早く日本国憲法改正してこの辺全部重罪にして、どうぞ。
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 イタリア
- 製作 2018
- 販売 アメイジングD.C.
あらすじ
■生存確率1/10。究極のサバイバル。【X-トーナメント開催概要】
(Amazon商品ページより引用)
□ミッション:バイクでゴールを目指す
□ルール
:1、参加者が生き残り1人になった時点で終了
:2、競技中の全ての言動は中継され、プライバシーはない
:3、チェックポイントに先に着くと援助物資を調達できる
:4、走り続けないと、死亡 5:チームプレイは認められない
□会場 :刺客が放たれた地図にない森
□勝利者特典:冨と名声
【ストーリー】
世界中から集結した男女がバイクで、覆面ライダーと殺し合いながらゴールを目指す、「X-トーナメント」と呼ばれる殺人競技会が存在している。出場者は10名。
彼らは体に発信機を埋め込まれ、コースに仕組まれたカメラの監視下でゴールを目指し戦い、一位の者には多額の賞金が与えられる。プレイヤーに選ばれてしまったカイルは、
妻と幼い娘を残し借金を返すためにゲームに出場することを決意。彼は鍛えたスタントの腕と持って生まれた鋭い勘を生かし、強豪プレイヤーを打ち倒していくが…
予告編
ストーリー | C |
キャラクター | C |
設定 | D |
総合 | C- |
良い点
- 前半は先への期待もありそれなりに楽しく見られる
- マウンテンバイクのレースシーンは飽きさせないよう撮り方を工夫してある
悪い点
- 盛り上がらないストーリー
- てきとーな設定
一言で言うなら「あらすじみたいな内容の話が見たかった」映画です。クソつまらなくはないが面白くはないというタイプで、なんとも盛り上がり不足。あらすじ詐欺を許すな。
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トーナメント(大嘘)
さて今作ですが、タイトル、あらすじ、予告編、全て騙す気満々の詐欺映画です。日本版広報担当を許すな。
と言うわけで、いつもの良い点悪い点の前に、まずは今作が本当はどういうお話なのか解説します。まずは今一度あらすじを読んでみて欲しいので、再掲します。
世界中から集結した男女がバイクで、覆面ライダーと殺し合いながらゴールを目指す、「X-トーナメント」と呼ばれる殺人競技会が存在している。出場者は10名。
彼らは体に発信機を埋め込まれ、コースに仕組まれたカメラの監視下でゴールを目指し戦い、一位の者には多額の賞金が与えられる。プレイヤーに選ばれてしまったカイルは、妻と幼い娘を残し借金を返すためにゲームに出場することを決意。彼は鍛えたスタントの腕と持って生まれた鋭い勘を生かし、強豪プレイヤーを打ち倒していくが…
(Amazon商品ページより引用)これを読んで、どんな映画だと思いましたか? 恐らく、素直に文字通り受け取った方は、参加者同士が殺し合いながらバイクでゴールを目指す、もしくは参加者を襲う覆面ライダーと殺し合いしながらゴールを目指す類の映画だと思われたのではないでしょうか。かつ、主人公はこのレースが命の危険を伴うものだと知っていながら、自らの意思でこのゲームに参加したのだな、と思われたのでは? しかし実際のところは、全然このような内容ではありません。
まずは、この映画の真のあらすじをめちゃくちゃザックリですが書きます。まず主人公は、マウンテンバイクを使った極秘レースの開催を知り、友人と共に参加を決意。半ば拉致に近い形で現地に連れてこられ、簡単な説明を受けてレーススタート。そしてこの時点では、主人公と友人はこれを、10人の参加者が競い合う単なるレースだと思っています。
しかししばらく走ると、助けを求める女性参加者と出逢います。なんでも、レース中に自分の相方が謎の覆面ライダーに殴られ動けなくなっているのだとか。そして現場に行ってみると、そこにはなんと死体が。こんなハプニングがあってはもうレースどころではない、という事になるのですが、彼らも覆面ライダーの襲撃を受け、主人公と友人は気絶。
目を覚ますと、拘束されている2人。そこではじめて、このレースは参加者が自分たち2人だけ、かつ単なるレースではないことを知らされます。なんでも、これは運営側であるなんかの宗教団体が行っているなんかの儀式らしく、なぜか主人公たち2人にとにかくレースして欲しいんだとか。そして、彼らはなぜか毒を投与され、解毒剤が欲しければゴールを目指せ、と放り出されて、再びレースを開始します。
で、お互い個々に走ってゴールを目指しますが、どうやら先にゴールしただけではダメらしく、ゴールに2人揃った時点でなぜか素手でのタイマンをさせられ、勝った方に解毒剤をくれてやる、という展開に。
まあなんやかんやあって主人公は生き残るのですが、結果運営側である宗教団体に追われる身となり、ラストシーンでは結局捕まって、今度はなぜか覆面ライダーとのタイマンをさせられます。おしり。というわけでこのゲームですが、参加者は主人公とその友人の2名だけです。正確には、10人参加していると運営から知らされはするのですが、残り8人の内訳は運営側のサクラが1人、死体でしか出てこない人が2人、残りはそもそも出てこない。かつ、主人公たちを襲う謎の覆面ライダーも出てくるは出てくるのですが、別にこいつはレース中に本気で殺しにかかって来ているわけではない上、別にこいつや他の参加者と殺し合いをしながらゴールを目指すわけではないんですよね──基本参加者2人はお互いの妨害をするわけでも殺し合うわけでもなく、ひたすら個々にゴールを目指して走るだけですから。
さらにあらすじは、主人公がさもこのレースが命懸けってことを知ってて参加したみたいな書きぶりですけど、実際には彼はそのことを隠され、騙して連れてこられています。つまり彼自身には、他人を殺す覚悟とか自分の命をかけて走る決意とか、そんなものは一切ありません。だからそもそも、殺し合いながらのレースみたいな展開自体起きるわけがないのです。というわけでこの映画、お互いに騙し合い殺し合い、他者を蹴落として一人勝ちを狙うというような、いわゆるデスゲーム要素とマウンテンバイクでのレース要素を合わせた映画というわけではなく、基本は地味に山道を1人で走り、途中で友人と合流して話したり、ハプニングに見舞われてあれこれしつつ、また走り、走り、走って、んでゴール地点に着いて友人と決闘。その後、自分たちを騙してこのレースに参加させた謎の宗教団体に追われ、結局逃げきれずに覆面ライダーと決闘させられて終わり、という内容の映画になっております。あらすじや予告編にあるような、参加者10人での殺し合いだとか、トーナメント要素だとか、そういう映画じゃないです。もうこの時点で大幅減点でもええんやが──
というわけで、前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、これを踏まえて、今作の良い点悪い点をサクッと解説。まずは良い点から。
今作の良い点は、前半は先への期待からそれなりに見られるということと、レースシーンの撮影方法はそれなりに工夫が見られるということです。
さて、今作が10人の参加者によるデスレース映画ではないことは先に解説しました。しかしそれでも前半、純粋に山岳地帯をマウンテンバイクで走ったり予期せぬトラブルに見舞われて右往左往している間は、先への展開の期待もあり、それなりに見ていられます。きっとこの後、これが単なるレースではないことが判明して、本物の殺人レースが開幕するんだろうなぁ、という期待ですね。まあ、見事に裏切られたんですが(血涙)
また前半の視聴意欲を支える、映像の見せ方についても触れましょう。今作のレースシーンは、俯瞰視点と主観視点との両方を織り交ぜてお届けされます。つまり、通常通りにカメラを使ってレーサーを三者視点で撮った映像と、レーサーのヘルメットに装着されたゴープロカメラを使った一人称視点映像を組み合わせて撮影されているのです。俯瞰視点だけだとレースの迫力や躍動感が伝わりにくく、主観視点だけでは見にくい映像になってしまう、という両者の弱点を補い合うように映画が構成されているのは、ちゃんと工夫して撮ってるな、と思いました。
まあ、これ自体は別に斬新な手法でもなんでもない上、こういう一人称視点も三人称視点も取り入れている映画自体はたくさんあるのですが、安易に俯瞰だけ、ないし主観だけの撮影で思考停止していないことには好感が持てます。そのおかげもあり、レースシーンは結構楽しく見ていられました。というわけで、良い点以上。続いては悪い点です。今作の悪い点は、とにかく盛り上がらないストーリーとなんともてきとー極まりない設定。君たちだよ君たち。
まずストーリー。先に解説したように、今作は参加者同士の殺し合いだとか謎の覆面ライダーとのバトルだとか、そういった要素は非常に薄味で、基本的には2人のおっさんがマウンテンバイクで技決めながらひたすら個人プレイでゴールを目指して走る、というのが主軸となっています。先に述べた撮影方法など魅せ方の事もあり、これだけでもまあ百歩譲って前半はなんとかやっていけない事もないのですが、問題は後半。これが実は単なるレースではなく命を賭けさせられるものだった、ということが判明した後も、やってることは結局一緒じゃあさすがにやっていけません。
前半、これが単なるレースだと思っていた時は、賞金のためにゴール目指して走る。後半、これが単なるレースではないと知った後は、解毒剤欲しさにゴール目指して走る。これじゃあ、ゴールを目指す目的は変わっても、やってることは結局ゴール目指して個々に走るだけですからね。ここに、互いの妨害だとか騙し合いだとか、はたまた殺し合いだとかのプラス要素も加わってくればまた違ってくるんでしょうけど、そういうのはゴール後の決闘くらいしかないし。というか、結局2人がゴールに揃ってから素手決闘で勝敗決めるんなら、じゃあそれまでのレース関係ないじゃん、ってなるせいで余計盛り下がるんですよね……。
しかもこの映画、レースといいつつも参加者のコースはそれぞれ別なので、今どっちがどのくらいリードしてるのか、っていうのが完全に運営の匙加減次第になっており、競い合ってる感が全然出てない、っていうのもいまいち盛り上がらないポイント。レースにも関わらず、コースが完全個別でお互いに干渉し合わないせいで、映像的に今こっちが勝ってるとか、追い上げて抜いた、とかそういう描写が皆無なので、いきなりモニター上で順位入れ替わったって言われても「あ、そう」としかならないんですよ。
加えて、そもそもこのレース自体がなんかよくわからない宗教団体のなんかよくわからない儀式である、っていう設定が突然始まり、そこから決闘だの信者がわらわら集まってきて追いかけられるだの、なんかてきとーに考えたんじゃないかと疑いたくなる展開がぽんぽん飛び出してくるのも、盛り下がりの加速に拍車をかけています。
いやーいくら何でもてきとーすぎるんちゃう? 特にラストシーンの、逃げ切ったと思った主人公が実は逃げ切れてなくて、主催者らしき宗教団体の幹部っぽい人からナイフと仮面渡されて、正体不明の覆面ライダーとの決闘が始まる! → そのままエンディング、っていう、絵に描いたような丸投げエンドは流石に萎えた。これが、差し出されたナイフ使ってその場にいる信者をキングスマンばりに虐殺スタート、って感じでエンディング突入とかなら全く文句なしだったんですけど──いい加減、風呂敷広げるだけ広げといて何の説明もしないままお茶濁した感じで終わるやつ、とっとと法改正して厳罰化してくれませんかね……。
というわけで総評ですが、まあ撮影方法はじめ見どころがないわけではないんですけど、やってることはずっと個人レース&後半はなんかめっちゃてきとーな感じになってそのまま投げっぱなしで終わるので、なんとも盛り上がらない映画でした。そして何よりも、俺はあらすじのような映画が見たかったのであって、こんなよくわからないままただ走ってるだけの映画が見たかったのではないというのがデカいです。
今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。よろしければ、お気軽にコメントしていってくださいね!