「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

サイレント・ウォーター のレビューです(総合評価C)

(画像:Amazon商品ページより引用)
愛犬家憤死不可避なシチュエーションスリラー映画のレビュー、始めます。

 Cにしてますが個人的にはE評価です(ガン切れ)

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 スウェーデン
  • 製作 2020
  • 販売 ギャガ

あらすじ

スウェーデンからクリスマス休暇のためノルウェーの家族を訪ねたイダは、妹のトゥーヴァに誘われて山間部の岩場の海にダイビングをしにいく。
神秘的な海中散策を楽しんでいたふたりだったが、突然山から落ちてきた岩がトゥーヴァに当たり、30m以上深い海底まで沈んで身動きが取れなくなってしまう。
イダは妹を救うため地上に上がり助けを求めるが、真冬の山に人影は見当たらない。さらに岩場に置いていた予備の酸素ボンベも落石によって使えなくなっていた。凍てつく海底で、刻一刻とトゥーヴァの酸素は尽きていき―

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー C
キャラクター C
設定 D
総合 C

良い点

  • 緊迫感の演出の仕方はなかなか良い
  • 展開がとんとん動いてゆくので飽きずに見られる

悪い点

  • 主人公がポンコツ気味なので、見ていてキツい可能性あり
  • 結構都合良くピンチに陥るので冷める可能性あり
  • 犬の扱いが酷すぎて本筋に興味を失くす

 海底で身動きが取れなくなった妹を助けるために、姉が頑張る話です。色々言いたいことはありますが詳細は以下で述べるとして、その前に一つだけ、「たとえ創作だとしても作品中で犬が酷い扱いを受ける作品は見るのが辛い」と言う方は、マジで見ない方がいいです。姉妹のピンチとかどうでも良くなるので。お前らまとめて仲良く氏ね(出来るだけマイルドな表現)

 
ここから下のレビューには、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は注意してね。
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 製作者は犬に恨みでもあるんですかね……(胸糞要素)

 さて今作ですが、海底をテーマとしたスリラー映画です。良い部分ももちろんあるのですが、人によってはそれを補って余りあるほどの悪い要素が全てを帳消しにし、そのままマイナスに振り切って帰ってこられなくなるほどの破壊力を秘めた作品でもあります。

 それではさっそく、詳細な内容を見てゆきましょう。まずは良い点からです。
 今作の良い点は、シチュエーションスリラー映画特有の緊迫感の表現にはそれなりに成功しているということと、場面が何度も切り替わるので飽きずに見られるという点です。

 今作を簡単に紹介すると、ダイビング中に落石により妹が負傷、海底で岩に足が挟まって身動きが取れなくなり、それを助けるために姉が地上と海底を往復して色々頑張るお話となっております。この、舞台が「海底」っていうのがまずポイントで、何より危機感が分かりやすいんですよ。この話を聞いただけでも「海底ってことは酸素が切れたら終わりだから、時間制限までに何とかしないと」って容易に分かるじゃないですか。こういう、いわゆるシチュエーションスリラー系の映画って、あれこれ複雑に状況を設定して舞台を用意するよりも、結局は状況がシンプルで、一目見ただけで感覚的に危機感が伝わる方が見ている側にも緊迫感が伝わりやすくて良いと私は思っているので、この点は加点しました。

 またそのおかげで、もうとにかく酸素残量が全てなので救助の準備にかける時間は1分1秒でも惜しいという状況が感覚的に理解しやすく、主人公が焦る気持ちがちゃんと伝わってきて、切迫した状況、そこから生まれる緊迫感も割とよく表現できていたと思います。これまたこういうスリラー系の映画って、大体途中でにっちもさっちも行かなくなり、状況が停滞して一拍置くせいで緊張感もそこで途切れちゃうってことが本当に良くあるんですが、その点今作はまさに一刻を争う状況で一拍置く暇もないので、最後まで緊迫感を継続させること自体には割と成功していると思います。

 加えて、今作は海底をテーマとしたスリラーでありながら、主人公自体は別に海底に釘付けにされているわけではないので、彼女の動きに合わせて舞台が地上と海底で何回か切り替わります。地上では基本物資を調達し、それを届けに海底へ、妹と会話して再び地上へ、という具合に。この、舞台が地上と海底で何度も切り替わる、つまりは絵面が切り替わるというのは、飽きの防止に対して割と効果大だと思うんですよね。ぶっちゃけこの映画、舞台が海の中だけ、もしくは一度地上に出たら最後の最後まで海に戻らないとかだったら、確実に飽きていたと思います。それだけ、話が進んだっていう感覚が場面の切り替えに合わせて視覚的に分かるっていうのは、単純ながらも強力な武器だと思いました。

 設定する状況にもよりますけど、他のスリラー映画だとこういう場面の切り替え自体が難しいってことは良くありますからね。例えば今までに見た映画で覚えている限りだと、スキー場のリフトに取り残される映画とか、棺桶に閉じ込められた映画とか、水ぬいたプールでワニに襲われる映画とか、ATMから出られなくなる映画とか、その他もいくつかありましたけど、こういう映画ってその場所から動けなくなることが大前提なため、基本的に絵面がずっと一緒なんですよね。そのため「いい加減この絵面見飽きたわ」という事態に陥りやすい。もしくはSAWシリーズのように、その場所に釘付けにされている人以外の、外部の人の視点を交えることで展開を切り替える手法を取る作品もありますが、これはこれで一歩間違えるとキャラの視点の切り替えのタイミングで緊張感が途切れやすいっていう弱点もあります(SAWはその辺上手ですが)。その点今作、シチュエーションスリラーでありながら舞台の切り替えを多用して絵面の固定化を回避しつつ、かつ視点はずっと奔走する主人公に合ったままなので、緊張感も持続させられる、というなかなか上手い手法が取られています。この部分も素直に評価できますね。

 と、ここまで順調に高評価なんですが、残念なことに今作、この良い点に負けないくらい悪い点もあります。これは大きく2つに分けられるんですが、主人公がポンコツに見えること、そして何より、犬虐待描写です。

 今作は巧みな手法により、緊迫感の継続と絵面の多様性の確保に成功している──と言ったばかりの口で申し訳ないのですが、ぶっちゃけ今作は主人公たちが割と都合良くピンチな目に合う上、主人公自身もすぐテンパってヒスりまくるため、実際緊張感が持続するかと言うと人によってはかなり微妙なところがあります。例えば、運悪く落石で妹は海底、装備品は埋没して使用不可になる、酸素ボンベは2回も海に落として壊す、トランクの開け方がわからずヒスる、勝手に人の家に不法侵入した挙句欲しいものがなくてキレ散らかすなど、割とやらかす&結構不愉快なムーヴをかましてくるので、ここが気になるとキツイですね。

 個人的にはですが、まあこの非常事態に直面した一般人の行動としては結構頑張った方だと思うし、もし自分がこの立場になったらと考えるとここまで行動力を発揮できる自信がないので、主人公のテンパり方も「まあリアルだとこのくらいテンパるのも分かるわ。結構頑張った方やな」と思ったのですが、見る人から見ると「無能なポンコツムーヴ」に見えちゃう気持ちも分かります。これはやっぱりシチュエーションスリラーの宿命で、そんなこと気になるのが悪いとか良いとか言う問題ではなく、一回気になっちゃったらどうしても冷めた目でしか展開を追えなくなるんですよね。

 だってシチュエーションスリラーって、どこまでキャラの気持ちに寄り添って感情移入して、キャラと一緒に緊迫感や緊張感を共有出来るかに評価の全てがかかっていると言っても過言じゃないので、主人公の行動に共感できない=駄作、と言う評価になってしまいがちですから。登場人物が機械のように冷静で常に最善手を打てるプロみたいなキャラの場合はともかくとして、これはもう本当に「自分がどこまでキャラのテンパり方を許容できるか」にかかっているので、そう言う意味で言うと今作、主人公が起こす行動としては、割と共感できない行動や凡ミスも多々あるため、多少人は選ぶかな、と思います。事実、映画サイトの評価を見ていても、やっぱりそれなりに許容できる人できない人が別れている印象を受けました。

 ただですね、キャラの行動に共感できるできないで言うと、1番の問題はそこじゃないんですよね……これまた気にならない人には全く気にならない部分だと思うんですけど、私はこれがどうしても気になりました。それが、「犬虐待問題」です。

 今作、人間の登場人物以外に犬が2匹出てくるんですけど、もう結論から言います。この2匹、このクソ姉妹2人から酷い扱いを受けています。
 1匹目は妹の家の飼い犬で、妹が母親に隠れて吸っているタバコの吸い殻を日常的に食わされています。妹曰く、母親に隠れて吸っているために犬に食わして証拠隠滅してる、とのこと。

は?

 言いたいことは色々ありますけど、2匹目。これは作中に登場する民家で飼われている犬で、飼い主不在の家に見知らぬ主人公が窓から侵入してきたので果敢に立ち向かった結果、主人公にナイフで刺し殺されます。なお主人公、犬殺した事に悪びれた様子はほぼなく、家主宛に「妹危ないから通報して!」というメモと共に犬の死骸を放置して家を去った模様。

あ?

 いやマジで、とにかく言いたいことは色々あるんですけど、一番はそもそも何でこんな展開用意したのか理解出来ない。さっきも言いましたが、こういうシチュエーションスリラーって、視点が常に主人公に寄り添っているため、いわば主人公って観客の分身なわけですよ。そんな主人公の行動にどこまで感情移入出来るかで映画への没入感、ひいては緊迫感の感じ方が段違いに変わってくるんです。やっぱり見ていて主人公たちに助かってほしいからこそ緊迫した状況にこちらも緊張を覚えますし、彼女たちがピンチになったらハラハラするわけじゃないですか。元から「こんな奴ら死んでもええわ別に」と言う気持ちで見てたら、どんなピンチが来ても緊迫感なんて微塵も生まれませんでよ。

 その点今作、あえて悪意に満ちた言い方をすれば、飼い犬に吸い殻食わして平気な顔してるクズ女を助けるために、非常時とはいえ他人の飼い犬刺し殺して平気な顔してるようなクズ女が頑張る話ですよ。これ見て共感もクソもあります? 私は「あ、このクズども溺れるなり自殺するなり好きにして、どうぞ」と途中から思いましたわ。そしてそうなったらもう、シチュエーションスリラーって完全に終わりなんですよね。だってそれ以降彼女たちがどれだけ頑張ろうが、何にも響いてこないしドキドキもしないんですもん、死のうが生きようがどうでもいいから。

 いや、分かりますよ? 確かにこの非常時、藁にもすがる思いで民家に助けを求めに行って、そこの犬が襲ってきたら咄嗟に反撃しちゃいますわな。で、刺し殺しちゃっても、やっぱり主人公からすると他人の犬より妹の命ですからね。犬のことは忘れて、飼い主の気持ちも考えずに、死骸放置したまま自分勝手なメモ残してその場を去っちゃう、ってのもギリギリ理屈では分かりますよ。
 でも、そこじゃないんですよ。私がキレてるのは、そんな行動をした主人公にじゃなくて、そもそもこの映画にそんな主人公への共感を削ぐようなこの描写をわざわざ入れる必要なかったじゃん、っていう、製作側に対しての怒りなんですよ。この展開丸々なくても全然良かったじゃん。「犬に襲われたせいでダイバースーツ破れて」ってくだりを入れたいんなら、別にその辺の岩で切ったなり、転んだ拍子に何かに引っ掛けたなりすれば済む話じゃないですか。

 それをなんで、しかもシチュエーションスリラーっていう主人公たちへの感情移入がかなり重要視される作品で、なんでわざわざ主人公に犬殺させる必要あったんですかね?
 なんで吸い殻食わせる必要あったんです?
 なんでそんな、わざわざ観客の感情逆撫でするような描写を入れる必要があったんです?
 それで何を表現したかったんです?
 もうマジで分からない。この無駄どころかせっかく積み上げてきたものを崩壊させるだけの描写にどう言う意図があったのか、小一時間問い詰めたい。

 もちろんこの部分、気にならない人は全く気にならないと思います。所詮はフィクションですしね。でも、シチュエーションスリラーって、こういう「何か引っかかるポイント」「共感できないポイント」が積み重なってくると、それだけで映画の評価がガラッと変わっちゃうタイプのジャンルなんで、気になる人にはマジで致命傷たり得るんですよ。これはそんなの気にしすぎとか気にする方が悪いとかそう言うレベルの話ではなく、気になってしまった時点で否応にも冷めるんです。で、このジャンルの映画は冷めたらもうそこで終わりなんですよ。緊迫感が一気に消失しますから。楽しめと言われても一回冷めたら無理です。ここはマジで人によるとしか言えません。

 と言うわけで総評なんですが、犬虐描写やヒス行動など、人を選ぶ要素はかなりあります、その上でそれが気にならなければ、良い部分はかなり大きいので割と名作認定たり得るポテンシャルは秘めているでしょう。ただ、一度悪い部分が気になる、どこかで躓いてしまうと、もうそれ以降は興味が消失する、主人公にイラつくだけのクソ映画に成り下がる可能性も十分に秘めているので、とてもじゃないですが万人にお勧めできる映画ではありません。

 超個人的な感想を言えば、主人公が犬殺すまでは結構楽しく見れました。それ以降はもう興味が失せたので全然ダメですね。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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