「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

クワイエット・フォレスト のレビューです(総合評価D+)

(画像:Amazon商品ページより引用)

視聴前

森の中……謎の怪物……モンスター映画かな、面白そう!

視聴後

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ここまで始めから終わりまで意味わからん映画もそうそうないで。

それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。

  • 国籍 フランス、メキシコ
  • 製作 2016
  • 販売 トランスフォーマー

あらすじ

わずかな物音や気配を察知し人間を襲う謎の怪物によって荒廃した世界。アルヘルは深い森の中で父と兄、妹の4人で暮らしていた。病気がちな妹を看病する彼は、父親の言いつけで生まれてから一度も家から出たことがなく、外の世界に憧れを抱きながらも、大きな唸り声をあげて家の周りに群れる怪物に怯える日々を送っていた。ある日、食料の調達へと向かった父と兄。しかし、帰ってきたのは父のみだった。
「“あれ”にさらわれた…。兄は死んだんだ。」
父の言葉を信じようとしないアリゲールは、自ら外に出て兄を探すことを決意。密かにガスマスクを装着し家の外へ踏み出すが、憧れていたはずの「外の世界」は、思いもよらぬ恐怖に満ちていた…。

Amazon商品ページより引用)

予告編

ストーリー
キャラクター
ホラーの質
設定
総合 D+

良い点

  • 演出や表現、役者の演技力など、素材はいいものが揃ってる

悪い点

  • 意味不明な設定
  • 意味不明なストーリー
  • 意味不明な展開

この映画を一言で表すなら、まさに「意味不明」です。それ以外に形容しようがありません。全ての展開が思わせぶりで伏線に見えますが、それら全てが最後まで回収されないままぶん投げて終わります。とりあえずモンスターとか怪物とかは、実在するかどうかは置いておいて作中には出てこないので、邦題にあるようにクワイエット・プレイス的な展開を期待するなら絶対に見ない方が良いと断言できます。

 
ここから先は、ネタバレを含む場合があるわ。未視聴の方は気を付けてね。
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 説明不足なんて生優しいレベルではない。

 さて今作ですが、怪物が闊歩しているらしい森の中で暮らす親子に、なんかいろいろ起こる話です。ごめん、そうとしか言いようがない。

 まずレビューを始める前に諸注意。今一度上記のあらすじを読んでいただきたいのですが、まずこの内容は全て忘れてください。このあらすじ、そして某作品からパクったであろうタイトルを見れば、100人が100人モンスター映画を想像すると思うんですけど、今作にモンスターは一切出てこないです。声だけはしますが、姿、影、形は一切見えません。しかも、本当にいるのかどうかもはっきり分かりません。

 じゃあ、モンスター映画じゃないなら、本作はいったいどういう話なんだよ、と言うことになるんですが、これがまた説明のしようがないんですよ……なぜなら今作、ハッキリ言ってストーリーらしいストーリーが存在せず、本気で今何が起きてて何がしたいのか意味不明だから、としか言いようがないのです。そう、意味不明。今作を端的に説明するなら、この一言に尽きます。でも、意味不明意味不明言っているだけではレビューにならないので、頑張って解説していきます。

 まず今作、まともにストーリーと呼べるものなど存在しません。一応、1番それらしいものといえば、「森で暮らす親子が、さまざまな出来事をきっかけにバラバラになりかけるが、最終的になんかいい感じになる」というものです。これに、一見伏線に見えるような思わせぶり展開を大量に混ぜ込み、それっぽく見えるように仕立てているだけです。
 あえて断言しますが、製作側は絶対今作の深い設定、きちんとしたストーリー内容まで考えていません。こういう作品に出会うと「私の理解力が足りないのか?」と自分側に原因があるように考える方がいますが、大丈夫です、私が保証します。あなたは悪くありません。何故なら今作、様々な伏線っぽい要素が存在はするものの、そのどれもが最終的に回収されることなど一切ないからです。またそれどころか、「ここでこういうシーンがあるから、この伏線はこういう意味なんだろうな」と推測できる材料すらほとんど存在しません

 思いつく限りでも、今作に登場する伏線っぽい設定はざっとこれだけあります。

  • 舞台となっているこの森は何なのか、どこなのか
  • 森の外の世界はどうなっているのか
  • なぜ家の外に出る時はガスマスクをしているのか
  • 兄はどこへ行ったのか
  • 主人公が何度も見る不思議な夢は何なのか
  • 父親や、作中に出会う老人は何か知っているのか
  • 何故家に怪物の声を出す装置があるのか
  • 父親はどうやって地下室から抜け出したのか
  • 父親が見た狼?の幻覚は何なのか
  • 結局怪物は実在するのか

 覚えているだけ書き出してみましたが、これら重要そうなもの、小さいものも含めて、今作に登場する謎はそのどれもがハッキリした回答が与えられない、それを判断する材料すらないという、ぶっちゃけ投げっぱなしや説明不足なんて生優しいもんじゃないもはやこれ未完成品なんじゃないかと思うような仕上がりになっているのです。唯一、怪物の咆哮が偽物だと判明するシーンだけは、それなりに伏線回収して盛り上がりましたが、結局これすらフェイクだったような匂わせ方をされて終わるので、余計モヤモヤしたまま。
 もう、視聴者側の理解力がどうとか読解力がどうとか、そんなレベルの話ではありません。今作はストーリーと、そこに散りばめられた展開の数々についてだけ言えば、誇張抜きに意味不明としか言いようがないのです。

 私が最初に、この映画の製作は細かいストーリーなんて絶対考えてない、と断言したのはまさにこれが理由で、「こういう展開入れときゃ見る側が勝手に深読みしてくれるやろ」という態度が透けて見えるからなのです。こういうスタンスをラストシーンだけ、もしくは作中の一部設定だけで取る作品は五万とありますが、最初から最後まで、ありとあらゆる伏線全部について堂々とこれをやったのが今作なのです。本当にタチが悪い。ハッキリ言ってストーリーの細かい考察なんてするだけ時間の無駄、としか言いようがない。

 しかしもしですよ、もし今作、実はハッキリしたストーリーラインがあり、製作がそれに沿ってこの映画を作ったのだとしたら、それはそれでもうあまりにも構成が下手くそすぎるとしか言いようがありません。冗談抜きで、1ミリも伝わらない。私も最初、実は自分が重大な見落としをしていて、割と納得のいく説明があるんじゃないか、と思いネット上で他の方の感想を調べてみたのですが、目につく意見どれもこれも「意味不明」「分からない」の大合唱、かつ今作を高評価している方もストーリーについてはほとんど触れてくれていなかったので、多分間違いないと思います。ハッキリ言いますが、ストーリーや細かい設定がちゃんとあったとしても、視聴者に伝わらなければそれはないのと一緒です。

 また、実は今作、超高度な教養とかが備わってる人なら内容が分かる系の作品の可能性もあります。例えば、これは聖書の何章にあるあれで、とか、もしくは向こうの国の逸話か何かをモチーフにしてるとか、過去の名作映画の設定を流用してて云々、とか。そういう類の可能性もありますが、それならそれで凡人には全く楽しめないので無視してOKです。少なくとも、この邦題とあらすじに期待できるものは何一つ出てこないので。

 とまあ、ストーリーや設定関連についてはまさにボロボロな今作ですが、実は光る部分もあります。それは、ホラー、スリラーな演出や役者の演技力、不気味な雰囲気やその中で生きる家族の人間関係描写など、素材レベルで光るものは結構あるということです。たまに「何が面白いのか微塵も分からないけど、なんか最後まで見られた」という不思議な作品と出会うことがありますが、私の場合、今作がまさにそれでした。もう、展開とかはいちいち思わせぶりで腹立つんですけど、途中に出てくる不気味な人形とか主人公が見る不思議な夢とか、薄暗い森に響く不気味な咆哮とか、恐ろしいほどホラーな雰囲気にマッチしてる妹役の演技とか、なんか雰囲気だけはめちゃくちゃいいんですよ。

 だからですが今作、おそらく視聴者に求められるのは、展開や伏線を読んだりそれをつなぎ合わせたりする読解力ではありません。投げつけられた伏線っぽいものに対して「これはもしかしてこうかな? いやこういう解釈もできるな。いやいやこうだったら面白いな」という、こっち側で勝手に情報を処理して飲み込む想像力が必要です。今作は公式に説明らしい説明を一切してくれないので、正直こちら側の都合の良いようにいくらでも解釈を広げることができる上、素材だけは良いものが揃ってるため、そういうの好きな人には刺さる──のか? ごめんなさい、私がそうじゃないので分かりませんが……。

 と言うわけで総評ですが、もう意味不明です(思考停止)。伏線っぽい設定含めて素材提供はバッチリしてくれるんですが、それの調理は一切してくれません。ふらっと立ち寄った寿司屋でマグロ頼んだら、米とお酢とマグロ丸々1匹出されて、「高級な食材ばかりをご用意しております。ご自分で捌いて握ってください」ってのを真っ向からやってくるような映画です。いや、こっちは食材が欲しいんじゃなくて、きちんと調理された寿司を食べたいのよ……。
 なので、寿司屋に寿司食いに来て、マグロ1匹出されて「うわぁ、これ大間産ですか!? 凄い高級品、やばいですね☆ いただきます!」って文句一つ言わずにそのままかぶりつくような人は楽しめるかもしれません。現場からは以上です。

今回のレビューは以上。読んでくれてありがとう。
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