「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

バトル・オブ・チェルノブイリ 危険区域 のレビューです(総合評価D+)

(画像:Amazon商品ページより引用)
設定自体は割と面白そうなのに、それを調理して作品にまとめる能力に欠ける残念映画のレビュー、始めるわ。

食材はいいのに調理が下手な典型例。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 ポーランド
  • 製作 2019
  • 販売 トランスフォーマー

あらすじ

チェルノブイリ原発事故から32年。爆発跡地には、突如強力なエネルギーを発生させる“ゾーン”が出現し、周辺は政府が立ち入り禁止区域として厳重に管理していた。ゾーン内では、気候、地形、方角などが常に変化し、動物や人間の形までも変化させる“赤い嵐”が頻発。稀にそのエネルギーが圧縮されたボールのような球体、“アーティファクト”も排出されるのだった。貴重な“アーティファクト”は高値で取引され、ゾーン内へ違法侵入し、命懸けでボールを探す者も絶えない。そんな危険区域に兄を探しにきたミハウ。彼の兄は政府機関に所属し、ゾーン内の調査へ向かうという日記を残して行方不明になっていたのだ。しかし、ただでさえ危険なゾーン内は、政府や侵入者たちも巻き込み、あらゆる組織の抗争が繰り返され、極限のサバイバル状態が続いている。果たしてミハウは無事にこの過酷な環境を生き延び、兄を見つけることができるのか! ?

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
アクションの質
設定
総合 D+

良い点

  • 設定やビジュアルなど、面白そうな要素はちらほらある

悪い点

  • 面白くなりそうなのに、まるでそれを活かせていない
  • 終始進行が淡々としており、絶妙に盛り上がらない

 面白くなりそうでならない、盛り上がりそうで盛り上がらないをずっと続けてそのままゴールするような映画でした。面白そうな設定を次々使い捨てていく結果、一生盛り上がらなかったので、非常に勿体無い作品です。

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があります。未視聴の方はご注意ください!
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 設定だけ流用して作り直して欲しい。

 さて今作ですが、放射能汚染区域と言えば、でお馴染みチェルノブイリ区域内における抗争をテーマとしたアクションSF映画です。パッケージに映っているイモータン・ジョーみたいなマスクをつけたおっさんがカッコよかったのでレンタルしました。

 それでは早速、今作の詳細な内容を見ていきましょう──なのですが、今作の良い部分と悪い部分はそれぞれ表裏一体と言いますか、良い部分を活かしきれていないことがそのまま悪い点にも繋がっている感じなので、まとめて一緒に見ていこうと思います。

 まず今作の良い点は、面白くなりそうな設定はちらほらと出てくることや、戦闘描写やビジュアル始め、光る部分はちょこちょこあることです。
 反面悪い点は、それらを全く活かしきれておらず、終始盛り上がりそうで盛り上がらないテンションがずっと続くことです。

 例えば、チェルノブイリの区域内(ゾーン)に発生する、超常現象の多発するアノーマリーという空間があることとか、ゾーン内に発生する超自然的物質アーティファクトの存在、そしてそれを求め、危険なゾーン内に足を踏み入れる人々ストーカー。さらに、そんな彼らと敵対する特殊部隊やゾーン内に蔓延るミュータント、ゾーン内に吹き荒れる赤い嵐など、今作には美味しそうな設定だけは色々と出てきます

 しかし、これら色々と出すだけ出しておいた割に、それぞれの扱いが大変に雑。例えば、超自然的な力を持つとされるアーティファクトの扱いについて。映画内では素晴らしい治療能力を持つものとかが出てきて、ストーリーに上手く絡めれば面白くなりそうなものですが、劇中だと全く活躍の場がありません。この他にも、折角色々なアーティファクトが存在することが示唆されているんだから、例えば身体強化のアーティファクトとか超能力的なやつとかを出して、それを使う敵が出て来たりなど戦闘描写に絡めても良さそうなのに、そういうのも一切なし、と大変肩透かしを喰らいます。

 またゾーン内の超常現象が発生するエリアのアノーマリーについても、単に「主人公たちが危ない目に遭う場所」程度の使い方しかされていない。敵対する特殊部隊も、突然現れて突然戦って雑に退場、はいもう2度と出てきませーん、的な使い方しかされない。放射能汚染につきものなミュータントも、中盤に一瞬だけ顔を出して雑に倒して終了、以降出番なし。
 こんな具合で、もうあらゆる要素、設定の使い捨て感が非常に強く、アノーマリーとミュータントを組み合わせて、危険地帯+強敵登場で戦闘を盛り上げようだとか、敵の特殊部隊の中に強力なアーティファクトを使用するボスキャラ的ポジションの敵がいたりだとか、そういう設定同士の複合で話を盛り上げていこうとする姿勢が全く感じられません

 「ストーカーっていう集団がいるんだ! まあ、舞台設定説明だけさせたらもう絡みはないけどね」「特殊部隊との銃撃戦もあるよ! まあ、中盤以降はもう出さないけどね」「ミュータントってのもいる! まあ、もう出てこないけどね」と、一つ使ってポイしたらまた次の要素を使い捨てて、という感じが頭からケツまでたっぷり詰まっているので、そりゃ話が盛り上がるわけないですわ。主人公たちと特殊部隊との戦闘に、ミュータントや他のストーカーとかの第三勢力を絡めてみたりだとか、戦闘中に突発的に赤い嵐が発生して混乱状態になるだとか、使いようによってはいくらでも面白くなりそうな設定だけはゴロゴロ転がっているのに、それを全然活かせていない。この辺は大変にもったいないです。

 また、銃撃戦や格闘戦のクオリティ自体は(少々もっさり気味ではあるが)なかなかにいいものを持っており、またゾーン内で発生する超常現象や赤い嵐の描写なんかもCG使って結構頑張っているのですが、その割に一つ一つの描写がかなりあっさりしているためイマイチ乗り切れず、これも話の盛り上がりに貢献できていません。

 例えば、パッケージにデカデカと映ってるスカルマスクをつけた強化人間みたいな人。この人実は中ボスで、序盤から中盤にかけては何回か戦闘で出てくるためそれなりに存在感はあるんですけど、毎回の戦闘でもっさり気味な殴る蹴る攻撃くらいしかしてこない上、一回一回の出番はそんなに長くないので、なんか絶妙に残念感が漂っています。また、結局中盤の戦闘で3人くらいに囲まれてボコられて終了と大変呆気ない退場をかまし、それ以降出番なし。そんな具合なので、格闘戦単体だけで見ればそこまで悪くないのに、使い方があっさり過ぎていまひとつ盛り上がらない

 その他、中盤のミュータント戦もほんの一瞬で雑に決着がついて終了しますし、ゾーン内で発生する超常現象も、突発的に発生するけど毎回適当に切り抜けたりするだけなのでこれと言って盛り上がらず、となかなか杜撰な出来栄え。

 極め付けに、最後の見せ場となりそうなラスボスミュータント?戦も、強敵感を漂わせている割には適当に銃ぶっ放して処理完了になりますし、その後は、取りに来た治療用アーティファクトを、瀕死の仲間に使いたい派と売って金にしたい派のしょうもない仲間割れがあるだけで、「いや、そこに時間割くんならミュータント戦もっとちゃんとやってくれよ」と言いたくなるなど、ことごとくピントがずれています。ぶっちゃけ、キャラに大した魅力もない今作において、仲間内での意見の相違からくる裏切りやぶつかり合いを最後の局面に持ってこられても「は、はぁ」としか思えないし、それで話が盛り上がるわけないですわん。

 とにかく最初から最後まで盛り上がりそうなポイントを徹底的に外した描写が続き一瞬上がってはすぐ下がっての繰り返しをずっと続けてそのまま終わるという、大変反応に困る内容でした。

 総評ですが、個々の設定やビジュアルレベルで見るとなかなかにいいものを持っている作品でありながら、それらを上手くまとめて作品として昇華させる能力に圧倒的に欠けているため、結果「やりたいことは分からんでもないけど終始盛り上がらない」という結論に落ち着きました。本編70分と短いため見るに耐えないほどではないですが、その分テンポが良いわけでもない──というより、中身がスカスカなので実時間以上に長く感じるなど、色々と残念な作品です。

 危険区域内を、ネジを投げて安全確認しながら歩くなど、印象に残るシーン自体はないでもないものの、ストーリーがありきたりで特殊部隊やミュータントの扱いも雑と、ドカンと盛り上がる箇所もないので、1ヶ月もすれば記憶からすとんと抜け落ちそうな作品でした。わざわざ新作料金払って見るほどの内容ではないと思います。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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