「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

クレイジーズ 42日後 のレビューです(総合評価D-)

(画像:Amazon商品ページより引用)
内容が面白いとか面白くないとか以前に、ほぼ同内容の上位互換作品が存在するのでそっち見ればいいと思うわ、な作品のレビュー、はじめるわ。

 大人の事情の匂いがぷんぷんする作品。

 それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 アメリカ
  • 製作 2020
  • 販売 アメイジングD.C.

あらすじ

“激怒””のウィルス。その発生から、42日後…
ある朝、ロサンゼルスのアパートに住むエイデンが目を覚ますと、テレビで緊急放送の文字が並んでいる。外では人々が逃げ惑い、近くに飛行機が墜落した。
アナウンサーが、あるウィルスの蔓延を伝える。感染者は目から血を流し、叫び、人を襲うのだと言う…。

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
ゾンビ?の質
設定
総合 D-

良い点

  • 「#生きている」を知らずに見たらそこそこ面白いと思う

悪い点

  • 完全に「#生きている」の劣化版

 映画本編の内容がどうこう以前に、内容がほとんど「#生きている」という映画と同じなので、どうやったって私は純粋な目では見られませんでした。仮にこちらを「#生きている」のリメイク版だという目で見たところで、あらゆる要素が完全にあちらの方が上で劣化版にしか見えないという問題も抱えているので、ハッキリ申し上げると見る価値ないです。これ見るくらいならネトフリ入って「#生きている」見よう。

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があります。未視聴の方はご注意ください!
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 ※以下のレビューは、この作品を単体で見た時のレビューではなく、もはや「#生きている」という映画との比較感想になります。ですがとある事情から、両者を比較せずにはいられない、というより、比較した目でしか作品を見られませんでした。いつもとは少し毛色の違う内容になりますが、ご容赦ください。

 さて今作ですが──とりあえず、ストーリー解説から。

 ストーリーとしてはあらすじにある通り。ある朝主人公が目覚めると、アパートの外が何やら騒がしい。テレビでは緊急放送がやっているし、人々が逃げ惑い、ヘリが落ちてくる。そして、突然自室に隣人が駆け込んできて、助けを求めて来ます。どうも、人々を凶暴化させるウイルスが突如蔓延し、その隣人も感染しているらしいのです。主人公は彼を部屋から追い出し、そして彼の孤独な籠城生活がスタート
 しかし、1人孤独で長い籠城生活に辟易としていた主人公は、42日目、ついに首吊り自殺を決意。しかし、いざ死のうとしたその瞬間、窓から見えた向かいの部屋に、1人の女性の姿を見つけます。久しぶりに見かけたまともな人間の姿に喜び、筆談でコンタクトを取る主人公。さらに、ベランダ越しに彼女との部屋の間に紐を渡し、物資を送る事にも成功。そうやって彼女とコンタクトを取るうちに、彼は生きる希望を取り戻していきます。
 その後、探索に出かけた先がたまたま登山家の部屋で、ロープやらピッケル、さらにトランシーバーといった役立ちそうなものを見つける主人公。そのトランシーバーをお向いさんに渡し、肉声でコンタクトを取れたことに、彼は至上の喜びを感じるのでした。2人は、いつか合流する事を誓います。
 その後、さらに探索に出かけると、彼はまた別の生存者のお爺さんと出逢います。なんでも、彼はこのアパートで、1人で生き延びて来たんだとか。そして主人公に、快く食料を分けてくれるのでした。お礼を述べる主人公ですが、突然頭を殴られ気絶
 目を覚ますと、自分は拘束されている──だけではなく、なんと目の前には感染者のババアが。そしてその脇には、先程のダンディなジジイが立っている。どうやらこの感染者は、彼の妻のようなのです。彼は、感染者となり人間の血肉を求める妻を憐れみ、迷い込んできた主人公を餌として差し出す事を思いついたのでした。
 その拘束をなんとか解き、逆に反撃してジジイを妻に喰わせることに成功する主人公。そして彼は、ついに念願の彼女と合流するのですが──

 ここまで読んでいただいて「こいつただ長々とストーリー垂れ流しとるな手抜きか?」と思われた方もいるかもしれません。あるいは「この映画は知らんけどこのストーリー知っとるんやが?」という、Netflix会員の方もいるかも。

 そうなのです。この作品のストーリーなんですが、まんまNetflixの韓国ゾンビ映画「#生きている」とそっくりそのまままるっきり同じなのです! もう「似てる」とか「アイデア被り」とか、そんな生易しいレベルじゃないですよ! おんなじです、おんなじ。完全に同じ。どのくらい同じかというと、先ほど垂れ流したあらすじ、経過日数やヒロインの部屋に紐を渡す方法などの細かい違いこそあれ、ラストシーン手前までのストーリーの流れ自体は完全に一致しています。一度でも「#生きている」を見たことがある人なら、確実に即分かるレベル。ポケモンでいう金と銀くらいの違いしかありません。

(画像:映画.comより引用)

 私はこれを初見で見ていた時に、主人公がヒロインと接触するくらいまでの間は「なんか前見たことある映画に似てるなー、まあアパート舞台に籠城シチュ選んだら多少の被りも仕方ないね♂」くらいに思っていたのですが、偶然登山家の部屋を見つけてトランシーバー回収したあたりで「ちょっとこれ流石に似すぎてないか?」と思い始め、ジジイの件で「いやこれ完全に#生きているやんけ!」と確信しました。

 流石に気になりすぎたため、ここで一旦映画を止めて、なんでこんなことになってるのかを調べたんですよ。というより、「これ盗作じゃねーのか」という疑念が持ち上がって来て、本編どころではなくなったためです。盗作ならF評価待った無し──と思ったんですが、どうやら、こちらの作品が公開される数ヶ月前に「#生きている」がNetflixで公開されたんですけど、脚本家の人が同じらしいのです。というよりも、両作の公開日が数ヶ月しかずれていない事を見るに、元となった脚本自体が同じっぽいんですよ。同じ脚本を元にして、片方は韓国で製作、もう片方はアメリカで製作して、数ヶ月違いで公開したようなんですね。すなわち、この作品と「#生きている」はほぼ同時に制作された国籍違い版、もしくは見方を変えれば、数ヶ月とはいえこちらの作品が後に公開されているので、リメイク版、と捉えることもできるかも。

 ただですね、一体どんな経緯があってこんなことになっているのかなんですが、調べてもぜーんぜん出てこないんだなこれが。かつ、DVDのパッケージにも「リメイク」だとか「アメリカ版#生きている」だとか、「#生きていると同脚本」だとかの言葉は一切出てこなかったので、大半の人はそんなこと微塵も知る由もなくこの映画を見る訳ですよ。結果はご覧の有り様だよ。

 はい、ここまで大変長くなりましたが、前置き終わりです。つまるところ今作については、腹違いの兄さんが先に世に出ていると思ってください。
 そしてここまでは、これだけなら、さして問題はない話なんですよ。要するに、ベースが同じのバージョン違い別国籍作品が存在する、というだけですからね。いや、その旨どっかに書いとけよとは思いますけど。

 問題なのは今作、どんな理由があったにせよ、たった数ヶ月違いとはいえども、「#生きている」よりも後に世に出たくせに、全般的なクオリティが完全に「#生きている」の劣化版にしかなっていないことなのです。これが本当に見ていてキツい。具体的に特に気になった劣化ポイントを挙げると、ストーリー展開と感染者のクオリティの2点です。

 まずストーリー展開について。今作はおそらく脚本自体が「#生きている」と同じなため、大まかな流れはまるっきり同じである、ということは先にご説明した通りです。何ですけど、こちらは孤独な主人公に焦点を当てることをかなり重視して作られており、ゾンビとの絡みやヒロインとの交流は二の次、という意識が強く出ているせいか、はたまた元の脚本がこうなっているせいか、それとも予算の都合か──詳細は分かりませんがとにかく「#生きている」に比べ、かなり地味で退屈な時間が長いです。

 ゾンビの襲撃についてはワンカットが短め、かつ回数少なめで緊迫感が続かない上、アパートの一室が舞台ということで絵面が毎回大して変わらないので、どうしても飽きて来ます。肝心のヒロインとの交流についても、ヒロイン視点の話がラスト手前までないためイマイチ好感が持てない、というより存在感が薄い、という具合。
 脚本上の見せ場となる、頭がおかしいジジイとの遭遇についても、「#生きている」はヒロインと2人での遭遇でしたが、こちらは主人公1人だけでの遭遇となり、かつ割とあっさり切り抜けてしまうため、どうにも危機感、緊張感不足で盛り上がり不足と散々な出来。

 一応、ラストシーンの展開だけは「#生きている」と明確に違うんですけど、これもまたものすごく雑な展開で思わず「は?」と声が出ました。
 ヒロインを守るために感染者と戦闘になった主人公が、その最中噛まれてしまったために、彼女の目の前で飛び降り自殺を図ろうとするのですが、飛び降りる前に何となくシャツ脱いでみたら実は噛まれてなかったわ。いやーめでたしめでたし、というもの。
 いや、何じゃその展開。雑すぎだろ。

 そして、ゾンビ、もとい感染者の出来栄えについても、はっきり申し上げて今作のクオリティは「#生きている」の数段下と言わざるを得ません。一度に襲撃してくる個体数的にも、襲撃回数的にも今作は大変物足りないですし、単純に感染者1人あたりのクオリティも大して高くなく、「その辺の人間にゾンビメイクしました」感が滲み出てしまっているため、襲って来ても緊迫感を全然感じません。

 一応この部分についても、今作には「#生きている」と明確な違いが存在します。それは、今作の感染者は、実は人間の時の意識がはっきり残っている、というもの。曰く、「人間の時の記憶は残っており、意識もちゃんとあるものの、その意思に反してウイルスによって身体のコントロールを奪われ、人肉を貪りたいという欲求に突き動かされている」らしいです。なので今作の感染者、個体によってはかなり意識がはっきりしており、錯乱状態で叫び続けたり、「殺してくれ」「俺は大丈夫だ!」と繰り返し口にしていたりなど、まあ個性的といえば個性的
 ですがこれについても、正直「だから何?」というレベルの個性で、この「人間の時の意識がかなり残っている」という部分をうまく活かし、他作品、とりわけ「#生きている」と明確な差別化が出来ているかというと、そこまでの域にはまるで達していません

 つまり今作、「#生きている」と話の流れ自体はまるで同じなのに、ストーリー展開はあっさり目で地味で盛り上がり不足、かつ感染者の出来もあちらより数段下。となれば必然、「#生きている」に軍牌が上がるのは仕方ない。

 ただしここまでの問題点は全て、数ヶ月前に発表された出来の良い兄と比較した時の問題点でしかありません。腐っても脚本は同じであるという事は、話の流れ自体はまあそれほど悪くはないという事なので、この作品単体で見ると、総合評価C、ギリC+くらいのポテンシャルはあると思います。

 ですが、優秀な兄を知った上で出来の悪い弟を見てしまうと、もはや両者を比べるなという方が無理です。顔立ちから体格まで全部似てるのに、頭の出来に致命的な差があるとなれば、勝敗は決定的。

 それこそ「#生きている」を見た人であれば、わざわざ今作を見る意味は本当にないと思いますし、逆にまだどっちも見てないんだよね、という方には、迷わず「#生きている」を見て欲しい。そして、今作しか見ていない人で「なかなか悪くなかったな」と思った方には、是非「#生きている」も見てみてください、と言いたくなるので、つまりそういう事です。
 「#生きている」については、不満点こそ多少ありますけど、基本的にはなかなか良く出来た良作映画だと思いますので、そちらもよろしくお願いします。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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