「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ファイナル・デッド・ツアー のレビューです(総合評価B-)

(画像:ゲオオンラインより引用)
売れないバンドグループと食人おじさんが一緒に旅するスプラッターコメディ映画のレビュー、始めます

 パッケージとあらすじに魅了されてレンタル不可避でした。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 アメリカ
  • 製作 2020
  • 販売 プルーク

あらすじ

ジュディ、マックス、メルの3人は売れないパンクバンド。ある日、小さなツアーに空きを見つけた3人は思い切って仕事を辞め、ツアーに出ることを決意する。しかしその出発直前、借金のカタに車を差し押さえられてしまう。途方に暮れる彼らだったが、見た目は怖いが人当たりの優しいおじさんペックが現れ、運転手としてツアーに参加してくれることに。ところが、ペックにはとんでもない秘密があった…。ひとつ目のライブが無事終わり、次の会場に出発するタイミングになるが車に戻ってこないペックを探して、ジュディが会場を探し回ると、なんとそこにはライブ関係者を食べるペックの姿が。驚きながらもなぜかペックを許してしまうメンバーたちと、絶対にもう人は食べないと約束するペック。だがその約束が守られるはずもなく…。グロいのになぜか笑える。笑えるけどやっぱりグロい!ヘンテコなメンバーが織りなすスプラッターコメディの決定版!

ゲオオンラインより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
ゾンビの質
設定
総合 B-

良い点

  • スプラッターの思い切りが良い
  • キャラの出来が良く、結果ストーリーに引き込まれる

悪い点

  • 終わり方が微妙

「アマチュアバンド3人組が雇った運転手が、夜中の12時になると人を食う化け物に変身するヤバいやつだった!」という内容の、コメディ寄りなスプラッター映画です。人食いをテーマにしていますが、序盤〜中盤はバンド仲間と人食い親父のロードムービー的な要素が強めで、キャラクターたちの魅力で話を持たせるタイプ。反面、終盤ではかなり不気味で緊張感漂う展開へとシフトするメリハリも持ち合わせており、かなり良さげな作品でした。強いて言うなら、個人的にはオチが気に入らなかったくらい。

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 スプラッターコメディの中ではかなり良作の部類に入ると思う。

 それでは早速、今作の良い点悪い点を見ていきましょう。まずは良い点ですが、これはスプラッターの思い切りの良さと、キャラの魅力に裏打ちされたストーリーの良さです。

 まずはストーリーについて。今作のストーリーは「バンドマンが雇った運転手が人食い魔だった!」というもの。これ自体はスプラッターとしてはありがちですが、今作はその人食い魔とバンドマンとの交流を描いている、と言う点が特徴的です。

 というのも、この人食いおじさん、深夜12時からの30分間だけは野獣に変身し人を襲うものの、それ以外の時は普通に気の良いおじさん、という設定。そんな奇妙な体質を持つ彼と、バンドマンたちがさまざまなハプニング(食人)を経験しながら交流していきます。その中で、彼を受け入れて一緒に旅をするか否かを模索していくという、いわばロードムービー的な楽しみ方が中盤終わりくらいまでのメイン

 この「あくまでおじさんの食人はバンドマン以外の人を対象にしている」というのが、他作品との一線を画す特徴だったように思います。普通のスプラッターなら、人食い魔と出会ったバンドマンたちが襲われる恐怖的なものを押し出してくるところですが、先述の通り、今作の人食い魔は仲間であるバンドマンを襲いません。かつ、彼が襲うのは旅先で出会うクソ野郎ばかりなので、バンドマンたちも「いや、こいつ良い奴じゃね?」という妙な空気が、割と早々に出来上がります

 それにより、結構作り込まれたグロテスクでショッキングな食人シーンの割には、あんまりシリアスさや深刻さはありません。むしろ、どことなくちょっと緩めの青春ロードムービー(+流血ドバドバスプラッター)感が溢れており、絵面の割にはかなりお気楽にスプラッターを楽しめます。おじさんとバンドマンたちのキャラ立ちが割としっかりしているので、彼らのやりとりを見ているだけで先の展開に興味が持てる、というのも良しですね。

 しかし終盤には、空気がガラリと変わって一気に不穏な雰囲気に。この食人おじさんがいくつか嘘をついている事が発覚し、そのためにバンドマンたちが彼との関わりを断ち切ろうとするも、逆におじさんが彼らを脅して無理矢理関係を維持しようとする──などなど、ホラー、スリラーチックな展開へと舵を切ってきます
 それまでは紆余曲折ありながらも、なんだかんだで和気藹々とやって来た空気がガラリと変わり、一気に緊張感高まる方向へシフトする。このへんのメリハリの付け方というか、終盤は終盤でそれまでとは見せ方を変えて「おっ」と思わせてくる構成は結構良かったと思います。

 また、単純にスプラッター部分のクオリティも抜かりがなく、腕はもげる、頭は潰れる、背骨ごと首は引っこ抜くなど欠損描写はバッチリ。咥えて、噴水の如く血飛沫を多用するため、スプラッターシーンの度に血みどろの惨劇が繰り広げられるので、ここの部分の満足度も結構高め。

 というわけで、良い点は以上です。そして、今作については個人的にそれほど悪く感じた部分はなかったのですが、唯一気になったといえば、オチですかね。

 先に述べた通り、今作はロードムービーチックな雰囲気が漂う前半を超え、終盤になると不穏で緊張感漂う展開へとシフトしていきます。そして最終的には、主人公たちバンドマングループが、夢だった大舞台のライブ直前に殺人の罪を疑われ誤認逮捕される、という流れへ。8ヶ月後の裁判で無罪が確定し、なんとかバンド活動の再開まで漕ぎ着けるものの、演奏中の観客席に食人おじさんの影が──そんな不穏な空気を漂わせ、今作はエンドとなります。

 そしてこの終わり方ですが、個人的にはあんまり好きじゃなかった。大舞台のライブ直前に、食人おじさんとまさに一触即発という緊張感漂う空気が出来上がっていたのが、主人公たちが誤認逮捕されて8ヶ月の期間が空いたことによって途切れてしまったのが微妙に感じました。

 ライブ前の不穏な緊迫感はすごく好きだったので、どっちかといえば、そんな中でも最後の大舞台のライブを乗り越えて食人おじさんと向き合うor最後のライブ中におじさん暴れる、とかの時間的に連続した流れの方が見たかったかな、という印象。もちろん、ここは好みの問題なので、むしろこの終わり方がいい、という人にとっては気にならない部分でしょうから、参考程度に留めておいてください。

 というわけで総評ですが、単純にスプラッターパートのクオリティがしっかりしており、しかしそれでいて話の内容的にライトな気持ちで見られる、というギャップが印象的な作品でした。バンドマン3人、そして食人おじさんのキャラもしっかり立っており、旅先で起きるさまざまなハプニング(食人)を経験しながら彼らの交流を描いていくパートはロードムービー的な面白さがありますし、そこから終盤で一気に不穏な展開へシフトしていくのもメリハリが効いていて良かったです。個人的には、オチが気に入らない部分はあったものの、総じて完成度高めの作品と言えるでしょう。気になられた方は是非いかがでしょうか!

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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