「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

必殺! 恐竜神父 のレビューです(総合評価C+)

(画像:Amazon商品ページより引用)
 
ハマれば天国、ハマらねば地獄を突き進むクソ雑演出コメディ映画のレビュー、始めます。

最近、コンマビジョンの躍進がすごい。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 アメリカ、中国
  • 製作 2018
  • 販売 コンマビジョン

あらすじ

デタラメ忍者にアーメンダブツ!
敬虔な牧師ダグは自動車の爆発事故で両親を失い、傷心の旅で中国を訪れる。
そこで忍者に追われる謎の女性から牙の化石を受け取るが、その牙は人間を恐竜に変身させる力を秘めていた。
強大な力を得たダグは娼婦キャロルと協力し街のために悪人退治を始めることとなる。
彼らは悪党たちとの戦いの末にチャイニーズ・ニンジャ軍団が全ての黒幕だと知る事になるが…

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
ゾンビの質
設定
総合 C+

良い点

  • 各種ツッコミどころ、笑いどころは結構豊富なので、刺さればかなり楽しめる

悪い点

  • 狙った雑なコメディ演出が刺さらなかった場合地獄

 典型的な「刺されば良作、刺さらなければ地獄」という作品です。無駄なシーンがちらほらあるとかシナリオが雑すぎるとか色々と問題はあるんですけど、ぶっちゃけその辺諸々の問題は、この作品のコンセプトが自分の趣向に刺さるかどうかに比べれば大変に些細なことです。とりあえず予告編を見た上で「いやこれ何が面白いん?」と感じた方は、時間の無駄になる可能性が非常に高いので、今作の視聴はスルーすることをオススメします。
 ですが、かなり唯一無二性の強い作品なので、個人的にはぜひ見て欲しい。時間も70分程度と短いのもありがたみなので、気になられた方はいかがでしょうか。

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 雑演出のゴリ押しも、ここまでくると一つの芸術だと思った。

 さて今作ですが、まあ大体あらすじとか予告編を見ていただいたイメージ通りの映画です。いや、予告編だとあのシーンもこのシーンも入っていないので、それ以下か……。

 では、今作の詳細なレビューを──の、その前に。

 まず大前提としてなんですが、今作、大変大変アクの強い映画なので、合う合わないが強烈に分かれます
 最初に、「神父が恐竜に変身して忍者軍団と戦う」という一文を読んで「は? 何が面白いん?」と思われた方は、まぁ違いなくこの映画見ない方がいいです。確実に時間の無駄に終わることでしょう。なぜなら作中、神父が恐竜に変身する理由どころか、なんで敵が忍者なのか、その他諸々の点について、今作にはまともな説明がほとんどありません。基本今作の展開については、「恐竜に変身させたかったから」「忍者を出したかったから」などの「したかったから」が前面に押し出されており、説明らしい説明は期待できないと思った方が良いです。

 また、話や展開のつなぎはかなり強引な部分が散見されます。主人公がいきなりアメリカと中国を行ったりきたりしたりとか、主人公の両親の仇と不自然すぎる形で対面することになったりとか、主人公を尾行してきたはずの忍者が、寝込みを襲わずわざわざ朝になるのを待ってから襲いにきてくれたりとか、その他あらゆる点について話の整合性がガッタガタなので、「いくらおふざけバカ映画だからといえ、そういうのは気になって仕方ない」という方もスルー推奨です。その辺が気になる方は確実に後ろから刺されるので、時間を無駄にする前に大人しく引きましょう。撤退は恥ではありません。

 さて、それを踏まえた上で今作の良い点悪い点を見ていきたいのですが、正直、今作に限ってはこれはもう表裏一体な部分となっています。それは、「悪ふざけ感全開の演出」。これを受け入れられるかどうか、それによってこれが良い方向にも悪い方向にも作用するでしょう。ぶっちゃけハマるかハマらないか、それが1番重要

 ただ、今作の演出の特徴的な部分を見れば、各個人への合う合わないの指標になると思うので、個人的感想も交えながら、その辺を解説していきたいと思います。

 まず、今作の1番の特徴は、とにかく予算のなさを前面に押し出した演出の数々でしょう。予告編中にも、その片鱗はちらほらと見え隠れしています。中でも、今作の大本命である恐竜のクオリティについてはお粗末なんてレベルではなく、ガチで単なる雑な着ぐるみを着て「これが恐竜だ!」と言い張っているだけという開き直り具合。イメージが持ちやすいよう、参考画像を用意いたしました。

参考画像

(画像:Amazon商品ページより引用)

 この、Twitterとかでよく見るT-REXの着ぐるみ、あるじゃないですか。これをもう少しだけマシにした程度の出来です。もちろん、CG処理的なものは一切なしです。また、体の一部だけが恐竜になるシーンもちょこちょこあるんですけど、例えば腕だけが恐竜になるシーンとかはどう見ても手袋はめてるだけにしか見えないなどの徹底っぷり。うーん、この潔さ。

 なお、物語終盤に入るまでは、画面上に着ぐるみ全体が長いこと映るシーンは少ないものの、終盤ではこれが白昼堂々、かつ複数の忍者相手に真剣に暴れ回るド派手()なアクションシーンがあるので、そこの部分は今作最高の盛り上がりを見せることでしょう。もちろんこれ、真面目な恐竜映画でこんなの出てきたらブチギレ、かつ恐竜の質評価E不可避なことは言うまでもないですが、今作はこれらのガバ演出が、映画のコンセプトとマッチするように計算された上で、あえてこの雑さにしていることは間違いありません。そして、コメディとしては完全にこれで正解。なので、今回恐竜の質評価は今作の映画の雰囲気に合致するものとして、C評価にしておきました。決して、その他B級恐竜映画と比べて出来が良いというわけではないので、そこだけはご注意ください。

 また、冒頭で車が炎上するシーンがあるのですが、普通の映画ならなんらかのCG加工を施して燃えている感を出してくると思うんですけど、今作はここでも生半可なCG処理には頼りせん。なんと、画面上に「特殊効果:炎上する車」という文字を表示させるという全く斬新な表現方法を用いて勝負してきます。
 いまいちイメージが湧かないという方向けに図でご説明いたしますと、こういうことです。

イメージ画像

 いや、今まで炎のエフェクトを雑に画面上にベタ貼りするだけ、というような演出は低予算映画で多々見てきたんですけど、まさかエフェクトすら使わず文字で炎上を表現するという方法には度肝を抜かれ、また感銘を受けました。こんなやり方があったのかと。

 また、撮影用のマイクが思いっきり画面に映り込んでいたりとか、主人公が1人の敵を相手している間に、その後ろでただの娼婦のはずのヒロインが忍者を5人くらいボコボコにしていたりとか、ラスボスが倒されて首を引っこ抜かれる瞬間に、どう見てもマネキンに差し代わっていたりとか、他にもツッコミどころは尽きません

 反面、CG関連に関してはこれだけガバガバで雑な処理でありながら、人が食いちぎられたり死んだりする時の流血描写は無駄に力が入っており、血糊を大量に使って出演者を無闇矢鱈と血まみれにしたがるうえ、食いちぎられた腕はしっかりと別で用意するなど、概ねそこらへんに転がっている平凡なB級映画程度のクオリティはあり、そのギャップにも好感が持てました。

 総じて、終始悪ふざけ感満載の演出が山盛りで、これを許せるかどうかが、今作を評価する上での1番の分かれ道となります。私はこれら、低予算を逆手に取ったような演出は全然OKで楽しめましたが、ここが今作最大、かつ唯一と言っていい強みの部分なので、これが受け入れられなかった場合は今作の評価は悲惨なことになるでしょう。

 そしてここからは、私が残念に感じた部分を。この、低予算前面ゴリ押し戦法自体はかなり好物だった私ですが、それでも今作を手放しには褒められず、総合評価がC+止まりで終わってしまったのには、2つほど理由があります。

 一つは、無駄の多いストーリー。今作は70分というコンパクトさでありながら、その中身はスリムとは言い難い構成となっています。

 例えば中盤、主人公の上司が過去に戦争を経験した時の回想シーンが流れるんですけど、これがそれなりの尺をとって挿入されているにも関わらず、この話が後半何かの伏線になるわけでもなければなんらかの意味を持つわけでもなくて、はっきり言って不要な時間。
 また例えば、主人公とヒロインがベットインするシーンがあるんですが、この部分も単調で無駄に長い。その上、画面の明滅が激し過ぎて目がチカチカするなど、不快になるパートも。

 そして今作には、こういう「ここいる?」パート、いわゆる無駄なものが結構多いです。まあ、垂れ流しというほど酷くはなく、合間合間にそれなりに見どころ自体はあるので、致命的にクソ退屈な時間が長く続く、ということはないのですが、度々失速を感じられてちょっともったいなく思います

 特に今作の中盤は、割と無駄な描写が多く話のテンポが悪くて、序盤の疾走感と比べるとどうしても減速を感じてしまいます。序盤と終盤の流れは良いだけに、ここはもったいないと思いました。

 そして二つ目は、狙い過ぎたクドいギャグ演出です。先ほど、今作の演出についてはいくつか取り上げて褒めたところですが、残念なことに最初から最後まで全部良かったわけではありませんでした。

 全体を通して個人的に思ったのは、例えば恐竜に変身した神父と忍者軍団が戦う場面のような、「あくまで真剣に戦っているけど、それに反して絵面がチープすぎるのが面白い」という類の面白さはまるで問題なく受け入れられたのですが、明らかに「ほら、こここんな雑ですよ! 笑いどころですよ!」と押してくるような場面、これは正直冷めました

 そういうシーンがいくつかあるんですけど、例えば1番気になったのは、ラスボスがマネキン化するところです。主人公が恐竜になってラスボス神父さんの首を引っこ抜く、というシーンがあるんですけど、この場面、ラスボスの首を引っこ抜く瞬間、明らかに人間からマネキンに差し代わるんです。
 この演出自体は普通に面白くて全く問題なかったんですけど、その首を引っこ抜いた直後、主人公がわざわざご丁寧にその首を掲げ直し、しかも顔の部分をわざと前に向けて、明らかにマネキンであることを不自然に誇張する。しかもその首を地面に放り捨てた後にも、カメラが何回もマネキンに切りかわって、これまたわざとらしく画面に映したりもする。そして今作、この辺は狙って作っているために、こういう「わざとらしい」演出が結構多いです。

 個人的には、こういう「雑な演出をいかにもわざとらしく、しつこく映して笑いを取ろうとする描写」が苦手なので、こういうノリが合わなかった部分もあります。「あえて狙う雑な演出」は、あくまでも真面目なワンカットにそれとなくスッと差し込まれるくらいが最大瞬間風速が高くなると思っているので、こう何回も見せられたらその分冷めてしまうのです。なので、作中には「雑な演出」が山ほど仕込まれていましたが、好きな描写と嫌いな描写がちょっと分かれてしまい、イマイチ乗り切れない部分もありました。まあ、この辺はマジで個人の好みの問題なので、「いや全然気にならなかったよ」という方も多数いらっしゃると思います。

 というわけで総評ですが、まあ中盤少し話がだれてくることなど、映画の構成上の問題で言いたいこともないではないんですけど、正直、今作の強烈なアクのある個性の前には、その他の問題は些細なことに思えてしまいます。今作最大の強みである、悪ふざけ感満載の演出が、自分の趣向に刺されば滅茶苦茶楽しめると思いますし、逆に刺さらなければ、今作にはそれしかないので軽く地獄を見ることになるでしょう。

 そのツッコミどころ満載の性質から、〝理解ある”友人複数人と一緒に見る、という使い方にも最適だと思いますが、その方が本当にこの手の映画に〝理解ある”かどうかの見極めは、慎重にされることをお勧めします。

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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