「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

人狼ゲーム デスゲームの運営人 のレビューです(総合評価B-)

(画像:Amazon商品ページより引用)
もう9本目になる人狼ゲームシリーズの新作映画のレビュー、始めますね。
一体このシリーズ、どこまで続くのかしら……?

 面白いやつと面白くないやつの落差が激しいシリーズ9本目。果たして今作は……?
 過去の人狼ゲームシリーズ8作品の内容は、こちらの記事でまとめておりますので、よろしければご覧ください。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 日本
  • 製作 2020
  • 販売 アメイジングD.C.

あらすじ

命がけの人狼ゲームーー。それは、ネットや拉致によって集められた未成年の参加者が、勝敗と賞金を賭け騙し殺しあう〈究極〉のデスゲーム。「運営人」の正宗は家庭教師時代の教え子・夏目柚月が参加させられていることに気づく。『彼女を救いたい。運営本部に殺されてもいい。』そう考えた正宗は秘密裏に柚月にヒントを伝えていく。しかし、ほかの参加者たちの戦術に翻弄される柚月。そして正宗は運営側の思いもよらぬ陰謀に巻き込まれていく。果たして究極の条件の下、彼女を勝利に導くことはできるのかーー?!

公式サイトより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
設定
総合 B-

良い点

  • 運営側という、今までとは違った視点から見られるため新鮮な楽しみ方ができる
  • ストーリーがなかなかしっかりしており最後まで飽きない

悪い点

  • 殺害描写が皆無
  • 結局何にも謎が明らかにならない

 人狼ゲームシリーズももう9作目。流石にもうネタ切れで苦しいやろ……と思っていたら、ここに来て運営側視点という新しい視点を持ってきたおかげで、今までの映画とは変わった楽しみ方ができるよう調整されていました。ストーリーも凝っていてなかなか良いのですが、反面残念に感じた点もちらほらあるので、それも交えてレビューしていきます。

 
ここから先のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 人狼ゲームシリーズの第9作目です。なぜかAmazonさんの商品ページで「デス・ゲームの管理人」と思いっ切りタイトルを間違えられているんですが、誰もチェックしなかったんですかね? 何を見てヨシ!って言ったんですか……?

 そして今作ですが、ここに来てマンネリ打破のための秘策、運営視点を投入した内容となっております。それに伴い、今までの作品とは楽しみ方が大きく変わりました。そのため、以下には私が良いと感じた部分、悪いと感じた部分について挙げておりますが、人によってはこれがそのまま逆転評価になる可能性も十分あります。詳しくは良い点悪い点を述べていく中で解説します。

 それでは前置きはほどほどに、早速詳細な内容を見てゆきましょう。まずは良い点からです。

 今作の良い点は、何と言っても運営側からの視点を取り入れたことにより、今までと違った楽しみ方が出来ること、そして意外にもストーリーがしっかりと練られているため、飽きずに見られるということです。

 今作はタイトルからも分かる通り、シリーズ中初めて、人狼ゲームを運営している側の視点で物語が進行していきます。そのため、これまたシリーズで初めて、最初から全員の役職が全部分かっているのです。それに伴い、誰がどの役職なのかを推理する、いわゆるプレイヤー視点からの楽しみ方は出来ないようになってます。
 反面、全員の役職を知った上で、誰がどう思考し、どう立ち回るのか、それに対して参加者たちはどんな反応をするのか、議論の流れはどっち優勢に傾いているのかというような、GM(ゲームマスター)視点からの楽しみ方が出来るようになっているため、今までの作品とは根本から楽しみ方が異なります

 この変化を良いと捉えるか悪いと捉えるかは人それぞれでしょうが、私はこの変化、大変ありだと思いました。このシリーズももう8作目。今までは役職に変化をつけたり、変則ルールを持ち出してきたり、あれこれ手を尽くしてマンネリ化を防いできましたが、やはりどうやっても限界はありますからね。遅かれ早かれ、こういう運営サイドの物語が出る事は誰しも予想がついていたと思いますが、いざ見てみるとやはり、こういう作品もありだなぁと思い知らされました。少なくとも、インフェルノあたりでもうマンネリ感に限界が来ていたことに対し、「こういう視点の話も出来るんだぞ」という、マンネリ打破の姿勢をここで見せてくれた事には大きな意味があると思います。

 また、今作は単に運営側からいつものゲームを見ただけ、という内容に留まらず、ストーリー自体も運営側から見て楽しめるように割としっかり構成されていた点も評価点。

 例えば、議論パートや舌戦パートがかなりしっかりしていること。人狼ゲームシリーズといえば、とにかく投票で吊る相手を私怨やその場のノリ、思考停止で決めたりするパターンが大変多いのですが、それに比べると今作の投票決定方法はシリーズ中でもかなり論理的な方です。何より、人狼側2人のキャラ、とりわけ女人狼の方の演技力がカンストしており、投票対象の選び方についてかなり理路整然に淡々と意見を述べ、あたかも彼女の意見こそが現状の最善手である、とみんなに錯覚させるような立ち回りを披露してくれます。そのため、投票決定パートの議論、キャラ同士の舌戦については、過去シリーズの中でもかなり上位の面白さだと感じました。この面白い舌戦を、誰が嘘を言っていて何が本当なのか、という事を事前に全部知った上で見られるというのは今作の明確な強みです。
 
 また、「運営側である主人公が、参加者として連れて来られた教え子をなんとか救うために奔走する」という本筋のストーリー部分もしっかり面白いのも評価点。この主人公くん、運営側の人間と言いつつも、所詮はイベント会場における現場スタッフくらいの権限しかなく、彼含め5人がこのゲームを動かしています。そんな中教え子を救うため、他のスタッフや現場監督にバレないよう不正な手段を用いて、教え子が有利になるよう立ち回る。この健気な主人公の努力を見守るというのも、今作にしかできない楽しみ方。

 また、「実は今回のゲームの参加者には、この運営側スタッフ5人に縁のある人物が1人ずつ混ぜられており、それを踏まえて5人がどう立ち回るのかをさらに上の人間に監視されていた。結局、自分たちは運営側だと思っていた彼らも、所詮ゲームを盛り上げるための駒にしか過ぎないのでした」というオチが付くのですが、このオチもなかなか意外性があって良かったと思います。

 まとめると、ゲーム部分の出来が過去作に比べてもなかなか良く、かつ運営側という視点を取り入れたことで今作独自の要素が多々生まれ、新鮮で見応えがあったというのが今作の評価点。しかし、今作にはいくつかの大きな不満も残ります。

 今作の悪い点は、残虐描写の大幅カットによる緊迫感の低下と、そして闇深エンドです。

 まず1点目、残虐描写について。人狼ゲームシリーズといえば、毎回高校生が命をかけたゲームに参加させられるという内容になっているため、多かれ少なかれ、人が死ぬ描写が入ります。このシリーズで人が死ぬのは、主に2パターン。
 まず1パターン目は、夜8時の投票の時。この時は全員で議論し、全員が人狼だと思う人に投票、得票数の1番多かった人が吊られる(殺される)というシステム。そして2パターン目が、深夜の人狼の襲撃。人狼役の人は、好きな人を1人選び、毎日深夜に襲いに行って、自分たちの手で殺すフェイズとなります。つまり今シリーズ、通常の流れであれば、1日に2人は死んでいく計算になります。

 今作も例に漏れずこのシステムが採用されており、1日2人ペースで人は死にます。死にはするのですが、その死亡シーンの出来栄え、見応えについては、間違いなくシリーズ中ブッチギリの最下位。その理由は2つ。
 1つは、投票時の殺害方法の再々々変更です。このシリーズ、投票対象者の殺し方については、シリーズ中で何回も変更されてます。最初は、投票対象者を参加者自身の手で凶器を使用して殺す手動方式だったのが、途中からは投票対象者の首輪の装置が起動して勝手に死ぬ、自動方式へと変更になりました。そしてまた途中から手動方式に切り替わったのですが、ここに来てまたしても自動方式に変更。本当にコロコロコロコロ変わりますね……
 しかも今作の死に方は、首輪が段々と締まって死ぬという従来の方式ですらなく、電気ショックで苦しむ間もなく一撃KOという、大変に見応えのない、陳腐な描写になってしまっています。

 私はこのシリーズ、投票で選ばれた人が参加者自身の手で殺され、それを見た全員が「強制的にやらされているゲームだとは言え、それでも自分たちが、確かにこの手で直接人を殺した」という罪に苛まれる、絶望感漂う雰囲気がすごく好きなのです。これがあるかどうかで、緊迫感の演出にかなりの差が出ると思っているためです。なので、この再々々変更は残念でなりません

 しかも今作の残虐描写の手抜き、これだけで終わらないんですよ。なんと今作はこれまたシリーズで初めて、人狼による夜間の襲撃シーンが全カットという、デスゲームにあるまじき調整を施されています。正確には、人狼が夜間の襲撃先を決める描写が入り、その部屋へ向かう様子が映された後、朝まで時間が飛んで死体が上がっている、という具合。
 つまり今作、デスゲームものでありながら、人が直接死ぬ描写は電気ショックを流されて身体がビクンッ♡として倒れる、という描写のみとなっております。このせいで、とにかく死が軽くて描写がちゃっちく、緊張感が驚くほどない。いやー、これは本当に萎えた。もちろん、今回は運営側視点の話だから、死亡シーンとかに無駄な時間を使いたくなかったのかもしれないし、殺害シーンを省いてテンポを上げることを優先したのかもしれません。だけど、この「自分たちの手で、人を殺す」という描写こそがこのゲームの醍醐味の一つだと私は思っているので、どんな理由でこうなったにしてもこれはない。流石にない。

 そしてもう1つの残念ポイント、闇深エンドについて。今作のあらすじを聞いた時、おそらく少なからずの人が、「多少なりとも運営側の実態に迫る話」を期待したはずです。例えば、このゲームを仕切る組織の事だとかね。でも今作の内容は、まあ要約すれば「イベントの現場スタッフの勤務実態を見られただけで、肝心の運営会社のことは結局何一つ分からないままでした」というような内容であり、9作目にもなって結局話が何一つ進んでいないんですよ。しかも今作の終わり方は、「主人公たちも運営スタッフ側である事は間違いないが、結局自分たちの事は運営の上の方に常に見張られていた。つまり現場スタッフでさえ、運営の手からは逃れられない」というような、「俺たちの想像以上に、闇は深いって事だ……」な終わり方。これはちょっと残念ですよ。いったい何作目までこんな感じの引っ張り方するんですか?

 とまあ、気になった悪い点はこんな感じです。しかし最初に申し上げたように、人によってはこの悪い部分というのは全く気にならないでしょうし、逆に私が良いと感じた部分に、微塵も共感できないこともあるかと思います。全ては、自分がこの人狼ゲームというシリーズに何を求め、どんな展開を期待するのか。それによって評価点が大きく変わってくるからです。このシリーズ、結構人によって評価点や好きな作品が変わるため、是非あなたのシリーズランキングを教えてほしい。

 ちなみに、私はこんな感じです。

1位:ロストエデン
2位:ラヴァーズ
3位:ビーストサイド
4位:デスゲームの運営人
5位:初代
6位:マッドランド
7位:プリズンブレイク
8位:クレイジーフォックス
100位:インフェルノ

 こうして見ると、5位の初代より上は全部「面白かった」という部類に入るので、今のところ打率は5/9、0.556という超好成績シリーズ。今後も期待していきたいですね。

 よろしければ、過去作の感想記事もどうぞ。

人狼ゲーム シリーズのレビューです

今回のレビューは以上です。お読みいただき、ありがとうございました!
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