視聴中に取ったメモ読み返したら、基本文句しか書いてなくて笑う。
ワイ、ロシア映画嫌いかもしれんな……(今更)
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 ロシア
- 製作 2019
あらすじ
年明けを祝うため、カーチャと仲間たちは雪山の頂上をロープウェーでめざいしていた。しかし、男女4人の乗ったロープウェーは故障により上空60mのところで停止してしまう。彼らがロープウェーに乗っていることを知るのは、業務終了していたところを金で釣り無理やり操縦させた操縦士と、直前で乗るのをやめたカーチャの恋人、キリルのみ。天候が荒れるマイナス10℃の中で夜明けを待つが、助けはいっこうにこない。追い詰められた4人は自力で脱出を試みるも、次第に不安定な密室の中で関係は悪化していき…。はたして、彼らの運命は―-!?
(Amazon商品ページより引用)
予告編
ストーリー | C |
キャラクター | C |
設定 | D |
総合 | C- |
良い点
- ほぼ停止したロープウェイ内が舞台だが、イベントは色々起きるので飽きにくい
悪い点
- バカどもが勝手に自滅した感が強く緊迫感がない
- 状況設定が中途半端に生ぬるくハラハラしない
ハッキリ言って駄作に片足突っ込んでるタイプの映画です。本編がそれほど長くない上、ワンシチュエーションの割にはそれなりに状況は動くので飽きにくいのは良い事なのですが、そもそもの内容が「バカが言い争いした結果、勝手に自滅した感」が強くあんまり面白くないので、途中緊迫感よりもイライラの方が強かった。
谷で停止したロープウェイという山岳地帯絶景高所設定なため、絵面が地味になりがちなワンシチュエーションの割には、意外とバエルのはかなりの救いでしょう。
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フローズンっていう映画があってね、それがすごく面白かったの。だからね、似たような状況設定のこの子も、きっと楽しめると思ったの。
結果はご覧の有り様だよ(半ギレ)
良作、フローズンのレビューはこちら。まだ見たことない人は是非見てね!
さて今作ですが、雪山でロープウェイが停止し、地上100メートル超の中空で身動きが取れなくなる話です。晴れた雪山が舞台なので、映像的にはかなり絶景な反面、高所恐怖症の人にはちょっとキツイかも。
それでは早速、今作の詳細な内容を見てゆくのですが、基本的に視聴中は文句ばっかり思い浮かんだので、残念ながら悪い点スタートです。
今作の悪い点は、まあ色々あるんですけど、とにかく1番ダメなのはシチュエーションスリラーにおける必須要素、緊迫感やドキドキハラハラが全然感じられないことです。設定がガバいとか導入が無理やりすぎるとかBGMの使い方がおかしいとか、ぶっちゃけ文句は沢山あるんですけど、そんなの全部二の次。兎にも角にも緊迫感のなさ、これが今作を駄作一歩手前まで引き摺り込んでいる1番の要因です。
それについて詳しく説明する前に、まずは今作のあらすじを軽くおさらい。今作のメインストーリーを滅茶苦茶簡単に一言で表すと、男女4人が停止したロープウェイに閉じ込められる映画です。この4人はロープウェイの営業終了後に、係員に賄賂を渡して自分たちだけ乗せてもらうのですが、その途中でお約束通りロープウェイが停止。地上100メートル超のロープウェイの中で、そのまま一夜を明かします。
しかし翌日になってもロープウェイは動かず、助けも来ない。それもそのはず、彼らを乗せてやった係員はなんか事故って勝手に死んでおり、彼らが閉じ込められていることを知る人は、ロープウェイに乗る直前に喧嘩別れした友人ただ1人のみだからです。彼らはまさに絶体絶命の状況に陥り、この宙に浮く棺桶から何とか脱出しようともがく、ってな感じのが今作の大まかな設定。さて、こんな導入で始まる今作。「ロープウェイの中で閉じ込められるなんてなかなか面白そうじゃん」と思って見始めはしたのですが、その期待とは裏腹にびっくりするほどの緊迫感のなさ。
その理由としては、まずは状況設定が中途半端に生ぬるい事が挙げられます。例えば、これと大変よく似た設定の映画に、先にご紹介したフローズンがあります。あちらの映画は、ロープウェイではなく停止したスキーリフトに取り残されるという設定の映画でした。スキーリフトといえば、皆さんご存知、ベンチが吊られてる感じの、吹きさらしの簡易なアレです。あの映画では、行動できる範囲が腰掛けるくらいの幅しかないリフト上、かつ極寒の雪山で吹きさらしという滅茶苦茶過酷な状況で、少しでも動こうものなら10数メートル下の地面に真っ逆さまという、見ているこちらまで息が詰まるような見事な設定でしたが、それと比べるとロープウェイというのはどうも見劣りします。雪山は雪山でも、ロープウェイは壁に囲まれた個室ですから極寒という感じがしない。いや実際は滅茶苦茶寒いんでしょうけど、なんか今作の演出だと全然寒そうに見えないんですよ。かつ動けるスペースもそれなりにあり、横になったり少し体を動かして温めたりもできる。他映画と比べてばかりなのもアレですが、まさにリフト上とは雲泥の差、天国と地獄ほどの差があります。詰まるところ、どうにも生ぬるいんですよね、設定が。
とにかくこういうスリラー映画って、「今どのくらいやばい状況なのか」というのを見ている側にしっかり伝える演出は必須レベルの要素で、それが出来ているかどうかで映画に対する没入感が大きく変わるわけなんですが、今作はこの辺の設定というか演出が絶妙に下手。
しつこくて申し訳ありませんが、例えば「リフトに取り残される」状況って、一言で滅茶苦茶危機感が伝わるじゃないですか。いくら防寒具があっても、真冬の吹きさらしのリフト上なんて、1日どころか数時間だって嫌ですよ。ベンチくらいのスペースしかないところで動けないという精神的ストレスもそうですが、何よりも吹きさらしですからね、下手すりゃ一夜で凍死コース。
反面ロープウェイって、確かに嫌は嫌ですし寒いは寒いんでしょうけど、防寒具完備な上に壁に囲まれて防風は完璧、全員が横になれるスペースも十分取れますし、なんなら主人公たち、火を起こす道具とかも普通に持ってます。おまけに演出上も、大して寒そうに見えないと来た。こんな状況なら、「嫌は嫌だけど、頑張れば数日は耐えられるかな」という感覚になってしまいます。この「大人しくしてれば割と待てるな」という余裕が、映画に対する没入感や緊迫感を大きく削ぐ要因になってしまう。これがスリラー映画にとっては大変良くない。だから大抵のシチュエーションスリラーは、この「助けを待つ」という選択肢をまず真っ先に潰してきます。例えばフローズンでは「助けなんて待ってたら凍死する」とか「こんな狭い空間で何日も待つのは精神的に耐えられない」というのがそれにあたり、その理由があるからこそキャラクターたちは行動を起こし、それを見て視聴者はハラハラするわけです。他のスリラー映画でも、例えば「死ぬまでの時間制限を設ける」「待ってるだけだと助けは来ないという状況を明らかにする」「このままだといつ殺されてもおかしくないという危機感を醸し出す」などなど、とにかく「待ってるだけではダメ。何か行動をしなければ」という何らかの理由付けをまずはして、じゃあそこからどうする、と話を運ぶのが定石。何故って、人間自分の力ではどうにもならないような不慮の事態に陥った時、まずは「助けを待つ」という選択肢が念頭にきて当たり前だからです。
だから「待てない」という理由付けを怠った場合、途端に話が陳腐で作り物っぽくなります。登場人物が自分の考えで動いているというより、脚本の都合で動かされている感が強く出てしまいます。そうなると、没入感や緊迫感を重要視するシチュエーションスリラーとしてはかなり厳しくなるんですが、まあ絶賛それをやっちゃってるのが今作なんですよね。
ぶっちゃけ今作、状況設定が生ぬるいだけでも緊迫感的には結構痛手であるにもかかわらず、「下界に自分たちがロープウェイに乗り込んだことを知っている、宿泊先が同じ友人が残っている」という、「助けを待つ望み」が大いにあるのにも関わらず、キャラ同士全然協力しようとせず、変にリスクを冒してでもアグレッシブに動こうとした結果、それが全部裏目に出て勝手にピンチに陥るというなんとも盛り上がりにかける展開。かつ、それだけではやっぱりあかんという配慮からか、今作では登場人物同士がやたらと喧嘩し、それがどんどんと状況を悪くしていく、という形で危機が演出されるのですが、まあこれは説明するまでもなく好みが分かれる展開ですよね。見ようによっては、バカどもが勝手に騒いで自滅していくだけにしか見えないわけですから。これがねぇ、例えば、営業終了後のロープウェイに乗った事を知っているのは係員のみで、その人は事故で死亡。最初は誰か気付いてくれるさと励まし合ってみんなで過ごしたけれど、3日4日待っても一向に動く気配はなく、空腹と焦りが募って口喧嘩が多くなり、「もうこれ以上待てない」という空気が個室内に充満してきて――みたいな感じの流れだったなら、結構印象変わったと思うんですけどね。こういう非常時だからこそ人間の醜い部分が見え、それが原因で状況が悪化する、って感じの路線は別に悪くはないと思うんですけど、それにしたって今作の場合そこに至るまでの過程が雑かな、と感じました。
反面良い点としては、待つという選択肢を見て見ぬ振りした代わりに、キャラクターたちは良くも悪くも結構動いてくれるので、イベントがそれなりに起きるために割りかし飽きにくい、と感じたのも事実です。
また、停止したロープウェイで立ち往生という絶望的な状況でありながら、皮肉にも景色はまさに絶景で、絵面的な取れ高が結構高い、というのもなかなか嬉しいポイント。ワンシチュエーションスリラーってどうしても絵面が地味になりがちですからね、その点今作のこの部分は明確な強みと言えます。基本文句ばかり言いつつも、何だかんだ興味を完全に失う前に完走出来たのは、この辺の良い点のおかげかも。総評ですが、ぶっちゃけ見ている最中はとにかく「いやもうちょっと待てよ」と思って見てました。そして、それをせずに勝手に行動して勝手に自滅、それが口論の種となり、芽が出て喧嘩に発展、果ては殺意をむき出しにした暴力が花咲く様を見て、「流石にこいつらアホすぎんか……」と思った、というのが私の率直な感想です。
反面、非常時人間醜い系の話が好きな人というか、アホな若者が自滅する系の話からしか摂取できない栄養素が不足している人とか、協力すれば乗り切れる局面もクズどもが勝手に争って自滅する様を見るのが好きな兵藤会長みたいなタイプの人は楽しめるかもしれません。私は好きじゃないタイプの映画ですが、興味のある方は見て見られてはいかがでしょう。今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。よろしければ、お気軽にコメントしていってくださいね!