普通に名作だと思う
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 アメリカ
- 製作 2009
- 販売 プレシディオ
あらすじ
何をやってもまるでダメな冴えない青年クーパーは、ある日ついに会社からクビを宣告されてしまう。その瞬間、奇妙な耳鳴りに襲われ気を失ってしまう。彼が意識を取り戻したとき、世界は巨大な昆虫に支配されていた。彼は生存者たちと必死のサバイバルを繰り広げる。
(Amazon商品ページより引用)
予告編
ストーリー | B |
キャラクター | B |
モンスターの質 | B |
設定 | D |
総合 | B |
良い点
- ストーリーが面白い&テンポが良いので飽きない
- 主要キャラの出来が良く、好感が持てる
- モンスターのクオリティが高い
悪い点
- 設定の粗さが気になる
まさしく「これぞB級モンスターパニック映画!」とでも言うべき作品です。軒並みの要素が総じてクオリティが高く、それでいて上手くまとまっているというまさに傑作。唯一、設定の粗さは中々のものなので、そこが気になる人には少し辛いかもしれませんが、それを差し引いてもかなりお勧めしたい作品。未見の方は、アマプラにも来ているので是非。
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さて今作ですが、2009年に公開という、ちょっと古い作品です。
実は私、かつてこの映画を見たことあったんですけど、それがこのブログを始める前だったせいで、まだレビューは書いていませんでした。そんな中、先日アマプラから「お前、これ興味あるやろ?」と今作を勧められ、懐かしさに駆られて2回目を鑑賞。結果、「やっぱこれ名作やんけ」と再認識いたしました故、今更ながらレビューをしたためた次第でございます。それでは早速、今作の詳細な内容を見ていきましょう。まずは良い点から。
今作の主な良い点は、テンポが良く面白いストーリー、良く出来たキャラクター、そしてクオリティの高いモンスターの3点。
まずストーリーですが、これは本当によく練られていると感じます。超ざっくりと言ってしまえば、突然街に人間大の虫型モンスターが登場し、住民が全員繭に閉じ込められるというパニックが発生した中、奇跡的に生き残った主人公が仲間を増やして脱出を目指す、的なストーリー。そして、途中でヒロインが虫に拐われたのをきっかけに、彼は脱出を諦め、虫の巣へとヒロインの救出へ向かうことを決意。そこで虫どもを殲滅し、無事ヒロインと結ばれてハッピーエンドという、話の流れとしてはかなりありがちでオーソドックスな展開。
しかし今作の場合、そのオーソドックスな流れを用いながらも、しっかりと一本のエンタメ映画として楽しめるよう、キッチリ工夫して見やすく作られているのが好印象です。
まず何よりも、話のテンポが大変に良い。大抵この手のモンスターパニック映画の場合、まずはキャラクターたちの日常を描きつつ、そこから何か異変が起きて、ついにモンスターが登場、という導入部の完了までにおおよそ30分、なんてこともザラにあるのですが、この映画はその流れになるまでがとにかく爆速。導入は本当に最低限のみに留めており、街の人間が全員繭になる→主人公がモンスターと最初の接敵をするまでに、なんと10分もかからないという異様なまでの超スピード。
それどころか、30分が経過する頃には、生存者を何人か集めて寝床を確保し、行動方針と翌朝の予定を立てつつ、虫を1匹捕獲して毒を採取し、生態を研究して弱点を探る、というところまで話が進んでいます。並の映画だと、まだモンスターとのファーストコンタクトしてるかどうかくらいの時間で、こんなに展開が進んでる映画もそうそうありません。そのため、とにかく序盤からガンガン展開が進み、グッと話に引き込まれます。
その後もこの流れは衰えず、街を移動して家族の安否確認などしながら、キャラ同士を絡めて次々とイベントを起こしていきます。さらに中盤には、単なる大型の虫モンスターだけでなく、人間が虫に変異したモンスターまでもを登場させる事により、この手の単一テーマモンスター作品にありがちな「テンポは良くても、そもそも同じような外見のモンスターばっかり出てくるから途中で見飽きた」という問題を回避することにも努めているなど、勢いの良さはそのままに、話を盛り上げる工夫がしっかり見られるのも嬉しいところ。
さらに終盤には、それまで軽口を叩いてばかりで頼りなかった主人公が、ヒロインを助けるために虫と戦う決意を固め、頭の上がらなかった父に反発してでも我を通そうとするようになるなど、キャラの成長要素も入れながら最終決戦への期待を高めて来ます。そして、いざ虫の巣での決戦、というシーンでは、各キャラの個性を生かした見せ場をしっかりと用意しての勝利を描き、話をバッチリ盛り上げて終わってくれる。
特にこの、キャラの個性を活かした見せ場を最終決戦でしっかりと用意する、という構成には、かなり好感が持てました。例えば、主要キャラの中に難聴のキャラクターがいるのですが、そのキャラは難聴ゆえに虫の高周波の鳴き声の中でも怯まず行動出来、そのおかげでボス敵を倒す準備が整う、というシーンが最も顕著。その他、主人公と瀕死の親父との死に際のやりとりに、序盤に登場した超何気ない伏線が活きてきたりなど、思わずグッとくるようも演出も。
とまあ、ストーリーは序盤からかなり勢いがあり、中盤終盤とそれを衰えさせることなくイベント多めの配分で話をドンドンと進めていきながら、それでいてキャラの特性や魅力を引き出す演出などもキチンと用意しているという、ぶっちゃけもうこの時点でB級映画としては相当評価できる作品となっています。しかしそれで終わらないのが今作で、これに咥えてモンスターのクオリティの高さ、それにキャラクターの出来が良いことなども評価点として数えられるので、かなり満足度が高かった。
例えばモンスターは、単純にCGの出来が良い事に咥え、襲撃の機会もそれなりに多いこともあって画面上によく映り、きちんとした存在感を放っています。また、飛ぶタイプ、地を這うタイプの他に、人間が虫に変貌したタイプもいるため、戦闘が一筋縄に行かず、演出の幅が広がっていて良かったと感じました。
そしてキャラクターたちは、とにかく主要キャラである4人がそれぞれに魅力的。軽口を叩いてばかりのポンコツ主人公は終盤でしっかり成長を見せますし、彼の親父は頑固ながらも、息子を大切に思う気持ちがちゃんと伝わってくる人物。第一印象では愛想が悪くぶっきらぼうに見えた難聴の大男も、話が進むにつれて可愛い一面をどんどんと覗かせてきて好きになっていきますし、ヒロインはこの非常時でも基本冷静で判断力もあり、守られるだけの存在でないため好感が持てる──など。
こんな感じで、ストーリー良し、モンスター良し、キャラ良しと、B級映画としては十分過ぎる出来栄えの今作ではあるものの、その反面、設定面ではかなり粗い部分が散見されるため、ここが気になってしまうとイマイチのめり込めないという事にもなり得る、という脆さは抱えています。
例えば、導入は爆速である分、そもそもこの虫たちはどこから来たのか、どうやって生まれたのか、どの程度勢力を拡大させているのかなどの説明は一切ないですし、町中の人間が繭に変えられるというこれほどのパニックが、あまりにもあっさりと一瞬にして発生してしまうことに違和感を覚えたりもします。そしてそれこそ、こんな非常時に(街内外の)政府や軍や警察は何してんだよ、という至極真っ当な疑問は浮かんではしまいます。
そして今作は、その辺の諸々の設定に対する真っ当な疑問を、軽めのノリと勢いで押し切っている色が強いので、これが合わない、という方にはちょっとキツイかもしれません。
というわけで総評ですが、設定面がかなり粗いという弱点こそあるものの、ストーリー良し、キャラ良し、モンスター良しと、B級映画としては充分すぎるポテンシャルを持っている作品です。特にストーリーの良さについては顕著で、かなりの爆速テンポ、かつ多彩なイベントのおかげで、まるで飽きずに視聴できる構成になっているのは本当に見事。事態の深刻さの割には、全体的にノリが軽いということもあって、モンスターパニック映画の中でもかなり見やすい部類に入ると思います。まだ見てないよ、見た気がするけど内容あんまり覚えてないよ、という方は、アマプラなどでの視聴を強くお勧めしたい、個人的これ好き映画です。
ところで、これは余談なんですが、今作はオチがものすごい雑な終わり方をするので、それが1番悪いと言えば悪い部分には思えます。さすがに「生き残ったキャラたちが、突然画面外を見て何かに驚愕→そのままエンドロール」は、さすがにもうちょっとマシな終わり方あったやろ、と思う。
今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!よければ、気軽にコメントしていってね