「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ランニング・デッド のレビューです(総合評価C-)

(画像:ゲオオンラインより引用)
 
主人公が制作側の都合でダイ・ハードマンなゾンビ映画のレビュー、はじめましょう。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 アメリカ
  • 製作 2020
  • 販売 プルーク

あらすじ

歩きながら襲ってくるという定説を覆す「走るゾンビ」が人々に襲いかかるサバイバルホラー。幼い娘とキャンプにやってきたトム。しかし、あたりを突然ゾンビに囲まれてしまう。トムは娘を助けるため、大群が取り囲む中、生存スキルを発揮して生き延びるために戦うが…。

ゲオオンラインより抜粋)

予告編

ストーリー
キャラクター
ゾンビの質
設定
総合 C-

良い点

  • とりあえず色々起きるので見てはいられる

悪い点

  • 主人公に対するゾンビくんの忖度が激しい
  • 絵面、展開が単調で盛り上がりに欠ける

 ここまでゾンビが空気読む映画もなかなかないですね。多少ゾンビの動きが鈍ったりとかは他作品でも良くありますが、ここまで露骨に「主人公生かすためにゾンビ共空気読め」という姿勢を出されると普通に萎える。

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があります。未視聴の方はご注意ください!
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監督
ゾンビくんさぁ……主人公に噛み付いたら映画終わっちゃうの分かるよね? ちゃんと掴みかかるまでにしとけ?
ゾンビ
おかのした

 これもう八百長だろ。

 さて今作ですが、八百長ゾンビ映画です。タイトル通り、ゾンビくんは全力ダッシュかましてはくるのですが、活き活きしてるのは走ってる時くらい。八百長するならもっと上手くやれ(ブーイング不可避)

 それでは、早速今作の詳細な内容を見ていきましょう。まずは良い点から。
 今作の良い点は、主人公が割と積極的に動くためにいろいろイベントが起きるので、完走だけなら結構容易、という事です。

 今作はキャンピングカーを中心とした、というより舞台のほぼ全てが主人公が籠城しているキャンピングカーの周辺だけという、いわゆる籠城系、ワンシチュエーション系の映画です。かつ、主人公には娘を探すと言う目的があり、割と積極的に思いつく脱出策を試してくれます。例えば、拳銃片手に強引にゾンビの群れを突破しようとしたり、キャンピングカーの屋上から車に飛び移り、群れを振り切って発進しようとしたり、近くを通りかかった生存者を助けに行ったりなど。そのため、籠城系にありがちな「話が全然動かないので飽きる」という事態には陥りにくくはなっていますその他、ゾンビのメイク関連の出来栄えはなかなか凝っており、何より体表にワーム状の虫がうにうにしているためなんとも気持ち悪い。このこだわりは良かった。

 また、序盤に展開される父と娘の日常シーン。ギクシャクしながらも、なんとかお互いに距離を縮めようと努力する様子はなかなかグッときましたし、何とかして娘を探さなくては、という展開に説得力を持たせる役割もちゃんと果たせていたと思います。開幕にゾンビの襲撃シーンを持ってきたのも良い配慮。立ち上がり速度、テンポともに悪くなく、総じてあらゆる要素がなかなかのクオリティに収まっています

 なんですけど、今作はこれらの良い点を揺るがして台無しにするレベルの大きな問題を二つほど抱えておりまして……。それは、絵面も展開も短調で盛り上がりに欠けるということと、ゾンビ忖度問題です。

 一つ目の問題、これはワンシチュエーション系の映画が共通で抱える問題点なのですが、やっぱり単調さの打破が難しいことですね。ワンシチュエーション映画って、大抵の流れは

  1. なんらかの理由でその場所から動けなくなる
  2. 脱出するために色々やってみるがことごとく失敗
  3. なんだかんだあって脱出成功or失敗
  4. オチ

って感じの段階を踏むんですが、設定上この大半を同じ舞台、ひいては同じ絵面で展開しなければならない、という制約があります。そのため、視点の固定によりお手軽に緊迫感を演出できるという利点がある一方で、舞台を切り替えて状況が動いてるように見せるって言うお手軽な手段が使いにくいため、よほど上手くやらない限り単調な構成になりがち

 今作もその例に漏れず、ゾンビに囲まれたキャンピングカーに主人公が何日もの間釘付けにされる、という構成のため、やはり絵面は単調。かつ、良い点でも挙げた通り、主人公は割と積極的にあれこれ試してくれるため飽きにくくはなっているものの、このワンシチュエーション映画が抱える共通課題を解消し、面白いと呼べるほどまでのレベルに到達しているかと言うと、残念ながらそうでもないんですよね。特に中盤以降は、どうしても絵面と展開の単調さに押されがち。

 そして、これを加速させるかの如く降臨する、今作最大の問題点、ゾンビ八百長忖度問題について触れましょう。これは何かというと、まあ一言で言うならば「主人公が死なないようにゾンビが配慮してくれてるように見える」って事です。タイトル通り、今作のゾンビは全力疾走アグレッシブ系のゾンビであり、主人公にも積極的に襲いかかりはするのですが、その割にはあまりにも手抜きしているようにしか見えないのです。

 例えば、ゾンビが複数体で襲って来た場合でも、1匹が主人公に抱きついてイチャついている間に他のゾンビが殴り倒され、抱きついてた1匹も投げ飛ばされるみたいな展開は当たり前。梯子や段差は余裕で登れるのに、胸の高さくらいしかない車の荷台には主人公が車内に入るまで登って来ない。数が多すぎる時は数体だけが絡んできて残りは背景と化す。明らかに当たってない爆風で死ぬ。数体のゾンビで主人公を完全に羽交い締めにして拘束した場合でも、もがくだけの主人公に対して意地でも噛みつこうとせず、反撃されるのをきちんと待ってくれるなどなどなど。しかも、そのままだとあまりに不自然だからか、やたらと画面を揺らしたり暗くして誤魔化すといういつもの手法も多用されます。

 ハッキリ言いますが、他のゾンビ映画で言う「うわこれ確実に死んだわ」とか「流石にこれは噛まれたな」となる場面が何度も何度も何度もあるんですけど、今作の主人公は終始無傷です。

 いやーこれでさ、主人公が刃牙並みに格闘術に優れているとか、バイオのミラ・ジョヴォヴィッチ並みに戦闘力が滅茶苦茶高いとか、すごい機転がきいて思わぬ方法でピンチを切り抜ける頭脳があるとか、そういう描写があるんなら全然いいんですけど、残念ながらそうではない。今作の主人公、せいぜい一般人に毛が生えた程度、どれだけ高く見積もっても優秀な軍人レベルの戦闘力しか持ち合わせていません。なのに、複数体のゾンビを同時に相手取り、確実に死んだと思える場面でも無傷で帰ってくるため、実際の実力と戦果との間にものっっっすごいギャップがあるんですよ。しかもこのギャップの正体は、主人公の強さや実力ではなく、単なるゾンビの手抜きと来たもんだ。これがまあ一度や二度ならまだいいんですけど、本当に何度も何度も何度も度々度々度々繰り返されます。

 この、なんかピンチにはなるもののゾンビが露骨に手抜きしてくれるお陰でなんとでもなるという、「強さは一般人、戦果はミラ・ジョヴォヴィッチ」展開を延々と繰り返されると何が起きるかと言うとですね、見ごたえはない上に緊迫感は死ぬと言う最悪の事態に陥ります。だってもう途中から、「なんかピンチだけど、どうせ切り抜けるんでしょ」という予定調和感が滅茶苦茶強くなるんですよ。
 これが「なんかピンチだけど、どうせ持ち前の戦闘力で切り抜けるんでしょ」とかなら、緊迫感こそ薄くてもアクション的な見応えが生まれるので全然アリなのですが、今作の場合は「なんかピンチだけど、どうせ制作側の都合でゾンビが手抜きして切り抜けるんでしょ」になってしまっているんですよね。これがマジであかん。そりゃフィクションなんだから、全部のピンチは予定調和なのは百も承知なんですけど、それを視聴者に悟られるレベルで露骨に展開し続けるのは下手くそとしか言いようがない。

 と言うわけで総評ですが、主人公が割と積極的なため、まあ色々とイベントは起こるのでクソつまらなくはないです。反面、最初から最後までゾンビが露骨に手抜きで、大した実力もない主人公が何の説得力もなく毎回毎回不自然に生き残るため、全てのピンチが予定調和という感じが前面に出て来てしまっています。ラストシーンの、四方を十数体のゾンビに囲まれ、身体中に組みつかれて完全に身動きが取れなくなったところで、近くのボンベを爆発させたら自分以外全滅したシーンなんかは、今作の御都合主義感の強さを象徴するクソシーンだったと記憶しています。なんで主人公は平気なのに、こいつよりも後ろにいるゾンビ含めて、当たってもない爆発で全滅してるんですかね……。

 とまあ、個人的にお勧めはしませんが、そこさえ気にならなければ凡作少し上くらいのポテンシャルは持っている作品なので、人によってはハマる可能性もあるかもしれない。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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