「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

パスワード:家 のレビューです(総合評価B-)

(画像:filmarksより引用より引用)
 
邦題とパッケージのせいでかなり内容が伝わりにくいけど、なかなか面白いSFスリラー映画のレビュー、始めます

パッケージ見たら、普通にホラー映画かと思った

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 スペイン
  • 製作 2018

あらすじ

大学時代の情報処理グループのメンバーが、それぞれの恋人たちを交えて夕食会を催すために久々に集まった。 夕食中にメンバーの一人が、今インターネットで最も秘密だとされるファイルを開くことに成功したと告白。 そして、その中にあった拡張現実のアプリを披露する。

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
設定
総合 B-

良い点

  • (特に後半の)引き込まれるストーリー

悪い点

  • 前半が冗長、と言う声多数
  • 若干作り込みが甘い、ないし展開が強引な部分があるため、イマイチ乗り切れない可能性アリ

 端的に申しあげれば、ネット上で手に入れた機密ファイルの中身を開けると、そこには未来が見える拡張現実アプリが入っており、それの処遇をどうするか、昔の技術者仲間を集めて話し合う、的なお話です。前半40分程度は、IT技術者同士の専門用語等交えた雑談と言う色が強く、人によってはかなり退屈を覚えるような作りとなっていますが、「未来を予測するスマホ用の拡張現実アプリ」が登場してからは話が大きく動き出し、スリラー映画らしい緊迫感漂う展開に。個人的にはかなり楽しめた、おすすめの作品です。

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 邦題が興味をそそられなさすぎる。

 さて今作ですが、邦題が激ダサなことを除けば、意外にも楽しめるシチュエーション・スリラー映画です。ただ、別に霊が出るとかモンスターが出るとか、はたまた死人が出たり監禁されたりグロ描写があったり、などと言う展開はありません。内容的には、技術者仲間が集まり、偶然手にしてしまった「未来が見えるアプリ」という超テクノロジーの処遇をどうするのかを話し合う、的な内容の作品です。これだけ聞くと「それ面白いんか?」と思いそうですが、面白いんだな、これが。

 それでは早速、今作の詳細な内容を見ていきましょう。とりあえず時系列順に話を進めたいので、まずは前半の展開から順に解説していきます。

 まずこの映画、大学時代のIT関係の旧友を集めて、久々にお泊まりしようぜ! と言うところから話がスタート。そして皆は、山奥にあるコテージに集まって、雑談を楽しみます。

 ここからの前半の展開は、テーブルを囲んでの雑談がメインです。そしてその雑談というのが、学生時代のエピソードを交えつつのお話になるのですが、基本的にIT関係者達による近年の情報化社会を危惧するようなお話。例えば、拾ったUSBメモリを安易にブッ刺すとウイルス感染するだとか、セキュリティ甘々な近所の家のWi-Fi勝手に使ってるぜ、だとか、どいつもこいつもパスワード単純すぎ&使い回しすぎでセキュリティ意識なさすぎんだよ、とか。さらにそこからも、Googleの検索の仕組みだとかAmazonへのDDOS攻撃がどうとか、ダークウェブやべーって話とか3Dプリンターすごくね、って話とかの、一見本編とは全く関係なさそうな雑談がたっぷり40分程度続きます

 そしてこの時点で、飽きる人はかなり飽きると思われます。レビューサイトを見てても、この映画に対してはかなり賛否入り混じっているのですが、その中でも特に「話が動き出す後半はともかく、前半は小難しいIT雑談ばっかりで飽きた」という意見が、相当多く見られました。

 もちろん、このパート自体も後半の話にちゃんとつながってくる部分ではあるので全く無駄という事はありません。個人的には、こういう分野の技術者同士の雑談は嫌いじゃないんで、聞いている分には結構楽しめたし、これはこれで良かったとは思います。でも、映画を見ている時点ではこの部分、まだ話の全体像が掴めない中での単なる雑談パートにしか見えず、「いいからとっとと本題始めてくれや」となる気持ちも分かる。特に、この手の話があんまり興味ない人からするとマジで地獄だと思う。ガンダム一切興味ないのに、ガノタのガンダム談義聞かされてる気分。
 
 そしてこの雑談は最終的に、一時期話題になったWikiLeaksというウェブサイト、そこから送信された極秘ファイルの存在へと行き着きます。その極秘ファイルは、ネット上で公開されていてあらゆる人が入手できるのですが、超複雑なパスワードがかかっていて誰も開けられないのだ、とのこと。なんか、解読に一兆年くらいかかるらしいっす。

 そして、そのファイルのパスワード解いたんだよね、と豪語するのが、今回この集まりを開いた主催者。その中身はなんと、「30秒後の未来が見える」という、スマホカメラ用の拡張現実アプリだったのです。
 彼曰く、どうも、優秀で信頼できる旧友諸君と、このオーバーテクノロジーの取り扱いをどうしたものか、話し合いたくて呼んだんだ、とのこと。この辺で、おおよそ映画の半分に差し掛かるあたりなのですが、この話に入ってからは、展開が大きく動き出します

 それを見た一行の反応は様々で、金儲けのために使おうとする者、危険だから警察なり政府なりに届けようという者、とりあえず中のソースコード確認してみようぜ、と好奇心を抑えられない者などなど。そしてプログラマーの姉ちゃんが、中身のプログラムをチョチョイと書き換え、なんと未来予測30秒という時間制限を吹き飛ばし、3時間、はたまた10日以上後の未来を見ることもできるようにしてしまいます。

 しかしここで事件。なんと、12日後の未来では、あたり一面がなぜか火の海になっていたのです。これについて主催者は、「人工知能の暴走で人間が攻撃された!」と急にターミネーターみたいな事を言い出し、みんなもそれを信じて、「やべーこんなアプリに関わっちまったばっかりに!」とオロオロ。そんな中、主催者とその友人が「ドッキリ大成功!」と言い終え、この映画は幕を閉じる──と思いきや、実はそれはみんなを落ち着かせるための嘘で、事態の深刻さを見抜いた数人だけが、「で、これどーする?」的な事を言い、映画が終わります。
 
 さて、内容がかなり特殊な映画だったので内容紹介が大半になってしまいましたが、ここからは私の意見を。まず、ストーリーの内容自体については、かなり強引な部分は散見されるものの、観客に興味を持たせる、話に引きこませるような工夫はちゃんと見られ、結構良かったと思います。端的に換言すれば、普通に面白かった。特に、30秒先が見えるアプリの登場から、それを数時間、数日先が見えるようになるようその場でチャチャッとコードを書き換え、その結果予期せぬ未来が見えてしまい、「これは自分たちが触れてはいけないものだ」という緊迫感がドカン、と押し寄せる構成は、かなり良かった

 さらにオチについても、一旦ドッキリだと思わせておいてからの、その嘘を見抜いてこのアプリのガチのヤバさを実感したメンバーだけで残り、人工知能の反乱による世界滅亡に立ち向かおうとする終わり方、これもワクワクして個人的にはグッドでした。まあ、少々投げっぱなし感はありますが……。

 問題なのは、未来予知アプリや人工知能による反乱など、これだけスケールの大きい話であるにもかかわらず、展開が強引で作り込みが甘い部分が見られるため、若干登場人物達が感じているであろう危機感に乗り切れない部分があるところです。

 1番気になったのは、12日後の未来を見た時に、この山小屋付近が火事で燃えているシーン。ここから登場人物達は、「このアプリを持つ自分達を、何者かが攻撃した」という想像にとどまるどころか、まるでこれが人類存続の危機である、というレベルにまで話を飛躍させるのですが、いや山小屋燃えてるの見たくらいでちょっと早計すぎんか、とは思いました。自分はこのシーン、普通に「小屋燃えとるなぁ、口封じで証拠隠滅図られたのかな?」程度に捉えていたので、いくら人工知能どうこうの前振りがあったとはいえ、まさかいきなり人類の危機の話になっていくとは思わなかった。

 もちろん、主催者が「このアプリと一緒に、人間が機械に繋がれたり、機械埋め込まれまりするヤバい映像も入ってた。テクノロジーが人間を襲うぞ!」的な前振り話は出てきていたので、それと関連付けての人工知能による人間への攻撃、それによる世界危機へ、という流れ自体はそこまで無理があるわけでもありません。しかし、実際に映画内でその手の映像が流れるわけでもなく、あくまでも主催者からの伝聞にとどまるため、イマイチそれを現実のものとして実感しにくかったかな、とは思います。

 例えば、人間が機械に支配されるような映像の一つでも流れて「ほら、現実にこんなことが起きてるんだぞ! 人工知能による攻撃は、もうそこまで来ているぞ!」という流れなら、説得力もあり納得しやすかったと思うんですけど、今作ではその辺全部会話だけでトントントンと話を進めて行ってしまうため、「そ、そうですか」と、ちょっと距離を感じてしまいました。個人的には、前半のIT談義をもう少しコンパクトにして、ここにもっと時間割くべきだったのかな、と思います。まあ、予算の関係もあると思いますが……。

 というわけで総評ですが、前半部分は映画の全体像も見えないままに、技術者による近年の情報化社会セキュリティーガバガバ危機意識啓発談義を40分近く聞かされるだけという内容のため、かなり好みは分かれそうです。一方、後半に入り、拡張現実アプリが登場してからの展開は、話が大きく動きつつ、予想外の方向に進んで行ったりもしてなかなか楽しめました

 前半も前半で、普段からネットニュース等にそれなりに触れている人なら、(興味があるかないかは別にして)聞いたことがあるような話、理解自体はできる話が多いので、個人的にはこの手の会話劇としては結構楽しめました。若干荒削りな部分はありますが、テーマ性や脚本構成など光る部分は多々あり、また未来の自分と拡張現実アプリ越しにチャットするシーンなど面白い演出もあったりと、なかなか楽しめる作品です。この手の話に興味がある人には結構おすすめできるので、ぜひ一度ご視聴いかがでしょうか。

 なお、アマプラ版だけなのかは分かりませんが、字幕が所々なんか変(突然口調が変わる、誤字脱字が散見される、改行がおかしくて見切れてる等)だったので、一応お気をつけください。これ、ちゃんと翻訳出来てるんやろな?

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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