ホラーではないよな……と思って見ていたけど、よく考えたら邦題元ネタ作品もホラーじゃなかったのでヨシ!
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 アメリカ
- 製作 2018
- 販売 プルーク
あらすじ
格安で購入した屋敷は、“魔女”が住んでいたいわくつきの家だった…
(ゲオオンラインより引用)
サイモンは12歳の息子フィンを連れて田舎町へやってきた。別れた妻とN.Y.で暮らす息子との久々の小旅行を兼ね、2人でサイモンが購入した古びた家を改修するのが目的だった。家の修理を始めて間もなく、この家の前の住人リディアに関する妙な噂を耳にする。彼女の周りで不吉な出来事が起こるため“魔女”と呼ばれていたこと。彼女は2階の窓辺に座り、外を眺めたまま息絶えて何週間も放置されていたこと。亡くなってから年月が経っても未だその名前を口にすることすら忌み嫌われていること…。不安な気持ちにかられるサイモン。怪しげな昔話を面白がるフィン。家の修理が進むのに合わせるように、壁から物音が響くようになり、人影が家の中をうごめき始める。そしてついに2階の窓辺に老婆の姿が現れる!サイモンとフィンはリディアの怨念から逃れることはできるのか…。
予告編
ストーリー | C |
キャラクター | C |
ホラーの質 | C |
設定 | D |
総合 | C+ |
良い点
- テーマであろう家族愛周りの雰囲気の演出はなかなか良い
悪い点
- とにかくホラーシーンが少ない
- 全体的に中途半端感は否めない
ホラーを期待して見ると、ちょっと「いやこう言う話なのかよ」となる感はありますが、ぶっちゃけ全然悪くはないです。むしろ個人的には割と好きです。好きなんですが、「じゃあ何が良かったんだよ」と聞かれると、「何が──良かったんでしょうね……?」となる作品でした。強いて言うなら、雰囲気が良かった。
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本編時間76分とは思えないほどの体感時間の長さを誇る作品。
さて今作ですが、パッケージとタイトルがどう見ても某ジャパニーズホラー映画に便乗したことが即分かる作品です。いやでも、あまりに似過ぎているため瞬時には別作品であることが判別できないので、これはこれで上手く隠れてるのかもしれない。これもう分かんねぇな?
ところで、某作品を劇場に見に行った時の感想記事も過去に上げてるんで、よろしければこちらの記事もどうぞ。
事故物件 怖い間取り のレビューです
話が逸れましたが、そろそろ今作の詳細な内容を見ていきましょう。迷いましたが、とりあえず悪い点から行きます。
今作の悪い点は、ホラー映画の皮を被らさせられているのに、とにかくホラーシーンが少ないことと、そのせいもあって中途半端な印象が強いことです。
今作は話自体はシンプルで、かつて魔女が住んでいたと言われる家に主人公親子が引っ越してきて、そこで様々な怪異に見舞われる、と言うもの。その上、本編時間は76分とかなり短めなので、導入も早々に序盤から早めに展開していくのかな、と思いきや、その予想に反して立ち上がりはかなり重たいです。
今作の場合、どの部分までを導入と呼ぶのかは難しいところがありますが、少なくとも本格的に怪異と呼べるものに主人公たちが遭遇するまではかなりの時間がかかります。ではその間は何をしているのかと言うと、普段あまり会話のない主人公父子が、家への引っ越しを機に親交を深めたりする感じのやつです。そのため、人によってはこの部分、ホラーという本筋に入るまでの繋ぎにしか感じられないので、「いいからとっととホラー展開始めてくれや」と焦ったく思うこともあるかもしれません。まあ、この間も画面端とかにちょこちょこ霊が映ってたりはするんで、そういう「よく見たらなんかおるやんけ!」系の演出が好きな人には、この部分もホラー展開に含めて楽しめるのかもしれないですが、個人的にはちょっとパンチが弱いかな……。
そして、それを越えればいよいよ本題のホラー展開。何故か2階の窓際に、既に死んだはずの前住人の姿が──という展開がスタート。その後は少し間が開き、また父子がハートフルに親交深めているなぁ……と思ったところで、今作ホラー部分、最大の見せ場が来ます。家に棲み着いた前住人のババアの襲撃と、それに翻弄される主人公。逃げ切ったかと思われたところを追撃するかのように、ホラー描写が2度3度と押し寄せてくる展開は、ここだけを見ればなかなか良い出来をしていると思いました。ぶっちゃけ、息子と対面して談笑していたはずが、かかってきた電話の向こうから息子の声が聞こえてきた時は普通にゾッとした。
ただ今作、大変残念な事に、もうこれでホラー展開終わりなんですよね。すなわち、ホラー描写自体の質はなかなか良いんですけど、ジャブ程度に放たれた一撃と、頑張った本番、計2回分くらいのホラー成分しか含まれていないのです。そのため、ホラーの質云々以前に、そもそもホラー映画としては結構物量不足ですね。他にも、家にまつわる怪現象的なものや、画面端とかに何気なく映ってる的なやつはちょろちょろあったんですけど、なんとなく不気味止まりの描写にとどまるため、やはりホラーを期待すると物足りない。個人的には、ホラーとしてはもう一盛り上がりは欲しかったところです。
かつこの映画、少ないホラー描写とそれに繋がる伏線を張る展開を除いた時間は、父子がなんでもない会話を通して距離を縮めようとしたり、絆を深めたりするような、主人公と息子にスポットを当てる展開が多く配置されています。また終わり方についても、ホラーによくある救いのないエンディングというわけではなく、「魔女の霊をこの家から出て行かせた代わりに、主人公は死去して魂だけになってしまったが、妻子がこの家に引っ越してきてくれたおかげで、3人仲良く一軒家に住むという家族の夢が叶った。妻子も、父の霊とともに住めてご満悦」、というような、なんか当人たちにとってはハッピーっぽい、救いのある感じの終わり方をします。
こんな感じで、ホラー部分以外は結構明るめというか、ハートフルというか、家族愛をテーマにした色が結構強めに出ており、ここはなかなか好みが分かれるポイントではないかと思います。というより、多分この作品、ホラーはおまけで、どっちかというと家族愛的なテーマの方をメインでやりたいんだろうと思うんですけど、それもやりたい、でもホラーもちょっと入れて……と構築した結果、どっちの要素もちょっと中途半端になってる感は否めません。特に、ホラーに期待して見ようとした場合、親子の会話中心パートの比重が重過ぎる&ホラー描写が少なすぎる&ホラー部分の設定の雑さなどが目立ち、物足りなさが押し寄せます。
とまあ、ここまで結構文句多めなんですけど、ぶっちゃけて言うと私、この作品嫌いじゃないんですよね……むしろ、ちょっと好き寄り。いや、好きなのかもしれない。
でも、「なんで好きなの?」と聞かれると、「さあ、何でだと思う?」という面倒臭い地雷女みたいな感想しか出てこないという、「なんかよく分からんけど好き」というタイプの作品で、レビュアーもどきとしては大変申し訳ないのですが、ちょっと好きの部分が言語化しにくい……。
でも、そう言う作品ってありますよね。あるよね?(威圧)強いて言うなら、全体に漂う雰囲気周りが好きというふわっとした感想に落ち着きます。私自身、ガチホラーは苦手なので、このくらいの「物足りねぇなぁ?」と感じるくらいの分量のホラー描写で実はちょうど良かった、というのが一つ。ホラー描写自体についても、かなりゾッとする部分はありクオリティ自体はなかなか高めだったものの、全体的な分量の少なさにより怖い時間が長続きしないので、程よい緊張感で見られると言うのも個人的には合ってました。
また、話のメインが家族愛という、父子にスポットを当てた話ということ。そして終わり方も、この手の作品としてはかなり救いのあるスッキリした終幕だったと言うのもあり、視聴後満足度が高かったというのも一つ。特に、メインテーマであろう家族愛部分については、ゆっくりと時間をかけて、普段交流の少ない父子が歩み寄っていく様子を描いてくれる上、魂だけになった主人公が棲む家に妻子が越してきて温かい気持ちで毎日を過ごす、というラストシーンも個人的ここすきポイントだったため、ここすき。
と言うわけで総評ですが、ホラー映画として見ると、立ち上がりの遅さと物量的な面からパンチ不足感はすごいんですけど、ホラーの質自体は決して低いわけではなく、本題であろう家と家族愛をテーマにした部分の出来も、好みこそ分かれそうですが割と良かったと思うので、総じて個人的にここすきな映画です。合う人合わない人、結構分かれそうな気がするのですが、まあパクリ元の某映画よりは圧倒的に面白かったかな。ギャグ度は負けてたけど。
今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。よろしければ、お気軽にコメントしていってくださいね!