意外にもコメディ一辺倒じゃなかった。
それでは、まずは本作の基本情報、あらすじ、予告編からどうぞ。
- 国籍 2014
- 製作 ニュージーランド
あらすじ
それでもカメラは止めない!山奥でゾンビ映画を撮影中、大量のエキストラに紛れて本物が発生!しかし撮影クルーはゾンビメイクのエキストラと本物の見分けがつかず大混乱!残された者たちはこの地獄絵図から抜け出すことができるのか!?ノンストップ・ゾンビサバイバルが日本上陸!
(Amazon商品ページより引用)
予告編
ストーリー | B |
キャラクター | B |
ゾンビの質 | B |
設定 | C |
総合 | B |
良い点
- 印象に残るシーンがいくつもある
- ゾンビ、及び人体破壊描写のクオリティが高い
悪い点
- コメディ部分がハマらなかったら絶対飽きる
ゾンビ映画の撮影×本物のゾンビという組み合わせのホラーコメディ、通称ホラディ映画です。そのコンセプトからか、Google検索のサジェストに「カメラを止めるな」の名前が出てきます。しかし、完全にコメディに振り切ってるあちらと違い、今作はあくまでもストーリー自体は真面目なゾンビ映画。かつスプラッター描写もかなり気合入ってるので、耐性ない人が見るともれなく死にます。そこだけは注意!
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こういう設定の映画もっと増えてほしい。
それでは、早速今作の詳細な内容を見ていきましょう。
まず今作の構成についてですが、そのあらすじやサジェストに出てくる「カメ止め」の名前からコメディかと思いきや、中身的には意外と真面目なゾンビ映画路線を主軸としたホラーコメディでした。もちろんコメディ描写は各所に散りばめられていますが、撮影所にゾンビ発生→逃避行→立て篭もり→脱出、という基本の流れ自体はちゃんとゾンビ映画です。
さらに詳しく説明すると、この映画は構成上大きく三つに分けられます。
①前半45分、ゾンビが発生しない撮影所でのドタバタコメディパート
②撮影所にゾンビ発生してから、コメディ色強めのゾンビコメディパート
③農家に立て篭もり後、割と真面目な展開が主になるシリアスパート大体こんな感じですね。それではそれを踏まえ、まずは良い点から見ていきましょう。
今作の良い点は、印象に残るシーンが多々あるという事と、ゾンビのクオリティが高いことです。
先ほど今作を 3つの構成に大別しましたが、今作はどのパートにも結構印象に残るシーンがしっかりとあり、割と飽きずに最後まで見られます。
例えば①の撮影所コメディパート。ここはゾンビ映画でありながらゾンビが出てこないので退屈するかと思ったのですが、これが意外にもなかなか楽しめます。1番印象に残ったのは、やっぱり開幕すぐのゾンビ映画撮影シーンですね。この映画はいきなり登場人物がゾンビから逃げるシーンから始まり、そこでB級感満載の臭い台詞を吐きながらゾンビをバッタバッタと薙ぎ倒して行くシーンから始まります。結局これは映画の撮影だったことがすぐ明かされるのですが、ここの部分の出来がかなり良い。普通にこのまま見続けていたかったレベル。
その後、話は撮影所内で繰り広げられるトラブルや人間関係描写を中心にしたコメディパートへ移って行くのですが、出てくるキャラが一癖も二癖もある個性派揃いなので、これがまたなかなかに楽しい。傲慢で怒鳴り屋な監督に、ヘコヘコするだけの助監督、ナルシストな元売れっ子筋肉男優に、オッパイだけで新人賞を取った自己中女優、童貞臭いハゲ主人公に、過去の栄光にすがるアメフト自慢おじさん、役作りに没頭しすぎて頭までイカれたゾンビ博士などなど、もうとにかく癖の強いのが揃ってます。前半はゾンビもほとんど出ず、彼らの癖の強さだけで持たせてる感が強いのですが、これだけで45分持たせるレベルにはキャラクターの完成度が高いです。
そして②ゾンビコメディ。ゾンビ大襲来の撮影中に本物のゾンビが紛れ込み、ゾンビメイクしたエキストラたちを次々食い荒らす展開が幕を開けるのですが、正直ここのクオリティはかなり高いです。そもそもこの映画のゾンビの出来は、メイクのクオリティの高さを始め、人体破壊描写の徹底、積極的内蔵ポロリなど、かなりこだわりが見られるので実に良い。
このパートで印象に残ったシーンといえば、やはりエキストラをゾンビが食い散らかすシーン、ドヤ顔で銃持って出てきたおっさんが的確にゾンビメイクしたエキストラの方だけを撃ち抜いていくシーン、そして何より、ゾンビ映画制作に取り憑かれた監督が、助監督と自らの命をゾンビに差し出し、自分たちが喰われる様を嬉々としてフィルムに焼き付けているあたりでしょうか。この辺の描写はどれも作り込みが凄く、普通にゾンビパニックとしてクオリティが高い。一部ギャグもセンスが良く、私にはわりかし刺さりました。
そして最後、籠城から始まる、普通にシリアスなゾンビパートこと③。ここの見せ場は何と言ってもアメフトおじさんの自己犠牲特攻、ここしかない。詳細語るとマジで長くなるんで端折りますが、過去にアメフトでヒーロー的な勝利を決めたことを誇ってるおっさんが、その技術を活かしてゾンビの包囲網を強引に突破し、主人公たちを逃すというシーンです。私の拙い文章では何が良いシーンなのか全く伝わりませんが、いやもう演出の仕方がいいんですよ。おっさんの決死の特攻劇はまさに見もので、画面を超えて熱い感動とハラハラが伝わってくる今作一番の名シーンでした。ちらっとロメロゾンビに言及するセリフがあったんで、このシーンもナイトオブザリビングデッドよろしく特攻失敗からの車ごと大爆破とかしたらどうしようかと冷や冷やしてた。
という感じで、今作はゾンビの出来の良さに加えて、各パートそれぞれにきちんとした見せ場が存在しており、全体的に印象に残るシーンが多くかなり楽しめます。本編時間は1時間45分とちょっと長めですが、個人的には飽きることなく最後まで楽しめました。
ただ今作、それはもう大きな問題を抱えていることも事実。その問題とは、コメディ描写が刺さらなかった場合、ラストシーンに行くまでに飽きるの必至ということなのです。これがマジででかい。
そもそもコメディ映画って大前提として「そのコメディセンスが自分に合うかどうか」で評価が大きく変わってくるジャンルです。そしてこればっかりは、人に言われて判断できるもんではありません。例えば、私は「カメ止め」大好きですけど、あれももちろん「何が面白いんや」という人も当然いるでしょう。逆に、私は「ハングオーバー」シリーズなんかはマジで何が面白いか理解出来なくて、苦痛すぎて全部途中で見るのやめました。
若干話がそれましたが、つまり言いたいこととしては、コメディほど人の評価が当てにならないジャンルもないってことです。今作について言えば、例えばゾンビの出来はこういうところがいいとか、スプラッター気合い入ってるとか、シリアスシーンは熱い展開があってとか、そういうコメディ外の部分については何が良いのか解説する余地があるんですけど、コメディ部分だけはマジで「合う合わないあるから一回見てみてくれ」としか言えないんですよ。そして一回見てみた結果、「この映画のコメディ、自分には合わんなぁ」となった場合、この映画に対する評価はかなり悲惨なことになります。
一応、②のゾンビコメディパートとか、③のシリアスゾンビパートに入ってからはまだ良いんですよ。ここの部分はコメディ描写もありますが、ゾンビが出てきてくれる上に割とちゃんとゾンビ映画してくれるので、最悪コメディ部分が刺さらなくても、スプラッター要素なり熱い展開なり、他の部分で楽しむ余地が生まれるからです。
しかし、とりわけ①撮影所ドタバタコメディパートは、ゾンビもほとんど出てこない上にキャラクターを中心としたコメディ描写と伏線張りの時間ですからね。ここばっかりはもうコメディが刺さらなかったら他に楽しめる余地がほとんどないです。しかも、ここが30分以内に収まってればまだ我慢もできるんですけど、今作はゾンビパニックが起きるまでに45分もかかります。これがまた長い。これはね、コメディ無理ならかなり苦痛の時間になりますね。そして、一度ここで興味を完全に喪失してしまうと、後半での巻き返しというのはかなり厳しいものがあります。人によっては持ち直すこともあるでしょうが、一度地に落ちた評価はなかなか向上が難しいだけでなく、最悪この前半パートで「つまんね」と思われて視聴中断される事だって十分あり得ますからね。後半どれだけ神展開連発しようが、そもそも勝負の場に立てなければ意味ないですしね。
そしてさらに困ったことに、今作で展開されるギャグ、結構人を選ぶタイプのものなんですよねぇ。多用される見た目いじりは人によっては不快感の塊ですし、そうでなくても結構寒い描写もちらほらあり、終始笑いっぱなしというわけにはいかないのではないか、と。現に私も、真顔で見送ったコメディ描写も割とありました。
というわけで総評ですが、コメディ映画よろしく、とにかく大事なのはコメディセンスが自分に刺さるかどうかです。これが映画前半の評価に直結してくるため、ここがダメだとゾンビ登場前に途中リタイアも見えてくるかも。ゾンビ登場後はコメディ以外の光る部分も見えてくるので、持ち直す可能性もあります。何より、ゾンビのクオリティの高さと徹底したスプラッター描写、面白い展開なども多いため、ゾンビ映画として普通に楽しめます。気になられた方、アマプラで見られるので、是非いかがでしょうか。
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