久しぶりにゴーストシップが見たくなる映画。廃船×少女の組み合わせはやっぱりバエル。
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 オーストラリア
- 製作 2019
- 販売 ハピネット
あらすじ
第二次世界大戦末期。ドイツ軍ナチスの攻撃により撃沈された病院船から逃げ出し、何とか生き延びた7人。機関士、ナース、コックだけでなく捕虜として捕らえられていたロシア兵など、地位も立場もバラバラな彼らは、小さな救命ボートで北大西洋のど真ん中を漂流していた。生き抜くため──ただ、その目的のために。ある夜、そんな彼らの前に戦艦が現れた。しかし、その戦艦にはナチスの旗が掲げられていた。意を決して彼らは助けを求めて船に乗り込むが、船内に人の気配はなく、操舵室には血管が壁に広がった不気味な死体、機関室には焼死体があり、救命ボートも壊されていた。ここで一体何があったのか? そんな彼らの前に船内で唯一生き残った少女が現れる…。彼女はなぜ一人で生き残っているのか、ナチス兵はどこへ行ったのか? やがて、戦争よりも恐ろしい出来事が彼らを待ち受けていた…。
(DVDパッケージ裏 STORYより引用)
予告編
見つかりませんでした……(小声)
ストーリー | C |
キャラクター | C |
モンスターの質 | C |
設定 | C |
総合 | C |
良い点
- 前半の雰囲気
悪い点
- 中盤以降の少々期待外れな展開
少女が出てくるまでの、船内を探索する時のホラーな雰囲気はかなり好みです。反面、後半は高まっていた期待が一気に下がり、低空飛行のままエンド、という感じの作品でした。
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さて今作ですが、ゴーストシップっぽいのを期待して見ると「あっ、そういう話かぁ……」となる映画です。実際映画サイトのコメントなんかでも、結構ゴーストシップと比較する声が見られました。
やっぱみんなゴーストシップ、好きなんすねぇ。では早速、今作の詳細な内容を見ていきましょう。まずは良い点から。今作の良い点は、序盤の雰囲気だけなら85点くらいあるという事です。
この作品は、見ての通り船を舞台としたホラー映画。
時は第二次世界大戦末。ナチスの襲撃を受けて沈んだ連合軍の商船、病院船の生き残り数名が、救命ボートで海上を漂っていたところ、目の前にドイツの軍艦が通りかかります。非常事態とはいえ、敵国の軍艦に乗れば何をされるか分からない事から、助けを求めるかどうか揉める一行。しかし、「こうしていても埒があかない。このまま餓死よりはマシ。救助してもらおう」という結論になるも、そもそも甲板には人の姿が見あたらない。唯一見かけたのは、寂しげに甲板に1人佇む、少女の姿だけでした。こんな軍艦に、なぜ少女が? そして、乗組員たちはどこへ──こんな感じで、今作は幕を開けます。この、開幕〜謎の少女を発見し仲間に加えるまでの展開ですが、個人的にはかなり高評価。余計な話なしに、いきなり漂流者たちの目の前に無人の軍艦が登場する、という立ち上がりの速さがまず良い。また、連合国の生き残りという事で、その場に居合わせた全員が国籍も人種もバラバラで口を開けば喧嘩ばかり、という人たちが、この非常時に手探りな協力関係を形成して行く感じも好み。
かつ、無人の軍艦内に転がる奇妙な死体と、漂う不穏な閉塞感。そこに謎の少女という最高のスパイスまで咥えた時の不気味な雰囲気は──もうこれ最高だよな!(思考停止)
実際少女発見までの前半部分は、軍艦への搭乗から謎の死体発見というスピーディーな展開、船内探索での登場人物同士の掛け合い、そして無人の船内に奇妙な死体と謎の少女という素晴らしくホラーな組み合わせが織りなす雰囲気等が、「この船で一体何が……」という先の展開への期待感がかなり高まった状態で見続けることができます。この、異変の正体は自然によるものか、はたまた心霊系か、モンスターか、それとも生物兵器なのかという、敵が見えない状態のワクワク感はすごく良かったですね。
というわけで良い点は以上。続いては悪い点を。今作の悪い点は、後半の失速です。
さて、そんなこんなで敵の正体が見えないまま迎えた中盤、少女を仲間に咥えた時点でなんとなく元凶の察しがついてきたあたりから、物語は盛り上がり的な意味で不穏な雰囲気を漂わせ始めます。そして、積まれた棺の中から完全に昭和な匂いのするコウモリ面の吸血鬼(ストリゴイ)が出てきたあたりで、物語の盛り下がりは最高潮に。
いやー、見始めた頃はまさかこれが吸血鬼ものだとは思いもよらなかったという衝撃もそうですし、モンスターの造形がめちゃくちゃレトロなのもビビりました。そして何よりも、船内を俊敏に駆け回り人外の力で人間を喰らって行く、とかそういうよくあるモンスター系でなく、能力がこれまたものっっっすごい地味なんですよ。それが、「血を吸った人間を好きに操れる」「好きな姿に変身できる」というもので、身体能力はよく見積もっても並の人間程度。かつ、今作には3人のヴァンプが登場するのですが、みんなヴァンプとしての地味能力に自信ニキなせいか、直接襲ってくる描写が少ないというのも「なんか思ったのと違う……」という感に拍車をかけています。
まあ、単純に敵の正体が割れた時点で、前半最大の見せ場だった「先への期待」が消失した上に、敵のストリゴイがめちゃくちゃぺちゃくちゃ喋るせいでホラーな雰囲気は長期出張へ、残ったのはレトロでよく喋る自信満々モンスターのみ、というなかなかキツい状態に。唯一、こちら側のキャラクターたちはまあまあ悪くないメンツが残っているため、彼らの行く末を見守るという意味ではそこまで悪くないですが、やっぱり前半パートとの落差が気になりますね……。
というわけで総評ですが、前半完璧、後半うーん、均して大体評価C、という感じの映画です。後半は後半で悪くはないんですけど、ぺちゃくちゃ喋ってイキリ散らかすモンスターが出てくると全然怖くなくなるため、せっかく前半で作ったホラーな雰囲気が吹き飛んでしまったのが痛いです。また、敵のストリゴイは人間を操る能力を持っているのですが、これがまさかのモビルトレース方式。そのせいで、操ってる人間にダメージが入ると自分も喰らっちゃうという全く見過ごせない弱点があるので、対象が殴られたり十字架押し付けられたりすると「オォン!?」って具合に怯むんですよね。ギャグだろ。
というわけですが、前半の雰囲気はマジでいい&後半は後半で楽しめたって人にとっては結構いい映画になる可能性もあるので、気になられた方はいかがでしょうか?
今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。よろしければ、お気軽にコメントしていってくださいね!