虫苦手な人が見たら吐きます(嘔吐済み)
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 フランス
- 製作 2020
- 配信 Netflix
あらすじ
高タンパク食品としてイナゴを養殖しているシングルマザーは、思うように繁殖せず悩んでいたが、餌として血を与えると上手くいくことに気づく。
(Netflixより引用)
予告編
Netflix配信ページにあります。
ストーリー | D |
キャラクター | C |
イナゴのキモさ | B |
設定 | D |
総合 | D+ |
良い点
- イナゴがクソキモい
悪い点
- サイコスリラー展開が雑
- 終盤の展開がてきとーすぎる
全然繁殖しなかった食用イナゴに血を与えてみるとあら不思議、ぶくぶく大きくなって子供もたくさん産み、大繁殖で事業大成功、かと思いきや、凶暴性も増していて……という映画です。見る前はそのあらすじから、モンスターパニック的なやつを期待したのですが、蓋を開けてみれば血を与えてイナゴを繁殖させる事に躍起になり、気が狂っていく母親の様子を描いたサイコスリラー映画でした。モンスターパニックを期待すると期待外れになるので、まずはそこだけ注意してください。
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イナゴがクソキモかった(褒め言葉)
さて今作ですが、食用イナゴを増やして生計を立てようとするシングルマザーの涙ぐましい努力を描いた感動ドキュメンタリーです。近年昆虫食が注目されていますが、日本だとまだまだ普及は遠そうですね。僕の大学の同期も研究していたテーマだったのでその時に聞いたのですが、実は昆虫は肉よりも高タンパクで栄養豊富、かつ肉を育てるよりも低コストなので、なんか色々すごい食材らしいです! なお、見た目と味。
というわけで、そんな昆虫食を題材とした今作、早速詳細な内容を見ていきましょう。
まず今作の良い点ですが、イナゴがしっかりちゃんとキモいことです。
まずは今作のあらすじをおさらい。今作の導入は、食用としてイナゴを育てて出荷することを生業としているシングルマザーが、事業が上手くいかずヤケになっているところから始まります。仕方ない、もうこの事業、畳むか──そう思った矢先、実はイナゴは血を吸わせるとものすごく活発化して元気溌溂、体長肥大、子孫繁栄と大成功することに気が付き、それからはあの手この手でイナゴを増やそうと躍起になる、そんなお話。
そのため、作中ではしょっちゅうイナゴに血を吸わせり、餌を食わせたりする描写が入るのですが、これがもうしっかりクッッッソキモいです。場合によっては、自分の身体にイナゴを這わせて肉ごと食わせたり、イナゴが指を這って傷口チュパチュパする様をガッツリ描写したり、死体に群がって蠢くイナゴをバッチリ画面に収めたり、な描写なんかもあって、これがもう本当にキモキモキーモで背筋がゾワゾワします。
また特に前半は、イナゴが脱皮したり餌を食べたりなどのドアップ映像がかなり多く、とにかく虫耐性がないとかなりキツいです。自分は虫嫌いなんで、特に前半はなかなかヤバかった。この、虫を題材とする映画だからこそ、虫の気持ち悪さはしっかり画面に映そうとする姿勢、これは大変に良かったと思いました。
そして、ここからは悪い点を。今作の悪い点は、サイコスリラーとしての雑さ、そして終盤展開のてきとーさ具合です。
まず今作、パッと見は「人喰いイナゴが大群になって押し寄せるパニックホラー」っぽくも見えるものの、実際は「血を与えると繁殖することを知ったシングルマザーのヒロインが、事業継続のために一線を踏み越えながら狂気に落ちていくサイコスリラー」であると言うことは先にお話しした通りです。それ自体は別にいいんですが、ぶっちゃけこのサイコスリラー部分の出来は、お世辞にも良いとは言えません。
まず、今回狂っていくことになるシングルマザーの母親ですが、ぶっちゃけ「まともな人間」感が薄く、登場したその瞬間から何かやらかしそうな雰囲気がプンプン漂っているタイプの人。すごいイラつきやすい上に、行動が短絡的で、子供たちともコミュニケーション不足でその場限りの対応でご機嫌とってなんかしようとする、そんな感じの人です。
しかも、イナゴの養虫なんて変な事業に手を出しているせいで、生活は苦しくなるわ娘たちは学校で笑い物になるわ……そして、その様子を鑑みて一度は「イナゴ事業はやめて引っ越す」と娘に宣言したにも関わらず、すぐに手のひらを返してイナゴ養殖に躍起になった上、娘には事業継続に関するキチンとした説明もせず喧嘩になるなど、ただただ子供たちがかわいそうなだけで、ヒロインにはまるで同情ができません。イナゴが血を吸うとか吸わないとか、そんなの関係なしに遅かれ早かれなんかやらかしそうな人、と言う印象が強く、そんな人が、イナゴというキッカケがあって順当におかしくなるだけなので、「人が精神を病んで狂っていく」という恐怖がかなり薄く感じました。
かつ、イナゴに血を与える事、血を調達する事を考えるあまり、他人様の犬を勝手にイナゴハウスに放り込んで食わせたりとか、家畜を殺してその血肉を与えたりとか行動がエスカレートしていき、最終的には自分の身体にイナゴを這わせて直接餌になろうとしたりもするのですが、ぶっちゃけ行動として飛躍しすぎていて、展開に強引さを感じざるを得ない、という問題も。
イナゴが血肉を食う事に気付いたとしても、普通次のステップとしては、まずは市販の肉を試すとか、魚を与えてみるとか、ラットとかの生き餌を用意してみるとか、なんなら生きた鳥を買えないか業者と交渉してみるとか、正当なやりようはいくらでもありそうなものですが、そういう「普通に思いつきそうなこと」を一切試さずに、突然異常行動へと突っ走っていくので、まず真っ先に「アホかな?」と言う感想が来てしまう。こういうところでも、非常に短絡的で頭の悪い感じが存分に出ているため全然同情できず、彼女が狂っていく過程を見ても「まあ、この性格じゃあな」で済んでしまい、私はこの部分、全然見所に感じませんでした。
個人的には、こういう「何かキッカケがあれば今にも狂いそうな人」が、ただ順当に狂うだけの内容は見ていてもあまり響かないので、特にこの辺の描写が強くなる後半は退屈気味でした。一方で「シングルマザーの孤独がリアルに描写されていて、彼女の精神が病んでいく過程を楽しめる」という意見も見かけたので、ここは結構好みが分かれそうです。自分は否。
また、終盤に行くに連れて脚本がかなりガタガタになって来て、見ていて「いやそうはならんやろ」と冷める部分が多いのも残念なポイント。特に、娘が母親の秘密(イナゴに自分の身体を食わせている)を目撃してしまってからの展開は、「最後に大脱走したイナゴに襲われる展開がやりたい!」という前提のもとに話が無理矢理進められている感を強く感じて、全く付いていけませんでした。
またそこから、逃げ出したイナゴの大群が森に逃げた娘を執拗に追いかけまわし、湖に潜った後にまで決死のダイレクトアタックを仕掛けてくるところなんかは、流石に意味不明すぎて乾いた笑いが出ましたし、その後母親が娘を助けるために「自己犠牲精神発揮→イナゴが勝手に溺死してハッピーエンド」の流れなども、これはもうあまりにも強引、かついきなりの親子愛展開が大変薄っぺらく、色々とてきとーすぎて頭が痛くなった。
総評ですが、イナゴを題材にした作品なだけあって、イナゴのキモさは個体のドアップから大群での物量感までしっかり堪能できて吐き気がするほど気持ち悪いのでそこは大変グッドでした。その一方で、悪い意味で強烈な主人公の個性や、特に後半の脚本面でのガタガタ加減が目立ち、個人的にはイマイチ乗り切れない作品でした。
ただそもそも、こういうサイコホラー系は「狂っていく人物像」設定自体にかなり個人の好みが出る事に加え、映画レビューサイト等の意見を読んでいるとまさに賛否両論、という感じだったので、ハマる人は結構ガッツリハマりそうな作品ではあります。私は受け入れ難い作品でしたし、イナゴ×サイコホラーという題材的にも人を選ぶことは間違いないですが、興味があれば挑戦してみる価値はある作品だと思います。Netflixで独占配信中なので、気になった方はネトフリ入って、見よう!
今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!よければ、気軽にコメントしていってね