「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

樹海村 のレビューです(総合評価D)

(画像:Amazon商品ページより引用)
犬鳴村に比べると映像的クオリティは圧倒的に向上したけど、ストーリー周りは相変わらずな駄作のレビュー、始めます。

犬鳴村とかいうどうしようもない空前絶後の超駄作に続く、恐怖の村シリーズ2作目です。
2作目とは言いますが、犬鳴村とは余計なファンサービスのおまけ要素程度しか話の繋がりはないので、こちらを先に見ても一切問題ありません。しかし、レビュー内では犬鳴村のことにガンガン触れていく必要があるので、そちらのレビューをまだ読まれていない方は先にそちらをどうぞです。

前作 犬鳴村のレビューはこちら

樹海村 公式サイトはこちら

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 日本
  • 製作 2021
  • 販売 東映

あらすじ

「お姉ちゃん知ってる?この箱が置かれた家はね、みんな死んで家系が途絶えるの…」。
人々を戦慄させる禍々しい古くから伝わる強力な呪いを、歪な木々や地を這う根が生える、不気味で壮大な樹海の奥深くに封印した。
――13年後。姉妹の響と鳴の前に、あれが出現。そして、樹海で行方不明者が続出する。
自ら向かったのか?それとも魔の力に吸い寄せられているのか?恐怖が、いま再び解き放たれる。

(Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
ゾンビの質
ホラー度
設定
総合

良い点

  • 不気味さ、気持ち悪さなどの方面にはかなりの頑張りが見られる
  • 映像的なクオリティ自体はかなり高い

悪い点

  • 相変わらずストーリーのとっ散らかり具合が酷い
  • ホラー的に見ればやっぱり怖くないので物足りない

 恐怖の村シリーズ2作目です。話の大まかな構成は前作とかなり似通っているため、特にストーリー周りのとっ散らかり具合をはじめとした弱点は前作同様な印象。ただし、前作より予算が増えたのか、映像的なクオリティはかなり高く、終盤はそれに対する興奮だけでなんとか持たせたようなバランスになっていました。また、前作よりもホラー描写の量自体が増加していることも嬉しいポイント。総じて前作よりもかなりマシになってはいますが、まだまだ良作とは言えず、率直に言って面白くないです。

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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ワイ
前作は『タイトルに犬って付いている』という隙を与えたせいで、犬人間が出て来て爆笑不可避な展開だったが、さすがに今作は変なモンスター要素とか入れてこんやろ
製作陣
樹海……木……よっしゃ! 木になるゾンビ出したろ!
 そんなにモンスター出したいんならもうモンスター映画撮れよ。

 さて今作ですが、犬鳴村に続く恐怖の村シリーズ2作目です。あの……犬鳴村と言いこれと言い、なんか「恐怖の『村』シリーズ」って銘打っているし、キャッチコピーも「行ってはならない場所がある」的な感じで、明らかに村という『場所』をメインとした話だと錯覚させようとしている節があるんですが、だったら血筋がどうたらとかコトリバコがどうたらとかの、本来おまけ要素であるはずの部分の方を強く押し出してくるの、やめてくれませんかね? 前作はまだギリギリ分かるとして、今作は明らかに邦題「コトリバコ」の方が適切でしょ。コトリバコ要素と樹海要素、どっちの方が外せないかと聞かれたら圧倒的にコトリバコ要素だぞ。

 と、開幕から愚痴を垂れ流したところで、早速本作の詳細な内容を見ていきましょう。まずは悪い点から行きます。

 今作の悪い点は、相変わらずストーリー部分の散らかり具合は酷いという事です。

 まず最初になんですが、今作の話のおおまかな構成自体は、前作とほとんど同じです。序盤部分では、箱やら樹海やらに関わった人たちが死んでゆくホラーパートが盛り込まれ、そこから中盤に行くと、箱や樹海に関する謎を探るパートになり、そして終盤ではいよいよ、実際に村へ突撃するパートへ、という具合。前作で「犬鳴村」と「血筋」というキーワードでやっていた事を、今作ではまるっと「樹海村」と「コトリバコ」に置き換えたような内容になってます。

 そのため、ストーリー自体は非常に単純。ある日、メインキャラが引越しした先の家の床下から、コトリバコという呪いの箱を見つけました。その箱に関わった者たちが、次々と不可解な死を遂げてゆきます。そしてどうやら、その箱のルーツは樹海村というところにあるらしいことが分かったので、そこに箱を返しに行こう。こんだけの話です。

 かつこの作品、メインのストーリーはそれだけなのですが、前半からコトリバコに関わった者たちが呪われていく話と、樹海という場所に関わった者たちが死んでいく話、すなわち「箱ヤベェ」という話と「樹海ヤベェ」という話を同時並行的にごちゃ混ぜにして展開していく、という前作同様の手法を用いて来ます。この同時展開的なやり方のせいで、話の路線が散らかっている印象を受ける、というのは前作同様ですね。

 しかも今作は、登場人物が多くなっているせいか、場面の切り替えが前作以上に頻繁に起きます。それはもう、画面上で何かが起きるや否や「そして翌日」とか「一方その頃」みたいなノリで、ぽんぽんぽんぽん場面も展開も目まぐるしく切り替わっていく。そうしつつ、箱を中心にした話と樹海を中心にした話自体もごちゃ混ぜになって展開されるせいで、ストーリーの流れ自体はシンプルなくせして、今どの話が中心になっていて何が起きているのかが無駄に分かりずらいのです。かつ、村と箱の結び付け方がなかなかの強引さで、このストーリーなら普通にコトリバコだけでやるか樹海村っていう場所がやばい話だけでやるか、どちらかだけを選んで話をまとめた方が良いと思いました。この辺の感想は、概ね前作と同じですね。

 そして中盤からは、この箱はなんなのか、樹海には何があるのか、主人公たちの母親が抱えていた秘密とは、という謎を探るパートへ。前作ではこの辺の事情は、全部霊に説明させるという大変な荒技に及んでいましたが、流石に今作では反省したのか、ちゃんとネットで情報を調べたり、霊感のある妹から話を聞いたり、過去の記憶を回想という形で見せたりするなどの、ちゃんとホラー映画っぽい真相の探り方にはなっていましたここは確実に前作より偉いですね。ちゃんと、脳死で幽霊くんに説明させる以外の脚本も書けたんだね。

 ただしこのパートでは「過去に主人公姉妹の家にコトリバコが置かれていて、その箱から2人を守るため、お母さんが樹海村へとその箱を返しに行ったおかげで、母親は樹海に取り込まれたものの2人は助かった」的な展開へとなってゆくのですが、これ聞いて「これ後半、樹海村行ったらお母さんが助けくれてまた親子愛がどうとかのクッソ安い展開になるんじゃ……」という、嫌な予感がしてきます。そしてこういう時に限って、当たるんだな、その予感。

 さて、終盤村に乗り込んでみると、そこには過去に村人だったであろう者たちの成れの果てと、コトリバコのせいで死んだ友人様御一行のお姿が。そしてなぜか、村人たちは切り落とされた薬指から身体を再生する能力を持っており、B級ホラーのゾンビのような見た目と動きで主人公たちに迫って来ます。そして案の定母親の亡霊が出てきて、主人公をゾンビの群れから逃がそうと奮闘してくれる、という大変にお安いクソ安易なお涙頂戴テンプレ感動展開に。しかも、ここまでなら「はいはいまたこういう展開かよ」で終わったのですが、今作はこれだけでは感動ポイントが足りないと考えたのか、病室にいるはずの主人公の妹の生霊をなんの前触れもなく樹海に突然特殊召喚し、その妹の霊に自己犠牲の精神を発揮させて主人公を守らせるという、超唐突な姉妹愛描写までぶっこんできやがるという胸焼けしそうな展開に。

 いや、まあ中盤から伏線を張りまくってきたので、この親子愛描写はゲロ安いもののまだ分かるんですけど、姉妹愛の描写はマジで「お姉ちゃんを守るために犠牲になる妹、尊い!」的なノリで入れたとしか思えない驚愕の雑さ。しかも、ただでさえ安っぽい親子愛描写を入れた直後に突然ぶっ込んでくるもんだから、余計に安く感じる。というか、ここは姉妹揃って助かる流れじゃないの? 妹がここで死んだらダメじゃない? なんで殺したの?

 このように今作終盤では、「ちょっと怖い場面が続いたので、ここらで感動路線をひとつまみ……w」程度のノリで、立て続けに感動ポルノを押し付けられることになるので、「いやそんなクソ安い感動描写やる前に、樹海村やらコトリバコやらの設定をちゃんと掘り下げるなり、村に入ってからのマトモなホラー展開をしっかり入れるなり、やる事あるでしょうよ」と思ってしまう。マジで、主人公が村人たちから逃げ、そこからゾンビたちに追いかけられてからの展開は、この感動路線に行くための前振りみたいな描写がクドイくらい無駄に盛り込まれているため、この辺は本当に、見ていてクソつまらなかったです。いや本当に、こっちはゲロ安い感動展開見たくてこの映画を見にきてるんじゃないんですよ勘弁してくれよマジで。

 とまあ、ここまで文句まみれの今作なんですが、実は明確に、前作より良くなった点があります。それは、不気味さの演出と映像的なクオリティです。

 しかし、まずはじめに言っておきますが、ホラー描写については、今作についても手放しに褒められたものではありません。極一部分だけ、ほんのり怖い描写はありましたが、それを除いて今作も全体的にこれまた微塵も怖くないです。霊が直接的、かつ大量に映る部分はもちろんのこと、例えばドランクドラゴンの塚地さんが病院の屋上から飛び降りてきて、たまたま下にいた主要メンバーの1人と激突し、2人仲良くお陀仏になるシーンなんかは完全なギャグだった。夜中に1人で爆笑してました。いや、明らかに様子のおかしい塚地がエレベーターで上に登る→直後に飛び降りるんだろうな、というのは予想ついたんですけど、まさか雑に主要キャラにぶつけて死なすとは思わなかった。ギャグだろマジで。

 話が逸れましたが、こんな感じで前作同様お笑い種なシーンもあれば、頑張ってホラーしているけれども、メインストーリーが無駄にごちゃごちゃしているのが気になってホラーに集中しきれず、結果微塵も怖くなくなっているなどのシーンが大半を占めます。これまた非常にもったいない。

 ただし、これだけで終わらないのが今作の良いところ。主にコトリバコを中心にしたパートでは、箱の不気味なビジュアルをはじめ、虫が這い出て来たりとか、あるはずのない場所に箱が突然現れたりとか、赤ちゃんと思って抱いてたのが実は箱だったりとかの、とにかく気味が悪くて不気味な描写のクオリティ自体はなかなか高いです。また、序盤のPC画面上での自殺者写真いじり描写とか、無意識に自分の指切り落とそうとしてたりする描写とか、ふとした瞬間にゾッとさせる描写もチラホラとあり、「怖い!」とまで感じる部分はほぼないものの、気持ち悪い、不気味に感じる部分は結構ありました。もう全てがギャグにしか見えなかった前作に比べると、この部分は圧倒的にマシですね。

 また樹海に入ってからの、木に手首を掴まれたりするシーンについては、木の質感や動きの描写にかなり力が入れられており、単純に映像作品として見応えがあります。終盤のゾンビ展開についても、ゾンビの出来自体はぶっちゃけ普通かダメ寄り、かつストーリー展開から考えるとゾンビの存在自体はギャグみたいに見えては来るものの、指から手が再生され、そこから全身が形成されてゾンビになったりだとか、ゾンビの伸ばした腕が動く木となって襲いかかって来たりなどの、CG描写にかかる部分のクオリティが想像以上に大変よく出来ており、普通にモンスター映画としてかなり見応えがありました。それこそ、前作犬鳴村の、犬人間によるぎこちないノリノリダンスを見せられてからの噛みつき攻撃と比べるとまさに天地の差で、映像技術的な点では圧倒的に今作に分があります。というより、普通にこの木人間を主体としたモンスターパニックホラー作って欲しいくらい。

 というわけで総評です。映像的なクオリティが高いというしっかりとした利点はあるものの、それでもやはり、ダメな部分がよく目立つ作品でした。話の大まかな構成は前作とほぼ同じで、舞台と設定を変えただけ感がありますし、ストーリーのとっ散らかり具合も相変わらず酷く、安っぽい感動路線も何故か継承。ホラー描写は前作よりも圧倒的にマシですがやはりまるで怖くなく、終盤突然ゾンビ映画になったりと、これまたやりたい事をぶっ込みまくった結果、着地に失敗している印象が強いですね。

 そして何より残念なのが、この恐怖の村シリーズ、今後続くかどうかは分かりませんけど、「あ、こういう路線の作品なんだな」というのが確定してしまったことです。前作の犬鳴村の時点では、村が怖い話と血筋が怖い話に感動路線をぶち込んでミキサーにかけた結果、ひどい生ゴミが出来上がってしまった、とは思いましたが、「まあ、今作でやらかしてしまっただけで、次回作ではこの辺改善されているかも」という淡い期待は持つことができました。しかし今作においても、村が怖い話とコトリバコが怖い話に、これまた感動路線をドボドボ入れてミキサーにかけてくるので、もう「その場所に行ってはならない」という単純なストーリーで映画作る気ないんだな、と落胆しました。見る前から、樹海とコトリバコを絡めてくるということは知ってたんですけど、「コトリバコは樹海へと足を運ばせるための動機部分に過ぎず、次こそは樹海とその深部に位置する謎の村を舞台としたホラーが展開されたりするのでは」と期待を寄せてはみたものの、まさかここまで前作と同じような使い方をしてくるとは思わなかった。前作時点だと、何かの間違いでああなってしまったのかも、と思いましたが、どうやら意図的だったようです。

 もし今後もこのシリーズが続くとしても、村訪問パートをおざなりにした、安っぽい感動路線を織り交ぜたこのごちゃ混ぜ路線は継承されていくでしょうから、その点残念でなりません。反面、1作目が好きという人には、今作も楽しめる余地があると思うので、そこは朗報かもしれないです。

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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