部分はチラホラありますが、割とスッキリまとまっておりなかなか楽しめます。
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犬鳴村とかいうゴミに続いたら爆死確定なんですがそれは……。
さて今作ですが、まあタイトルの件は置いておくとして、オランダ産のスプラッターホラーです。
それでは早速、今作の詳細な内容を。まずは良い点ですが、割と話がスッキリまとまっていて見やすいことと、スプラッターの質が高いことです。
まずはストーリー。今作のストーリーは、風車見学バスツアーに参加した男女が、大鎌を持った殺人鬼に1人ずつチョキチョキされていく……という内容。これだけならよくあるスプラッターって感じですが、今作はここに「舞台となる風車は地獄への入り口になっており、殺人鬼は地獄の門番である。そのため、集められた登場人物たちは全て現世で重罪を背負っており、死に際にそのことを糾弾される」(超意訳)という設定が加えられているのが特徴。
つまり、今作の犠牲者となる6人のキャラクターには、それぞれここに来るまでに犯してきた罪があり、その内容については作中で全て触れられます。ここで並の映画であれば、「この人にはこんな罪があって、それに至るまでにこんな背景が〜」とかいうのを、回想やら説明台詞やらを使ってダラダラダラダラとやっちゃいそうなところですが、その点今作は、その辺りの説明が実に淡白、かつ簡潔にまとまっています。
具体的に言うと、それぞれの人物が死ぬ直前になるまで罪の内容についてはおおむね伏せられており、死に際に見る幻覚を通してそれが明かされる、という構成になっているため、説明描写ばかりで話のテンポが悪くなっておらず、全体的にかなりスッキリしている印象を受けました。まあその分、少々アッサリ過ぎになっている気もしますが、ここはトレードオフな部分もあるので、どちらが好みか、という話になってくるでしょうか。個人的には、このくらいテンポ重視でアッサリしたバランスも好きです。
また、単純にスプラッターのクオリティが高いのも嬉しいところ。今作の殺人鬼は鎌を持っているので、斬殺多めの配分になっているのですが、その際に起きる内臓ドバドバはもちろんのこと、部位欠損や顔面破壊など、グロい場面もしっかりと映してくれるのは好印象。
それに咥え、特に後半からはその人物が犯した罪に関連する死に方も出てくるのも見所。例えば、相手を溺死に追い込んだ人には溺死が、首を絞めて殺した人には首締めが適用される、という具合。こういう、その人物に関連した処刑方法が出てくる、という展開は、見ていて嬉しくなりますね。
というわけで、良い点は以上です。反面悪い点としては、展開に納得いかない部分が目に付くことが挙げられます。
先に述べた通り、今作は登場する殺人鬼=地獄の門番であるわけですが、実は「自分の罪を認めて懺悔すれば許され、殺されない」(超意訳)という設定が登場します。しかし結局、それに気が付き生き延びた人物は、舞台となる風車の秘密に迫りすぎたために、地獄の門番の手下を名乗る人物に殺されてしまうという、「上司は許したが部下が独断で殺す」的な「なんだかなあ」という展開に。
まあそこはまだ良いとしても、「罪を認めて悔いればセーフ」とかいいつつ、自分の犯した罪については最初から一貫して悔やみまくっている主人公が、なぜか最後の最後まで全く許されなかったという、よく分からない謎展開へと発展していきます。
少し詳しく言うと、主人公の罪は「自分と弟にDVする父親を焼き殺したら、事故で一緒に弟も焼けちゃった」というもの。そして主人公はそのことをものすごく後悔しており、弟に対しては常に懺悔の気持ちでいっぱいなのです。であれば、「おばあちゃん殺しちゃってごめんなさい」した日本人キャラが許されて、彼女が許されないのは感覚的に納得いかないっすね。
まあ、確かに彼女が懺悔しているのは巻き込んで殺してしまった弟に対してのみであり、父親に対しては懺悔の気持ちなどこれっぽっちもないわけですが、だって親父はそもそもDV野郎とかいう死んで当然な人物なわけだし──それかあれか、地獄の門番くんは、「虐待されてようが暴力振るわれてようが、何が何でも肉親の殺害は重罪!」とかいう、尊属殺重罰規定推進過激派なのか? はい、違憲判決不可避。
なんにせよ、「悔いればセーフ」という設定を持ち出して来るんなら、「半ば自己防衛的にDV野郎を殺した」とかいう、主人公に同情しまくれる設定を付けるな、とは思いました。「相手が誰であろうが殺しは殺し」という言い分は理解はできるんですけど、納得はできない感じですね。ここの部分が、とにかく釈然としない。
というわけで総評ですが、キャラがそれぞれ罪を背負っているという、背景設定とかダラダラと語ってしまいそうになりがちな設定ながら、80分程度でスッキリとまとまっている見やすい映画でした。本命のスプラッター要素もしっかりしており、見ていて楽しめます。反面、人によっては釈然としなさが残りそうな部分も見受けられるという欠点も持ち合わせてはいます。
邦題がちょっとアレなので手を出しにくい部分はあるかもですが、割とお勧めはできるタイプの映画なので、気になられた方はどうぞ。
今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。よろしければ、お気軽にコメントしていってくださいね!