玄関開けたらバカでかい日本人形立ってるシーン、笑わない人いない説
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 日本
- 製作 2020
- 販売 SMR
あらすじ
巨大化した人形が殺人鬼となる
(Amazon商品ページより引用)
主人公の女子大生・平井由梨(小坂菜緒)は趣味のカメラで幼馴染の真人(萩原利久)と日常の風景を撮影する楽しい日々を送っていた。ある日、由梨のもとに差出人不明のパーティー案内が届いた。怪しい案内状は同じく真人にも届いており、案内状に記された集合場所に到着するとそこには同世代の男女5人と中年の男性(萩原聖人)がいた。パーティーの参加者には10万円の贈呈。この謎のパーティー会場となるキャンプ場へと向かった8人を不気味な日本人形が付き纏う。その人形の体が大きくなった時、決して引き返す事の出来ないパーティーが始まる。
予告編
ストーリー | C |
キャラクター | C |
スプラッターの質 | D |
設定 | C |
総合 | C+ |
良い点
- 日本人形とスプラッターを組み合わせようとする発想力
悪い点
- スプラッター要素はかなり控えめ
- 終盤の展開が期待外れ
見ての通り、クソでかい人形がさまざまな武器を手に襲いかかってくる、ホラーというかスラッシャーというかコメディというか、まあそんな感じの映画です。多分、複数人で酒飲みながら見るのが1番楽しいと思います。
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今作ですが、人間サイズのバカでかい日本人形が武器を手に襲いかかってくる映画です。うーんこの発想力。
それでは早速、今作の詳細な内容を見ていきましょう。まずは良い点から。
今作の良い点は、日本人形とスラッシャーを組み合わせるという天才的な発想です。
まずは今作のあらすじをおさらい。ざっくり言うと、キャンプ場に呼ばれた8人の男女が、そこで怪異に襲われる、というような内容の作品となっております。最初接点がないかと思われていた参加者たちですが、実は全員、10年前にもそのキャンプ場を訪れていてそこで面識があり、かつその時、とある少女が大事にしていた日本人形をふざけて燃やしてしまうという罪を犯していたことを思い出します。その少女は、それが(間接的な)原因となり死亡してしまい、その少女の怨念がこもった人形が、呪いの人形となって襲いかかってくる──そんな感じの内容でした。
キャンプ場×スラッシャーの組み合わせから、巷では「日本人形版13日の金曜日」とも呼ばれていますが、まさしくストーリー内容自体は古典の教科書に載ってるんじゃないかと思うレベルのベタさです。メンバーがそれぞれ1人になったところを殺人鬼(クソデカ日本人形)に順番に襲われていく、という点も特に捻りがない普通のスラッシャーという感じなので、もし今作に出てくるのが日本人形ではなく普通の殺人鬼だったとしたら、確実にベタすぎて無個性映画の仲間入りを果たしたと思います。
しかし今作は、ここにクソデカ日本人形という強烈な個性を加える事により、しっかりと存在感を放つことに成功してます。日本人形といえば、普通は呪いなどを使って間接的に攻撃してくるのが通例となっていますが、今作では「呪いを溜め込みすぎてバカデカくなった」というバカみたいなこじつけ説明を付け加えることで、これを殺人鬼に仕立て上げてます。この、およそ通常のホラーの日本人形のイメージとはかけ離れた組み合わせが実に秀逸。
人間くらいの大きさがある日本人形が、ナイフや手斧、チェーンソーなど様々な武器を手に襲いかかってくるビジュアルの強烈さは大変素晴らしいの一言。特に、日本人形がチェーンソーを手に全力疾走で追いかけてくるシーンなんかは爆笑──もとい、圧巻の一言でした。そして今作ではこれを、ギャグではなくあくまで真面目にホラーとして扱っていることが特徴。
まあ、案の定全く怖くはないんですが、逆にこの「雰囲気なあくまでも真面目なのに、ビジュアルがどう見てもギャグ」というギャップが心地よいです。ビジュアルの時点でギャグ成分は充分なので、シナリオ上はあからさまなおふざけには走らない、という判断は、個人的には支持したいところでした。
反面悪い点としては、スプラッター要素の物足りなさ、そして終盤の展開の期待外れ感です。
まずはスラッシャー・スプラッター要素について。前述の通り、今作はスラッシャー×日本人形という内容になっており、通常であれば呪術攻撃を仕掛けてくるはずの日本人形が、武器を手に直接攻撃を仕掛けてくる、という構図自体は大変素晴らしいです。ですが、今作のスプラッター部分の出来栄え、お世辞にも良いとは言えません。
原因はいくつかありますが、1番大きな理由は、今作の殺害シーンは、「日本人形が武器を振りかぶる→被害者が驚く→カメラが切り替わる」、この繰り返しが多く、直接的な描写がほぼ映らないからです。刺したり斬ったりしている割には血の量も大変物足りず、また死体の欠損描写も皆無と、いくら低予算とはいえこれはなかなか残念な仕様。
そしてもう一つの残念ポイントである、終盤の展開について。今作、基本的なストーリーラインはかなり使い古されたテンプレ展開であることは先にご説明した通りです。個人的には、「テンプレ展開×斬新な部分(クソデカ日本人形)」という組み合わせ自体は肯定気味なのですが、それにしても終盤の展開は物足りないの一言。
実はこの日本人形、呪いの人形などではなく、中に人が入っていた事が終盤になって判明します。その中に入っていたのは、その人形の持ち主である亡くなった少女、そのお父さんでした。彼は、10年前のキャンプで娘が大切にしていた日本人形を燃やされ、それが原因で精神を病み、結果亡くなったことに対する復讐として彼らを集め、この復讐劇を遂行していたのです──そして正直に申し上げますと、この展開が来た時点で、結構熱が引きました。
いや、実は人間が入っているかもしれない、という事は可能性の一つとして考えていたのですが、大抵こういうのって、登場人物の中の意外な人物が、亡くなった少女と意外な接点があったために犯人だったりするからこそ盛り上がると思うんですけど、その犯人がお父さんだったというのは、あまりにもド直球ド真ん中ドストレートで捻りがなさすぎて、「そ、そうですか」となりました。
かつ、この作品では劇中に、どう考えても人の手による行動だけでは説明のつかない怪異が存在する(ポッと出の教授による人形への実験シーンなど)ため、「実行犯はお父さんだったけど、実は人形の呪い自体はそれはそれで存在したのだ!」的なオチがつくと思って見ていたのですが、そういうのも特になし、という肩透かしっぷり。正直、全体的なストーリーラインはテンプレでも、オチくらいは多少捻ってくるかと思っていたので、ここは流石にあっさりし過ぎていて期待外れでした。普通に心霊オチつければよかったと思うんですけど……。
また期待外れといえば、今作は心霊ホラーとしても殺人鬼スプラッターとしてもかなり中途半端な部分、物足りない部分が多く、良くも悪くも「クソデカ日本人形のインパクト以外は普通、ないしそれ以下」という映画になってしまっています。そのため、今作の強烈に目を引くパッケージや予告編などを見て、はっちゃけた内容、またはぶっ飛んだ内容を期待してしまうと、あまりに普通すぎる内容とスプラッターシーンの低クオリティさに、期待外れに思ってしまう可能性も十分あり得るので、そこはご留意ください。
総評ですが、良くも悪くもとにかく「バカでかい日本人形が物理的に襲ってくる」というインパクトに全てを捧げたような内容の映画でした。ビジュアル的にはまさしく期待通りで、ホラーコメディとしては秀逸だと思いますが、ストーリー的には大変に普通、かつ終盤は結構な肩透かし展開なので、手放しに褒められるような映画ではなかったです。
「心霊ホラーだとミスリードを誘っておいて実は人間の手による仕業だった」「クマの罠あるから気をつけて→逃走中に踏ませる」「亡くなった少女の誕生日に復讐劇を計画→死体を集めて誕生パーティー開催」「クソデカ日本人形に、元となった呪いの日本人形と同じ末路(焼却)を辿らせる」など、伏線や小ネタなどの映画を盛り上げようとする要素自体は結構しっかり仕込まれてはいました。しかし一方で、「日本人形の呪いは実在するのかどうか」「キャンプ場の管理人は結局どういう立場なのか」などの部分を始め、結構大事な部分が投げっぱなしでぼかされていることも多く、一概にストーリーがしっかりしているとは言えないのも困りもの。この辺はもう少ししっかりしておいてくれれば、また評価も変わって来たと思うだけに残念です。
まあ案の定全く怖くはなく、殺害シーンもかなり見応えがありませんが、逆にいうと怖いのやグロいのが苦手な方でも大変安心して見られます。また、ストーリーラインはテンプレ気味ですが、その分、壊滅的に悪い部分もなくかなり見やすいと思います。これらの特性から、ホラーやスラッシャーが苦手な方とも一緒に楽しく見られる可能性は十分に秘めているため、仲間内で酒など飲みながらオンライン視聴、なんて見方も面白いかもですね。
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