シチュエーションスリラー定期的に見たくなるマン。自分にブッ刺さるシチュエーションスリラー見つけた時の快感が忘れられねぇんだ。
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 スペイン・アメリカ
- 製作 2018
- 販売 TCエンタテインメント
あらすじ
ジャービス・ドランは、ロンドンの深夜ラジオ番組「残酷な現実」のメインパーソナリティ。
(Amazon商品ページより引用)
彼は歯に衣着せぬ過激な発言で聴取者からの人気を集めているが、一方で脅迫などの事件も絶えず起こっていた。
その日もいつも通り放送を始めるはずだった――2人組のマスクを被り武装した男たちに番組が占拠されるまでは…。
彼らはジャービスに、2011年11月にベルファストで起こった一夜の出来事について話せと要求する。
逆らえばドランとスタッフの命はない。果たして彼らの目的とは!?そして惨劇の一夜が幕を開ける…。
予告編
ストーリー | C |
キャラクター | B |
設定 | C |
総合 | B- |
良い点
- 緊迫感の演出はなかなか見事
悪い点
- ツッコミどころ多めなため途中で冷める可能性有り
ワンシチュエーションスリラーお馴染みの、刺さる刺さらないがバッサリ分かれるタイプのやつです。緊迫感の演出自体は結構レベルが高いので、刺さればかなり楽しめます。反面ツッコミどころもそれなりに多いため、一度気になり出したら完走すら苦痛、と言う事態になりかねません。
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個人的には結構楽しめたので満足。
さて今作ですが、100人が見たとしたら「好き10人、嫌い10人、普通80人」と言うよりは、「好き40人、嫌い40人、普通20人」みたいなタイプの映画です。まあワンシチュエーションスリラーってそう言う傾向が強いので……。
と言うわけで、早速詳細な内容を見てゆきましょう。まずは良い点から。
今作の良い点は、やはりなんといっても緊迫感の演出のレベルが高いこと、この部分につきます。
舞台となるのは、都会のラジオ局。とあるラジオ番組のパーソナリティである主人公は、今日も生放送番組の収録のために放送室に入ったところでした。そこを、謎の覆面男2人組が襲撃し、放送室は占拠されてしまいます。スタッフ2名を人質に取られ、主人公は犯人からの要求で、このまま何事もなかったかのように番組を続けるよう強要されます。
犯人たちは主人公に、過去に起きたレ〇プ事件のことをラジオで取り上げるよう指示。さらに、その場に同席していた今日のゲストであるミュージシャンにも、その話題を振るよう強要。どうやら彼らの目的は、その事件の真相を犯人であるミュージシャン、そして共犯の疑いがかかる主人公に、公共の電波の前で告白させることのようなのです──というのが、今作の大まかな流れ。と言うわけで、今作はラジオ番組の放送室を舞台としたワンシチュエーションスリラーなんですが、この手のジャンルの映画に必要不可欠である緊迫感の演出レベルについては、結構高いと言って差し支えないと思います。突然謎の男たちに放送室が占拠され、彼らの目的も分からないまま指示に従うだけの序盤。そこから話は少しずつ彼らの目的、核心へと迫ってゆき、だんだんとこの状況の意味が分かってくる。
そして、事件の真相解明と犯人への制裁という、覆面男たちの目的がハッキリと分かったところで、そこからは主人公がその事件に関わっていたのかいなかったのか、犯人側の言い分と主人公側の言い分、一体どっちが真実で嘘なのか、という謎の究明がメインの見所となってゆきます。そして、その謎の間で揺れる登場人物たちの心情変化や、犯人と主人公との間で飛び交う駆け引きなども見所に加わる、という構成。
このように、単に生放送をジャックされたのでなんとか逃げ出そう、助けを呼ぼう、という単純な構図でなく、過去に起きた事件の真実とそれに起因する登場人物たちのやり取りという部分も見どころになっているおかげで、常に興味を引くポイントがあって緊迫感が持続しやすい。そのため、割と終始展開に引き込まれて楽しく見ることができました。緊迫感の持続は絵面が単調になりがちなワンシチュエーションスリラーにとっては必須級の要素なので、そこの部分がしっかり出来ているのは良かったですね。
なんですけど、反面今作は、あまりにもツッコミポイントが多いために途中で冷める可能性がある、という大きな弱点も抱えています。
例えばこの犯人たち、少なくとも仲間を2ヶ月以上前からラジオ局に送り込んで下準備をしているわけなんですが、その割にはあまりにも計画がガバガバ。夜間とは言え、ラジオ局の占領なんて大それたことをするからには、さぞしっかりとした事前準備があるんやろなぁ、と思いきや、これ決行3日前くらいに思いついたんやないか、と言いたくなるレベルの無計画さと行き当たりばったり感。
何よりひでぇのが、レイプ犯の容疑がかかる主人公を捕え、ラジオ番組で世間に向けて自分の罪を白状させる、という計画を立てたはいいものの、そもそも彼が本当に事件に加担していたのかという証拠集めや裏取りを一切やらないまま犯行に臨んでいること。そのせいで、いざやっていることはひたすら主人公に向かって「真実を話せ!」と繰り返し、自分たちが満足する答えを主人公が口にするまで解放しない、と言うゴミムーブをかましてくるのです。
この結果本編がどうなっているのかと言うと、やってない嘘つけ! ホントのこと言え!いやマジでやってないがうるさい卑怯者! お前もあの場にいただろ!いやいなかったがみたいな感じで、話がずっと平行線、みたいな時間が流れます。しかも、もう1人の犯人であるミュージシャンについては、彼が自分の罪を認めた瞬間に、突然逆上した犯人に殴り殺されてしまったので、主人公が事件に加担していたかどうかの真相を知る人物が主人公しか残ってないんですよ。そんな主人公に対して問い詰めたところで、いくらでもシラなんて切り放題なため、余計話が平行線で進まない。こういう状況を展開上無理矢理作り上げてしまう強引さも、今作の確かなマイナスポイントに数えられます。
しかも犯人たち、こいつらは3人組なんですが、入念な準備(笑)を重ねてラジオジャックを成功させた割には全然統率が取れておらず、基本その場の感情に任せて勝手にスタッフは殺すわ、真相を白状したミュージシャンは撲殺するわのやりたい放題を重ねます。その結果、仲間割れはするわ、その隙を主人公に突かれて逃げられるわ、なんとか捕え直したもののレスバが大得意な主人公にレスバ仕掛けて逆に返り討ちにあうわ、最終的に反撃喰らって全滅させられるわとまさに無能の極みと言った行動を繰り返すせいで、一体こいつら何がしたかったのか……と呆れてしまうんですよね。
ラジオ放送で真相を話させ、犯人である主人公とミュージシャンに社会的制裁を加えるためにラジオジャックまでしたと思うんですが、その割に主人公を追い詰めるための策の一つも用意していない、白状したミュージシャンから詳しい話を聞き出す前に感情に任せて撲殺する、最終的に白状した主人公のこともすぐ殺そうとするなど、一体なんのためにラジオジャックまでしたのかの動機がめちゃくちゃ曖昧で意味不明になってしまっていることはマジであかんと思います。いや、そんなに殺したいんなら、わざわざラジオジャックなんてクッソリスクの高いことせずに普通に主人公拉致って拷問すればいいし、どうしても世間に公表したいんならそれをネット配信なりなんなりすればええやん、と言いたくなる。わざわざラジオジャックするんなら、主人公たちには直接的な危害は加えない代わりに、大衆が聞いている前で主人公たちを精神的に追い詰めて自白させる、ないし真実を暴露し社会的に殺す、と言う方向でやらないと、暴力で無理矢理自白させた後に直接殺すんならそもそもラジオジャックする意味がないじゃん。
そしてもう一つ見過ごせない残念ポイントが、この映画、生放送のラジオ番組をジャックして主人公を追い詰める、という設定であるにもかかわらず、実は生放送じゃないんです。どう言うことかと言うと、犯人たちは主人公が余計なことを言ったり、自分たちの望む以外の答えが電波に乗っては困ると考えてか、実際には数分前に主人公が喋った事を録音し、カットや編集をしてあたかも生放送っぽく再生しているのです。そのため、犯人たちは主人公に対し何度もリテイクさせたり、都合の悪いやりとりをカットしたりしてくるのですが、このラジオを聴いている視聴者視点のキャラクターが1人も出てこないせいで、結局今何が放送されていて何が放送されていないのか、今どの部分がラジオで流れているのか、世間からはどんなふうに聞こえているのなどの、肝心のラジオに関する部分が全然分からないんですよ。これは明らかにダメです。
現に、主人公は最終的にラジオに向かって自分も事件に加担していた事を白状したのですが、結局その部分の音声は流れなかったようで、逆に主人公はラジオジャックを乗り切ったとして人気が高まる、というなんともモヤモヤした終わり方をします。結局どの部分が流れてどう言う番組内容になったのかが分からないので、いきなり事件明けて主人公人気急上昇! と言葉だけで説明されても「はぁ」としか思えないんですよ。
ここの部分は明らかに書き込み不足です。いっそ普通に生放送設定のままの方が断然良かった。それなら、劇中で喋った事=放送された事なので、わざわざ外部視点を用意せずとも容易に状況が掴めますし。というか、それこそどうせ編集して流すんなら、いよいよ生放送のラジオ自体をジャックする必要がないやん……。と言うわけで総評ですが、あまりにもアラのある部分が多くて、書き出したら思った以上に文句が止まらなくなってしまいましたが、個人的には結構面白かったです。というか、ワンシチュエーションスリラーとしては好きな部類に入る映画です。この手の映画って緊迫感が何を差し置いてもとにかく重要で、その他の要素は二の次だと個人的には思っているので、今作の放つ緊迫感の演出が刺さった私にはなかなか満足のゆく作品でした。
また、社会風刺をテーマにしているのでは、という鋭い感想を述べておられたレビューもネット上で見られたので、そう言う楽しみ方ができるのも今作の魅力かと思います。自分は社会情勢とかその辺全然興味ない、かつよく分からない一般無能爺なのでその辺についてのコメントは差し控えます。教養に自信ニキの登場が待たれる。今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!よければ、気軽にコメントしていってね