「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ダスト・ウォーカー のレビューです(総合評価D)

(画像:Amazon商品ページより引用)
 
やりたいことは分かるんですが、あまりにも構成や設定が雑すぎるゾンビ?映画のレビュー、はじめます

 これゾンビものではないと思うんですけど、あらすじにゾンビって思いっきり書いてあるしな……かと言って、モンスターものとも違うし……パニック映画が1番しっくりくるか?

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 オーストラリア
  • 製作 2019

あらすじ

地球外から飛来した未知のウィルスとそのパンデミック。ゾンビ化する人間たち。正体不明のエイリアン。そして突如、町を襲う巨大サンドストーム!奴らの目的は?そして人類は生き残ることができるのか!?地球外生命体とパラサイトという二つのジャンルを融合しながら、スリリングなアクションと血みどろなホラー要素を兼ね備えたハイブリッドなSFパニック!80年代スピルバーグ映画を思わせる興奮度とS・キングのドラマツルギーを兼ね備えた異色の恐怖があなたを襲う!!

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
CGの質
設定
総合

良い点

  • 開幕の期待感はかなり高い
  • なかなか意外性のあるオチ

悪い点

  • とにかく盛り上がりに欠ける
  • 主に感染者の設定がとんでもなく雑でいい加減すぎる

何か一言

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 やりたいことは分かるけど、「やりたい」が先行しすぎて全体的なバランスがぐちゃぐちゃになっている映画。

 さて今作ですが、あらすじだけ読むと「ゾンビ×エイリアン×自然災害」と、もうあらゆるパニック要素全部ごちゃ混ぜにしたれー! というやけくそお祭りバカ映画感が滲み出る作品に見えますが、残念ながら今作、そう言うのではないです。いや、確かにゾンビもエイリアンもサンドストームも出てくるので、あらすじに嘘偽りはないんですけど、これら3つの厄災は全部が全部人間に牙を剥いてくるわけではなく、シナリオ上の必然として発生する、というのが要点。
 かつ、エイリアンについては本格的な見せ場があるのは超終盤、エンディング前数分程度。サンドストームは中盤で発生こそするものの、街を襲ったりはせず、単なる防壁、つまり街から主人公たちを出さず、閉じ込めるための装置としての働きしかない。そのため、「なんかパニックホラー要素ごちゃ混ぜバカ映画っぽくて面白そう!」と期待して見ると、十中八九死にます。そこだけご注意ください。

 なお、今作のゾンビは昨今一般でいう、人間を襲って噛み付いて感染者を増やして、という一般的なゾンビのイメージからはかけ離れており、噛み付く噛み付かない以前に、そもそも人間を見つけたからといって即襲って来ません。どっちかというと、ただ突っ立っているだけの事が多いです。ただ、何かに感染した結果、理性を失っていることは明白なため、本来なら「感染者」等の呼称が正確だろうとは思うのですが、まああらすじで「ゾンビ」と書いてあるので、それに倣ってゾンビ呼びしておくこととします。

 それでは詳細なレビューに入ります。まずは良い点からいきましょう。今作の良い点は、開幕の期待感の高め方、そしてオチの意外性です。

 今作は開幕、宇宙から謎の隕石が、片田舎の町付近に墜落する、という場面から幕を開けます。どうやら、その隕石には地球の生命体に寄生するウイルス的なものが入っていたらしく、その影響で感染が広がっていく、という導入。

 ここで特質すべきは、その感染が広まる様子の描写方法です。先述の通り、今作のゾンビは一般的なゾンビと違い、人間を見つけてもすぐ襲って来ません。では感染者はどんな行動を取ってくるのかというと、例えば、放心状態で呼びかけにも応じず、ただどこかへと歩いてゆく。例えば、道端にただ立ち尽くし、じっとこちらを見てくる。前半は、こういう行動が大半となります。

 このように、住民が呼びかけに応じなかったり、ただただ不気味に立ち尽くしている、という静かな演出をとおし、この片田舎の小さな町に、何か得体の知れない異変が起きている、という様を見せつけてくる静かな恐怖を描いた演出は、正直言ってかなり好きでした。理性を失った住人が、見境なく襲いかかってくる、というゾンビものによくある直接的な演出も勿論いいですが、こういう間接的で静かな演出もすごくいいと思います。

 これにより滑り出しはかなり好調で、一気に期待感を高められました。もちろん、こういう描写に対する好き嫌いはあると思いますが、ハマれば序盤20〜30分くらいは、その期待感だけで楽しく見られるでしょう。

 そしてもう一つの良い点、オチ。これも賛否分かれる部分かとは思いますが、個人的には結構好きです。
 先ほど、今作のエイリアンとサンドストームは、超終盤にしか本格的な見せ場がない、という話をしたのを覚えておられますでしょうか? そう、今作はあらすじだけ見れば、「ゾンビも出てくるしエイリアンも、さらにそこに自然災害まで来て!」とドタバタパニックホラーな印象を強く受けるのですが、これら3つの厄災が起きるのにはちゃんと理由があります。決して「全部ごちゃ混ぜにすればおもろいやろ」というような、お祭りバカ映画的なノリで出てくるのではありません

 この作品のオチを端的に述べると、「ゾンビウイルスとエイリアンは、共に宇宙から飛来した。実はエイリアンは、人間を襲うためでなく、ウイルスの撲滅を目的として地球に飛来したのである。町を覆うサンドストームは、エイリアンが感染者を拡散させないよう、封じ込めのために起こした」という感じ。作中でエイリアンとウイルスの関係性については深く語られないため詳細は分かりませんが、まあ概ねウルトラマンとベムラーの関係に近いと思います。何にせよ、エイリアンがウイルス撲滅のため地球へとやって来たことだけは明白っぽいので、その程度の理解で良いでしょう。

 このオチの良かったところは、やはり意外性です。ぶっちゃけ、物語途中でエイリアンがちょろっと姿を見せては、特に主人公たちは襲わずに地中へと帰っていく、という様を見せられた時は、何がしたいのかよく分からなかったし、突然町の周りに巨大なサンドストームが出現した時も、「街から出られない理由付けの演出としては雑すぎるのでは?」と眉をひそめました。しかし、この一見ゾンビの出現とは関係なさそうな二つの事象が、オチの段階でちゃんと繋がってくる、という演出には「なるほどなぁ」と思わさせられました。

 ネット上の評価や意見を見ていると、「オチが分からんかった」「どういうことか分からんかった」という声をよく見かけたのですが、作中の伏線などをそれなりに注意深く追えば、オチの意味が見えて来ます。エイリアンは非感染者を襲っておらず、かつ主人公の呼びかけに応えて感染者だけを連れて行ったことからも、エイリアンには非感染者に対する攻撃意志がないことが分かる。かつ、エイリアンが感染者だけを集めて焼却が完了した時点でサンドストームが晴れたことからも、サンドストームはエイリアンによるものだという推測が立つかと思われます。

 ただし、本作は全体的に説明不足感がかなり目立つため、ここに気が付かないと「唐突で意味不明なオチ」という印象を抱いてしまうでしょうし、ぶっちゃけそう思われても仕方ない。そのくらい今作は、「いや、わざわざ説明しなくても分かるよね?」感が強く、伏線の張り方もかなり雑。正直、あまりに説明がなさすぎて、本当にこの解釈で合ってるのかも不安なくらいです。

 では、良いと感じた点は以上にしましょう。開幕の期待感、そしてオチの意外性もあったことから、ここだけ見ればなかなか良い作品だったんですけど、総合評価を見ていただいても分かる通り、ハッキリ言いますが今作、全然ダメです。全体の完成度としてはかなり低いし、ぶっちゃけ途中、退屈すぎて苦痛でした。オチがいい加減なら総合評価D−、下手すりゃEに片足突っ込んでたレベル。

 何がそんなに酷かったのかというと、何よりもゾンビ関連の設定がてきとーすぎること。そして、主にそれに起因する全体的な盛り上がり不足です。この二つがとにかく致命的。

 先に述べたように今作、エイリアンとサンドストームの見せ場は超終盤にしかありません。つまり今作、ストーリーの大半はゾンビで持たせている、ということになります。そうなれば必然、このゾンビの完成度が序盤から終盤手前までの本作の評価を支える重要な要素となってくるわけなんですが、この部分がまあ酷い

 何が酷いって、とにかく感染者の設定が雑すぎるんですよ。もっと言うと、彼らの行動原理が意味不明すぎて、一体こいつら何をしたいのかが終始分からずその都度製作側の都合の良いように動かされているコマにしか見えないのです。

 例えば、普通のゾンビって行動原理がめちゃくちゃ分かりやすいですよね。彼らは、人肉を貪ることしか考えておらず、そして噛まれた人間はゾンビとなるため、結果感染者が増えていきます。うん、大変シンプルで分かりやすい。

 しかし、今作のゾンビは普通のゾンビと違い、人間を見かけても即襲って来ず、不気味に突っ立ってじっと見てくるだけ、と紹介しました。一方、その裏で着実に感染者の数は増やしており、町中にどんどん感染者が溢れていきます。だから私は最初、彼らの目的は、「おそらく何らかの方法で人間をさらい、感染源である胞子を吸わせて感染者を増やすことなのかな?」と思ったんですよ。実際、作中でも何回か、人間を連れ去ろうとする描写がありますし。

 ただですね、こいつら何を考えているのか、無抵抗な相手を連れ去るでもなくただ殺したりもするんですよ。それはもう大人も子供も。
 身内など、ある程度さらう対象を限定しているのかと思えば、自分の娘や妻を殺したりもするのでそうでもなさそうですし。突然走り出して赤ちゃんをさらいに行ったかと思えば、次のカットで何をするでもなく、警察の目の前に赤ちゃん抱えて出頭し、そのまま捕まったりもします。子供は邪魔だから大人だけさらっているのかと思えば、「あと1人、男の子が欲しいなぁ」と意味不明なことを口走ったりも。
 そして、非感染者に対して襲いかかってくることもあれば、至近距離で威嚇だけしてそのまま逃げてったりもしたり、と、もうとにかく行動の何もかもが支離滅裂で意味不明

 そりゃあもちろん、相手は未知のウイルスに感染し、理性を失ったゾンビなのですから、理解不能な部分があること自体は別にいいと思うんですよ。ただ、今作はこの意味不明さ、支離滅裂さが、完全に行き過ぎちゃってるところまで行ってる感があります。

 多分、人智を超えた理解不能な不気味さを演出しようとしたんでしょうけど、こういう何がしたいのか意味分からんことされると、不気味通り越して一気に雰囲気が安っぽくなるんですよ。なんか、「殺せと言われれば殺し、拐えと言われれば拐い、逃げろと言われれば逃げる」というように、製作側に言われて動いてるだけの都合の良い存在に見えてしまう

 滅茶苦茶好意的に解釈して、襲ってくるか逃げてくかは感染の進行度による差だとか、個体差があるからだとか、ゾンビには感染に対する抗体を持つか否かが分かるので、殺すか感染させるかを選んでいるだとか、まあいろいろと説明をつけられないではないんですが、仮にその辺を無理やり納得させたとして、結局何一つ説明がないんでモヤモヤしたままなのは変わりないです。そして何より、じゃあそれで面白いのかと言われると、全く面白くないんだなこれが。

 かつ、終盤はゾンビどもが突然本気を出して、全力疾走で主人公たちを襲撃し、彼らはそれを迎え撃つ、という急に普通のゾンビ映画みたいなことしようとしてくるんですが、ハッキリ言ってここの部分のクオリティもその辺のゾンビ映画と比べて相当に低く、ここを拠り所として楽しめるかというとキツい。

 そして今作の盛り上がらなさについては、このゾンビの設定の雑さ、支離滅裂さが原因。なんとなく、街が段々と異様な雰囲気に包まれていく感じをやりたいのは分かるんですけど、いかんせんゾンビの設定がてきとーすぎて──「なんか不気味で、よく分からないことが起こってる」みたいなノリだけで1時間近く持たせようとするのは、流石に無理っす。

 ここの部分の演出のさせ方が、もっと丁寧で上手なら全然良かったんですけど、先述の通り、今作はゾンビ関連の設定がとにかく支離滅裂で中途半端なので、我慢できて最初の30分、ギリ40分くらいまでですかね。それ以降もこの雰囲気の演出に一生懸命になりすぎて話が全然進展しないので、「はやく感染者との対決なり、エイリアンとの戦闘なり、解決に向けた一歩を踏み出すなり、なんでもいいから話進めろよ」という感想が浮かんで来ます。結果、中身がない、話が進まない、テンポが悪いという印象を強く受ける

 多分この作品的には、この不気味さこそが本作の見所だと思って撮っている感があるので、製作側としては早々に見せ場に入って盛り上げているつもりなんでしょうけど、こっちとしては中途半端で微妙な演出をずっと見せられているように感じます。結果、序盤で期待感を高めるだけ高めておいて、そのあと一生右肩下がり、説明不足で盛り上がらないままエンディング突入、という感じの映画でした。

 総評ですが、まあ良い部分にもあるにはあるんですけど、それ以上にダメな部分が酷いです。とにかく、見せたいものに躍起になりすぎるあまり、何から何まで説明不足という名の構成の雑さが大変目立ちます。特にゾンビ関連については、もはや何も考えてないんじゃないかと言いたくなるレベルで酷く、しかもそれが本編の大半を占めるという最悪のバランス。ぶっちゃけ全く面白くなかったので、私からはオススメは出来ないです。

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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