「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ザ・デア 理由なき監禁 のレビューです(総合評価D+)

(画像:ゲオオンラインより引用)
 
邦題考えたやつが一切本編を見てない問題作のレビュー、始めます

ストーリー構成が意味不明すぎる。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 ブルガリア、アメリカ、イギリス
  • 製作 2019
  • 販売 プルーク

あらすじ

突然監禁された男女4人の被害者、彼らをいじめ抜く豚の皮を被った刑の執行者、そして狂った農夫と怯える子ども。登場人物それぞれに点在する過酷な試練への挑戦(=デア)は、物語が進むにつれてパズルのピースがはまるように繋がっていく。拷問する加害者の視点、拷問される被害者の視点、「暴力」の理由が繋ぎ合わさっていくツイストな展開は必見!

ゲオオンラインより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
拷問の質
設定
総合 D+

良い点

  • 拷問シーンは個性的、かつクオリティが高い

悪い点

  • とにかくストーリー構成がヘッタクソ

 最初の5分過ぎまではすごい良かったんですけど、その後からとにかくこちらの視聴意欲を削いでくるドヘタクソなストーリー構成にげんなり。いや本当、構成したアホ連れて来てくれ(激怒)

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があります。未視聴の方はご注意ください!
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 邦題考案担当とシナリオ構成担当は出頭するように。

 さて今作ですが、理由しかない監禁をする映画に理由なき監禁とかいう邦題を付けちゃう、ちょっと担当者のおつむの中身が心配なスリラー? スプラッター? 映画です。まあ、それよりも中身の方が問題なんですけど……。

 それでは早速、詳細な中身を見ていきましょう。まずは良い点から。

 今作の良い点は、肝腎要の拷問シーンのクオリティは結構高いということです。

 この映画はまあ見ての通り、主人公はじめとした4人が、小部屋に突然監禁され、そこで恐ろしい拷問を……という、まあ良くある監禁系スプラッターなんですが、1番の見せ場である拷問シーン、スプラッターシーンのクオリティは結構高め。それこそ、腕がちぎれたり首が飛んだり、血がビュービュー出たりだとかはしませんし、SAWのような派手な拷問器具、処刑器具は登場せず、シンプルに淡々と拷問していくので華やかさはありませんが、拷問の見せ方が上手なのです。

 今作は監禁者4人に対して実行犯1人というバランスで、当然拷問を仕掛けるのはこの実行犯なのですが、こいつがなるべく自分自身で直接は手を下さず、監禁者同士で拷問し合うように仕向けて来ます。つまり、監禁者に指示を出して他の監禁者を攻撃させる、という拷問方法をとるわけです。こうする事で、監禁者同士はお互いに疑心暗鬼になり、協力関係が生まれにくくなるだけでなく、自分が他人を傷つける側にも回らさせられるので、精神的にも疲弊させられるという、嫌にリアルな拷問描写

 さらに今作の拷問、大変に虫を多用して来ます。例えば、ゴキブリを食わさせられたり、蜘蛛の卵を耳に入れられたり、目玉をちょっと切られて、その切れ間にワームを挿入されたりなど。これがなかなかに気持ちが悪い上に痛々しく、虫耐性がない人には並の拷問シーン以上にかなりショッキングな映像となっております。派手さはなくとも、とにかく精神的にも肉体的にも嫌悪感を覚える描写を次々と取り入れてくるため、この部分のクオリティに対しては私は満足でした。まあ、虫が平気な人からすると、少し地味に映るかもしれないので、好みにも結構左右されそうですけどね。

 というわけで、良い点以上。ここからは悪い点を。

 今作の悪い点は、何を隠そうとにかくストーリー構成がヘッッッタクソ、これに尽きます。

 今作、監禁描写自体は、まあ好みの問題こそあれ結構良いんですけど、それを楽しもうとすると兎にも角にもストーリーの雑さが邪魔をして全然楽しめないという、大変に大きな問題を抱えています。

 ただストーリー内容自体は、シンプルですけど全然悪くないんですよ。滅茶苦茶ざっくりと解説すると、今回監禁された4人と犯人は、実は幼少期に繋がりがあった、というのが今ストーリーの核となります。
 幼少期、犯人は家庭環境が芳しくなく、両親に愛されていないと思っていました。そんな時、夜の森で仲良く遊んでいる主人公たち4人と出逢います。仲間に入れて欲しくて跡をついていく犯人ですが、主人公たちは彼を嘲笑い、仲間になりたかったら言うことを聞けと要求。そして無抵抗の彼に、ゴキブリを食わせる、蜘蛛を顔に這わせる、地面に磔にしてワームまみれにするなど、どぎついイジメを連発。そして最終的に、近年噂になっている「息子殺しの頭のいかれたキチガイ農夫の家に彼を単独潜入させる」という一線を超えた要求を出すのでした。

 当然犯人は農夫に捕まり、そのまま監禁。大人になるまで、彼の息子として生きる人生を強要されます。そうしてなんだかんだあって農夫を殺し、自由を手にした今、彼の復讐が始まる──かなり端折り気味ですが、概ねこんな感じです。

 これをみても分かるように、今作は犯人による主人公たちへのリベンジストーリーなんですが、こんなにシンプルにスッキリとまとまりそうな設定であるにも関わらず、今作はものすごくストーリー構成がメッチャクチャ。何が酷いって、現在監禁されている主人公たちの視点と、この犯人の過去回想視点が、それはもう無駄にコロコロコロコロと入れ替わりまくるんですよ。これがもうとにかく大問題。

 開幕、主人公が攫われて見知らぬ3人の男女との監禁生活がスタートするところまで、時間にして大体開幕6、7分あたりまでは大変楽しく見られたのですが、この映画はその次の瞬間、話が犯人の幼少期時代の視点に突然切り替わります。しかもなんの説明もなく、突然少年が虐待される描写が始まるため、これが現在なのか過去なのか、こいつは誰なのかとかも一切分からないまま話が進行していくんですね。かと思えば、これも数分したらまた監禁されてる主人公たちの視点に変わり、それも数分でまた少年視点に場面が変わって……こんなことを、開幕からずっと、30分以上も続けて来やがるのです。

 これ、思った以上にかなりのストレスでした。理由は単純で、せっかく作った緊張感が場面の切り替わりに合わせてブツブツブツブツ途切れるから。監禁がスタートし、いったいこれから彼らはどうなってしまうんだ!?と興味が湧いたと思った瞬間、「一方その頃」と言わんばかりに回想編へ場面切り替え。若干困惑したまま見ていると、こっちはこっちで登場人物の誰かの過去なのかな? これがこの監禁の根幹に関わってくるのかな? と少し興味が出て来たと思った瞬間、これまた「一方その頃」と言わんばかりに、今度は監禁視点に切り替え。今作はこんなことを以降ずっと、数分おきに連発してくるせいで、現在と過去への行き来の回数がそれはもう大変なことになっています。そしてこのせいで、とくに監禁シーンから回想シーンへの切り替えに合わせて、緊迫感や臨場感がブッッッツウッ! と音を立てて盛大に途切れるんですわ。それを何度も何度もされると何が起こるかと言うと、やがて完全に興味を失います

 今作に限らず、私はシチュエーションスリラー映画を見るたびに毎回毎回毎回思うんですけど、とにかく無駄な視点切り替えの多用はやめろ。監禁や拷問シーンが売りの映画なら、何よりもまず小部屋に監禁されている彼らの息が詰まるような緊張感、緊迫感、閉塞感、そしてまさにリアルタイムでこの理不尽な苦痛が与えられているという臨場感を大切にしてほしいのよ。

 もちろん、視点の切り替えがあること自体は否定しませんけど、数分おきにそれを連発するのは、よほどうまくストーリーを構築しない限りストレスになるだけだよ。しかもこんなシンプルな設定であるなら尚更、視点切り替え自体が1回か2回ほどあれば充分なはずです。

 そもそも、このお話のメインはあくまで監禁される現在軸にこそあるのであって、過去に犯人が彼らに受けた仕打ちはその現在軸に繋がる理由の部分でしかないのですから、視点切り替えを多用して監禁編も回想編も同じくらいの比重で並行展開していく事自体がおかしいんですよ。どっちのシーンも重要だから、どうしても同じくらいの比重を置いて扱いたいっていう場合でも、せめて序盤は監禁編メイン、中盤は回想編をメインにして、終盤に監禁編メインで締めるとか、そういうメリハリはどうしたって必要なのです。

 それをせずに、今作のように序盤から監禁編と回想編を数分おきに切り替えて同じくらいの比重を置いて展開していくと、どっちをメインに扱いたいのか分からず話全体が大変中途半端で無駄に分かりにくくなり、その上監禁編で作った緊迫感は数分おきにいちいちぶつ切りになるなど、本当に何一ついいことないんですよ。基本的には時間軸通りに物語を展開していき、要所要所で過去回想を挟む、というのが創作の基本だと思うのですが、今作がやっていることって、言うなれば、現在編と過去編を5分おきにぶつ切りにして、それを無造作に交互に並べて皿に盛り付けて出してる、って言うだけですからね。

 と言うわけで総評ですが、拷問描写自体は人は選ぶもののなかなか光るものを持っている一方で、とにかくストーリー構築の仕方が雑。食材だけはそれなりに良いものを取り揃えたものの、シェフにカプレーゼしか作れないゴミを雇ったせいでせっかくの料理が台無しに、という典型みたいな作品です。一応、回想があらかた出尽くした中盤以降はそれなりに面白いのですが、それが来る頃にはもう、私の興味ゲージは底をついていました。内容はそのままに、構成を変えてくれるだけでもっと上に行けたと思う映画なので残念です。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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