「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

犬鳴村 のレビューです(総合評価E+)

(画像:Amazon商品ページより引用)
怖くないとは聞いていたけれど、まさかここまでひでぇとは思いもしなかった有名ホラー映画のレビュー、はじめるわ。

まさか有名映画相手にE判定出す日が来るとは思わなかった。

公式サイトはここ

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 日本
  • 製作 2019
  • 販売 東映

あらすじ

臨床心理士の森田奏の周りで突如、奇妙な出来事が起こり始める。
「わんこがねぇやに ふたしちゃろ~♪」奇妙なわらべ歌を口ずさみ、おかしくなった女性、行方不明になった兄弟、そして繰り返される不可解な変死…。それらの共通点は心霊スポット【犬鳴トンネル】だった。
「トンネルを抜けた先に村があって、そこで××を見た…」突然死した女性が死の直前に残したこの言葉は、一体どんな意味なのか?
全ての謎を突き止めるため、奏は犬鳴トンネルに向かう。しかしその先には、決して踏み込んではいけない、驚愕の真相があった…!

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
ホラーの質
設定
総合 E+

良い点

  • ほんの一瞬だけはほんのりちょうど良く怖い

悪い点

  • 極めて極一部を除いてホラー演出がゴミ
  • ストーリー詰め込みすぎて怖いよりもイライラが先に来る
  • 「とりあえず思いついた事全部突っ込みました」というノリで作ったとしか思えない
  • 無駄に長い。90分でまとめろ

あの「呪怨」の清水監督によるホラー映画です。「怖くない」とは聞いていましたが、マジでここまで酷いとは思いませんでした。ホラー耐性がゼロで、ホラーを見るときは背後に壁がないと心臓発作を起こすレベルの自分が、部屋のど真ん中で見ても何の問題もないレベル。お子様やご老人にも優しい。

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があります。未視聴の方はご注意ください!
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 ゲオさんが今作をホラーコーナーに置いていたので借りてきたんですが、置くコーナー間違ってますよ。それとも誰か、コメディの棚から間違えて持ってきちゃったのかな?

 さて今作ですが、あの「呪怨」の清水監督によるホラー映画です。いや、コメディ映画だったと思います。マジで酷かった。

 それではまず、サクッと良い点から見ていきましょう。今作の良い点は、極めて極々一部のホラー描写はほんのりとほどよく怖い、と言うことです。はるか昔、それこそ呪怨とかにあるような、古き良き日本ホラーって感じの、ふと見たら霊がいる、みたいなやつですね。後、開幕女が自殺するシーンで、電話しながら笑顔で目の前に落ちてくる、という飛び降りの描写、ここだけはマジでかなり良かったと思います。開幕からあのシーンまでの流れは、今作での数少ない褒められるポイントでした。ここだけ切り取って短編として出品すればよいと思います。
終わり。以上。

 というわけで、今作を好きな人には大変申し訳ないのですが、ここから先はマジで酷評の嵐になります。よろしければお付き合いください。

 今作の悪い点は、ぶっちゃけキャラクター以外全部です。ストーリー、設定、ホラー描写、軒並み全部丸でダメ。そのことをストーリーを追いながら、順番に見ていきましょう。

 まず前半は、犬鳴村という都市伝説的場所を実際に訪れたカップルが凄惨な目にあう、という話を発端として物語が始まります。その結果、彼女は精神崩壊して彼氏の目の前で自殺。原因を突き止めようと、再度犬鳴村のあった場所を訪れようとした彼氏は行方不明になり、その彼に同行した数名の仲間は後日全員死亡。そして彼らは全員、溺死という末路を辿ることに。
 一方その頃、そのカップルの彼氏側の妹である主人公。彼女は彼女で、なんか霊障に悩まされています。どうも彼女、昔から霊感が強かったらしく、普段から霊が見えたりといろいろ大変らしいです。そして勤務先の病院で、彼女は大量の霊に襲われることとなります。なお、実は、彼女は過去にダムに沈んだ村、犬鳴村の血を引く人間だった事が分かり、それが原因で霊感が強いらしいことが判明。

 今作のホラー要素はこの二つが主になってきます。しかしこの両要素、それぞれ別々の作品として出てくるのなら、どっちも良くあるホラー描写、って感じで悪くはないんですが、今作はこれをごちゃ混ぜにして同時に話が展開してくるため、若干路線がブレてる印象は受けます。要は、犬鳴村という場所に関わった人間が呪われていく話なのか、その住民の血筋を引いていることで呪われる話なのか、どっちの路線がしたいのかよく分からないのです。
 特に今作の場合、この両者を場面を切り替えて交互に、同時的に展開していこうとするせいで余計に話が散らかっている印象を受けますね。でもまあ、ここまでなら「構成の仕方はあんまり良くないけど、場所と血筋を絡めて両方から攻めたい」という意図は伝わってくるので、まだ全然マシでした。
 ここからが地獄だぞ。

 そこから主人公は、自分が犬鳴村という忌まわしき場所の血を引く存在だと自覚します。そうなると必然、じゃあその犬鳴村はなんで呪われているのか、過去にどんなことがあったのか、という話に当然なりますよね。普通ならここから、それを説明するパートに入るわけなんですが、今作はその辺の詳しい事情について、何から何まで全部幽霊が説明してくれる、という極限脳死展開に突入。それはもう、普通に触れる上に、どう見ても生きている人間にしか見えない好青年が突然主人公の目の前に現れて、「自分幽霊なんすけど、ちょっと話あるんだが」というノリで主人公を連れ出し、わざわざ映写機使って実際の過去映像を交えながらベラベラと喋り、犬鳴村の歴史に関する特別授業をマンツーマンしてくれるのです。

 いやいやいやいやおかしいだろ!

 それ普通、主人公が地元の図書館とかで過去の新聞記事を調べるなり、老人に話を聞くなりして、彼女が自力で調べてたどり着く必要がある情報じゃないんですかね? もちろん、過去の出来事を夢で追体験するとか、縁のある場所を訪れたら幻覚が見えたりするなど、補足的、補完的に霊障を使用する事は何も問題ないと思いますけど、今作のように一から十まで懇切丁寧にぜーんぶ幽霊さんに授業を開催してもらって知るような、そんなボケーっと口開いてたら勝手に餌が飛び込んでくるみたいな都合の良すぎる幼稚園児が書いたような脚本見せられたら、ホラーもクソもあったもんじゃないだろ! これ、笑う以外どうしろと。

 というか、この幽霊、主人公が子供の時からずっと見えてたらしいんですが、いや普通にこんなベラベラ話せるんなら何人も死人が出てどうしようもなくなる状況に陥る前にとっとと出てきて話しとけよ、と思わざるを得ない。せめて、せめて説明させる時だけはその辺の事情に詳しい普通の生きている人間だと思わせておいて、後々になってからなんか遺影とか見つけて「あの人、まさか……」みたいな展開にするんなら、ホラーとしてまだ分かるんだけど、そういうあって然るべき配慮も完全に無し。いやさぁ、この「自分幽霊なんすけど、映像資料も使って分かりやすく説明いたしますね」って演出の仕方は、ホラーじゃなくて芸人のコントのノリなんよ。なんやこの「うーんこの辺の展開考えるのめんどいから、都合よく幽霊さんに出てきてもらって全部喋ってもらうか」っていうゴミみたいな脚本は。

 もうこの時点で「この映画やべえな」となってきたんですが、安心してください。ここからはその比じゃない
 ここからも地獄だぞ。

 さてこの後なんですが、身内が死んだり行方不明になったりする中、実は主人公の母親さん、犬になってます。具体的には、床に飯を置いてヨツンヴァインになり、口だけを使ってそれをむしゃこらパクパク食べていて、その口からは牙をのぞかせている、という半獣人族へといつの間にか変貌を遂げていたのです。

 あ、原因は一切不明です。現時点でとかじゃなくて、マジで最後まで分かりません。どうやら監督、それまで幽霊メインの心霊ホラーでやってきたのに、この辺りから突然「いやタイトルに犬って付いてるし、やっぱ犬っぽい要素いるよな」と唐突に考えたらしく、その結果犬鳴村の血筋を引く人間は精神に異常をきたすとライカンになるという、お前それなんてバイオハザード8? な展開が幕を開けるのです。さてはバイオくん、犬鳴村にインスピレーションを受けたな?

 この後は、何でかよく分からないけど思い付きで唐突に村に行ってみたくなった主人公が犬鳴村を訪れるんですが、ここからはそれまでの心霊ホラーはなんのその、ライカンと化した女に襲われるモンスター映画が開幕となります。具体的には、狂った村人の1人が、ロボットダンスを踊りながら牙を生やし、わざとらしく笑いを誘う動きを繰り返してノリノリで噛み付いてくるという、「あの、心霊ホラーさんはどこへ……」と言わずにいられない展開に。

 さらに酷えのが、この獣人化する理由が一切不明、というかどう好意的に解釈しても納得できる説明が全くつかないため、マジでタイトルから受けたノリだけでビーストアウトさせただろ、と言わざるを得ない点。100万歩譲って、「この村の住人は犬とセッ○ス! していたという噂はデマだと思われていたけど、実は事実だったからなんですよ!」という理由だとするにしてもですよ、さらに1億歩譲って、そのせいで生まれた犬と人間のハーフは犬の血を引いているからビーストアウトするのはギリギリまだ分かるとして、単に犬とヤッただけの人間が獣人化するのはおかしいだろ! 犬とヤッただけで獣人族になるんなら世界中獣人族だらけになるわボケ!

 しかもその際、村人から赤ん坊を1人押し付けられるのですが、「過去の犬鳴村にタイムスリップした主人公がこの時に受け取った赤ん坊、実はこの赤ちゃんこそが、主人公の祖母なのでした〜」というオチを付けたいがためだけに登場させた、これまた御都合主義の塊みたいな安っぽい存在なので、スルーさせてください。さらにその間に、この赤ん坊やら何やらを巡ってなんか親子愛がどうこうとかいうクソ安っぽい描写があるんですけど、マジで無駄に長い上に今後の展開が全部読める、世界一無駄な時間なのでこれもスルーします。この辺はマジで、見ていて「早く終わんねえかなこのクソ映画」と思って見ていた。この辺りでもう、あまりに酷すぎる展開を連発するゴミ脚本に対しての怒りが限界突破してやばかったです。

 こんな具合で、今作は心霊がやりたいのかモンスターがやりたいのか、もうその時点で路線がブレブレな上に、各キャラが死んだり死ななかったりする理由にもいちいち一貫性がなく、場所がやばい話にしたいのか血筋が呪われてる話にしたいのかも掴みづらいだけでなく、なんか最後は主人公をループの起点としつつ、突然親子愛だとか村の悲しみを背負った血筋だとかで「ほら、いい話だろ、泣けよ」な雰囲気を漂われてこようとする安っぽさにゲロ吐きそうになる一方で、製作陣だけは「いやぁいい感じに纏まったな」と錯覚している様が目に浮かんできて殺意が湧くという、正真正銘のゴミみたいな展開が頭からケツまで余す所なくたっぷり詰まった空前絶後の超絶駄作となっております。とにかく序盤から、話の整合性とかバランスとかそっちのけで、その都度やりたい事だけを無理矢理詰め込みまくりつつ、ありとあらゆる方向に話を広げるだけ広げておいて、そのどれもがろくに着地できずに複雑骨折しているという、一体どんな話を目指したかったのか意味不明な仕上がり。

 いやあこれを見て、やっぱホラーのストーリーはシンプルなくらいが丁度いいと思いました。血筋メインの話にしたいなら、犬鳴村を訪れて呪われた的な序盤の展開全部いらんし、犬鳴村っていう場所がやばい、って話にするんなら、呪われた血がどうこうって無駄に話をややこしくする必要なかったと思います。これを両方、うまく絡めて話を展開できるのならそれで全然いいんですけど、今作の驚きの雑構成で行くんなら、絶対どっちかでいいです。

 この両方を変に絡めるだけ絡めたせいで、時間は無駄に長くなるわ話はスッカスカなくせに無駄に分かりにくくなりホラー描写がスッと入ってこないわで、マジでいい事ない。少なくとも、主人公が犬鳴村関係ない病院で霊障にあう展開は丸々いらんかった。なんか最後の最後に、こじつけレベルで病院での霊障と犬鳴村を結びつけていましたが、やるならもっと上手くやれよ感が凄いです。つまるところ、話の構成のさせ方があまりにもド下手すぎる。もしかして、「まあ人間は馬鹿だからこの程度のテキトーさでええやろ」と思ってるのでしょうか? 人間舐めてます?

 これに咥えて、じゃあ前半の心霊ホラーしていた部分はまだ良質なホラーだったのかと言われるとそうでもないため、前後半、攻守ともに隙のないクソ映画となっているのも終わってる点。

 今作は極一部の演出除き、基本的にやたらと霊の自己主張が激しく、おまけに数も多い上、みんながみんなノリノリで迫ってくるため、まず間違いなく笑いの感情が先にきます。特に、主人公が病院で、何十体もの霊に取り囲まれ、廊下で新春福男レースが開催されるシーンなんかは、逆にこれをどうホラーとして見ればいいのか、真剣に聞いてみたくなりますね。

 なお、後半は言うまでもなく、お母さんが突然ヨツンヴァインになって飯食ってワンワンし出したり、村人が暗闇でロボットダンス踊りながらクネクネ噛みつきしてきたりとマジで草不可避なので、これを真面目に怖いと思って撮影したんなら神経を疑うレベル。こんなもん世界中のどこに出しても立派なコメディ認定されるわ。

 その他、映像を交えて懇切丁寧に事情を説明してくれる霊が出てきたり、その人が村での探索に付いてきてくれたりするので、基本最初から最後まで微塵も怖くなく、全般的にホラー描写についてはマジで酷いです。ホラー耐性ゼロ、かつ怖い話を見るときは後ろに壁を配置しないと怖くて聞けないこの自分が、ずっと部屋のど真ん中でアグラかきながら見られたレベルのクオリティ。テレビ特番怖い話スペシャルの方が断然怖い。恥ずかしくないのかよ?

 総評ですが、マジでゴミ。懲役108分。フリスビー。ホラー風コント。生まれるジャンルを間違えた。失敗した方のバイオハザード8。怖そうな題材を怖くなくする天才。怖い話を読んだ後に見ると怖さを和らげる効能がある中和剤。どれでもお好きな呼び方でどうぞ。

 真面目な話、よくもまあここまで酷い話にできたもんだと呆れて言葉も出なかった。その他、「死産したことを母体に知らせないまま、全然関係ない他所の赤ちゃんを連れて来て、担当医と父親が勝手に養子縁組を組んだ」とかいう、家庭裁判所がそんなもん許可出すわけねぇだろ! と突っ込まざるを得ない、戸籍法の概念を完全に超越した究極ギャグ生命体が出てくるなど、細かい部分で突っ込みたいところは色々とあるんですが、いちいち指摘していたらキリがないのでこの辺にしておきます。

 最後に一つだけ。余談ですが今作、なんか「恐怖回避ばーじょん」と称し、怖がりの人用に怖くないよう編集したバージョンが存在するらしいんですけど、恐怖など微塵も存在しない今作において、一体何を回避するつもりなのか、大変気になりますね。無いものを回避すると言われても「いや何言ってんだこいつ」となるわけで。本編がすでにコメディなんだから編集する必要ないでしょ。
 いや、もしかすると製作陣は今作のこと、ホラー映画だと思ってるんですかね? だとしたら、その認識が1番のホラーです。本当にありがとうございました。

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